重力少女のヒーローアカデミア 作:縞猫
ただでさえ見直しや添削や加筆修正が不十分なため、また原作ファン様の怒りを買うのは必定です。
けれど恐怖で執筆が進まないのに、投稿まで止めて未完にするよりは、多少強引でも終わらせたほうが良いと判断しました。
ここから先は原作の統合性等に今まで以上にガバがありますので、それでも構わない方はお読みいただければ幸いです。
相澤先生の説明を受けて、入学初日に個性把握テストが行われることになった。
肝心の授業内容だが言葉通りの意味に加えて、最下位は除籍処分という常識を疑うものだ。
緑谷君は中学一年生から体を鍛え続け、今では筋肉モリモリのマッチョマンである。
並の個性持ちよりは運動神経が良くても、この場に居るのは狭き門を潜り抜けたヒーロー候補生たちだ。
残念ながら彼がもっとも落とされる可能性が高く、私は口には出さないが友人の身を案じた。
しかしここで、入学試験で緑谷君を助けた優しい女の子が一歩前に出る。
厳つい担任を前にしても、怯まずに大声で訴えたのだ。
「最下位除籍って! 入学初日ですよ!
いやっ! 初日じゃなくても理不尽すぎる!」
けれど相澤先生は、話を聞く気はないようだ。
一切の動揺を見せずに、真面目な顔のまま口を開いた。
「自然災害、大事故、そして身勝手なヴィランたち。
何処から来るかわからない厄災、そういうピンチを覆していくのがヒーローだ」
テレビの向こうのヒーローたちは、困難に立ち向かって打ち破り、民衆の歓声を一身に浴びていた。
そんな華々しい活躍が連日報道されているが、アレは上澄み中の上澄みだ。
「放課後を待って、談笑したかったなら、お生憎。
これから三年間、雄英は全力で苦難を与え続ける」
確かに相澤先生の言うように、名門高校である雄英に入学した彼らは、これからトップヒーローを目指して必死に努力すべきだ。
それはわかるのだが、私の想像していた平穏なスクールライフが音を立てて崩れていく。
「さらに向こうへ。プルスウルトラさ。全力で乗り越えてこい!」
「「「おおっ!!!」」」
「……お~」
ヒーロー科の担任に発破をかけられた。
一年A組の生徒たちは若干の戸惑いはあるが、活力を漲らせている。
ただし自分は免許証の修得のためとは言え、何でこの場に居るのだろうと疑問に思う。
それでも空気を読んで、一応声を出しておいた。
「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」
取りあえずは相澤先生に言われた通り、一段階だけ抑制を解除しておく。
(完全抑制状態でも、本気なのは変わらない)
超重力下で全力を出せば、プロのアスリート並のパワーが出せる。
私としても修行になるので良いと思うのだが、担任の先生は認めなかった。
なので今は謎の輝く粒子が全身から漏れ出し、私の体格も二年程成長している。
現場の責任者に顔を向けると何も言わずに静かに頷いたことで、問題ないようだ。
けれど変身状態では、他の生徒と実力差があり過ぎる。
それにジャージは大きめサイズなので大丈夫だが、無駄にキラキラと輝いて目立つのだ。
ある程度は慣れているとはいえ注目されると恥ずかしく、とにかく今は雑念を振り払って個性把握テストに挑むのだった。
第一種目五十メートル走は、皆がそれぞれの個性を使って独自の走りを見せてくれた。
爆豪君は両手を爆発させて加速力を生みだし、緑谷君は普通にゴールまで走っていた。
他の生徒も名前は知らないが、頑張っているのは伝わってきた。
二人ずつ順番に測定していき、私は二十一人目の特例生徒だ。
どの種目も最後に測ることになる。
取りあえずスタートと同時に地面がえぐれる程の力で蹴り、さらには重力加速を乗せて一秒ピッタリを叩き出す。
一段回の解放で、ここまで真面目に測定したのは初めてだ。
他の生徒よりは上でも、自己の記録として速いか遅いのかは良くわからない。
けれど一年A組の生徒が褒めてくれたので、良い結果には違いないと納得しておく。
それはそれとして第二種目に進んだが、握力を測定すると五百キロほどだった。
普通に握ったので、これといった感想はない。
第三種目の立ち幅跳びは、個性を使えば何処までも飛んでいける。
第四種目の反復横跳びも抑制解除しているので、常人を越えた記録を叩き出した。
次の第五種目のボール投げだが、優しい女の子は無重力を使ってボールを投げて無限という記録を出した。
私も重力を操作できるが、視界から外れたり認識できなくなれば強制的に解除されてしまう。
それに1Gより下げることはできないため、同じように見えても全く別の個性だ。
やがて緑谷君の番になった。
彼は今まで特筆すべき記録を出せていない。
当人もこのままだと除籍処分になるかも知れないと感じているようで、かなり緊張していた。
無個性の彼がヒーロー科に合格したのは凄いけど、やはり個性の差を埋めるのは難しい。
数少ない友人として応援しているが、正直今からの逆転は厳しそうだ。
「緑谷君は、このままだと不味いぞ」
メガネの男子生徒が、緑谷君を心配するような発言をした。
私もそちらに目を向けると、爆豪君がすぐに口を開く。
「たりめえだ! 必死に食らいついてはいるが、デクは無個性だぞ!」
爆豪君が若干棘はあるが、彼を気遣う言葉を口にする。
「なっ! 無個性!? 彼が入試で何を成したか知らんのか!?」
「はぁ!?」
何をやったのかは私も知らないし、かなり気になる。
だがそれを尋ねる前に、白線の内側に入ったまま動きを止めている緑谷君が覚悟を決めた。
投げる素振りを見せたので、皆の注目がそちらに移る。
「くっ!」
唇をかみしめて、綺麗なフォームで全力投球したのは良かった。
しかしやはりと言うべきか、残念ながらあまり飛距離は伸びない。
「なっ!? 今、確かに使おうって!?」
青ざめた顔で自分の両手を見つめる彼に、相澤先生から淡々と声をかける。
「個性を消した」
気づくと担任の先生の瞳が赤くなり、炭素繊維に特殊合金を編み込んだ操縛布を展開していた。
あれはイレイザーヘッドがヴィランを捕らえるための戦闘フォームだ。
私も彼と共闘したことがあるので、何となく覚えていた。
「つくづくあの入試は、合理性に欠くよ」
相澤先生が緑谷君を真っ直ぐに見つめる。
そして、責めるような言葉をかけ続ける。
「お前のような奴も、入学できてしまう」
「個性を、消した?」
その瞬間に彼は何かに気づいたようで、驚きの声をあげる。
「あのゴーグル!? そうか! 見ただけで人の個性を抹消する個性!
