天皇賞の翌日、トレーナーのもとに赴くライスシャワー。
「お姉さま」
「あ、ライス!お疲れ様…」
昨日はライスがかなり心にダメージを受けていたため、
普通にトレーナー室に来てくれたことに安堵するトレーナー。
だが、ライスシャワーの姿を見て驚く。
それは昨日のレース前と同じ…いや、それ以上に深く黒く沈んだ瞳と、そこに浮かんだ黒い炎。
何かはわからないが、昨日のレース以上の強い想いがあることが一目でわかる。
「お姉さま。ライス、もっともっと強くなりたい。
だからトレーニングメニュー考えてきたんだ。それを見てほしくて」
理由は気になるがひとまず普通に対応するトレーナー。内容を確認すると。
「メニュー考えてきたんだ?どれどれ…」パラパラ…
パラパラ…
パラッ
「なぁにこれぇ!?とんでもないハードスケジュールじゃない!?」
「強くなるためと思って精一杯考えたの」
「やりすぎだよ!この内容じゃ一日のトレーニング時間が30時間は欲しいよ!無理!駄目!」
「…お姉さまは、ライスに強くなってほしくないの?手伝ってくれないの?」
相変わらず炎を宿した眼で見つめてくる。
そうなのだ。ライスの性格は誰よりも知っている。
この状況、ライスに何を言ったところで絶対に自分を曲げたりしないだろう。
ここで私が拒否しても、おそらくは勝手に自分でやってしまう。それは危険だ。それならば…
「ふー…わかったよ、ライス。私もライスに強くなってほしいからね。
でもね、この内容はちょっと無理なスケジュールすぎるわ。
ハードな内容をこなす覚悟があるのなら、私がメニューを考えてあげる。
今貰った内容も極力叶えるように調整する。だから約束して、私の指示に従うことを。
もしもまだ足りないとか、軽くて不満とか思っても、絶対に自分でトレーニングしないこと。
わかった?」
「…うん。ありがとう、お姉さま。ライスはお姉さまのこと、信じてるから」
トレーナーは疑問を抱きつつも、ライスシャワーのサポートをする決意をした。
なぜこんなハードな内容を持ってきたのだろう?やはり昨日のことが影響しているのか?
ともかく自分が手綱を取ってやらねば。
それに、理由がなんであろうと、これからも走ってくれるのはうれしかった。
ハードに、だけど故障や事故を起こさぬように最大限の注意を払おう。
これからもライスの走りを、笑顔を見ていたいから。
それからのライスシャワーは快勝の連続だった。
日々行われる鬼のようなトレーニング内容、
レースの度に相手を研究し勝利のための作戦構築。
元々高かった実力は、精神と技術によって圧倒的なものとなり相手をねじ伏せていく。
「ライス、優勝おめでとう!」
「ありがとうお姉さま。次のレースでも勝てるよう頑張らなくちゃね」
「ライス、また勝ったね!かっこよかったよ!」
「うん。でも、もっともっと強くならなくちゃ」
「ライス、また勝てたね。すっごく強くなったね…!」
「まだまだ足りない…もっと、もっと、もっと…!」
「…ライス、おめでとう。レース、楽しかった?」
「え…?うーん。今は…とにかく勝ちたいって思ってるの。楽しむのはそのあとかな」
「また優勝、おめでとう。でもライス、まだ今のハードなトレーニングを続けるの?
もう十分強くなったよ。少し休んでもいいんじゃない?」
「ううん、もっと頑張りたい。もっと強くなりたい。だからお姉さま、ライスのこと応援してね」
「ライス、ウイニングライブはちょっと表情が硬かったかな。
ファンのみんなが喜んでくれるように、もっと自然な笑顔を出せるようにしよっか。
強くてかっこいいのもいいけど、楽しい気持ちもいっぱい出してこう!」
「ごめんなさい。ライス、うまく笑顔を見せられなかった?
