レース当日。
「どうだマックイーン、調子のほどは」
沖野が出走前のマックイーンに声をかける。
「問題ありません。体に力が漲り、闘志が沸き立つこの感覚…
負ける気がしませんわ」
「これ以上ない仕上がりだな。やってやれマックイーン」
「いいねえ、絶好調って感じじゃん。じゃあ…頼んだよ」
テイオーも満足そうに言う。
「ええ、必ずや勝利を掴みとって見せますわ。
では、行ってまいります」
マックイーンは自信のある笑みを浮かべながら、控室を後にした。
『本日行われるレース、今回も素晴らしい面々が参加しております!
はたして勝つのはどのウマ娘なんでしょうか?』
『私のイチオシはライスシャワーですね。僅差で二番人気でしたがこのところ絶好調です。
現在はなんと重賞レースで9連勝中で、10連勝の大台に王手をかけています。期待できますよ』
『ありがとうございます!私のイチオシはやはり不動の一番人気、メジロマックイーンですね!』
『メジロマックイーンも成績がいいですからね。
名ステイヤーとしての実力を発揮してくれることでしょう。
前回ライスシャワーと争った天皇賞では惜しくも敗れましたが、
今回はそのリベンジを果たしたいところです』
ライスシャワーは、流れてくる実況の声を聴きながら思う。
ライスは結局二番人気だった。
マックイーンさんはこういうところでもライスの邪魔をするんだね。
でも、これは世間の人がまだライスのことを認めてくれる人ばかりじゃないということ。
結局は自分の力不足のせいでもある。
それならここでライスが勝てば、マックイーンさんを応援してた人もライスの方を見てくれる?
「フー…」
地下バ道を歩きながら呼吸を整えるライスシャワー。
勝つ。絶対に勝つ。誰にも自分を、お姉さまを否定させない。
勝利への執念を募らせ、意識を集中させていく。
と、そこにマックイーンが現れた。
「ライスさん」
「…マックイーンさん」
瞳に炎を湛えながらマックイーンの方へと振り向く。
(ライスさん、凄まじい気魄ですわ)
全身から放たれる漆黒のオーラが、あの時よりも激しく噴き出している。
天皇賞の時のような浮ついた気持でいたら、今回も確実に飲み込まれていただろう。
だが今回は違う。今回勝利を求める気持ちは、今のライスシャワーにだって負けやしない。
ライスシャワーに勝つ。自分はそのためにここに来たのだ。
「ライスさん。今回のレース、勝ちを譲るつもりはありません。
あなたを超えるために、全力で行きます」
「応援したいけど、ごめんねマックイーンさん。勝つのはライスだよ」
睨みつけるようにマックイーンを見つめるライスシャワーの瞳。
そこに映っているのはライバルの姿ではない。
自分の勝利を邪魔する者に対する激しい敵意の目だった。
マックイーンはそれを感じ取っていた。
ライスさん。かつてあなたを悲しませた、邪魔者に対する非難の視線。
そんな目をあなたが持ってしまっているのですね。
あなたの目に、わたくしは映っていないのですね。
そんなライスシャワーの姿を目の当たりにし、
マックイーンの胸に決意が漲った。
「…いい勝負をしましょう。お互い、悔いが残らないように」
「…そうだね」
『おっと、メジロマックイーンとライスシャワーが同時に登場です!
漆黒のステイヤー、ライスシャワー!
史上最強のステイヤー、メジロマックイーン!
二人ともこれ以上ない仕上がりです!』
『流石は人気ワンツーフィニッシュの二人ですね。顔に闘志が漲っています。
他のウマ娘は二人の迫力に押され気味のように見えます』
『他の子たちも二人に押されずに自分の走りをしていただきたいところですね』
お姉さま…ライスは勝つよ。ヒーローになるためには、こんなところで躓いていられない。
ライスとお姉さまの正しさを、もっともっと見せつけていかなくちゃ。
ライス以外の勝者なんていらない。誰にもライスたちを否定させない。
このレースも、次のレースも、その次も…負けるわけにはいかないんだ。
テイオーとの約束、メジロ家の使命…それらはわたくしを強くしてくれました。
しかし今はそれらは置いてきました。今のわたくしが望むのは、ライスさん…あなたに勝つこと。
わたくしを倒したあなたを、わたくしが尊敬するあなたを、この脚で越えてゆくこと。
そしてあなたの目を覚まさせて見せます。
今のわたくしは、あの時のあなたと同じ…挑戦者ですわ。
『そろそろゲート入りが終わります。はたしてこのレース、勝つのはどのウマ娘なのか!