抹消ヒーロー! イレイザーヘッド!」
寝袋で廊下に転がっていたときに、私はイレイザーヘッドと発言した。
けれど、どうやら聞こえていなかったようだ。
それに他の生徒が相澤先生のことを話しているが、知名度はかなり低いらしい。
「イレイザー? 俺知らない」
「聞いたことあるわ。アングラ系ヒーローよ」
私も取材は断ってるし、自分からヒーロー活動をしていない。
けれど何故か全国ニュースでバンバン放送されて、主人公として活躍する書物が出回り、世界的なベストセラーという有様で世も末である。
思わずヘルメットを被った現場の猫のように、どうしてと嘆きたくなる。
だが今は、それどころではない。
その辺りの事情は一旦置いておいて、イレイザーヘッドは緑谷君に話しかける。
「見たところ、個性が制御できないんだな。
また行動不能になって、誰かに助けてもらうつもりだったのか」
「そんなつもりじゃぁ!」
だが緑谷君は、それ以上喋ることはできなくなる。
相澤先生が伸ばした操縛布に捕まったのだ。
「どういうつもりでも、周りはそうせざるを得なくなるって話だ」
担任の目の前に緑谷君が引き寄せられ、教育的指導が続けられる。
「昔、暑苦しいヒーローが、大災害から一人で千人以上救い出すという伝説を作った」
これはオールマイトのことで、今でも特集が組まれて過去の事件が報道される。
それにさっきから校舎の影からこっちの様子を伺っているし、気づいているのは観察力に優れた相澤先生と、超感覚を持つ私だけのようだ。
当人は隠れているつもりだし、指摘すると面倒なことになるので気にせず黙っておくことにした。
「一人の少女が暴走する新幹線を素手で受け止め、停車させたこともあったな」
相澤先生だけでなく、他の生徒も一斉に私に視線を向ける。
だがあれは、止むに止まれぬ事情があったからだ。
放っておけば大惨事待ったなしだし、終わり良ければ全て良しである。
しかし恥ずかしくなって我関せずとそっぽを向くと、やがて空気を読んで話題が元に戻る。
「同じ蛮勇でも、お前は一人を助けて木偶の坊になるだけ。
緑谷君は唇を噛みしめて悔しそうに押し黙り、俯いてしまった。
続けて相澤先生は拘束を解除し、彼を自由にして背を向ける。
「お前の個性は戻した。ボール投げは二回だ。とっとと済ませろ」
元の場所に戻る相澤先生だが、ここで先程から羞恥心が限界の私が手を上げる。
「あの、相澤先生。私もいつも無茶をして、大勢の人に迷惑をかけている」
昔は超重力下での日常生活を送るのも苦労して、血反吐を吐いてぶっ倒れることが何度もあった。
それに一般人がヴィランと戦ったり、個性の使用するのも法律に抵触する。
つまり大勢の人に迷惑をかけているので、もう少し緑谷君に優してくしてくれても良いと思うのだ。
「それと、緑谷君が個性に目覚めたのは初耳。
今は制御が難しくても、今後は成長する可能性もある」
今の彼を昔の私に似ていることもあって、何とか許してもらえるように相澤先生に訴える。
するとしばらく考えたあとに、担任の先生は振り向きもせずに口を開く。
「性懲りもなく玉砕覚悟の全力か。はたまた萎縮して最下位に収まるか。
どっちに転んでも、ヒーローとしての見込みはない」
今のは誰に向けての返答なのかは良くわからないが、こちらの声が聞こえないとは思えない。
何にせよ相澤先生は、緑谷君を真っ直ぐ見つめたまま動かない。
自分に担任の説明は理解不能だったが、彼はこの発言を受けて何かに気づいたようだ。
覚悟を決めて呼吸を整え、再び全力投球を行う。
「スマーッシュッ!!!」
ボールは未だかつてないほどに遥か遠くへと飛んでいく。
そして、爆豪君の記録に並んだ。
「「「おおっ!!!」」」
周りの生徒から歓声があがり、今度は私も同じように驚く。
そして緑谷君だが、何故か痛そうな顔をしながら相澤先生に話しかける。
「先生! まだ、動けます!」
「……コイツ!」
良く見ると緑谷君は、中指が赤く腫れていた。
慣れない個性を使った反動だろうが、本人はまだやる気十分のようだ。
校舎の影のオールマイトも、嬉しそうにしている。
それは置いておいて、最下位の除籍処分を回避できるかはまだわからない。
私は相変わらず緑谷君のことを心配するが、雰囲気だけは何故か良い感じになったのであった。