今度はもっとうまく作れるように頑張るね」
レース後、対戦相手の悔しがる声が聞こえる。
「負けたぁ…」
「悔しい…!」
(悔しい…?悔しがられるってことは、ライスに勝つ気があったってこと。
やっぱりまだまだなんだね。もっともっと勝たなくちゃ…。ほかのみんなが、
ライスのバックダンサーになるのを普通だと思うようになるまで…勝たなくちゃ…)
「ライス…?どうかした?」
「あ、お姉さま!ライス勝ったよ。じゃあ、次だね」
「おめでとう…。うん、次も、頑張ろうね」
連勝を続ける輝かしい成績とは裏腹に、いつまでもライスシャワーの心は晴れなかった。
また勝てたけど…こんなところで満足してはいられない。
まだまだ、もっともっと、勝って勝って…勝ち続けなくちゃ。
ライスはヒーローになるんだ。
誰もがライスを認めて、誰もがライスを目標にして走るようになる世界。
そこに行けるまで、立ち止まってなんていられない。
ライスが壊した夢を、ライスが与える夢で塗りつぶせるようになるまで、
ライスは走り続けなくちゃいけないんだ。そうすればきっと、この胸のモヤも晴れるよね。
天皇賞のあの日、彼女の強い心に呼応するように、体には鬼が宿っていた。
だが今の彼女に宿る鬼は、果たしてどこに宿っているのであろうか。
あの天皇賞の日からしばらく経ったある日。
テイオーとマックイーンが会話をしていた。
「ねえ知ってるマックイーン?なんかさ、最近のライスすっごく調子よさそうじゃない?」
「ええ、いくつもGI勝利をしながら重賞レース7連勝だとか。
前から強いウマ娘でしたけど、ますますという感じですわね」
「走らないーって言ってた時は驚いたけどさ、
この様子じゃ、あのことは完全に吹っ切れたみたいだね。
あーあ。ボクもはやく足を治して勝負したいなー」
「焦りは禁物ですわよ。それではまた明日」
(ライスさん、活躍なさっているようでなによりです。でも次は負けませんからね)
天皇賞を思い出し、リベンジを改めて決意するマックイーン。
そんなことを考えながら歩いていると、通りがかるライスシャワーの姿が見えた。
「あら、ライスさん!ごきげんよう!」
「あ、マックイーンさん。お疲れ様」
「聞きましたわ、7連勝ですって?おめでとうございます!
もしよろしければ、お祝いも兼ねて週末に一緒にお出かけしません?
よさそうなスイーツバイキングのお店ができたそうなんですの」
「週末…。ありがとう、マックイーンさん。でもごめんね、トレーニングがあるんだ」
「あら…そうなんですの、残念ですわ。また今後お誘いしますね」
ライスシャワーがいい成績を出していることに嬉しくなる。
わたくしを負かした、わたくしのライバルなんですもの。ライスさんも強くあって欲しいですわ。
次の週。
(先週は予定が合わなくて残念でしたから、またライスさんを誘ってみましょう)
「ライスさん、おいしいケーキ屋さんを見つけましたの。今週のどこかで行きませんか?」
「楽しそうだね…。でもごめんね、トレーニングがあるから。また今度ね」
「そうですの…また誘いますわね」
次の週。
「ライスさん、今週の放課後に予定が空いてる日はございますか?」
「えっと…ごめんね。今週は埋まっちゃってるの」
「そうですの…わかりましたわ」
次の週。
「ライスさん、今週か来週に空いてる日は?」
「ごめんね」
「……」
「はあ……」
ベンチで一人、ため息をつくマックイーン。
「なーにおっきなため息ついてるのさ?」
「あら…テイオー。ごきげんよう」
「ん、お疲れー。元気なさそうに見えるけど何かあった?
リーダーのボクに相談してくれてもいいんだよ?」
「相談というほどでもありませんが…。最近ライスさんがつれないんですの」
「ライスが?」
「ええ。この前、彼女が7連勝した話をしたでしょう。
そのあとお会いしたので、お祝いもしたくてスイーツバイキングに誘ったんです。
その時は予定が合わないと断られてしまったんですが、
それならとまた後で何度か誘ってみたんです。
でもずっと断られてしまっていて…。もしかして、わたくし避けられているのでしょうか…」
耳をたらしながらしょんぼりと語るマックイーン。
「スイーツバイキングかあ…実はカロリー制限でもしてるのかもしれないよ?
だって別に嫌われることなんてしてないでしょ?」
「わたくし自身はしてないと思ってますが…。
でも、自分で気づかぬうちに何かしてしまったのかも…」
「そんなことないと思うけどなあ…じゃあさ、今度はボクが遊びに誘ってみるよ」
ライスシャワーのもとへ赴き、声をかけるテイオー。
「ねえライス、今月空いてる日ってなーい?遊園地のチケット何枚か貰ったからさ(※嘘)、
何人か誘って遊ぼうと思ってるんだ。ライスもどーお?」
「ライス、今月はトレーニングの予定がいっぱいだから…
誘ってくれてありがとう、でも他の人を誘ってね」
「そっか、残念。じゃあまた今度ね!」
「…というわけで、ボクが誘いに行って、時間を月単位にして、
食べ物関係じゃないところに誘ったけど無理でしたー。
つまりライスがつれないのはマックイーンのせいじゃないってこと!」
「そうですの…それは少し安心しましたわ。でも、どうしてしまったのでしょう?