さあ各バ、一斉にスタート!!』
『全員ゲートから問題なく出られましたね。一番人気のメジロマックイーンは先頭の三番手。
二番人気ライスシャワーは中団6、7番手の位置ですね』
『おっと、ライスシャワーが位置を詰めていきます。
どうやらメジロマックイーンの背後につこうとしているようですね』
『春の天皇賞と同じ動きですね。
しかし前回と同じ作戦、メジロマックイーンに通用するのでしょうか?』
(ライスさんは予想通り背後につく形。ですが今回はもうそれに気圧されたりはしませんわ。
わたくし自身の走りに徹底してきます!)
(マックイーンさんは予想通り先行の位置。ライスはそれについてく。
今回はぴったりと背後について、スリップストリームを体力を温存する)
マックイーンとライスシャワーは、共に相手の動きが予想通りであることを確認した。
これならば、と作戦も予定通り実行していく。
テイオーと沖野は予想通りの展開に安堵していた。
「予定通りの形になったね。やっぱりライスはマックイーンに張り付いてきた」
「天皇賞と同じだな。だが、あの時と違ってこちらも覚悟ができている。
前のようにプレッシャーに押されることはないはずだ」
しかし、マックイーンはほどなくして異変を感じ始めた。
(なんですの…?足が重く、息苦しい…!これはライスさんのプレッシャーですか?
いえ、そんなはず…そんなはずありません。
わたくしも、ライスさんと同じくらい強い覚悟でこのレースに臨んでいるのです…!
ならばなぜ…?)
マックイーンは一つ状況を見誤っていた。
前回のマックイーンは、ライスシャワーにとってあくまでライバル、
超えるための壁としての存在だった。
強烈なプレッシャーをかけてきたとはいえそこに悪感情は一切なかった。
だが今回は違う。ライバルでもない、単なる対戦相手でもない、
明確な敵として認定されていた。
ライスシャワーにとっては自分の道を邪魔し、自分よりも人気が高い相手。
必ず勝たねば、自分のすべてを失ってしまう。
勝利を求める感情が今までのどのレースよりも激しく昂り、
鍛え上げた肉体と一体となり全身から吹き荒れる。
ライスは勝つ。
ライスは勝つ。
ライスは勝つ。
この道は誰にも邪魔させない。
まだ英雄には程遠い。ここで負けたらもっと遠ざかってしまう。
誰であろうと、ライスの邪魔をする人は許さない!!!
ライスシャワーから放たれる漆黒のオーラ。
前は触れた者を食いちぎらんばかりの鋭さだったそれは、
今は触れた者すべてを縊り殺すように周囲を威圧するものになっていた。
マックイーンの走りを見ている沖野たちも、異変に気付く。
「なんだ…!?マックイーン、ペース自体は予定通りだが明らかに苦しそうな表情をしている…」
「まさか、またライスのプレッシャーにやられてるのかな?」
「あのマックイーンに限ってそんなこと…
だが、そうだとしたらどうにか意識を切り替えてもらわないとまずいぞ。
ただでさえ若干不利な条件なのに、そこで消耗していたら終盤バテちまう」
一方ライスシャワーのトレーナーは満足そうに眺める。
「いいわね、ライス。あなたの美しい走り…最高だわ。
そして予想通りのマックイーンさんの動き、『前回と同じ動き』と言いたいのはこっちの方だわ。
多少は何かを仕掛けてくると思っていたのだけれど…買いかぶりだったようね。
それならもう、あなたに負ける要素なんて全くないわね」
(ハア、ハア…信じられません、こんな重苦しい雰囲気…!
今のライスさんは、いったい何者なんですの!?)
