ライスシャワーはダークヒーローとなる   作:黒い平方四辺形

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ライスシャワーが闇落ちしてから光落ちします。
闇落ち期間はそんなに長くないです。


プロローグ
道の始まり


 

 

トレセン学園、春。

 

新年度となり、今年も大勢のウマ娘、トレーナーが増えていく。

その中に、ある一人のトレーナーが就任していた。

 

「今日から私もトレーナーね!頑張るぞ!」

 

ウマ娘の学校としては国内最高峰のトレセン学園。そこに就任できたことを誇りに思う。

 

「これからが楽しみね。でもまずは…私の担当ウマ娘を見つけないと」

 

就任からの流れは事務のたづなさんから伝えられていた。

新人トレーナーは当然担当ウマ娘がいないから、それを見つける必要がある。

手段としては自分で担当になってくれるウマ娘をスカウトして契約をする、

もしくは既に存在するチームやトレーナーの下に行き、

ともにウマ娘に指導をしながら、自身もトレーナーとしての指導を受けて学んでいく。

どちらを選んでもよいが自分の納得できる道を見つけることと、

期間は一か月を目安にするように、とのことだ。

 

「勉強はしてきたといっても私は新人だし、

どこかのチームに入って指導を受けた方がいいのかなあ」

 

でも…やっぱり自分だけの担当ウマ娘がいたらうれしいな。

期限はまだあるし、まずは自分で見つけてみよう。

 

 

 

放課後、授業を終えたウマ娘たちが赴くトレーニングコースを見に行く。

 

「わあ、みんな頑張ってる」

 

そこではいくつかのチームが練習しており、実力のあるウマ娘として、

知っている顔もちらほら見える。自分がトレセン学園に来たんだな、と強く実感する。

また、チームとは関係なく個人練習をしているウマ娘も見える。

この子たちも自分と同じで入りたての子なのかな。

初々しさを醸し出しながら、楽しそうに走っているようだ。

 

さらに、自分の周囲には数人のトレーナーがいた。

理由は当然自分と同じで、担当のスカウトやチームの行き先を探しているのだろう。

 

さすがにたった一日では決められないと思い、目に入った子を記憶しながら帰宅した。

みんな楽しそうでよかったな。あんな子たちと一緒に頑張れたら…。

 

明日からの熱意が、一層高まるトレーナーだった。

 

 

数日たち、ある程度の状況を把握出来てきた。

 

ウマ娘ならだれでも憧れるこのトレセン学園、

入学してきた子も誰かに憧れていることは珍しくない。

そういった子はたいてい最初から目標が決まっていて、

憧れの人と共に過ごすため同じチームに入るか、憧れの人と競うために別なチームに入るか。

どちらにせよ基本方針が決まっているのでスカウト対象にはなりえない。

トレーニングコースで個人練習をしている子は逆で、

現時点では行き先が決まっていないのがほとんど。

その中には入学してから時間は立っているものの、

色々な理由でトレーナーがついていないような子もいるようだ。

人目につくところで練習することで、自分を売り出すという意味もあるわけだ。

 

担当契約はお互いの合意があって初めて成立するので、

スカウトされた子は自分に合いそうな相手を選ぶことができる。

そういう意味では早い者勝ちではないが、

とはいえ契約をされればもうスカウトはできないので、急ぐに越したことはないだろう。

 

今日もまたコースを見に行く。気になる子が見つかったからだ。

 

「あの子、今日もトレーニングに来ているね。体幹もしっかりしているし、

フォームも綺麗。これは将来有望だわ」

 

初日から毎日見かけるウマ娘。同期のウマ娘の中では存在感が大きく目を引く存在だった。

どうやらトレーナーや既存チームからいくつかのスカウトを受けているようだ。

それでもここでトレーニングをしているのは、自分はまだ売り出し中だということだろう。

おそらく今のスカウト相手が不満というわけでもないだろうが、

もっと大きなチームから声がかかることもあるだろう。

貪欲に求めていく姿、この時点でも大きな成長を感じさせてくれる。

 

 

しかし、自分が今興味を持っているのはその子ではなかった。

その子の行うトレーニング。それに後ろからついていく小柄で黒髪の子。

彼女の名はライスシャワー。結婚式で行われる、祝福や幸福を願って行われる儀式の名前だ。

そのライスシャワーが自分の目を引いていた。

彼女は放課後に入った直後から姿を現し、学校が閉まるまでトレーニングを続けている。

トレーニング内容から感じる実力はそれほどでもないが、

スタミナと根性には光るものが見える。

 

