トリステイン王子、ザナック!   作:交響魔人

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ゼロ魔二次は多いですが、アルビオンのレコン・キスタ視点となると一気に数が減ります…。


アルビオンの一幕

 浮遊大陸、アルビオン。

 モード大公の娘、リリーシャ・モードとその側近はグラスゴー近郊の砦に潜伏していた。

 

 

 

「リリーシャ様!レコン・キスタに加盟しましょう!」

「今こそ、モード大公の仇を討つべきかと!」

 

 気炎を上げるモード大公の派閥にいた重鎮達。

 そんな中、リリーシャは強い違和感と忌避感を感じる。

 

 

 数日前。始祖から「虚無」を授かったと平民の司教であるオリバー・クロムウェルが宣言し、レコン・キスタの設立を宣言してカーライルを占拠。

 即座に討伐部隊が送り込まれたが、討伐部隊がそのまま投降したのだ。

 

 

 伯父上は、父を処断した男だ。それが、寝返るような討伐部隊を送り込むだろうか?

 その部隊長は現王家に忠誠を誓っていた。それが寝返る?

 

 そんな時だ。レコン・キスタから書状が届いた。

 共に、腐敗したアルビオン王家を打倒しないか、と。

 

 

「私は、父上の死の真相を知りたい。だが、その為にレコン・キスタに参加するのは危険すぎる。」

 

 

「しかし、レコン・キスタは王党派を次々と撃破しております!」

「レコン・キスタが王党派の手勢を撃破しているため、我々はかなり動きやすくなっています。参加せねば、レコン・キスタと王党派の双方を相手取る事に…。」

「リリーシャ様!ジェームズがモード大公を討った理由を聞き出す事、という事に絞ればレコン・キスタへの参加は妙案かと。」

 

 

 リリーシャは、腹心の部下を見渡す。

 その眼光だけで、配下の者は押し黙る。

 

「皆の意見はわかった。その上で、問おう。レコン・キスタに加盟し、ジェームズから父を処断した真意を聞き出したとして、その後どうなる?」

「その後は、アルビオンの再建を行えばよろしいかと!」

「レコン・キスタに加わっているのは、うだつの上がらない下級役人や凡庸な軍人ばかり!リリーシャ様と我らが加われば、レコン・キスタの主導権を取れます!」

 

 リリーシャは首を横に振る。

 束ねられた銀色の髪が美しく揺れる。

 

 

「そうはならぬ。何故なら、ハルケギニア全土が敵になるからだ。」

「な、何故ですか!」

「レコン・キスタは王政の打破を主張している。今現在はアルビオンの内乱にとどまっているが、これがハルケギニア全土を巻き込んだ戦いになる。」

「そうなったとしても、我々には艦隊があります!」

「左様。懸念は無用かと。それに、トリステインを手に入れれば、ゲルマニアの領土は切り取り放題ですぞ!」

 

 

 気炎を上げる腹心の部下に、リリーシャはつぶやく。

 

「トリステインを襲えば、烈風が出てくる。」

 

 

 その場の全員が凍り付く。

 

 

「レコン・キスタという味方を得ても、ハルケギニア諸国が敵に回る。それでも、レコン・キスタに参加するべきだと思うか?」

「それでは、レコン・キスタと王党派の双方を敵に回して戦うおつもりですか…?」

「戦後処理をどうするか、その返答次第。返書は私がしたためておく。以上だ。」

 

 

 

 自室に戻り、リリーシャは服を緩める。

 同年代と比較しても大きい二つの膨らみが、その存在感を主張する。

 

 

「ああは言ったが…。レコン・キスタと王党派が戦っている中、首都へ進撃してジェームズ一世の身柄を抑えた場合、今度はレコン・キスタが敵になる。ありえないとは思うが…父上が許されない事をなしていた場合、私の行動はアルビオン王家を断絶へ導く事につながってしまう…。」

 

 

 ならば、レコン・キスタに参加した場合どうなるか?

