トリステイン王子、ザナック!   作:交響魔人

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原作主人公君、登場。
おなじみ決闘イベントもありますが、原作とは経緯を変えています。
ゼロ魔二次を読んでいて、「決闘イベントはこういう展開にすればどうだろう?」と前々から思っていたことを形にしました。



ガンダールヴ、ザナック王子と出会う

 レキシントンを落とし、王党派の拠点37ヵ所を数年かけて攻略したレコン・キスタはついにロンディニウムまで進軍する。

 ここを落とせばニューカッスル城のみ。

 

 徹底的に防戦態勢を取る王党派に対し、レコン・キスタ側も攻めあぐねる。

 レキシントン号を中心とした艦隊で粉砕するわけにはいかない。首都を廃墟にしては、その後の統治が破綻するからだ。

 

 そのロンディニウムの正門前。固く閉ざされた城門から、やや離れた場所に騎乗した、銀髪ロングの若い娘が数名の供をつれて現れる。

 

「聞けっ!ジェームズ一世!我が名はリリーシャ・モード!答えよ!何故我が父、モード大公を処刑し、他の貴族や臣民を手にかけた!既に王党派の城はこのロンディニウムとニューカッスルのみ!神と始祖に恥じるところがないなら、我が前に姿を見せ、釈明せよ!」

 

 姪が現国王である伯父に城門まで出てきて釈明しろ、というのはハルケギニアの歴史を紐解いても珍事である。だがそれでも彼女は行った。

 ただ、知りたいのだ。何故そこまで惨い粛清の嵐を巻き起こしたのかを。

 

「ロンディニウムが落ちれば、ニューカッスルまで落ちのびるつもりかっ!そこまで、そうまでしても答えたくないか!!何故だ!父と貴方は兄弟だったでは無いか!」

 

 

 ヴァルハラにも届け、と魔法で音声を拡大して叫ぶ彼女の叫びは、ロンディニウムに響き渡る。

 その悲痛な叫びは、ジェームズ一世にも届いていた。

 

 

「…父上」

「許せ、ウェールズ。全ての責めは、ワシが背負う。」

「一体、一体何があったというのですか。父上と叔父上の間で…」

「言えぬ。こればかりは、どうしても言えぬ。これは、ヴァルハラまでもっていかねばならぬ秘密…。」

 

 

 

 

 叫び続け、ようやくレコン・キスタの本陣に戻るアイシャに、クロムウェルが話しかける。

 

「…あの叫びを聞いてもなお、姿を見せぬとは。ジェームズ一世は既にまともな状態では無いのだろうね。」

「そう、でしょう。私はただ、真実を知りたい。あの惨劇を行った真意を。」

「ゆっくり休まれよ。ロンディニウムは必ず攻略する。」

 

 天幕に入っていく女を見送り、シェフィールドはクロムウェルに話しかける。

 

「思った以上に役立つわね、彼女は」

「ジェームズ一世を断罪する為に、素晴らしい働きをしている。モード大公派の兵以外のレコン・キスタの諸氏も感涙している程だ」

 

 聖地奪還のために無能な王家を打倒する。その大義名分として彼女は素晴らしい貢献を行っている。

 クロムウェルはにんまりと嗤う。

 

 

 

 

―――――

 

 俺は、平賀才人。

 西暦2138年。小学校を学費不足で中退した俺は、巨大企業の歯車として働いていた。

 そんな時だ。奇妙な鏡のような物に触れたら…ハルケギニアに飛ばされた。

 

 いつの間にDMMO-RPGにログインしたんだ?ロボットモノの、「アーベラージ」と違ってファンタジー系に?と混乱した。だけどログアウト出来ないし、どうやらこれが現実だと理解した。

 

 その後は、ルイズという富裕層の立場にいる女の子の使い魔になった。

 扱いは悪かった。加工食品とサプリメントではない食事だったが、自分は豪奢な食事をしていて、俺は床に置かれた食事だったから。

 目の前で豪奢な食事をしているのを見せつけられるというのは、中々辛かった。

 それでも、ほかに行く当てもないから俺は我慢して付き合った。

 

 

 魔法の授業で、『錬金』を唱えたら…大爆発を起こしたことで、俺はなぜルイズが『ゼロ』と呼ばれているのかを知った。

 

 

 その後。短い銀髪で目つきがヤバイ男子生徒が詰め寄ってきた。

 

 

