重力少女のヒーローアカデミア 作:縞猫
USJでヴィラン連合と戦った私は、敵のボスらしき手付きの
さらに、平和の象徴を倒すために作られた脳無を相手に奮闘する。
自分は怪我もなく元気いっぱいだが、
後方支援に回ってもらって少しずつ回復はしているが、まだ前線に立つのは難しそうだ。
何にせよ互いに距離を取って仕切り直しになり、いよいよ第二ラウンドが始まろうとしていた。
だがその直前に、USJの正面ゲートが蹴破られる。
ナンバーワンヒーローであるオールマイトが、私たちの救援に来てくれたのだ。
彼は堂々とした立ち振る舞いで、こちらに歩いてきている。
「嫌な予感がして、校長のお話を振り切ってやって来たよ。
来る途中で、
良く見ると一年A組の生徒が入口付近に集まっている。
周囲には無力化されて、縛られている大勢のヴィランの姿があった。
きっと
13号先生と戦ったときに彼の個性を満たし、警戒されている。物量で押し切るほうが、勝率が高いと考えたのだろう。
結果、多少の怪我はあるが全員無事なようだ。
やはりヴィラン連合は質はともかく数が多いだけの烏合の衆であり、一年A組と13号先生で倒しきった。
「何が起きているか、あらましを聞いた」
そしてオールマイトは、一年A組の皆に声をかける。
さらに階段の直前で足を止め、ネクタイを破りながら叫ぶ。
「もう大丈夫! 私が来た!」
しかしその顔は笑顔ではなく、怒りが浮かんでいた。
むしろ嬉しそうなのは
「待ったよヒーロー。社会のゴミめ」
声もウキウキで、とても喜んでいるのは間違いない。
「あれが、オールマイト!」
「生で見るのは初めてだぜ!」
「迫力すげえ!」
「馬鹿野郎! 尻込みするなよ! アレを殺って俺たちが!」
残ったヴィランたちが噴水近くで騒いでいるが、彼らに喋れたのはそこまでだった。
次の瞬間にはオールマイトが高速で接近し、拳を叩き込む。
あっという間に、敵全員をノックダウンさせてしまう。
「相澤君、斥流少女。遅くなってすまない」
「謝らないでください。貴方らしくもない」
相澤先生が、相変わらず真面目な顔で返事をする。
私も何か言わないと不味いかと思い、率直な意見を口に出す。
「問題ない。私と相澤先生だけでも勝てた」
「はははっ、それは頼もしいな!」
直接戦って、肌で感じた事実を口にしたのだ。
あの程度のヴィランなら、二段階で何とかなる。
何にせよオールマイトの到着でこっちの勝率がさらに上がったのは間違いなく、気づけば
飛ばされた手を錯乱しながら拾い集め、一段落してこちらに顔を向ける。
「はっ、国家公認の暴力だ。流石に速いや。目で追えない。
けれど、思ったほどじゃない。
やはり本当の話だったのかな。弱ってるって話!」
取り付けた手の隙間から、
「きもっ!」
私は良くわからない気色悪さを感じ、思わず一歩下がる。
「斥流少女、大丈夫かね?」
「怖くはない。でも、生理的に無理!」
例えるならゴキブリとかそんな感じだ。手で触ったり近寄るのは嫌だが、ボコボコにするのに何の躊躇もない。
オールマイトが心配してくれたし、後方支援役の相澤先生は怖くはないのかと呆れた表情で呟いていた。
「自分よりも弱い相手を、恐れる必要はない」
「そりゃ、そうかも知れないがな」
私の発言を聞いた相澤先生が、複雑な顔で返事をする。
そして別に怖くはないものの、それとはと別の情報を伝えておく。
「脳の怪人はオールマイトに匹敵する力と、桁違いの耐久力を持っている」
「大丈夫!」
彼はいつも自信満々に笑うから、平和の象徴と呼ばれているのだ。
なお、私は
ここはナンバーワンヒーローに任せるのが良さそうだ。
私と相澤先生は超パワー同士の激突に巻き込まれたくないので、少しだけ離れてバックアップに専念することにする。
準備が整ったあとに、オールマイトが腕を十字に組んで
「カロライナァー! スマーッシュッ!」
左右の手刀で凄まじい速度のクロスチョップが放たれた。
直前になって脳無が
「マジで全然効いてないなあっ!」
そう言いつつも脳無の攻撃を避けて、今度は腹部に渾身の右ストレートを叩き込む。
だがそれでも効果が薄く、次は頭部に立て続けに拳を当てていく。
「顔面も効かないか!」
オールマイトは悔しそうに呟き、そのまま殴り合いに突入する。
「効かないのは、ショック吸収だからさ。
脳無にダメージを与えたいなら、ゆっくりと肉をえぐり取るとかのほうが効果的だ。
それをさせてくれるかは、別として」
先程から私の位置取りが悪いようで、脳無に重力操作をかけるにはオールマイトが邪魔になる。
さらに常に高速で動き回っているので、他の障害物に遮られることも多々あった。
いっそ高所に移動しようかと考えている間にも、彼らの戦いは激化していく。
「わざわざサンキュー! そういうことなら! やりやすい!」
オールマイトは何かを閃いたのか、脳無の背後に回って腰に手を伸ばしてバックドロップを仕掛ける。
すると、まるで大爆発でも起きたかのように衝撃が広がり、周囲の地面が大きくえぐれた。
「コンクリに深く突き立てて、動きを封じるつもりだったか?