 その場合、次はトリステインを狙おうとするだろう。ガリア、ゲルマニアを相手取るより、国土が狭くて小国。リスクは少ない。

 マリアンヌ太后は喪に服して女王にならず、第一王子のザナックも即位していない。未だに婚約者すらいないという事は貴族の支持基盤も脆弱なのだろう。

 

 そもそも、烈風が未だ生きているかどうか不透明だ。個人的にはもうヴァルハラに旅だっていて欲しいのだが。

 

 

 

 

「…やはり、レコン・キスタに対しては明確に敵対せずに地盤を固めるべきか…。」

 

 

 リリーシャは返書をしたためると、倒れこむように寝台へもぐりこむ…。

 

 

 

 

―――――

 返書を送ってから数日後。

 

 

「レコン・キスタから、使者が来る。丁重に出迎えよ。」

 

 リリーシャとしては乗り気では無いが…。強硬策をとるなら考えねばならない。

 

 

 

「お久しぶりです、ジョンストン卿」

「リリーシャ様。少し痩せられましたか?」

「親愛なる伯父上のおかげで。」

「そう、ですか…。」

 

 

 やや間が開く。

 

「ジョンストン卿。私の懸念は伝わっていますよね?」

「このままでは、ハルケギニア全土が敵になる、という事でしたな。」

「ええ。クロムウェル司教におかれましては、どのようにお考えなのか…。伝説の虚無とはガリアとゲルマニアの二か国を同時に相手取って戦えるのですか?」

「いや。リリーシャ様の指摘について、閣下は素晴らしい慧眼であると褒めておられた。」

 

 

 クロムウェルは表面上は平然としつつ、自室に戻った直後に「使い魔」に泣きついて、その「使い魔」も狼狽して「主」に指示を仰いだのだが…。

 

 

「トリステインの王位は未だ空席。マリアンヌ太后は即位せず、その息子のザナック王子に至っては婚約者すらいない」

「なら、貴族の支持を得ていないという事。」

「故に、アルビオンへ攻め込むだけの準備は出来まい。ゲルマニアの艦隊だが、忌々しい事に艦齢という一点でのみ、アルビオン空軍の上を行く。」

 

 艦齢が上、というのは「古い」という事であり、それ以外でアルビオン空軍は勝っている。

 

 

「ガリア王国では、新教徒による活動もあって介入は出来ない。」

「こちらから、トリステインに攻め込まなければそうでしょうね。」

 

 そうリリーシャは呟きながら、紅茶を飲む。

 

 

「親愛なる伯父上を廃し、共和制を樹立。その後各国と不可侵条約を締結し、国内の内乱からの復興を優先するというのであれば…レコン・キスタへの参加を検討させていただく。」

「うむ。私も閣下もそう考えている。書面だ。」

 

 なるほど。リリーシャは受け取りながらクロムウェル司教に対する評価を大きく上げる。

 自分の懸念事項を伝え、それを解消するだけの明確な答えを集め、その上で戦後復興を確約する書面をあらかじめ書いているとは。

 

 そうとう頭が回る人物に違いない。

 「虚無」に頼っているだけではないのか?と推測していたが、知略に秀でているようだ。

 

―――――

 

 

 ロンディニウムのハヴィランド宮殿。ジェームズ一世は家臣から上がってきた報告に頭を悩ませる。

 

「…モードの娘が生きていて、レコン・キスタに参加しただと?」

「リリーシャが…。」

 

 その事実に、ウェールズ王子も衝撃を受ける。

 

 

「一体何をやっていたのだ!死亡を確認したと言っていたでは無いか!」

「それに生きていたとしてもラインメイジが一人加わったところで、大勢に影響はない!」

 

 

 紛糾する御前会議。

 この状況で責任を追及するありさまは、見苦しいの一言でしかない。

 

 

「リリーシャが生きていたとなると…叔父上の腹心だった者が、その呼びかけで一斉にレコン・キスタに参加する可能性が出てくるな」

「恐れながらウェールズ殿下!顔が似ている娘を偽物として押し出しているだけでは無いでしょうか?」

「その可能性もあるけれど、大事なのは叔父上の腹心達がどう思うかだ。本物であろうと無かろうと、王党派に恨みを晴らせるなら、と考えて参加する可能性が高い。」

 

 ウェールズは地図の一点を指さす。

 

 

「そうなった場合、おそらく次の狙いは…サンタルス市だろう。ここを落とせば、サウスゴータ、レキシントンのどちらかへの侵攻が可能になる。」

 

