ライスシャワーはダークヒーローとなる   作:黒い平方四辺形

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今日の勝利の女神は

 

 

『全員ゲートから問題なく出られたようです。二番人気ライスシャワーは中団6、7番手の位置。

一番人気のメジロマックイーンは…おっとこれは!?』

 

『メジロマックイーン、後ろから3番目ほどの位置にいます。

先行バの彼女にはかなり珍しい位置です』

 

『特に目立った出遅れは起こっていないはずです。

走りにも違和感はありませんね、故障でもなさそうです。ということは…』

 

『これは作戦ということでしょう。メジロマックイーン、仕掛けてきましたね』

 

 

 

(よし、この位置!慣れて無い分少し違和感はありますが…走りやすい!

申し訳ありませんが勝つためです。前の方、わたくしの風よけになってもらいますわ!

そしてレース全体が、ライスさんの走りが見える!どうやら予想通りの動きですわね!)

 

 

(マックイーンさんがいない…!出遅れ…?いや、そんなことがあるとは思えない!

これはきっと何かの作戦だ。でもどんな作戦だろう?

いつも先行を走っているのに急にそんなに走り方を変えて上手く走れるの?

 

…いや、考えたってわからない。

勝つ気があるならそのうち必ず前に出てくる。それを待てばいい。

今はマックイーンさんの事は忘れよう。自分の走りに集中するんだ!

目印がなくたって、ライスはライスの走りで勝ってきたんだ!)

 

 

 

 

作戦通りの動きとなり、喜びの声をあげる沖野たち。

 

「よぉし!いいぞマックイーン!作戦通りだ!」

 

「ライスのあの走り、予想してた通りだ!うまくいったよ!」

 

 

 

 

一方で、ライスシャワーのトレーナーは作戦負けしたことに悔しさをにじませる。

 

「マックイーンさんがあんな位置に…!差しどころか追い込みですって!?

やられた、こっちの作戦を潰すために走りのスタイルそのものを変えるなんて!

勝負に出てるわね…!だけどうまくいくのかな?

付け焼刃の動き、慣れない動きは自滅の可能性も大きい…

それにライスは、標的がいない時だって勝ってきたんだから!」

 

 

その言葉に反応するかのように、マックイーンが想いを浮かべる。

 

(わたくしの今は付け焼刃などではありません。

トレーナーとテイオーが考えたトレーニングメニューで、ゴールドシップさんに鍛えられ、

スカーレットさん、ウオッカさん、スペシャルウィークさんらと共に…

何度も何度も特訓を繰り返して!

この勝負に勝つために備えてきたのですから!!)

 

 

 

マックイーンの狙いが読めないライスシャワーは、

自分の得意な走りを目指しつつもここからやるべき動きを、

忘れたくても意識せざるを得ないマックイーンへの対応を考える。

 

(マックイーンさん。まさかどこにいるかわからないくらい後ろに行くなんて。

ライスのことを後方から追いかけるつもり…?

でもそれなら予定通りスタミナ勝負にもっていくよ。このレースのペースはライスが作る!!)

 

 

 

『ライスシャワーがじわじわと順位を上げていきます!三番手の位置まで来ました!』

 

『ちょっとペースが速いように感じますね。

後方にいるメジロマックイーンのプレッシャーに押されているのかもしれません』

 

『注目のメジロマックイーンは相変わらず後方の位置取り!

どうやら前のウマ娘の後ろにつくことで風よけにしているようです!』

 

『こちらは誰かの後ろにつきつつ、隙あらば追い越すことでじわじわと順位を上げてますね。

風よけをしながらもライスシャワーとの距離を一定にキープしようとしているようです』

 

 

 

 

マックイーンを応援するチームスピカの面々。

 

「行け!マックイーンさん!」

「頑張ってくださーい!」

「勝ったらギガ盛りパフェ奢ってやるぞー!」

 

「さて、今のところ想定通りの展開だ…だが最後までうまくいけばいいが、

相手はあのライスシャワー。油断は一切できねえぞ…」

 

「油断…油断なんて今のマックイーンにはないよ。

油断も、慢心も、驕りも、全部置いてきた。

ただひたすら、勝つために、強くなるために、力を尽くしてきたんだからね!」

 

 

 

 

 

『さあ残り800mに差し掛かろうとするところ、順位はあまり変化がありません。

…おっと、最終コーナー前でメジロマックイーンが加速したぞ!

一人、二人、三人、どんどん追い抜いて行く、速い!

しかし、この位置からのスパートでスタミナは持つのでしょうか!?』

 

 

残り800mからのスパート、追込にしても早い仕掛けに周囲のウマ娘は対応しようもない。

真っ直ぐごぼう抜きをしていった。目標は当然ライスシャワーだ。

 

 

(来た…!この足音、マックイーンさんの足音だ…!)

 

(ライスさん…勝負です!!)

 

 

 

『残り600m!メジロマックイーンの勢いが止まらない!先行するライスシャワーへと迫る!

追いつくか、いやライスシャワーも加速したぞ!

その差は1バ身、二人が圧倒的な速さで集団から抜け出していく!』

 

 

 

(マックイーンさん、かなり速い…!このペースで最後まで持つの?ついてくのは危険?

でも先行させて、もし最後までバテなかったら差すのは無理!ここは合わせるしかない!)

 

(やはり合わせてきましたか…ですが。果たしてあなたは最後まで走り切れますか?)