考えてみるとこの頃のライスさん、笑顔を見かけませんわ。いつも険しい表情をしています。
テイオーにもトレーニングだからと言っていたようですが、
本当にそんなにトレーニングしてるのでしょうか?
何か悩みが合って、人と関わるのが嫌になってしまったのでは…」
「あれからも連勝が続いてるみたいだし、
本当にトレーニングに力を入れてるだけだと思うけどなあ…」
(ずいぶん気にしてるみたいだ。しょうがないな。一肌脱いであげるか!)
「それならマックイーン…ボクに任せなよ!」バサッ
「こ…この風はっ…!」
テーン…テレテッテッ テッテテーテー♪
U-R-A Cream and the school
また誰かが蹄鉄を鳴らす レースの予感 Welcome to Windy school
この
一人では届かない夢 キミとなら叶えられる Teio×McQ
U-R-A 2人の Body & Soul ひとつに
U-R-A 最高のパートナー 出逢う時
奇跡おこる ターフを捜せ
そこにウマがいなくちゃ バ場は空虚な箱さ
ボクらを繋いだ芝を止めたくない!
「この
ハードボイルドな名探偵、テイオーにお任せだよ!!」(2期11話のすがた)
「いつの間にそんな恰好を!?変な帽子まで被って…」
「変だなんてひどいなあ。
この帽子はカイチョーがボクに強いウマ娘になれって託してくれた帽子なんだよ?」ヨヨヨ…
「まあ、そうなんですの。わたくし、失礼なことを言ってしまいましたわ…」
「ごめん、嘘」
「なっ…なんなんですの!!」
「ごめんって!マックイーンは優しいから信じてくれるんだよねー」
「もう…」
「ま、任せておきなって。大船に乗った気持ちでいてよ!」
「あまり丈夫な船には思えませんが…まあ、そこまでいうのならお願いします」
「よし…調査開始だ!」
調査ファイル① ~ゼンノロブロイの証言~
「ライスさんの様子ですか?」
「うん、やっぱり同部屋の君に聞くのが一番かなって」
「そうですね…最近はすごくトレーニングをがんばっているみたいです。
私が起きたときにはもう朝練に出かけてるし、帰ってくるのも私が寝てからということが多くて。
顔を合わせることが最近少ないですね」
「そ、そんなにトレーニングしてるの?」
「ほとんど毎日みっちりとやってるみたいです。あ、でも日曜日はお休みの日みたいです。
と言っても、休息のためにマッサージを受けに行ったりしてるので、
部屋にいないことも多いんですけど」
「なるほどねー、じゃあもう一つ。
ロブロイの目から見て、最近のライスって楽しそうに見える?」
その質問はゼンノロブロイも気にしていたことと見え、動揺が見える。
「……」
「教えてほしいんだ。ボク、心配なんだよ。ライスのこと」
ゼンノロブロイは考える。
(ライスさんがあんな風になったのって…やっぱりあの天皇賞からだよね…。
それで、天皇賞の時に起こったことできっと何かが…)
「……そうですね。楽しそうか、と聞かれると…そうじゃないのかなって感じはあります。
見かけるときはいつも険しい顔をしています。前はかわいい笑顔を見せてくれていたのに…。
とはいえ嫌そうという風には見えませんでしたから、本当に楽しくないかはわかりません…
ごめんなさい、ルームメイトなのに何もわかってなくて」
「いやいや、話聞けて良かったよ!教えてくれてありがとう!」
調査ファイル② ~ミホノブルボンの証言~
「ブルボン!ちょっといい?」
「テイオーさん。なんでしょうか」
「実はね、ライスのことなんだけど。あの件以降二人は仲いいでしょ?
最近のライスの様子を教えてほしくてさ」
「最近のライスですか。天皇賞以来連勝続きで、とても調子が良いようですよ」
「あー、成績もそうなんだけどね、プライベートっていうか…
普段のライスの生活について知りたくて」
「プライベート。そうですね、最近はなかなかハードなトレーニングを行っているようです。
私でも驚くような量のようですよ。さすがはライスです。
そちらが忙しいのか、このごろは学校以外で会うことはほとんどありませんね」
「へえ、そうなんだ。ハードなトレーニングをね…。
ブルボンの目から見てさ、最近のライスの様子…表情とかどう思う?