それじゃ封じれないぜ。脳無はお前並みのパワーになってるんだから」
どうやらオールマイトを出し抜けて、余程嬉しいらしい。
そして黒い靄が地面に陥没したはずの脳無の上半身を、ナンバーワンヒーローの下方に出現させるだけでなく、脇腹に指をめり込ませて出血させる。
「ふふふっ、いいねえ。
今が不味い状態なのは明らかであり、私は隣の相澤先生に許可を取る。
その間にもヴィラン連合の作戦は刻一刻と進行していき、黒霧が自信満々に説明していた。
「目にも留まらぬ速度の貴方を、捕獲するのが脳無の役目!
そして、貴方の体が半端に留まった状態でゲートを閉じて、引きちぎるのは私の役目!」
しかしヴィラン連合の罠は自分が打ち破ったはずだが、オールマイトは私よりも弱い。
もしかしたら、本当に引きちぎられてしまうかも知れない。
何にせよ黙ってやられるのを見ている気はない。
相澤先生にあとのことは任せたので、私は真正面から突っ込んでナンバーワンヒーローを助けに行く。
「重力加速! 二倍!」
私は跳躍時に重力加速を使い、オールマイトに急速接近する。
「やはり来ましたか!」
だが、それは予想していたようだ。
「曲がれ!」
「ばっ、馬鹿な!?」
軌道を捻じ曲げると肉体に負荷がかかるが、超重力下で日常生活を送るよりは楽なものだ。
結果的に
「悪く思わないで!」
落下の勢いを殺しきれずに地面を大きくえぐってしまい、足元に無数の破片が散らばる。
けれど私はそれに素早く手を伸ばすと、瞬く間に一つに寄り集まった。
コンクリートを超圧縮し、鋭利な刃物が構築する。
「両腕もらったぁ!」
オールマイトの脇腹をえぐっている脳無の右腕を斬り落とし、さらに飛び越えた先で振り返りながら一撃を放つ。
ヴィランの左腕も綺麗に切断する。
そして自由になったナンバーワンヒーローの重力を逆転させ、素早くゲートから脱出させる。
「助かった! 斥流少女!」
「どう致しまして!」
地面に降り立つオールマイトは、私と一緒にその場から飛び退いて体勢を立て直す。
刃物は危険なのであまり持ち歩きたくないので、元の瓦礫へと戻して足元に散らばらせた。
「攻略された上に、全員ほぼ無傷。凄いなぁ。最近の子供は、恥ずかしくなってくるぜ」
何だかわからないが、
けれど声は淡々としているし、全然嬉しくない。
「脳無」
死柄木が指示すると、ゲートを通って両腕がなくなった脳無が平然と立ち上がる。
痛みを感じていないだけではなく、切断した先の肉が盛り上がって再生を始めた。
「何だ!? ショック吸収の個性ではないのか!」
「別に、それだけとは言ってないだろ。これは超再生だ」
心底おかしそうに笑いながら喋る死柄木である。
次に脳無を観察すると、確かにコイツはオールマイトの切り札だと理解した。
「脳無はお前の百パーセントにも、耐えられるよう改造されている。
超高性能サンドバッグ人形さ」
平和の象徴の攻撃に耐えられて、同等のパワーを持っていて超再生まであるのだ。
こんな怪物を相手に、勝ち目などあるはずがない。
けれど私は全く怖くはなく、あまり調子に乗られるのも癪なので不敵に笑ってやった。
「対オールマイトの脳無は、確かに凄い。
それでも、私たちは絶対に負けない!」
「斥流少女!」
そう言って、死柄木を真正面から睨みつける。
何故かオールマイトも先程よりも活力が漲っているし、後方支援の相澤先生もやる気十分だ。
だがそうは言ったものの、現実はこのまま戦うには大きな問題があった。
ナンバーワンヒーローは活動時間は、限界ギリギリだ。
