ライスシャワーはダークヒーローとなる   作:黒い平方四辺形

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調子に乗って戦略を細かく説明してますが、素人なのでガバもあると思います。ご勘弁ください。
この世界ではこれが正しいのです。


譲れない願い

 

 

受け取ったライスシャワーのデータを見る沖野とテイオー。

見れば見るほどライスシャワーの実力を感じてくるのであった。

 

「最近すごい成績なのは理解していたが…この実力は圧巻だな。

全部のレースで危なげなく勝利しているぞ」

 

「すごいねライス。天皇賞の時もすごい集中力だったけど、

あれ以降のレースも全部同じくらいじゃん。これもう常に『領域』入ってんじゃない?」

 

「はっきり言ってライスシャワーの敵じゃないような相手しかいないレースもある。

だがそのレースでも全く同じ集中力だ…一切手を抜かず、油断もしない。

貪欲に勝利を求めて力を尽くしているようだな」

 

「マックイーンとのレースも間違いなくそう来るだろうね」

 

「ふむ…ちょっと気になるのは走り方かな。

レースを見ていると走り方がバラバラな感じがする。

同じ距離のレースでも、回によって距離ごとのタイムが違うな。

作戦も差しと先行、たまに逃げと色々やってるようだ」

 

「安定してない…ってことじゃないよね。ライスのことだし」

 

「理由に心当たりはあるからちょっと調べてみるわ。

わかったら伝えるから、テイオーはもうちょっと今のデータを調べてみてくれ」

 

「はーい。なんか凄いの見つけちゃうもんね!」

 

沖野が外へ行き、一人でライスシャワーのレースを研究するテイオー。

どのレースでも一点の迷いもないであろう、強く深い眼光。

相手を飲み込む漆黒のオーラ、勝利への渇望には目を奪われる。

あの可憐な姿からは想像できない、強い強いウマ娘であることを実感する。

 

(…ボクも勝負したいな)

 

まだ叶わぬと理解しつつ、自分も走りたい…と、つい思ってしまう。

 

(違う違う…今はボクのことじゃない。ライスとマックイーンのことを考えなくちゃ)

 

レースの様子をいくつも観て、さらにデータも確認していくテイオー。

するといくつか気になる点が見つかった。

 

「ん…?トレーナーはペースがバラバラだって言ってたけど、同じやつもあるね。

これとこれとこれ…3つかな。タイム自体は後のレースほどよくなってるけど、

全体の流れとしてはほとんど同じペース配分だ。きっと理由があるはず」

 

 

 

しばらく見ているうちに帰宅してきた沖野に声をかけられる。

 

「お疲れテイオー。ライスシャワーのスタイルが大体わかったぞー」

 

「すごいじゃんトレーナー!なになに?どんな感じ?」

 

「まずな、先のレース全体のデータを洗ってみたんだ。

俺が気になったレース、その時のライスシャワーは、

そのレースで一番強いと思われる相手を研究して

『相手のスタイルに対応した動き』をしていたようだ。

 

相手の得意な走りを調べ、それに打ち勝つための計算された走りをする。

成績を見るに、ライスシャワーが負ける要素がほぼないような相手でも徹底している。

どんな相手でも決して手を抜かないストイックなスタイルが彼女の強さだな…」

 

「ライスはさすがだなー。そうそう、ボクのほうも見てて気づいたんだけどさ、

この3つのレースは走りのペース配分がほとんど同じだったよ。

相手に合わせるスタイルならどうしてこれはそうなんだろう?」

 

「お、そのレースか。俺がさっき話した、『気になるレース』ではないやつだな。

そのレースは二番人気の仮想敵が『大逃げ』や『追い込み』を得意とするウマ娘だったんだ。

それら対しては同じタイプでもない限りは後ろについていくような戦法を取りにくい。

無理についていくよりも、自分の得意な走りを貫くことが対策になるわけだ…。

 

で、今言ってたよな、走りのペースが一定だったって。

でかしたぞテイオー、それがライスシャワーの『自分らしい走り』のはずだ。

誰かに対応した戦略的な走りではなく、自分の走りをする場合はその動きをする。

これが見つけたかった」

 

「ボクってばお手柄じゃん!