『ゼロのルイズ!一体いつになったら退学するんだ!魔法がろくに使えないのに、魔法学院にいる必要はないだろ!お前のせいで、俺の使い魔が食われたんだぞ!』

『わ、悪いのは食べた使い魔でしょう!』

『そいつにはすでに落とし前を付けた!お前も使い魔を始末されたら、俺の気持ちも少しはわかるだろうよ!一週間後、ヴェストリの広場で決闘だ!』

 

 

 

 貴族の一人と一週間後に決闘、ということでルイズは悩んでいた。

 

 

『あいつはラインメイジだし、私や平民のあんたが勝てるわけ無いわ…。ああもう、どうしたら!』

 

 

 その後。使い魔に関する授業で、使い魔に刻まれている「ルーン」について調べる課題がでて、俺は「ガンダールヴ」という事が判明した。

 課題を提出した翌日。担当のコルベール先生が俺とルイズを学院長の部屋まで連れていって…そこに記されていた『始祖ブリミルと使い魔』という本から真相を知った。

 

 

『じゃあ、サイトはあらゆる武器を使いこなせるの?』

『伝説によれば、な。赤銅のジェダ・オルストにお主らが勝てるとすればそれに賭けるしかあるまいよ。』

 

 

 

 

 ルイズはトリスタニアに連れて行ってくれた。見るものすべてが俺には珍しかった。

 かなり大きな武器屋に入った。

 

 

 壁や棚に、様々な武器が整然と並べられていて…

 店主はルイズの制服をみて魔法学院の生徒、と見抜き『お売りですか!』といきなり聞いてきた。

 ルイズが客と答えると、意外そうな顔をした。

 

 

『魔法学院の貴族様が武器を?目的は何ですかい?』

「目的?」

『戦う相手が人間か、そうでないかで違ってきますんで。見栄え重視というなら、こういう細身のレイピア。これは良い出来でしてね、青銅製ですが精緻な細工が施されていてよく売れるんでさ。後はこの飾り気のない真鍮製のエストックか、赤銅製のフランベルジュでさぁ。』

「どれも斬りつけるのか?」

『レイピアはともかくエストックは両手でもって突き刺す。こうすれば、大抵の鎧は貫いてしまいますんで。フランベルジュは斬りつけ…なんで片手で持ち上げれるんですかい?』

 

 大きな赤銅製で、長さ180サントぐらいの波打った刃が付いた剣を、俺が持ち上げると店主が驚く。

 

 

 後から知ったが…ザナック王子の政策で、トリスタニアの武器屋にはトリステインの土メイジが作り上げた武具が並ぶようになり、質の良い物が流通するようになっていたらしい。

 それまでは質の悪い武器を高値で売って儲ける事ばかり考えていたような武器屋があったらしいが、あっという間に淘汰されたという話だ。

 

 

『相手は、人間よ』

『まぁ、何はともあれ主武器と副武器は必須ですな。落としてしまった時に、拾って構える暇なんてありませんぜ』

 

 

 副武器として、ダガーやハンドアックスを店主が提示する。

 

 

『ところで、これっていくらなの?』

『レイピアは75エキュー、エストックは90エキュー。フランベルジュは82エキュー、ダガーは12エキュー、ハンドアックスは56エキューでさ』

 

 値段を聞き、赤銅製のフランベルジュを見ながらルイズは言う。

 

 

『…ねぇ、主武器一つに絞らない?』

「落としたらどうするんだ?」

『落とさなければいいんでしょ!』

 

 無茶な事を言うが、払えないなら仕方ない。

 

『…あの棚にあるのは訳アリですが、勉強させて頂きますぜ?』

 

 あまりお金を掛けたくない様子を見抜いた店主は、そう言って棚の一つを指さす。

 そこにあるのは、見るからに作りが甘かったり、錆びていたりと非常に見劣りする武器ばかりだった。

 

 俺はとりあえず、大剣を手に取る。

 

『…ん?おめー、使い手か?』

「剣がしゃべった?!」

『使い手?もしかして、ガンダールヴの事?』

『懐かしいねぇ…。よし、俺を買え。俺はデルフリンガーっていうんだ。』

 

 

 前から厄介払いしたかった店主は格安で売ってくれるという事だったので、デルフリンガーという錆びた大剣を新金貨90枚で購入した。

 

 

 

 デルフリンガーを振る練習を経て。数日後。

 ヴェストリの広場で、ジェダが困ったように髪の毛を掻く。

 

 

『一週間待ったのは、詫びを入れさせるためだったが…。まぁいい。平民、お前に恨みは無いが…。』

 