そのトレーニングが嫌そうとか、苦しそうとか、そういうのないかな?」
「ライスの表情…少々お待ちください。データベースを検索します」
目を閉じ、記憶をたどるミホノブルボン。
彼女の脳内に存在する膨大な記憶は『本』という形で保存されており、
その本を保管する棚は『ミホノ本棚』と呼ばれる。
そして適切なキーワードで検索することにより奥底の記憶まで鮮明に引き出すことができるのだ。
「キーワードは『ライスシャワー』『最近』『表情』……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「閲覧を終了しました」
「ど、どうだった?」
「最近のライスは…」
「最近のライスは…?」
「相変わらずとても愛らしいです」
「ズコーッ!」
ブルボンがにこやかな表情で出した答えにずっこけるテイオー。
「どうしました?」
「か、可愛いのはわかるんだけどね。
表情から読み取れる感情っていうか…そういうのはどう?」
「感情ですか……少々お待ちください」
「うん」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……?」
首をかしげるブルボン。
(あっダメだ!ブルボンは無表情なタイプだから人の表情もよくわかってない!!!)
「ブルボンもよく知らないか…」
「力になれずすみません。あ、いえ、待ってください。
もう少し検索します。ライスの気持ちですね…」
少し前にライスとした会話を思い出すブルボン。
『ライス。また勝ったそうですね、おめでとうございます』
『ありがとう。ライス、ブルボンさんの目標になるような強い子に…強いヒーローになるからね』
『それでこそライスです、応援しています。ずっと私のヒーローでい続けてくださいね。
私ももうじき脚が治ります。またあなたと走れる日を楽しみにしていますよ』
『うん!ライスも楽しみにしてる!ライスも頑張るから、ブルボンさんも頑張ってね!』
今のライスシャワーにとって『人の目標となる』とは、
『勝たせるつもりはない』という拒絶に近い言葉である。
だが心から親愛するウマ娘のブルボンに対してだけは別であり、
純粋で優しい応援の気持ちを出せる唯一の相手であった。
一方で、ただ一人とはいえ態度を変えてしまうこと、
それは勝ち続けるというライスシャワーの目的と矛盾していることに気づいていない。
「検索完了しました。ライスはいつも真剣な表情をしていたと判断します。
テイオーさんと一緒にライスを励ましに行ったときにした話、覚えていますか?
先日も、ライスは私のヒーローであり続けるために頑張ると言ってくれました。
トレーニングも本気でやっていると思われます」
「そっか、ちゃんとやってるんだね。いろいろありがとね」
調査ファイル③ ~学園生活~
「学校にはちゃんと来てるんだよね。生活ぶりをしっかり見てみようかな」
授業を受けるライスシャワーを外から観察するテイオー。
教室には、席に座り黒板を見るライスシャワーの姿があった。
「真面目に受けているね。やっぱりライスは優等生…ん?」
よく観察すると、若干頭がふらついている。目も虚ろな感じがする。
授業に集中できていないのか?いや…これは…
「あれっ、もしかしてこれ半分寝てない!?」
右目は隠れているため見えないが、どうもそういう雰囲気がする。
そうか、隠れてる右目をつぶることで自然に脳の半分だけ眠ることができる!
なんて冷静で的確な休息方法なんだ…!
「なるほどね、授業中に眠ることで寝不足を解消しているってわけか。
これは今度ボクも真似してみて…」
そこで背後から声をかけられる。
「トウカイテイオーさん?」
「ヒッ」
「今は授業中ですよねぇ?それなのに、あなたは、こんなところで、
な に を や っ て い る ん で す か ぁ ?」
「ア、アハハ~…」
廊下を通りがかった先生に連行されるテイオーであった。
調査ファイル④ ~尾行作戦~
「ロブロイとブルボンの証言からすると本当にトレーニングしてるっぽいよね。
どんなことやってるんだろう、気になるなあ…こんな時は!」
木の枝を両手に携え、寮の前で待ち構えるテイオー。
(ロブロイが言うには、朝4時半にはトレーニングに行くらしい。
ならボクは4時に待っていれば見つけられるはず!尾行作戦、開始だ!)
~10分後~
「ウーン…モウタベラレナイヨー…」ムニャムニャ
テイオーは速攻で眠っていた。
4時20分ごろ、寮からライスシャワーが出てきた。
さらにそれを迎えに来たトレーナーの姿も見える。
「おはようライス。それじゃ行こうか」
「おはようお姉さま。今日もよろしくね」
「今日はまずスタミナのトレーニングからだね」
「うん…!もっともっと頑張らなくちゃ!」
寝ているテイオーの存在にも気づかず二人は立ち去って行く。
「もう食べら…フェ゙ア゚ッ!? あぇっ、ボク寝ちゃってた!?