そして何より、走るのが楽しそうだ。数時間のトレーニング、

自主トレだからか優しくないメニューのようだが、

トレーニングを終え、前日よりもわずかに成長した自分を確認し、笑顔を見せる。

そこから彼女の走りへの思いが感じられる。走ることが好きな子なんだろうな。

 

 

 

他のトレーナーがスピードの速い子や勢いのいい子を気にする中、

自分の興味はその一人にのみ集中していた。

朝も昼も夜もライスシャワーのことが頭に浮かぶ。

まるで恋した乙女のようだな、と笑ってしまう。

 

「これはもう…アタックするしかないね」

 

 

翌日、トレーニングを終えたライスシャワーの下に向かったトレーナー。

 

「ライスシャワーさん、ちょっといいですか?」

 

「え、えっと…トレーナーさん?ライスに何か用ですか?」

 

「はい。用事というのは他でもない…単刀直入に言いますね。

ライスシャワーさん、私の担当ウマ娘になってください!」

 

「えっ!た、担当ウマ娘に!?」

 

「この数日あなたを見ていて、とても光るものを感じました。

ずっとあなたのことが頭から離れなくて、一緒にやっていきたいと思ってました。

どうですか?どこかのチームに入る予定があったりしますか?」

 

「そ、それはないですけど…」

 

「それなら!どうですか!私と一緒に…!」

 

「あわわわ…」

 

詰め寄ってくるトレーナーの勢いにたじろぐライスシャワー。

 

「あっ!ご、ごめんなさい!私ったら興奮して…そうですよね。

ライスシャワーさんにもいろいろ考えがあるだろうし、

それに私は入ったばかりの新人トレーナー。

あまり頼りにならないかもしれませんね…

強引に迫ってごめんなさい」

 

「うぅ…ええと、頼りにならないわけじゃ…」

 

「それじゃあ担当に!?」

 

「んん…その…」

 

「じゃあ…だめですか!?」

 

「ひぃぃ…」

 

「ああああ、ごめんなさい、ついまた勢いが…。

すぐに決められなくて当然ですよね。でも、私の気持ちは伝えました。

今すぐじゃなくてもいいですから、お返事くださいね。待ってます」

 

そう伝え、その場を離れるトレーナー。

まるで愛の告白でもしたかような高揚感とドキドキだったが、実際似たようなものである。

気持ちは伝えた。あとは彼女がどう判断してくれるかだけだ。

 

 

「トレーナーさん…ライスのことをスカウトしてくれた…」

 

 

 

夜、寮に戻り思案するライスシャワー。

 

そこへルームメイトのゼンノロブロイが声をかけてきた。

 

「ライスさん、何か悩み事ですか?」

 

「ロブロイさん。あのね…」

 

 

「そうなんですか!トレーナーさんにスカウトを。返事はしたんですか?」

 

「ううん。すぐに答えられなくてもじもじしてたら、後でお返事聞かせてねって」

 

「そっか。ライスちゃんはどうしたいんですか?」

 

「ライスは……」

 

「ライスちゃんのことを気に入ってくれたなら、見る目がある人ですね。

でも新人トレーナーさんだから指導力に不安があるのかな?」

 

「そ、その不安は…今はしてないよ。いい人そうだったし、

トレーニングにしてもライスよりいっぱい勉強してる人だもんね」

 

「それならどうして迷ってるんですか?」

 

「……ライスは、人を不幸にしちゃう子だから。

ライスと一緒にいることで、あのトレーナーさんに不幸があったらいやだなって…」

 

「もう…ライスちゃんはまた自分のことををそういって。

そんなことないですよ!私は、ライスちゃんと一緒の部屋でとっても幸せだもん!」

 

「ロブロイさん…!」

 

「渋ってたら諦められてほかの子のところに行っちゃうかも。

お返事するなら早めにした方がいいですよ」

 

「うん。…そうだね!ライス、やってみる!」

 

 

 

翌朝、昨日のトレーナーの下に行くライスシャワー。

 

「あ!おはようライスシャワーさん!もしかして返事聞かせてくれるのかな?」

 

「あ、あのね…?ライス、みんなを不幸にする…だめな子なの。

でも…か、変われるように…がんばります!だから、これからよろしくお願いします!」

 

「やったあ!こちらこそよろしくお願いします!」

 

こうして、二人の物語は始まった。

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