 守る側としては戦力を二分せねばならない。

 ウェールズは、従妹の顔を思い浮かべる。銀髪が印象的な娘だった。彼女と杖を交えることになるとは…。

 トリステインにいる、もう一人の従妹には見せたくないな、とウェールズ王子は考える。

 

 

―――――

 

 

 この日、サンタルス市は緊張に包まれていた。

 レコン・キスタにモード大公の娘が参加したという話もあり、動揺が広まっている。

 

 

 

「賊軍の数は?」

「多く見積もっても、2000、こちらは5000です。」

「まず、こちらの勝ちは決まりだが…モード大公の娘を「僭称」している女とクロムウェルなる生臭坊主は、生きたまま捕らえておきたいものだな。」

「その通りですな。ん、あれは…?」

 

 

 

―――――

 栗色の馬に跨り、リリーシャ・モードは王党派の陣形を眺める。

 軍事には興味があり、せがんで教えを乞った時期があったが…。あの頃はまさか自分が戦場に立つことなどありえないと思っていた。

 分からない物だ。敬愛していた伯父と従弟と、自分は戦おうとしている。

 

 

「王党派はこちらの2倍、か。」

 

 

 狙いはサンタルス市の攻略。今後の事を考えるとここで損耗を出すのは危険。

 ならば…。

 

 

 

 そんな様子を、クロムウェルの「使い魔」は見ていた。

 彼女は「主」からこういい含められていた。

 

『敗北が決定的になったら、使用を許可する』と。

 

 ガリアのガーゴイル軍団を投入すれば、5000程度であれば勝敗は覆せる。

 とはいえ、この程度は自力で乗り越えてほしいものだ。そう、「使い魔」は楽観視していた。

 

―――――

 

 

「こちらは5000!敵は多く見積もっても2000!一気に総攻撃するべきです!」

「それでここを奪われたらどうする!」

「たかが2000の兵でどうやって奪い取れると!奪われたところで、サウスゴータかレキシントンから援軍がくれば逃げ場すらなくなる!」

「待て。今、何と言った?」

 

 エ・ガルガの言葉に、若い将校は慌てる。

 

「あ、いえ…。」

「あえて手薄にして、サンタルス市を取らせて包囲する。さすれば逃げ場を失ったレコン・キスタは…。よし、サウスゴータとレキシントンにそれぞれ伝令を送れ!」

 

 

 

 サンタルス市に駐屯している武官、エ・ガルガは先ほど前線に出てきていたリリーシャ・モードの姿を確認していた。

 

(そろそろ、『地下室』の娘に飽きてきたところだ…。あの容姿ならば申し分ない!)

 

 出撃準備を命じたエ・ガルガは私用を済ませると告げ、杖を手に『地下室』へ向かう。

 新しいのが手に入るならば、古いのは『処分』しなければならない。

 

 

 

 …かつてモード大公は、エ・ガルガについて兄であるジェームズ一世に告げた。

 

『エ・ガルガは、要職につけるべきではない』

 

 弟の進言もあって、エ・ガルガは前線将校としての扱いだった。

 そのモード大公の処断が行われた際、エ・ガルガはアルビオン王国上層部に賄賂を贈った。

 

 効果は激烈だった。モード大公による不当人事、ということでエ・ガルガはサンタルス市の総司令に上り詰めた。

 モード大公の派閥への追撃戦で奪った財宝を少なく報告し、その差額を気前よく分け与え、エ・ガルガは我が世の春を謳歌する。

 

 その行動こそ、モード大公の評価がいかに正しかったのかを証明していることに、エ・ガルガは気づいてすらいなかった。

 

 

 

 

―――――

 

 

「王党派が、サンタルス市から出撃してくる模様!その数、5000!」

「となれば、サンタルス市は空も同然。」

「サンタルス市を奪い、そこで守りを固めれば、数の差を補えます!」

 

 

 レコン・キスタ側の武官の発言を受けて、リリーシャは考える。

 そんな事は当然向こうも分かっているはず。何故、拠点を空にしてまで出撃を?

 

 奪わせることが、目的?奪わせた後で、レキシントンとサウスゴータから部隊が出てくれば包囲網が完成する…。

 そのうえで出撃した部隊が反転したら?