(マックイーンさん…あなたの一挙一動がすべて見えるよ。
今のライスは菊花賞の時よりも冴えわたってるのを感じる。
どんな仕掛け方をしても、ライスは全部対応してみせる。
あなたが積み上げてきた『最強』の称号、ライスが貰っていく!!)
『今回のレースは全体的にペースが遅いように感じますね』
『そうですね。レースを率いていくメジロマックイーンが抑え目な動きだからでしょうか』
否。ペースが遅いのは事実だが、抑えているわけではない。
重苦しい空気が支配し、見た目以上の疲労がウマ娘たちを襲っていた。
ただし、ただ一人を除いて。
『レースも終盤に差し掛かる所、順位の変化は特にありません』
『全員がラストスパートに向けて脚を蓄えているように見えますね。
初めに仕掛けるのはどのウマ娘になるのでしょうか』
最終コーナーを終えると残り500m強の直線が来る。
いつもならラスト400m程度から全力スパートをするライスシャワーだったが、
今回はスタミナに余裕があった。
(今回のレースはみんなの動きがゆっくりだった。
それにマックイーンさんの後ろにつけてスタミナの消耗も少なくて済んだ。
これならいつもより早くスパートをかけられる!今、ここからっ!)
『おっと、最終コーナーが終わると同時にライスシャワーが仕掛けた!
そしてそれに反応するように先行するメジロマックイーンも加速しました!』
(ライスさん、来ましたか!コーナーを回ったとたんに来るとは、それだけ脚に余裕が?
わたくしも負けるわけにはいかない!)
(みんな邪魔だよ。ライスの前に人はいらない!)
『逃げるメジロマックイーン、追いかけるライスシャワー!
しかし二人の距離はどんどん縮まっていく!
残り300m、二人が横に並びました!!』
メジロマックイーンは猛然と上がってきたライスシャワーの姿を、
このレース中では初めて目にした。
猛々しく、荒々しく、それでいて静かで、決して揺るがない意思を感じる。
しかし、天皇賞で見た気高き挑戦者の姿とはかけ離れて見えた。
あの時はライスシャワーの美しさに目を奪われた。
だが今感じるのは美しさではなく畏怖の念だった。
ライスシャワーの美しい姿を認めつつも、それ以上に感じる怖れの心。
ああ、またあの時と同じです。
レース中だというのに、レースではなく対戦相手に意識を奪われるなんて。
わたくしはまた過ちを犯してしまったのですね。
勝利を求める気持ちはあなた以上だと思っておりました。しかし間違いだったようです。
あなたの勝利への執念は、前回よりも遥かに強くなっている。
あなたに挑む決意をしたこのわたくしをもってしても、遠く及ばないほどに。
ライスさん、あなたはいったいどこへ向かおうとしているのですか…?
『ライスシャワーかわした!
そのままメジロマックイーンを抜き去り、どんどん引き離していく!』
「ウッソでしょー!?負けるな、頑張れマックイーン!!」
「だめだ、マックイーンの表情、全然余裕がない。
最後までライスシャワーからのプレッシャーを撥ね退けられなかったか…!」
沖野たちは悔しそうな声を上げる。
「ああ…ライス、とても美しい走り。あのマックイーンさんをも置き去りにする最高の走り。
やはりあなたは、最強のヒーローなのね」
ライスシャワーのトレーナーは、ライスシャワーの圧倒的な走りに見惚れていた。
『強いぞ、強いぞライスシャワー!他の追随を許さない圧巻の走り!
あのメジロマックイーンでさえ敵わないのか!数バ身もの差をつけて、堂々のゴール!』
『最強のステイヤーと呼ばれるメジロマックイーンに対して、
これほど余裕の走りを見せつけるとは驚きです。
二人の勝負は天皇賞に続き、ライスシャワーの二連勝となるわけですね』
『最強は私だ、とでも言いたげな力強く圧倒的な走りでしたね!
