重力少女のヒーローアカデミア   作:縞猫

33 / 49
第ニ種目の準備

 第一種目の障害物競走が終わり、一年A組は殆ど上位に入っていた。

 普通科に編入する線引きは不明だが、取りあえず私は問題なしと見てよいだろう。

 

 うちのクラスは個性的ではあるが、基本的に皆が良い人だ。

 できれば全員揃って、次の学年に進みたいものである。

 

 だがまずは、私自身が進学するのが最優先だ。

 クラスメイトのことも気にかけるが、競技ではライバルとなる。

 少なくとも雄英体育祭が終わるまでは、向こうも自分のことをそう扱うだろうし、なかなか難しそうであった。

 

 

 

 そんなことを考えている間に、障害物競走に参加した一年生全員がゴールした。

 すると十八禁ヒーローのミッドナイトが競技場におりてきて、大画面での結果発表を行う。

 

「第一種目も、ようやく終わりね!」

 

 簡単にまとめると、私が一位で緑谷君が二位、続いて轟君が三位、爆豪君が四位だ。

 

 あとは良く知らない人が混じってくるので、省略する。

 だがやはりA組とB組のヒーロー科が、上位の殆どを独占していた。

 

「予選通過は上位四十三名、残念ながら落ちちゃった人も安心なさい。

 まだ見せ場は用意されてるわ」

 

 舞台の上で堂々と喋るミッドナイトだが、コスチュームが少々過激だし途中で舌舐めずりするのはどうかと思った。

 

「そして次からいよいよ本戦よ。ここからは取材陣も白熱してくるよ! 気張りなさい!」

 

 取りあえず本戦に出場すれば、ヒーロー科としては及第点でろう。

 普通科に落ちることはないなら、第二種目は上位を目指す必要はない。

 程々のところでリタイアしても良さそうだ。

 

 やがて正面のモニターに、新しい情報が映し出される。

 私やそれ以外の人たちも、疑問に思って首を傾げていた。

 

「騎馬戦?」

 

 騎馬戦は障害物競走と違って、何をやるのか良くわからない。

 

 すると、すぐにミッドナイトが簡潔に説明してくれた。

 参加者は二人から四人の騎馬を自由に作り、それ以外は大体普通の騎馬戦と同じルールだ。

 

 けれど違う点もあって、予選の順位に応じて各自にポイントが振り分けられる。

 例えば四十三位が百十ポイントで、一位上がるごとに五ずつ点数が増えていく。

 

 だが何故か、一位のみが一千万ポイントだ。

 つまり私を倒せば、たとえ最下位だろうと一発逆転できる。

 

 全員の視線が一斉に自分に集中した。

 しかし普段のマイペースさを発揮し、緊張はせずに苦笑しつつ頬を軽くかいてしまう。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう! 下剋上のサバイバルよ!」

 

 説明しているミッドナイトは、とても楽しそうだ。

 きっとSとかMとか、そういった趣味嗜好を持っているのだろう。

 

 注目を集めた私は別に嬉しくないし、焦ってもいなかった。

 どうやって乗り切ったものかと、足りない頭を捻って考えるだった。

 

 

 

 一千万ポイントもの大量得点を手に入れた。

 しかし結果的に、それを奪うために全員から狙われることになる。

 

 そして第二種目の騎馬戦を行うには、二人から四人のチームを組まないといけない。

 現時点ではトップだが集中攻撃を受けるのは確定なため、すんなり協力してくれるかはかなり怪しい。

 どう考えても大勢で囲んで棒で叩いたほうが、安全に楽してポイントが手に入る。

 

 私一人ならこの場の全員を返り討ちにできるけれど、予選の障害物競走と違ってここからは本戦だ。

 果たしてワンサイドゲームを許してくれるかどうか、ルール変更も有り得そうである。

 

 それに足切りラインを越えたので個人的には別に負けても良いが、相方と組む必要がある以上、勝ち残ることを前提に行動しなければいけない。

 

 

 

 とにかくミッドナイトがチーム編成を行うようにと指示して、皆がそれぞれ慌ただしく動き出す。

 けれど私は相変わらず、その場に留まったままだ。

 

 ウンウン唸りながら考え込んでいると、予選を突破した心操人使(しんそうひとし)君が心配そうに尋ねてくる。

 

「斥流さん、どうかしたのか?」

 

 私は現状を整理する良い機会だと思い、声をかけてきた彼に正直に伝える。

 

「私のせいで、ルールが変更される可能性について考えてた」

「そっ、そうか。大変だな

 

 話を聞いた心操(しんそう)君は、若干引きつった表情を浮かべている。

 けれどここで私は、各々に見せ場を用意しつつ騎馬戦を乗り切る作戦を思いついた。

 

心操(しんそう)君。私と騎馬を組んで欲しい」

「えっ!? おっ、俺は構わないが、いいのか?」

 

 私は静かに頷いて肯定すると、一年A組のクラスメイトが待ったとばかりに横から口を出してくる。

 

「斥流さん! 私たちと組むのではないのですか!」

八百万(やおよろず)さんたちは、別の人と組んで」

「何故ですの!」

 

 自分と組むと、その他全員から狙われるのだ。

 同じチームの人は苦労が絶えないし、怪我をする危険もあるだろう。

 

 私は皆を危険に晒すつもりはなくても、距離を取るのが普通である。

 けれど何故か、八百万(やおよろず)さんだけでなく、他のクラスメイトも若干怒りの表情を浮かべていた。

 

 何か気に障るようなこと言ったかなと戸惑うが、あいにく心当たりがない。

 だがとにかく私は、この場を誤魔化すために思いつきを口にする。

 

「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊していくもの」

「その言葉は! まさか!?

「そう、オールマイトの言葉」

 

 流石はヒーローを目指しているだけはある。

 オールマイトの名前を出すと一年A組たけではなく、聞いていた全員の動きを止まった。

 

「今回は私が、皆の越えるべき壁になる」

「まさか私たちと組まなかったのは! ヒーローとして成長を促すため!」

 

 心操(しんそう)君を勧誘したのは偶然で、二人以上は不要である。

 しかし正直に告げると、一年A組の皆を傷つけてしまう。

 

 それに自分の発言は、別に間違っていない。

 私とそれ以外の一年生には圧倒的な戦力差があり、現実に高い壁になっているのだ。

 

「わかりましたわ! 私たちは、斥流さんに全力で挑戦させていただきます!」

「うん、楽しみにしてる」

 

 焚きつけたのは八百万さんだけでない。一年A組の全員もだ。

 さらに何故かB組まで飛び火したようで、皆は気合十分なようである。

 

 けれど爆豪君や轟君のように、売り言葉に買い言葉ではない。

 あくまでスポーツマンシップに則り、正々堂々と戦おうという雰囲気になってくれた。

 

 なので、とにかく良しとするのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。