それを見つけたかったってことは、こっちがそれを研究するってこと?」

 

「その通りだ。ライスシャワーは芯の強いウマ娘だといったよな?

だから彼女は必ずその走りをする」

 

「待ってよ、さっきトレーナーが言ってたじゃん?ライスは相手に対応した走りをするってさ。

マックイーンは先行バだから天皇賞の時と同じで絶対研究して対策練ってくるでしょ?

自分の走りにはならないんじゃないの?」

 

「それが逆なんだな。『こちらを研究してくるからこそ』自分の走りをするはずだ」

 

「なにそれワケワカンナイヨー!もったいぶらずにわかりやすく言ってくれる!?」

 

「いうとも、だけどマックイーンにも一緒に説明するからあいつのところに行くぞ」

 

 

 

 

トレーニングを続けるマックイーンの元へ来た二人。

 

「あら二人とも、なにかわかりましたか?」

 

「おうよ、俺らで対ライスシャワー用戦略特化特別作戦を考え付いたから聞いてくれ」

 

「ボクまだその作戦の中身知らないんだけど」

 

「お前が最初に言い出したんだぞ?」

 

沖野が気を引き締めるように咳払いをした。

「おほん。説明の前に…くどいようだがもう一度確認するぞ。

マックイーン。今回のお前は『自分のスタイルを貫くこと』よりも『勝利』を優先する、

ということでいいんだな?」

 

「ええ。二言はありません」

 

「ならよし。対ライスシャワー用戦略特化特別作戦で最も重要なこと、それは…」

 

「「それは…?」」

 

「先行を捨て、追い込みをしてもらう」

 

「追い込み!?」

 

「理由はなんですの?」

 

「うん、これにはいくつかの意義がある。

まず前提として考えなければいけないことは、

ライスシャワーはこちらの事を必ず研究してくるであろうことだ」

 

「まあそうでしょうね。天皇賞の時はそれに敗れてしまった…」

天皇賞を思い返すマックイーン。ライスシャワー自身の強さもさることながら、

あの計算された動きでプレッシャーをかけられ冷静さを欠いてしまった。

 

「あの時はまさかあそこまでとは想像してなかったが…今回は違う。

今回は俺たちも知っている。ライスシャワーの強さと戦い方をな。

素の実力ももちろんだが、ライスシャワーは相手を研究しその対策をしてくるのが強みだ」

 

「そんで、なんでマックイーンに追い込みをさせるのさ?」

 

「そう、一つ目の理由だが…相手は必ずこちらを研究してくる。

だからあえて普段と違う作戦をとり、相手の研究をすかすことだ。

ライスシャワーは誰かを追っているとき、実力をフルに発揮できるウマ娘。

だからそれを不発にさせる」

 

「あーなるほどね。研究されるのは避けられないから、こっちからそれを回避するってわけだ」

 

しかしマックイーンが疑問を呈する。

「理由はわかりましたが、それで勝てるんですの?

わたくし、追い込みをしたことはほとんどありませんが…」

 

「そうだよね。急にスタイル変えて大丈夫なの?」

 

「まあ絶対と断言はできないが…勝算は大いにある。

まず追い込み自体のことだが、マックイーンも実は向いていないわけじゃない。

レース全体を把握する観察力、ウマ娘に進路を妨害されないように動きを調整できる判断力、

スタミナに余裕を持って走れる体力。

今度のレースは距離はマックイーンも得意とする中距離レース、

そして追い込みをしやすい最終直線の長さ。

好みとしてはあまり歓迎できないだろうが、いい条件がそろってるんだ」

 

「上手く走れるでしょうか?」

 

「テイオーには言ったが、ライスシャワーはおそらく純粋に自分が得意とする走りをする。

マックイーンはそれを知り、さらに直接動きを見ながら動けるから後の先を取れる。

有利な立場だ」

 

「うーん、でもライスって相手に合わせる都合上、どう動くかよくわからなくない?