 一呼吸おいて、ジェダが俺をにらみつけた。

 

 

『俺は、いや俺たちは!入学してからまる一年、ルイズの爆発に散々悩まされてきた!それでも、何とか耐えられたのは終わりが見えていたからだ!』

「3年で卒業だから?」

『違うっ!2年生への進級試験は、使い魔を呼び出し契約することになっている!それが出来なければ留年!留年になれば、もう同じ授業を受けることはないと思っていたのに…!』

 

 

 ジェダが、不格好な赤銅のでかいゴーレムを作り出す。

 武器屋で見覚えのある赤銅製のフランベルジュを持ち、ゴーレムの全身にびっしりと鋭いスパイクが生えていた。

 

 ああ、なるほど。武器屋の店主がルイズを見て売りに来た、と思ったのはこういうことか。

 そういえば、土メイジの先生は真鍮を錬金していたっけ…。青銅のレイピアもここの生徒が作ったのか?

 

 

『相変わらず、センスはゼロだね。ジェダ。』

『黙ってろ、ギーシュ!戦いにおいては、数よりも質だ!ルイズ、この平民にも親がいて、友人がいるだろう。お前が、今まで授業で失敗した後に一度でも謝っていれば、俺もここまでやるつもりはなかった…。平民。このサイマリンを前にしてもまだ戦うつもりか?決闘だからな、当たり所が悪ければ死ぬぞ。ルイズの代わりにお前が謝るというなら、手を引いてもいい。』

 

 

 正直、めっちゃ怖い。あのフランベルジュで斬られたり、刺されたらって思うと逃げ出したくなる。

 

『あんた…』

「使い魔でいい、寝るのも床でいい、飯はまずい上に少なくてもいい、生きるためだから割り切る。だけど。下げたくない頭は、下げられねぇんだ。」

 

 俺は、デルフリンガーを抜く。素振りは何度もしたが実戦は初めてだ。

 

 

『平民、名前を名乗れ。記憶にとどめて置いてやる』

「平賀。平賀才人だ」

 

 

 赤銅のゴーレムが迫る。

 

 『防御力はゴミ、攻撃と機動力に全振りすればいい』

 かつて、そう言っていた人の戦術を俺は取った。

 

 決闘は、俺の勝ちだった。

 崩れ落ちる赤銅のゴーレムを見て、ジェダは呻いた。

 

 

『後、二年我慢しないといけないのは腹立たしいが…認める。俺の負けだ。あんな大剣を軽々と振り回すとは、いったい何者なんだ…?』

 

 

 これ以降、学園での俺は一目置かれるようになったし、手が空いていたから使用人の手伝いも積極的にして交流するようになった。

 ほかの男子生徒と空き時間に「組み手」をするようにもなった。

 あと、ルイズは実技の授業で魔法を使うときは『爆発するので出来ません』とはっきり述べるようになった。

 

 

 ジェダはあの後、また使い魔を呼び出した。前はラッキーと名付けたカラスだったらしいが、今度もカラスだった。

 エサと藁に錬金をかけて上等にした物を与えて、赤銅のケージを作っていた。

 俺と決闘するときとは打って変わって、すげぇ優しそうな眼でカラスを見ていたのが印象に残った。

 

 

 

 

 

 そんな時だ。ルイズ様の幼馴染であるアンリエッタ王女が使い魔の品評会に訪れ、その夜にお忍びでルイズの部屋を訪ねてきた。

『王宮には人がいても、兄の味方ばかりで自分の味方が少ない』という事で友人のルイズに頼み事をしてきた。

 

 内乱のアルビオンへ特使として赴くよう頼んできて、俺達は行く羽目になった。

 

 

 

 おつきの人物としてワルド子爵が一緒だった。ルイズの婚約者という事だったが、なんだか落ち着かない様子だった。

 まぁ、これから内乱の国に行くんだ。そりゃあ落ち着かないだろうと思っていたら…。

 

 ラ・ロシェールで水精霊騎士隊と名乗る一団が乱入してきて、ワルド子爵と分断されてしてしまった。

 

 俺はその前に『こういう任務では、半数が目的地にたどり着けば成功』という説明をワルド子爵から聞いていたから、予約していたフネでアルビオンへ向かった。

 ふと下を見下ろしたら、すげぇ形相でワルド子爵が俺をにらんでいたが、水精霊騎士隊が集まって魔法を連射。それに追い回されながらワルド子爵は逃げて行った…。

 