あっ、ライスとライスのトレーナーさんだ!マテー!」
話し声と足音で目が覚め追いかけるも、もう手遅れ。
ライスシャワーはトレーナーの車に乗って移動されてしまったのであった。
「くうぅ~!今のボクじゃ走って追いかけるのは無理だ~!
名探偵ボク、痛恨のミス~!くっそー!尾行作戦終了!!」
「まあいいか…。とにかくトレーニングをがんばってるのは本当みたいだ」
調査内容をマックイーンに報告するテイオー。
「と、いうわけなんだ」
「何が『と、いうわけ』ですの!?前半はいいですが後半全然ダメじゃありませんか!」
「まあまあまあまあ…嘘じゃないのはわかったしいいじゃん!」
「それはそうですけど。では、なぜそこまで過酷なトレーニングをしているのでしょう?」
「うーん、ライスの事だから何か強い理由はあるはずだよね。
ブルボンやマックイーンのときだってそうだったし」
「でも今のライスさんは特に誰かを追いかけてる感じではありませんわね。
単に目標のレースがあるにしても、
すでにいくつもの勝利を手にしてるのですからこれというものは思いつきませんわ」
「ボクらには見えてない理由があるのかな。
ちゃんとトレーナーさんも一緒だったし何かあるはずだけどなあ」
「あ!もしかしてそれでは?」
「それって?」
「トレーナーさんです。ライスさんの意志ではなく、
トレーナーさんの指導に従ってるだけかもしれませんわ」
「ええー、トレーナーさんがあんなハードスケジュール組むかなあ?
あとでブルボンに聞いたんだけどさ、対マックイーンの時のハードトレーニングも、
ライスからの強い要望があったかららしいよ」
「誰が組んだのかはわかりませんが、
実際にトレーナーさんがついていてこれなんですからトレーナーさんの意志も必ず入ってますわ」
「んー、確かにそうだけどさ。あ、でもトレーナーさんの指導に従ってるから、
あんまり楽しくなさそうって考えると辻褄あうよね。嫌々従ってる、とかさ」
その一言を放った途端、マックイーンの雰囲気が変わる。
一目見てわかる。明らかに怒りを覚えている。ボク、なにか余計な事言っちゃった?
「……トレーナーさんがライスさんにハードなトレーニングを課して、笑顔を奪ったと?」
「そ、そこまで言ってないよ?
ライスだって硬い硬い鋼の意志もってるんだから嫌だったら従わないと思うよ!
ロブロイもブルボンも嫌そうには見えないって言ってたし!」
「そうでしょうか?トレーナーの指導というのは余程の事がないと拒否しないでしょう。
まして自分が走るのは人のためだと考えているライスさんは、
トレーナーさんの正しさを疑ったりしないのでは?」
「うー、そうかもだけどさあ…」
「そもそも前にライスさんが落ち込んでいた時、
トレーナーさんは一体何をやっていたのでしょう?
ウマ娘が走ることをやめる。そんな異常事態に彼女は何をしていたのでしょう?
ライスさんが立ち直ったのは、テイオーとブルボンさんのおかげだったでしょう?」
「あれは確かに…。なんでだろうね」
(そうか、マックイーンは元からライスのトレーナーに不信感を持ってるのか)
でも確かにそうだ。ライスの担当トレーナーはライス以外を担当していない。
もし唯一の担当ウマ娘が辞めてしまったら、誰もいなくなっちゃうじゃん。
マンツーマンで指導してるのに、メンタルケアもろくにできていないってことにもなるし。
それはトレーナーとしての資格があるのかな…?
「まあ、ここでわたくしたちが話しているだけでは何もわかりません。
知るには聞くしかないでしょう」
「聞く…ライスに?答えてくれるかなあ…」
「いいえ、今聞くべきなのはライスさんではありません。担当トレーナーさんの方です」
「そっち!?そっちこそ答えてくれるか怪しいと思うけど」
「実際に答えてくれなくても、反応を見ればある程度想像できますわ」
「そうか…そうだね。それにこの話をライスに直接聞くってのもちょっとあれだしねぇ。
聞きに行くなら日曜日がいいかな?ライスのトレーニングが休みの日らしいから、
多分ライスとトレーナーさんが一緒にいない日だと思う」
「では次の日曜日、行ってみましょう。
彼女のトレーナーさんのところに」
ここからのテイオーは感謝祭を越えて前向きになった後ですが、あそこのオールカマーでライスが敗北すると流れがおかしくなるし勝たせるとテイオーが絶望するのでライスは出走してないことにしました。
ちゃんとダブルジェット師匠が勝ってくれました。