もしかしたらライスも追い込みの位置に来るかもしれないよ」

 

「そこで理由二つ目だ。ライスシャワーは絶対にこちらの研究を行い、対策を練ってくる。

だがこちらの作戦でそれは不発。自分が考えていたプランが霧散した時、どうなると思う?」

 

「あ、それで動揺を誘うってわけ?」

 

「いんや。まあ多少の動揺はするだろうが、そんなので崩れるような甘い相手じゃないだろう。

だが、だからこそだ。強い奴なら考えていたプランを失ったときでも冷静に対応できる。

その時取るのは最も良いと思われる行動、すなわち他者に影響されない自分の走りになる」

 

「トレーナーが言ってたのはそれかあ。きっとそうだね、ライスの走りには迷いがない。

予定が崩れても自分の中の最適行動をとるってことか。

それで、あのデータでボクが見つけたライスの走り。

先行と差しの間くらいの立ち位置を保ちつつ、自分のペースを守った走り」

 

「なるほど…。ぶれることなく自分の走りをするのなら、こちらはそれを想定して動ける。

ぶれないライスさんという目印があれば、そこに向かうわたくしもやりやすくなると」

 

「その通り。そんで三つ目の理由が、後方にいると有利な走りをしやすい点だ。

このへんはお前たちももちろん知ってることだが、

誰かの後ろにつけばスリップストリームで走りやすくなる。

先行を基本とするゆえにあまり使ってこなかったマックイーンにとっては、

これを利用出来ればスタミナ温存に役立つだろう。

 

そして理由四つ目だ。

さっき『ライスシャワーは動揺しない』と言ったが、流石に全くしないわけでもないだろ。

プランが崩壊しただけならそれほどでもないだろうが、

マックイーンが後方を走っていればすぐに気づく。

自分が対策をしていた相手…強敵であるマックイーンが、

逆に『自分を観察している』という事実を。

 

さらに『観察と研究を得意とする自分が、全く相手の動きを読めない状況』になっている。

ここまで来るとさすがのライスシャワーにも揺さぶりをかけられると思う。

 

天皇賞でライスシャワーにやられたこと…

あの時あちらはスリップストリームの恩恵を減らしてでも、

あえてマックイーンに姿を見せることで揺さぶりをかけてきた。

こっちは逆だ。スリップストリームの恩恵を受け、

なおかつ一切姿を見せないことで揺さぶりをかける」

 

「アリですわね。ライスさんの厚みを突き崩す策…可能性は高いと思いますわ」

 

一通り作戦を聞き、テイオーが冷たい視線を送ってくる。

「納得したけど、やることがえげつないねトレーナー。

これつまりさ、マックイーンのデータをあげたのも、

わざわざ研究させといてそれを不発にするためなんでしょ?」

 

「やりましょう。勝つためになら構いませんわ」

 

「マックイーンも覚悟決まってるなあ…」

 

「おめーらが勝ちたいって言ってるから俺も頭ひねってんだよ!

それになあ、オレだって悔しかったんだ。

あの天皇賞…オレがもっとちゃんと指示できていれば、

マックイーンに三連覇をさせられたんじゃないかって…」

 

「それは言いっこなしですわ。わたくしが至らなかったのも原因なのですから」

 

「まあ…言っても仕方ない事ではあるけどな。

だが、今回の機会はマックイーンだけじゃない、このオレのリベンジでもある!

オレはマックイーンのトレーナーとして誇れる男になりたいんだ!