 

 

ライスシャワー自身の得意な走りは、

残り400m程度の位置からスパートをかけ一気にゴールまで突き抜ける動きだった。

マックイーンという仮想敵を見失ってしまった今回は、

その流れを想定してペース配分をしていたが、

マックイーンに合わせるために残り600m地点からのスパートを開始せざるを得なかった。

 

 

 

『残り400m、飛び出した二人の独壇場だ!後続をぐんぐん引き離して突き抜けていく!

果たしてここから二人に追いつけるウマ娘はいるのでしょうか!?』

 

 

 

マックイーンの脳裏に過去の情景が浮かぶ。

天皇賞でライスシャワーと戦ったときのことを。

あの時、自分が前を走り、ライスシャワーが後ろを追いかけてきた。

そして今は真逆だ。追うものと追われる者、その立場が逆となっていた。

 

ライスさん、あなたは強い。

誰が相手でも油断も慢心もなくレースに臨むその姿、素晴らしいです。

しかし、あなたは過ちを犯している。かつてわたくしがしたことと同じ過ち、それは驕り。

勝つことを前提に考えているから勝利で得られるものにばかり気を取られ、

このレースそのものから目が逸れている。

 

天皇賞…あの時、勝利を求めるあなたの姿はとても美しかった。

挑戦者としての気高い魂が輝いていました。

しかし今はどうでしょう?勝利を求めるのは同じでも、今のあなたは敗北への恐怖がある。

かつての挑戦者としての魂は萎び、敗北に怯える臆病者です!

 

今のあなたの目にはわたくしは映っていますか?わたくしがどのような気持ちで、

どれほどのトレーニングを積んでこのレースに挑んでいるのか、わかっていますか?

勝利だけを、結果だけを求めているから、

相手を観察しても、研究しても、相手の本当の姿が見えていない!

 

ならば…今あなたと共に走っているわたくしを…

 

 

天まで駆け昇るわたくしの姿を、その目に焼き付けなさい!!!

 

 

 

その時、メジロマックイーンの瞳から青い稲妻が放たれた。

 

 

 

 

 

『メジロマックイーン、更に加速!完全に抜け出した!ライスシャワーを引き離していく!』

 

 

突き放すマックイーンの姿を見て、スピカのメンバーが叫ぶ。

「「「行けマックイーン!!そのままぶっちぎれ!!!」」」

 

 

引き離されるライスシャワーの姿を見て、トレーナーが叫ぶ。

「負けるなライス!頑張れ!!」

 

 

 

(っ、まだ速くなるの!?置いて行かれるわけにはいかない、ライスも…!)

 

前方のマックイーンに追いつくべく更なる加速をしようとしたライスシャワー。

しかし強いプレッシャーと、相手の作戦でわずかにペースを乱された走り。

それに対しマックイーンはほぼ想定通りの走りとスリップストリームで蓄えていた脚。

元々トップスピードが苦手だったライスシャワーには、

これ以上に速度を出すための脚は残されていなかった。

 

 

『ライスシャワー、必死に追いすがるが脚を使い果たしたか!?速度が上がらないぞ!

一方メジロマックイーン、脚色が衰える様子はない!さらに差を広げていく!残り100mだ!』

 

 

 

 

 

そんな…!負けるわけにはいかない!勝たなくちゃ!お姉さまのために、みんなのために!

ずっと頑張ってきた!勝つために、ヒーローになるために!

なのにどうして!足が動かない!届かない!このままじゃ…!

負けたくない!負けたくない…!!

 

「あ…あああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

マックイーンの後方からライスシャワーの慟哭が聞こえる。

 

ライスさん、あなたが教えてくれた勝利への執念。わたくしはそのおかげで強くなれたのです。

負けたことはどうしようもなく悔しい。ですが…負けて得ることだってあるのです。

 

わたくしも、テイオーやライスさんやイクノさん…たくさんのライバルがいたから。

あなたにもらった敗北が、わたくしをここまで強くしたのです。

 

ですからあなたももっと強くなってください。

そしてこれからも競い合いましょう。わたくしの大切なライバルとして…。

 

 

 

 

ただ1人、先頭を走るマックイーンの身体がゴール板を越えた。

 

 

 

 

『メジロマックイーン!メジロマックイーンだ!

最強のステイヤー対決を制したのは、メジロマックイーン!!』

 

 

 

「「「やったああああ!!!!」」」

待ち望んだマックイーンの勝利。

チームスピカの面々が、勝利の歓声を上げる。

 

 

そして起きてしまったライスシャワーの敗北。

トレーナーは肩を落とし、唇をかみしめる。

 

(ライス…!  負け…か。)

 

敗北の悔しさに包まれる。しかしすぐに顔をあげた。

ライスが勝っても、負けても、私がやることは決まっているんだから。

 

 

 

 

 

「うおおおー!」

「よくやったマックイーン!」

「マックイーン最高ー!」

「すごい勝負だったぞ!」

 

観客たちの声も会場中に響き渡っていた。

興奮と熱狂に包まれ、誰もが勝者へ祝福を送る。

 

 

「ハア…ハア…勝った…」

 

マックイーンは荒い呼吸を収めながら、勝利に浸る。

脳内を様々なものが巡る。勝ちたい理由はいろいろあった。

勝ちたい理由、負けたくない理由、支えてくれた人たち。

その色々な気持ちが混ざり合ってうまく言葉にならない。

でも今の自分の心を包む大きな気持ちが自然と出ていた。

 

「みなさん、ありがとうございます…!」

 

 

 

 

そして、ライスシャワーは。

 

 

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