 

 

「野戦で、エ・ガルガの部隊を撃滅しなければ未来は無い。」

「なっ?!て、敵はわが軍の2倍なのですぞ!」

「それがどうした、我々には『虚無』もある!」

 

 

 リリーシャはモード大公の派閥である自分たちの存在価値を証明しなければ、今後、レコン・キスタでの立ち位置が薄れると判断した。

 

 

「虚無に頼る必要はない。私に、考えがある。」

 

―――――

 

 

 エ・ガルガはレコン・キスタの布陣を見る。

 

「全くなっていない。あの程度の軍に討伐部隊は後れを取ったのか。」

「悪運だけが強いのでしょう。まぁ、それもここまでですが。」

「ちっ…ここで殲滅しそこねれば追撃戦になるでは無いか。」

「いかがいたしますか?」

「攻撃だ。たかが2000、物量で叩き潰せ。」

 

 

 

 

 

 突き進む王党派の軍に対し、レコン・キスタの前線は乱れ、逃走を開始していく。

 

 

「くそっ、ここまで腰抜けとは…?!おい、騎兵部隊は私に続け!」

「エ・ガルガ卿?!」

 

 逃走していく敵部隊の中に、輝く銀髪を視認したエ・ガルガは自ら捕縛しに向かう。

 

 

「モード大公の娘を僭称している女だ。そいつを捕らえれば、モード大公の派閥がレコン・キスタに流れる事も無くなる!」

「陣形を崩すのですか!」

「陣形だと?もう勝ったも同然だ!聞け、これより掃討戦に移行する!全軍、突撃!」

 

 

 勝利の輝きに目をくらましたエ・ガルガには、「何故モード大公の娘を名乗っている女が、兜すらつけていないのか」と考える事すらできなかった。

 

 

―――――

 

 

 敢えて目立つように動いたリリーシャは、目論見通り王党派の一団が迫っている事に気づく。

 

 

 王党派の狙いとしては、クロムウェル司教と自分の首のはず。であれば、目立つ容姿の自身が囮になれば、功を焦った敵軍を吊りだすことが出来る。

 そして、誘い込んだ先には…。

 

 

 

 

 エ・ガルガはわからなかった。

 自分は勝っていたはずだ。後少しで栄光と「戦利品」が手に入るはずだった。

 

 だが、伏兵にあって落馬。右足と右腕を骨折した上に、杖は数メイル先に転がっている。

 そして、銀髪の少女が魔法を唱え終えている。

 

 

 そんな自分が、こんな、こんな所でっ!

 

 

「き、貴様ごときにっ!」

 

 それがエ・ガルガの最期だった。

 

 

―――――

 

 エ・ガルガの命令を受けて突出した部隊もまた、横合いから魔法と弓矢の攻撃を受けて、混乱。

 その数を次々と減らし、撤退していく。

 

 そこに、苛烈な攻撃が加えられ、さらに数を減らす。

 

 

 

―――――

 

 

 上手くいった。

 自身を囮にして、敵部隊の一部を誘引して捕捉殲滅。指揮官クラスの首を掲げて敵軍の戦意を挫きつつ、伏兵と共に反転して再度前進。

 

 

 こちらが総崩れになったと見せかけた事で敵は追撃しようと、逃がさぬようにしようと動いているはず。

 

 

 だが、王党派の軍は、掲げた敵将の首を見るや否や戦意喪失していく。

 

 

「…もしかして、サンタルス市の駐屯軍の総司令官か?」

 

 いや、そんなはずはない。王党派の陸軍で、サンタルス市を預かっている総司令官をこうもあっさり討ち取れるわけが無い。

 

 

 

 

 あれが、総司令官だったらしい。なんだか釈然としない気持ちで、リリーシャは手勢を率いてサンタルス市を制圧、即座に防衛計画を練る。

 

「裏工作は?」

「滞りなく。サウスゴータとレキシントンには改めて早馬を出しています。」

 

 

 レコン・キスタの部隊は壊滅。近々、クロムウェルとモード大公の娘の身柄をロンディニウムへ護送するので、日程が決まり次第連絡する。

 なお、取り逃がした兵がいたため、襲撃に備えて防備を固める。

 

 

 という書簡がそれぞれのところに送り届けた。

 

