ターフの景色   作:にんじんぷりんとにんにく

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府中


咆哮

 

まだだ

まだ足りない

こい

早くこい

早く…

 

 

 

無敗で迎えた阪神

そこでお前と出会った

無敗と無敗の激突

運命は残酷なことをする

どうせなら皐月賞で

お前を負かしたい

栄光の第一歩で

無敗でなくなる

その相手は

未来の無敗三冠ウマ娘だ

だというのにこんなところで倒してしまうとは

全く運命は残酷だ

 

 

負けた

負けた負けた負けた負けた

なぜだ

俺は強い

俺は無敗で三冠を

皇帝以来の無敗三冠を

…だがいい

切り替えろ

負の方向ばかりに物事を考えるな

逆に考えろ

奴という強敵をここで見れた

それはつまり対策を取れる

皐月だ

皐月でお前を倒す

無敗のお前を倒すことに意味がある

だから負けるな

無敗の三冠を期待されたお前を倒し

俺こそが最強だと証明してやる

 

 

 

情けない

奴に負けるならいざ知らず

三着だと

この俺が

…落ち着け

敗因はわかっている

奴だけを見すぎた

そうだ

レースは一対一ではない

18対1なのだ

まぁ実況のやろうがまず一冠と言っていたが

そうはさせねぇ

次こそは俺が勝つ

 

 

 

 

 

11万の観客が

"主役不在のダービー"を見に来たのだろう

奴は勝ち逃げしやがった

ふざけんな

行き場の無い怒りがまた沸いてくる

ウマ娘のケガとはいわば事故のようなもの

いつ襲ってくるかわからない死神だ

そんなことはわかっている

奴にキレてもどうしようもないことも

このダービーには奴がいないことも

全ては仕方がないことだ

あぁ気に入らねぇ

自分の脚の限界を知っていただと?

これからサポートに回るだと?

ふざけんな

ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな

仕方がないことは理解してる

もう奴とは走れないことも解ってる

ただ

ただただ納得いかねぇ

ただそれだけだ

いないはずのお前が俺の前を走る

どこまで手を伸ばしても

どこまで追いかけても

俺はお前の顔を見れない

ただ無情に

お前はゴール板を横切った

…なぁ

お前がいないレースは

こんなにも

虚しいんだな

そんな気持ちを紛らすためか

それとも気持ちに整理をつけるためか

わからないが

ターフには咆哮が響き渡った

 

 

奴のサポートするウマ娘に負けた京都

いや、もう奴への執着は終わりだ

お前がそこでサポートしているのなら

俺は最強に挑んでやる

誰もが憧れた"年間無敗"

"覇王"に俺は挑む

あの時以来の東京

あの時は怒りが沸いていたが

今は怒りもない

あるのは"絶対強者"への

恐怖か…あるいは高揚か

どちらにせよ

ここで負けりゃ奴には一生勝てない

それどころか俺が負けりゃ

世間は弱いと嗤ってくる

先輩がそうされたように

なら道はひとつしかない

"勝つ"

覇王よ

お前の時代は

終わったんだ

これからは俺たちの時代だ

ゆっくり休め

いつの間にか奴の幻影を抜き去って

俺はゴール板を通過した

あぁ…やっとか

やっと俺は…

お前に勝てたのか…

今なら胸を張って言える

俺こそが"この世代"だと

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