重力少女のヒーローアカデミア   作:縞猫

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第ニ種目の準備

 第一種目の障害物競走が終わり、一年A組は殆ど上位に入っていた。

 普通科に編入する線引きは不明だが、取りあえず私は問題なしと見てよいだろう。

 

 うちのクラスは個性的ではあるが、基本的に皆が良い人だ。

 できれば全員揃って、次の学年に進みたいものである。

 

 だがまずは、私自身が進学するのが最優先だ。

 クラスメイトのことも気にかけるが、競技ではライバルとなる。

 少なくとも雄英体育祭が終わるまでは、向こうも自分のことをそう扱うだろうし、なかなか難しそうであった。

 

 

 

 そんなことを考えている間に、障害物競走に参加した一年生全員がゴールした。

 すると十八禁ヒーローのミッドナイトが競技場におりてきて、大画面での結果発表を行う。

 

「第一種目も、ようやく終わりね!」

 

 簡単にまとめると、私が一位で緑谷君が二位、続いて轟君が三位、爆豪君が四位だ。

 

 あとは良く知らない人が混じってくるので、省略する。

 だがやはりA組とB組のヒーロー科が、上位の殆どを独占していた。

 

「予選通過は上位四十三名、残念ながら落ちちゃった人も安心なさい。

 まだ見せ場は用意されてるわ」

 

 舞台の上で堂々と喋るミッドナイトだが、コスチュームが少々過激だし途中で舌舐めずりするのはどうかと思った。

 

「そして次からいよいよ本戦よ。ここからは取材陣も白熱してくるよ! 気張りなさい!」

 

 取りあえず本戦に出場すれば、ヒーロー科としては及第点でろう。

 普通科に落ちることはないなら、第二種目は上位を目指す必要はない。

 程々のところでリタイアしても良さそうだ。

 

 やがて正面のモニターに、新しい情報が映し出される。

 私やそれ以外の人たちも、疑問に思って首を傾げていた。

 

「騎馬戦?」

 

 騎馬戦は障害物競走と違って、何をやるのか良くわからない。

 

 すると、すぐにミッドナイトが簡潔に説明してくれた。

 参加者は二人から四人の騎馬を自由に作り、それ以外は大体普通の騎馬戦と同じルールだ。

 

 けれど違う点もあって、予選の順位に応じて各自にポイントが振り分けられる。

 例えば四十三位が百十ポイントで、一位上がるごとに五ずつ点数が増えていく。

 

 だが何故か、一位のみが一千万ポイントだ。

 つまり私を倒せば、たとえ最下位だろうと一発逆転できる。

 

 全員の視線が一斉に自分に集中した。

 しかし普段のマイペースさを発揮し、緊張はせずに苦笑しつつ頬を軽くかいてしまう。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう! 下剋上のサバイバルよ!」

 

 説明しているミッドナイトは、とても楽しそうだ。

 きっとSとかMとか、そういった趣味嗜好を持っているのだろう。

 

 注目を集めた私は別に嬉しくないし、焦ってもいなかった。

 どうやって乗り切ったものかと、足りない頭を捻って考えるだった。

 

 

 

 一千万ポイントもの大量得点を手に入れた。

 しかし結果的に、それを奪うために全員から狙われることになる。

 

 そして第二種目の騎馬戦を行うには、二人から四人のチームを組まないといけない。

 現時点ではトップだが集中攻撃を受けるのは確定なため、すんなり協力してくれるかはかなり怪しい。

 どう考えても大勢で囲んで棒で叩いたほうが、安全に楽してポイントが手に入る。

 

 私一人ならこの場の全員を返り討ちにできるけれど、予選の障害物競走と違ってここからは本戦だ。

 果たしてワンサイドゲームを許してくれるかどうか、ルール変更も有り得そうである。

 

 それに足切りラインを越えたので個人的には別に負けても良いが、相方と組む必要がある以上、勝ち残ることを前提に行動しなければいけない。

 

 

 

 とにかくミッドナイトがチーム編成を行うようにと指示して、皆がそれぞれ慌ただしく動き出す。

 けれど私は相変わらず、その場に留まったままだ。

 

 ウンウン唸りながら考え込んでいると、予選を突破した心操人使(しんそうひとし)君が心配そうに尋ねてくる。

 

「斥流さん、どうかしたのか?」

 

 私は現状を整理する良い機会だと思い、声をかけてきた彼に正直に伝える。

 

「私のせいで、ルールが変更される可能性について考えてた」

「そっ、そうか。大変だな」

 

 話を聞いた心操(しんそう)君は、若干引きつった表情を浮かべている。

 けれどここで私は、各々に見せ場を用意しつつ騎馬戦を乗り切る作戦を思いついた。

 

「心操(しんそう)君。私と騎馬を組んで欲しい」

「えっ!? おっ、俺は構わないが、いいのか?」

 

 私は静かに頷いて肯定すると、一年A組のクラスメイトが待ったとばかりに横から口を出してくる。

 

「斥流さん! 私たちと組むのではないのですか!」

「八百万(やおよろず)さんたちは、別の人と組んで」

「何故ですの!」

 

 自分と組むと、その他全員から狙われるのだ。

 同じチームの人は苦労が絶えないし、怪我をする危険もあるだろう。

 

 私は皆を危険に晒すつもりはなくても、距離を取るのが普通である。

 けれど何故か、八百万(やおよろず)さんだけでなく、他のクラスメイトも若干怒りの表情を浮かべていた。

 

 何か気に障るようなこと言ったかなと戸惑うが、あいにく心当たりがない。

 だがとにかく私は、この場を誤魔化すために思いつきを口にする。

 

「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊していくもの」

「その言葉は! まさか!?」

「そう、オールマイトの言葉」

 

 流石はヒーローを目指しているだけはある。

 オールマイトの名前を出すと一年A組たけではなく、聞いていた全員の動きを止まった。

 

「今回は私が、皆の越えるべき壁になる」

「まさか私たちと組まなかったのは! ヒーローとして成長を促すため!」

 

 心操(しんそう)君を勧誘したのは偶然で、二人以上は不要である。

 しかし正直に告げると、一年A組の皆を傷つけてしまう。

 

 それに自分の発言は、別に間違っていない。

 私とそれ以外の一年生には圧倒的な戦力差があり、現実に高い壁になっているのだ。

 

「わかりましたわ! 私たちは、斥流さんに全力で挑戦させていただきます!」

「うん、楽しみにしてる」

 

 焚きつけたのは八百万さんだけでない。一年A組の全員もだ。

 さらに何故かB組まで飛び火したようで、皆は気合十分なようである。

 

 けれど爆豪君や轟君のように、売り言葉に買い言葉ではない。

 あくまでスポーツマンシップに則り、正々堂々と戦おうという雰囲気になってくれた。

 

 なので、とにかく良しとするのだった。

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