「これで多少時間は稼げる。その間に、サウスゴータを奪還する。」

 

 

 リリーシャは、策を練る。

 自身が生きていた事については、サウスゴータを奪還した時に公表すればいい。

 今の自分に、父の腹心がどこまで付き従ってくれるか分からないが…。

 

 

「リリーシャ様!ち、地下室に!」

 

 そういわれ、向かった先には…親友の無残な姿が残っていた。

 

「…これが、貴方達のやり方か。伯父上…!」

 

 

―――――

 トリステイン王国、トリスタニアにて。

 

「レコン・キスタに、モード大公の娘が参加?!」

 

 王政を打破する、と掲げているレコン・キスタに、王族に連なる女性が参加するとは。

 

「サンタルス市を取ったという事は、サウスゴータとレキシントン、どちらも取れるな。5000を2000で打ち破ったか…。」

 

 地図を眺めながら今後取りうる行動を分析する。戦上手だ、とザナックは素直に評価する。

 

 

「厄介ですな。モード大公はかなり慕われていた王弟。その旧臣が集まるとなると」

「聖地奪還という、単なる司教の妄想では済まなくなってきますな。」

「殿下、どう思われますか?」

 

 ウィンプフェン伯、ド・ポワチエ将軍、ラ・ラメー伯は思考をめぐらす。

 デムリ卿も同様に考え込む。

 

 

「…そもそもモード大公の娘とその派閥の者は、ジェームズ一世を討ってアルビオンを制圧した時点で、これ以上戦う理由は無い。だが、クロムウェル司教とその派閥は早急に攻め込む必要がある。攻め込まずにぐずぐずしていたら、本当に聖地奪還と王政の打破をする気があるのか?と大義名分が揺らぐからな。」

「?!最終目標が別々では無いですか!」

「その通りだ、ウィンプフェン伯。故に、トリステイン王国が取れる方針は2つ…いや、3つか。一つ目はレコン・キスタにいるモード大公の派閥の者たちに『トリステインへの侵攻は容易くない』と思わせるほど、守りを固める。二つ目は、ラ・ロシェールに艦隊を集結させ、ロサイスへ侵攻。王党派と戦っている後背を襲う。」

 

 ザナックの発言に、ド・ポワチエは食いつく。

 

 

「?!殿下!それならばアルビオンの一部を割譲させることも!」

「だがその場合、内乱に乗じて他国の領土をかすめ取ったとして、批判を浴びるだろうな。それにアルビオン人は激しく抵抗し、占領しても統治は容易では無い。」

 

 

 ラ・ラメー伯はしばし考えていたが、ふとザナックを見つめる。

 

 

「恐れながら殿下。3つ目の策とは?」

「何、簡単な事だ。私とアンリエッタと、母上を纏めてレコン・キスタに差し出して恭順を誓う。まぁ、そうなった場合、貴公達はレコン・キスタの先兵となってガリア王国と戦争、その後はエルフと戦争という道が待っているがな。」

 

 自嘲するザナックに対し、トリステイン王国の上層部はそろってひざまずく。

 

 

「?!どうした!」

 

「殿下、冗談にしてもそのような事は仰らないで頂きたい!」

「左様。殿下を叛徒に差し出すぐらいならば、死を選びます。」

「主君を殺す貴族は犬にも劣る、と言います。」

「殿下は一つお忘れです。殿下を差し出せばガリアと戦う前に、トリステインで内乱が起きますぞ。」

 

 

 どうやら、最後の最後で裏切るという事はなさそうだ。

 ザナックは自分の行動が、少なくともこの国にとって悪い方向に動いていないと確信する。

 

 

「さて。アルビオン王家に対し援軍要請の是非を問う使者を送り、援軍要請があれば参戦、断られれば防備を固めてレコン・キスタのクロムウェル司教とモード大公派の分断を誘う。その方針で行くぞ」

「殿下、もしも使者をレコン・キスタの者に討たれたら…。」

「それを理由に介入だ。」

 




 モード大公の血縁者視点では、レコン・キスタに参加するのはものすごくリスクが高いです。
 レコン・キスタとしても旗印になってくれますが、アルビオン制圧後は邪魔になるという…。


 次回はちょっとギャグを挟んでから本編やります。
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