ターフの景色   作:にんじんぷりんとにんにく

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7センチのその先で

 

今でも脳裏に残るのは

君の諦めたかのような表情

まるでこうなることが見えていたような

そんな悲しい表情

ねぇ教えて?

どうやったら笑顔を私に向けてくれるの?

 

 

 

君は知らないだろうけど

君は私達の希望だったんだ

それは"最弱"と言われてた

私達の希望の星

君は迷惑と言うだろうけど

勝手な押し付けだけれども

君ならきっと

覇王を倒すと信じてたんだ

けれど何処かで芽生えてしまった

ダービーを取りたいという思い

それがなければ君は

きっと三冠を取っていた

けれど私にも負けられない意地ができた

それは妹からの期待

君はロジカルだから

何度も何度も計算して

その度に苦悩して

絶対で出走してただろうけど

でもね

妹からの応援を受けたなら

きっと私は負けないよ

君の意地と私の夢

それが生んだ七センチ

それは希望と絶望の分かれ道

最後の輝くターフだった

 

 

 

 

 

最弱と呼ばれて暫くたって

君は善戦してたけど

私はダメダメで

いつの間にか"妹の姉"なんて呼ばれるようになって

本名を呼ばれることは少なくなったんだ

走ることも嫌になって

なにも楽しくなくなって

妹の皐月賞制覇も

素直に喜べなくって

そんな自分に嫌気がさして

ここから逃げ出そうとして

それでもそんな勇気もなくて

そんな勇気もない自分を攻めて

気を紛らすために走ろうとしても

足が動かなくって

いつのまにかずっと部屋にこもって

なにもする気持ちも起きなくて

ただテレビを眺めている

部屋に飾られているダービーレイとトロフィーは

ホコリに埋もれてしまってて

それを見るたびに

君があと七センチ速ければ

こんな思いも無かったのに

 

 

 

妹がケガをした

かなり重いケガで復帰できるかわからないらしい

なんでなんだろう

なんで未来有望で

三冠だけじゃなく

G1タイトルをいくつも取れそうな

そんな妹がケガをして

皆が悲しみながら

私にも矛先が向けられる

妹がケガをするのなら

未来もなくて

たまたま勝っただけのダービーで浮かれてた

私がケガをすれば良かったのに

そんな声も見えてくる

そんなことは

私が1番思ってる

私がダービーを取らなければ

君は三冠で

今よりずっといい評価で

妹も

私なんかの妹と呼ばれないで

ずっといい評価をもらってたはず

本当に

運命は残酷だ

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに外に出た

妹に誘われて

妹のトレーナーと三人で

トレセン学園を散歩した

妹の足に巻かれた包帯を見るたびに

私は代わりになれないことに怒りが沸く

俯きながら歩いていけば

君の声が聞こえてきた

久しぶりの楽しそうな声に

私は嬉しくなって

顔を上げてみれば

そこに君と王女様がいて

楽しそうに話す君の表情を

こちらに向けて欲しいのに

私に微笑んで欲しいのに

あぁ君は

もう手の届かない場所にいるということを

嫌でもわからされる

私は妹と妹のトレーナーの声も無視して

全力で部屋に逃げた

きっとこれからも

私の心には雨が降り続けて

君という光はいつまでも

私を照らすことはない




止まない雨はないけれど
晴れない空はいつまでも
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