 その道中、空賊に襲われて人質になったんだが…。その空賊をトリステイン空軍将校のラルフという人が艦隊を率いて包囲し、降伏させた。

 空賊は『神と始祖に誓う!今後空賊行為はしないから、我々をアルビオンへ返してくれ!』と叫んでいたが、空賊のたわごとと判断してそのまま連行。

 

 ラ・ロシェールに連行した後、空賊の長を直々に尋問すると言って連行。ルイズ様がヴァリエール公爵家の娘で俺がその従者、ということで同行を求められた。

 

 

 

 トリステイン王国の第一王子と、俺は初めて出会った。

 名前は、ザナック・ド・トリステイン。俺の第一印象は、ちょっと太った男の子だった。

 あのお姫様が言うには王宮はこの人の味方ばかりって事だが、そんな人望があるようには見えなかった。この時、は。

 

 

「さて、この度は事件に巻き込んでしまって申し訳ない。ヴァリエール嬢。アルビオンの王党派に特使を送る任務はアンリエッタの独断だからとりやめさせる。ワルド子爵は、『レコン・キスタ』とのかかわりがあると捜査していたのだが…逃げられてしまった。今頃は合流しているだろう。」

「レコン・キスタ?!確か、アルビオンで活動しているという…。」

 

 つまり、あのままアルビオンに行っていたら王党派に接触するどころか敵軍側に捕まっていたって事か…。

 おっかないなぁ。

 

「ああ。元はと言えば親愛なる伯父が、弟であるモード大公を処断した事による反発だったが…。現在、クロムウェルという司教が始めた運動に、モード大公の忘れ形見、リリーシャ・モード姫が参加した事でアルビオンの王党派はかなり苦戦を強いられている。」

「どうして、ワルド様…いえ、ワルドが。」

「理由は不明だが、何かしらの事情があるのだろう。ヴァリエール嬢と婚姻して後ろ盾を得れば、国政にも入り込めるという立場を捨てるからには、な。」

 

 

 言われてみれば近衛騎士の隊長まで上り詰めていたのに、それを全部捨てたんだよな…。

 

 

 

「レコン・キスタの指導者クロムウェルは「虚無」の力を授かったと言っているようだが…。ラグドリアン湖の水位が上昇したという事で調査を行った所、アンドバリの指輪が盗まれたという。そして、その中の一人が「クロムウェル」と呼ばれていた、と。」

「偶然では?」

「クロムウェルはアンドバリの指輪による魔法を「虚無」と偽っている、とある程度の確信をもって俺は推理している。」

 

 

 この王子、見た目と違ってすげぇ頭がいいんだな。俺はそうぼんやりと思った。

 

 

「本来であれば君は即刻トリスタニアで保護するべきなのだろうが…それで安全、という話では無い。なにせ、近衛隊長が裏切ったのだ。」

「じゃあ、ルイズ様はご実家に?」

 

 

 思わず口を開いてしまい、そのことでルイズ様が青ざめる。

 ザナック殿下に睨まれて、俺は委縮する。すっげぇ、怖い。ジェダのゴーレムより怖い。

 

「…発言を許した覚えは無いが。まぁ、いい。大目に見てやろう。…アンドバリの指輪は死者に偽りの命を与え、人の心を操るという。アルビオンの王党派を倒せば、次はトリステイン王国に来るだろう。今までいろいろな政策を行ったが、ガリアやゲルマニアに攻め込むよりは、国土が10分の1しかないトリステインを狙うのは道理だろう。」

 

 

 南北に10倍の国土を持つ大国に挟まれた小国か。まぁ、空の大陸がハルケギニアの統一を狙うなら普通に狙うか…。

 

「だからヴァリエール嬢。アンリエッタから受けた密命、そして今知った事。ご実家に連絡しないで頂きたい。」

「ええっ?!」

「…妹の頼みで婚約者と共に内乱中のアルビオンに行くという密命を受け、しかも婚約者は反徒の一員だった事をヴァリエール公爵が知れば、釈明を求めて杖を抜いて王宮に来るだろう。そうなれば、トリステインも内乱になる。それは避けたい。今ならば、全て隠蔽できる。」

「お父様は反乱などしません!」

「いや、娘をそんな任務に秘密裏に向かわせたと知れば、怒り狂う。何故わざわざ娘をそんな危険な任務に就かせたのか、いや、そもそも何故事前に話すら通してくれなかったのか、と問いただす。」

「…そうでしょうか?」

「そういう物だ。ヴァリエール嬢。人の親というのはな。」

 

 

 ザナック王子は、遠い眼をする。

 そういえば、この国の国王はすでに亡くなられていたんだっけ?