だから作戦負けしたままじゃいられない!」

 

「ふふ、頼りにしてますわ。わたくしは勝たねばなりません。

勝たなければ届くことはない。求めるものが手に入らない。

それならば勝つためにどんなことでも致します。

勝って初めてスタートラインに立てるのですから」

 

「そうだよね。…勝とう、マックイーン」

 

ライスシャワーにこだわる本当の理由を聞かされていない沖野も、

マックイーンの激しい熱意を感じ取っている。

(何かはわからんが…どうしてもライスシャワーに勝たなきゃいかん理由があるんだな。

一緒に越えよう、マックイーン)

 

 

 

 

 

 

ライスシャワーとそのトレーナーもマックイーンに勝つために対策を練っていく。

 

「もらったデータを見ても、マックイーンさんは最初の頃から常に先行か逃げで走っている。

今回もそれで来るとは思うけど、

前回のライスが全力で追いかけまわしたことを警戒してくる可能性はあるね」

 

「マックイーンさんがいつも通りの先行ならすぐ後ろにつくつもりだけど、

ライスを警戒して横か少し後ろついてくるようだったらどうしよう?」

 

「そしたら並走かな。

マックイーンさんの後ろにつきたいからと言ってわざわざ速度を下げたくはないし。

あんまり変な動きをしていると他の子が抜け出る可能性もあるからね」

 

「並走になったら、やっぱり少しずつ速度を上げていった方がいい?」

 

「そうね、速度を上げるのも少しずつなら一緒についてくると思うから、

そしたら先行の位置まで上がっていっていいと思うわ」

 

「わかった。そうしたらやっぱりスタミナ勝負になってくるね」

 

「ええ。天皇賞の時でもライスの方がスタミナは多かったはず。

あれよりさらに成長したあなたなら負けることはないよ」

 

「うん!それじゃあ、今日のトレーニングを始めるね」

 

 

 

 

 

 

 

チームスピカではマックイーンの方も方針が決まったことで、

作戦のために追い込み強化のトレーニングが始まった。

 

「さて、トレーニングコーチとして追い込みのスペシャリストをお呼びしたぞ」

 

「呼ばれて飛び出てパッパカパーン!スーパーウマドル、ゴルシちゃん、参☆上ッ!」ウィィィィン

そこで登場したのは三角帽をかぶりながら、

ゴルシちゃん号に乗ってやってきたゴールドシップだった。

 

「全然信用できないのが来たね!」

 

「チッチッチ…安心したまえテイオーくん。

話は聞いてるぜ…マックイーンはマジで勝ちたいんだってな。

だからアタシもマジマジの実の全身マジ娘としてやってきたってわけだ」

 

「その言動がすでに怪しさしか感じないんだけど?」

 

「よよよ…ひどいぜテイオー。なあ、マックイーンはアタシのこと信じてくれるよな?」

 

「ええ。信じますわ」

 

「ほらみなよマックイーンも…って、ええっ!?」

 

「ええっ!?」

 

マックイーンの返答に驚愕するテイオーとゴールドシップ。

 

「って、なんでゴルシも驚いてんのさ!?」

 

「わたくしは勝たねばなりません。そのためならば何でもします。

ゴールドシップさんとトレーナーさんがそう言うのでしたら信じますわ。

わずかな時間だって惜しいんですから」

 

「マックイーン…お前ってやつは…!

アタシも気合い入れてくからな!黄金の不沈艦に乗った気分でいろ!」

 

「っし、頼むぞゴルシ。追い込みの動きを教えてやってくれ」

 

「ああ、任せときな!でもちょっといいかトレーナー?」

 

「ん?なんだ?」

 

(マックイーンに追い込みを教えろとか言うから冗談だと思ってたのに…

ガチガチの実の全身ガチ娘になってるじゃねえか!最初から言ってくれよ!)

 

(最初からガチだって言っといただろボケナス!!!)

 

 

 

「いいかマックイーン!追い込みをするときに重要なのは位置取りとルート構築だ!