これで重賞レースを10連勝、果たしてどこまで伸ばしていくのか末恐ろしく感じるほどです』
「すごいなライスシャワー」
「あのマックイーンに連勝か!」
「かっこよくて憧れちゃう!」
「マックイーンももっと頑張ってほしかったな。調子悪かったのかな」
「次のレースも楽しみだよ」
トレーナーは観客席から聞こえるライスシャワーへの声援に聞き入っていた。
マックイーンへの声援もあるものの、ほとんどはライスシャワーを称える声だ。
「ふふ、みんなライスのことを応援してくれているね」
天皇賞の時と同じで、一番人気のマックイーンさんを二番人気のライスが倒した。
それなのに今回はライスを称える声ばかりで、罵る言葉は全くない。
ライス、あなたは皆に認められてきているわ。これがあなたの努力で掴み取った世界。
これからもずっと続けていきましょう。
あなたが最高のウマ娘だと、すべての人が認めてくれるようになるまで。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」
マックイーンは肩で息をしながら確定板を見る。
ライスシャワーとの差は5バ身差。
最強のステイヤーとしての自信、メジロ家のウマ娘としての誇り、挑戦者として挑んだ覚悟。
それらをすべて打ち砕かれたような気がした。
レース前の調子もよく、本当ならば全力を出せたはずのレースだった。
それなのに、わたくしはどんな走りをしていたのでしょうか?
悔しい。何よりも、心で負けたことが悔しい。
プレッシャーに屈することなく、全力を引き出せていたならこうはならなかったかもしれない。
ライスさんを救いたいと思う心が足りていなかったのでしょうか。
それともそれが驕りであり、ゴールではなく相手を見ていたことが間違っていたのでしょうか。
まさか再び、心の在り方を教えてもらうだなんて、自分が情けない。
「うっ…ぐすっ…」
敗北に打ちひしがれ、涙を零すマックイーン。
客席に一礼をしたライスシャワーが傍を通りがかる。
しかし一瞥しただけでそのまま過ぎ去っていく。
その際に一言だけ呟いた。
「正しかったのは、ライスの方だったね。」
控室に戻ったマックイーンをスピカのメンバーが迎え入れた。
「お疲れ、マックイーン」「お疲れー」「お疲れ様」
「すまんなマックイーン、勝たせてやれなくて。
俺がもっといい作戦を指示できていればよかったんだが…」
沖野が頭を下げる。
「いえ、トレーナーは間違っておりませんでした。」
今回の敗北はわたくしの責……本当に情けないですわ」
「え、なんでさ?ボクらもうまくサポートできなかったんだから自分を責めないでよ」
「いいえ、自分が情けない。わたくしはライスさんに気圧されて動きが鈍ってしまったのです。
体の調子は良かったのに、全く実力を発揮できませんでした。
情けないし、申し訳ないのです。
ここまでいろいろサポートしてくださった皆さんに顔向けできません」
俯きながら拳を握るマックイーン。
ゴールドシップが答える。
「そんな気にすんなって、たかが1回負けただけだろ~?次勝てばいいじゃねえか。
あ、今回で2回目か?でもよ、2回でダメなら3回、3回でダメなら10回やりゃいいんだよ」
「そうそう、あんまり落ち込んでるとかっこ悪いぜ?
また次に向かってトレーニングしようぜ!俺も手伝うからさ」
とウオッカ。
「今回はアンタに同意ね。次よ次。
マックイーンだってこんなので折れるようなヤワなウマ娘じゃないでしょ?」
スカーレットも答える。
「……ありがとうございます、皆さん。ですが本当に悔しくてたまりません、私の心の弱さが…。
もしライスさんが逆の立場だったら、
わたくしがどれほどのプレッシャーをかけても怯むことなんてなかったはずです。
わたくしは負けてしまったのです…。
正しいのはわたくしだと大見得も切っておいてこれですわ。
わたくしは間違っていたのですね…」
「あー、大見得ってライスに宣戦布告してきたってやつか?
