ターフの景色 作:にんじんぷりんとにんにく
電撃のスプリント
一分と少ししかない熱の鼓動
そこに彼女は証明した
ただ一つのかわいいを
ただ一つの強者の域をこえ
この舞台に並び立つ
そこに残るは神話の再現か
それとも超えるべき壁か
その結果は
勝者のみぞ知る
最強のスプリンター
そう呼ばれてから何年たっただろうか
決して無敗だったわけではない
何度か負けている
だけれどあの中京だけは将来何年たとうとも
決して忘れることはないだろう
初めて挑んだG1レース
慢心などありはしなかった
レース前に彼女を初めて生で見た
衝撃が体を流れる
整った顔つきはもちろんだが
その葦毛の彼女に
きっと惚れてしまったのだ
聞けば彼女はかわいいを追及している
かわいいとはなんだ?
疑問が頭をよぎる
けれどそんなことは忘れて
レースに集中して行こう
このレースに勝利して
私はあの人を超える
その気で走ったレースは
気づけば3着で走り終え
かわいい彼女が先頭に立っていた
それはとても屈辱で
それは納得できなくて
それは自分の闘志をたぎらせて
それは二度と忘れない光景で
私はその名を胸に刻んだ
彼女を倒すにはG1の舞台が相応しい
勝手に決めたことだが
きっとその機会はすぐに来る
中山の舞台には
葦毛の彼女も立っていた
かわいいは磨きをかけているのだろうか
お兄ちゃんとは仲良くやっているのか
そんなどうでもよいことを
彼女の魅了を紛らわせるかのように
頭を動かし続ける
そうだ
もう戦いは始まっている
彼女のかわいいに
囚われたらどうなるか
それは自分が一番解っている
油断をするな
彼女のかわいいは
私たちにとっては猛毒だ
競争前に終わらせる
甘い誘惑なんてものじゃなく
強力な媚薬に他ならない
それはレース中も同じで
彼女の極めたかわいいは
いつしか他を殺す毒に変化した
そして彼女はそれを理解している
まったくもってかわいくないが
勝つための道具か
ならば一度やられている
この私こそが
彼女の毒を超えて
新たな驀進王になってやる
さぁ始まる電撃戦
超えて見せようその壁を
彼女がいない香港で
私は最強となる
誰が読んだか竜王と
世界の竜王は香港を勝利する
そんな結果も私には
前哨戦に他ならない
まったくトレーナーは粋なことをする
葦毛の彼女との最終決戦
エキシビションだが行われる
そこに集うは歴戦の
魔王のごとき戦士たち
大雨の中の無敵に折れない聖剣、花の楽園
スプリントの女王にロンシャン、ジュライの覇者
そして・・・
最後に現れるは絶対王者
まさに伝説
その姿は何度もあこがれた
堂々たるその姿は
まさに王
彼女の姿を見上げれば
ここに集った私たちが
彼女を倒すためにいるかのように感じてしまう
だが王者を前にして
私は笑みを浮かべていた
それに気づいたのか
驀進王は私に対して
まだまだですと
笑いながら言ってきた
その瞬間に嫌でも理解する
これこそが“最強”だと
だけどもそれは今日まで
これより先は私が“最強”になる
ゲートは開かれ
ターフを見つめる観客は
その光景を忘れることはなかった