悪い位置にいると前が詰まって抜け出せなくなるからな!

周りの様子を見て、仕掛けるタイミングも考えながら走れよ!」

 

「ゴルシ…お前、そんなロジカルなアドバイスもできるんだな」

 

「真面目にやらねーとマックちゃんにミンチにされそうだからなー。

まあこのコンサル料はトレーナーに請求するからよろしくな!1ピーナツでいいぜ!」

 

「…め、飯を奢るくらいで勘弁してくれよ」

 

そういった途端、背後から声が聞こえてきた。

スぺシャルウィーク、ダイワスカーレット、ウオッカだ。

 

「わあ、ありがとうございます!楽しみです!」

「言ったわね、たっぷり奢ってもらうわよ」

「へへ、やる気が出て来たぜ」

 

「ちょい、お前らもかよ!?」

 

「手伝ってくれてるってんだからいーじゃん?」

 

「ぐおぉ…わかったよ!じゃあおめーら全力でサポート頼むぞ!!!

全員参加で模擬レースだ!!!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

トレーニングの休憩中、マックイーンが話し始めた。

 

「テイオー。少し聞いていただけますか?」

 

「ん?どしたのマックイーン?」

改まった話らしい、と感じてテイオーも改まる。

 

「ライスさんと戦った天皇賞。

あの時のわたくしはライスさんの事を愚かなウサギだと評価しました。

しかし実際は。彼女はウサギですが賢明で、わたくしの方が愚かなカメでした」

 

「ああ…言ってたねそんな事。ライスは強かったよ。

でもマックイーンも別に愚かってわけじゃないと思うけど」

 

「いいえ。わたくしが見ていたのはゴールではなく、ゴールで得る栄光でした。

だからライスさんがどれほどの覚悟を胸に勝負に挑んでいたのか、それが見えていなかった」

 

「見ていたのはゴールで得る栄光、か…」

 

「相手を見ていたウサギがあれほど強くなるなんて知りませんでした。

おばあ様の話は今も正しいと思っております。

でも、ウサギも愚かな者ばかりではなかったのですね」

 

「それならマックイーンも、賢いウサギになればいいよ」

 

「ええ。今わたくしの気持ちはあの時のライスさんと同じです。

強大なライバルを超えるために心血を捧げる挑戦者になります。

ライスさんに教えられた心で、ライスさんにリベンジを果たし。

あの時抱いた後悔を吹き飛ばし、そしてライスさんを救って見せます」

 

強い決意を語るマックイーン。

その姿にはあの時のライスシャワーのように、強く気高い魂が燃えていた。

 

「やっぱりカッコいいよ、マックイーンは」

 

マックイーンの姿を見て呟くテイオー。

ボクが目指す背中。キミはいつもそれを見せてくれるんだ。

そして…ライスが羨ましいよ。その熱意が、視線が、キミ一人に向けられているんだからね。

ボクの方に向いているのは、背中だけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして各々が魂を込めてトレーニングを重ねて行き…

ついに訪れたレース当日。

 

 

 

 

控室で待機するライスシャワーにトレーナーが声をかける。

 

「ライス、調子はどう?」

 

「大丈夫だよお姉さま。今日も全力で行くよ」

 

「よかった。それじゃ、いってらっしゃい。

……レース、楽しんできてね」

 

「うん。ライス、勝つからね。行ってきます」

 

楽しんで、と言うトレーナーと、勝つ、と答えるライスシャワー。

ライスシャワーは何も気にすることはなく控室を後にする。

 

 

「…勝つ、か。でも、私があなたに本当に求めているのは…」

 

 

 

 

 

 

 

こちらも控室で待機するマックイーンに声をかける沖野とテイオー。

 

「マックイーン、調子はどうだ?」

 

「問題ありません。このレースにわたくしの全てをぶつけます」

 

「よかった。それじゃ、いってらっしゃい。

…頼んだよ、マックイーン」

 

「ええ。勝ってきます、必ず」

 

「期待してるぞ。この日のために注いだ気持ちを、お前の力を見せてやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『本日行われるレース!今回も素晴らしい面々が参加しております!