今は気合でマッスルフォームを保たせている状態で、これ以上の無理をさせられない。
できればなるべく動かないか、短時間で勝負をつけるべきだろう。
オールマイトの様子を観察して、そのような結論を出した私は相澤先生に声をかける。
「相澤先生」
「何だ! 斥流!」
油断せずに、敵から決して目をそらさない。
そして後方に待機している相澤先生に、大声で指示を出す。
「
脳無の相手は、私がする!」
「ああ! 任せておけ!」
相澤先生は、まだ疲労が完全に完全に回復していない。
それでも頑張ってもらうのだ。私も負けていられない。
続いてオールマイトに声をかける。
「オールマイトは、頃合いを見計らってトドメの一撃をお願い!」
「もちろんだ! 斥流少女!
ナンバーワンヒーローとして、まだまだ若いヒーローには負けられないさ!」
別に自分はヒーローではないのだが、今は指摘する時間も惜しい。
その間に
けれど、そんなものをいちいち聞いてやるつもりはない。
私は選手交代とばかりにオールマイトよりも前に立ち、凄まじい勢いで突進してくる脳無を迎え撃つ。
相澤先生は死柄木と黒霧の二対一になるが、少しの間持ち堪えて欲しい。
私は気合を入れるために、心に思い浮かんだことを大声で叫ぶ。
「ヒーローとは! 常に! ピンチをぶち壊していくもの!」
脳無の攻撃を全ていなし、敵は頑丈なので手加減する必要がない。
殴るたびに周囲に凄まじい衝撃波が吹き荒れ、周囲の人や物を吹き飛ばしていった。
だがやがてショック吸収の限界を越えたのか、脳無の土手っ腹に重い一撃が入って相手の動きが止まる。
「オールマイト!」
「任せろ!」
頃合いを見計らった彼が、凄まじい速度で突っ込んできた。
そして、大きな叫び声をあげた。
「ヴィランよ! こんな言葉を知っている! さらに向こうへ!」
私もその隙を逃さず、空に向けて跳躍する。
今度は背後にいたオールマイトが力を溜めて、万全の状態で脳無の目の前に立った。
「プルスゥ! ウルトラァーッ!!!」
「重力加速! 三倍!」
隙だらけの脳無に、オールマイトが全力の一撃を繰り出す。
私も光り輝く粒子を放出しながら、お決まりの赤熱した高速の飛び蹴りを放った。
同時に必殺技を叩き込まれたことで、衝撃吸収の限界を完全に越えてしまったようだ。
USJの天井を突き破り、空の彼方へと吹き飛んでいく。
「やはり、衰えたな!
全盛期なら、斥流少女の助力なしでも、余裕だったのだが!」
舞い上がった土煙の向こうから姿を現したオールマイトは、清々しい笑顔で勝利宣言を行う。
私もナンバーワンヒーローを前面に押し出して、彼の正体をバラさずに手柄を譲れて満足である。
「さてと、ヴィラン。お互い、早めに決着つけたいね!」
オールマイトは
「チートが!」
確かに彼らにとっては、平和の象徴は理不尽極まりない存在だ。
しかし、ナンバーワンヒーローが居るおかげで日本は他国よりも治安が良い。
(でも、もしかしたら)
ヴィランにも桁外れに強い人物がいるかも知れないし、オールマイトと同じような悪のカリスマが存在したらとても困る。
(ヴィラン連合を裏で操ってる奴がいるのは、ほぼ間違いない)
奴らはそこまで賢くないし、衝動的に動いているように思える。
けれど雄英高校の襲撃事件を起こせたので、黒幕か協力者の存在が見え隠れしていた。
正体も実力も不明ではあり、もしも対峙したら絶対に勝てるとは言い切れない。
やはり自衛のために修行は続けるべきで、これからも頑張ろうと内心で気合を入れるのだった。