 たぶん、『お父さん』のことを思い出しているんだろうなぁ…。

 

 

 ザナック王子が立ち上がる。

 

 

「このまま学園に返すところだが…。空賊が何者なのかについて知る権利ぐらいあるだろう。興味があるなら教えるがどうする?」

「ぜひ、聞きたいです。なぜ、あの空賊がアルビオンに戻りたいと真剣に言っていたのか。」

「いいだろう。大方予想はつくが、な。」

 

 

 

 

 それから、しばらく待って。

 憔悴しきったザナック王子と、満面の笑みを浮かべたアンリエッタ王女がやってきた。

 

 

「ああ!ああ!私のルイズ!貴女は、本当によくやってくれました!」

「ひ、姫様!?」

「まさか、ウェールズ様を連れてきてくれるなんて!」

「は、え?」

 

 

 アンリエッタ王女は、輝くような笑顔をザナック王子に向ける。

 

「お兄様、ウェールズ様は亡命してきたわけではありませんわ!」

「…ああ、ああ。そうだな、妹よ。」

「空賊として、活動しているところを『拘束』したのですから、レコン・キスタという恥知らずどもに、引き渡すのは国法に反しますわね?」

 

 

 アンリエッタ王女は、楽しそうに一回転しながら話す。

 

「空賊の身柄と財産は、これを逮捕した者か国家に属する!ラ・ロシェールで締結された、当時の教皇が認可した国際法ですわ!」

「そう、その通りだな…。各地を荒らしまわった空賊を捕縛して、その宝物の引き渡し云々で揉めて、国家間で締結された条約だったな…。我が国も批准している…。」

 

 

 さっきからザナック王子がすっげぇ疲れた目をしている。

 

 

「空賊の長がウェールズ王子だったなんて!ざ、ザナック王子はこれを予想していたのですか?!」

 

 

 ルイズの言葉を聞いた直後、ザナック王子は呻きながら頭を抱えて蹲る。

 

―――――

 

 

「ザナック殿下。魔法学院の長、オールド・オスマン様が到着なされました。こちらにお連れしても?」

「構わぬ。」

 

 

 ルイズを学園に返す、となったとき。学園から迎えにやってきたのは、学園長だった。

 

「ザナック殿下。生徒を迎えに参りましたが…。内密にお貸しいただきたい物があります」

「なんだ?」

「始祖の祈祷書、です。」

「白紙でしかないが、国宝だぞ?何に使うつもりだ?」

「ミス・ヴァリエールが虚無の担い手、そう考えております。虚無は始祖ブリミルが用いた魔法とか。であれば…」

「始祖の秘宝とかかわることで、何かわかるかもしれない、ということか。だが、彼女が虚無の担い手という根拠はなんだ?」

「この、始祖ブリミルと使い魔、という本に記されております。」

「…確認した。あの平民が、一騎当千のガンダールヴか。」

「大剣を軽々と振り回しているところを確認しております。」

「あの体格で?それだけの力があるだけでも、十分戦力になるな。わかった、貸し出そう。」

 

 

 国宝を貸す、というのに思うところはあったが、ザナックには時間がなかった。

 こうなった以上、一秒でも早く自分の派閥の重鎮を集めて善後策を練らねばならないからだ。

 

 妹がやらかした事について、説明しなければならないザナックの胃は早くも悲鳴を上げていた…。

 




妹が亡国寸前の王党派にヴァリエール家の三女と、レコン・キスタと繋がりがあり、逮捕まで秒読み状態のワルド子爵を護衛につけてアルビオンに送り出そうとした。
その為、トリスタニアで逮捕するための準備が無駄になり、ラ・ロシェールに急遽水精霊騎士隊を送り込み、ワルド子爵の捕縛を試みたが逃げられてしまう。
ヴァリエール嬢がアルビオンで死亡したりレコン・キスタの手に落ちれば、ヴァリエール侯爵家が反乱を起こす可能性が高いため、空軍を緊急出動させ、何とかアルビオンへ行く前に連れ戻すことに成功したが、その際に捕らえた空賊の長がウェールズ王子だった。
レコン・キスタに引き渡すのは、アンリエッタが猛反対するから引き渡せない。
レコン・キスタに引き渡さない場合、明日にでも空の覇者と言われたアルビオン空軍が攻めてくるかもしれず、トリステインの開戦準備は完了していない。
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