ここで登場してきたのは僅差の二番人気、漆黒のステイヤー、ライスシャワー!!』

 

『ライスシャワーはこのところ絶好調ですからね。

現在重賞レースで9連勝中で、10連勝の大台に王手をかけています。期待できますよ』

 

『おっと、ここで来たのは!不動の一番人気、史上最強のステイヤー、メジロマックイーン!!』

 

『メジロマックイーンも成績がいいですよ。

前回ライスシャワーと争った天皇賞では惜しくも敗れましたが、

今回はそのリベンジを果たしたいところです』

 

 

 

 

 

 

 

 

「フー…」

 

地下バ道を歩きながら呼吸を整えるライスシャワー。

勝つ。自分はそのためだけにここにいるんだ。

勝利への執念を募らせ、意識を集中させていく。

 

と、そこにマックイーンが現れた。

 

「ライスさん」

 

「…マックイーンさん」

 

瞳に炎を湛えながらマックイーンの方へと振り向く。

 

(ライスさん、凄まじい気魄ですわ)

 

全身から放たれる漆黒のオーラが、あの時よりも激しく噴き出している。

天皇賞の時のような浮ついた気持でいたら、今回も確実に飲み込まれていただろう。

だが今回は違う。今回勝利を求める気持ちは、今のライスシャワーにだって負けやしない。

ライスシャワーに勝つ。自分はそのためにここに来たのだ。

 

「ライスさん。今回のレース、勝ちを譲るつもりはありません。

あなたを超えるために、全力で行きます」

 

「応援したいけど、ごめんねマックイーンさん。勝つのはライスだよ」

 

マックイーンを見つめるライスシャワーの瞳。

しかしそこに映っているのはライバルの姿ではない。

自分の勝利を邪魔する者に対する敵意の目だった。

 

マックイーンはそれを感じ取っていた。

ライスさん。かつてあなたを悲しませた、邪魔者に対する非難の視線。

そんな目をあなたが持ってしまっているのですね。

あなたの目に、わたくしは映っていないのですね。

 

そんなライスシャワーの姿を目の当たりにし、

マックイーンの胸に決意が漲った。

 

「…いい勝負をしましょう。お互い、悔いが残らないように」

 

「…そうだね」

 

 

 

 

 

『おっと、メジロマックイーンとライスシャワーが同時に登場です!』

 

『流石は人気ワンツーフィニッシュの二人ですね。顔に闘志が漲っています。

他のウマ娘は二人の迫力に押され気味のように見えます』

 

『自分の実力を出すことができれば十分勝利を狙えるウマ娘ばかりですからね。

他の子たちも二人に押されずに自分の走りをしていただきたいところです』

 

 

 

 

 

ゲート入りを果たしたライスシャワーとマックイーン。

各々が強い決意を込め、ゲートが開く瞬間を待っている。

 

 

お姉さま…ライスは勝つよ。ヒーローになるためには、こんなところで躓いていられない。

ライスとお姉さまの正しさを、もっともっと見せつけていかなくちゃ。

ライス以外の勝者なんていらない。

このレースも、次のレースも、その次も…負けるわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

テイオーとの約束、メジロ家の使命…それらはわたくしを強くしてくれました。

しかし今はそれらは置いてきました。今のわたくしが望むのは、ライスさん…あなたに勝つこと。

わたくしを倒したあなたを、わたくしが尊敬するあなたを、この脚で越えてゆくこと。

今のわたくしは、あの時のあなたと同じ…挑戦者ですわ。

 

 

 

 

 

『そろそろゲート入りが終わります。はたしてこのレース、勝つのはどのウマ娘なのか!

 

さあ各バ、一斉にスタート!!』

 

 

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