なら、それこそ次勝って本当のことにしてやろうぜ!」
ゴールドシップはそう言いマックイーンの肩を叩いた。
「そうだよ、今回はライスが勝ったけどさ、
別にマックイーンやボクたちが間違ってるってわけじゃないよ。
勝っても間違ってることもあれば、負けても正しいことだってあるはずさ。
勝ち負けだけで語ろうだなんてナンセンス!」
「……『勝った方が正しい』と言いだしたのはテイオーですのよ?」
マックイーンがジトっとした視線を向ける。
「え?そうだっけ…!?」
「……」
「………」
「…………」
「次勝てばヨシ!」
テイオーは目を背けながら言った。
「こいつ言い訳すら思いつかなくてごまかしやがったぜ」
「ははっ、テイオーらしいな」
「いやいやいや!ボ、ボクは日々成長してるから考えが変わることだってあるのさ!」
「その適当なのもテイオーっぽいわね」
「みんな辛辣だよ~!」
「ふふっ、でもそうですわね。負けたことに縛られていても意味はありませんもの。
次こそライスさんに勝つためにもっと努力しますわ。
正しいとか正しくないとかじゃない、わたくし自身が勝ちたいと思っているのですから」
「おし、その意気だ!俺もこれまで以上にサポートする!
次こそライスシャワーにリベンジするぞ!」
「はい。これからもよろしくお願い致します、みなさん」
ライスシャワーのことを控室で迎え入れるトレーナー。
「おかえり、ライス」
「ただいま、お姉さま」
「レースとても素晴らしかったわ。美しいフォーム、
力強い走り、観客のみんながあなたに見惚れていたわ。
あなたは最高のウマ娘よ」
「ありがとうお姉さま。
それにマックイーンさんも頑張っていはいたけど、結果がすべてだもんね。
やっぱり正しかったのはライスとお姉さまだったんだ」
「そうね、ライスが勝ってくれたからそれを証明できたわ。ありがとうライス。
これからも勝ち続けて、ライスの正しさを世界中の人に認めさせてやりましょう」
「うん、そうだね。世界中に認めさせてあげるよ」
(お姉さまの正しさを、ね。)
マックイーンとの再戦に完勝したライスシャワー。
最強のステイヤーと名高いマックイーンを再び破った事実は、
ライスシャワーの自信と勝利への執着をさらに高めた。
ライスシャワーは何回だって勝ち進める。勝利のその先にある目標へ辿り着くために。
近頃、ライスシャワーは自分の評判を調べるようになっていた。
自分が求めるところに向かうには必要な情報だったからだ。
勝ち続けることを決意したあの日から、
たとえ何をどういわれようと怯むことはないほど硬い精神となったのだ。
今回はマックイーンとの対決について調べてみると、
『ライスシャワー強すぎ!』
『ライスシャワーカッコいい!』
『ライスシャワーに憧れちゃう!』
『ライスシャワーの次も楽しみ!』
自分への称賛の声ばかりで満足感が芽生える。
ライスはヒーローになれてきているんだ。
これからも絶対に負けられない…。
そう思いながら見ていた評価の中に、マックイーンへの声もいくつか見えた。
『ライスシャワーはすごかったけど、マックイーンはパッとしなかったな。期待外れ』
『熱い勝負を期待してたからガッカリ。マックイーンは全然ダメだったな』
『マックイーン推しだったけどライスシャワーに推し変しちゃった!ライスシャワー大好き!』
『マックイーン陥落!よっしゃ、最強ステイヤーの座はライスシャワーの物だ!』
これ以外にも、ライスシャワーを称えてマックイーンを貶す意見が数多くあった。
それを見たライスシャワーに想定していなかった感情が芽生える。
「…なに、これ」
マックイーンさんはライスの邪魔をする敵だった。
正しいのはライスで、間違っていたのはマックイーンさんだった。
だけど、マックイーンさんも精いっぱい頑張っていた。
間違ってはいたけど、いっぱい頑張っていたんだ。
それなのに何?この言われようは?
ライスは二番人気だった。マックイーンさんが一番人気だった。
なのにどうしてこの人たちはマックイーンさんを悪く言っているの?
菊花賞や天皇賞の時とは真逆の状態。あの時はライスが勝ったのに、
負けたブルボンさんやマックイーンさんを応援していた人たちはライスのことなんて眼中になく、
負けたブルボンさんやマックイーンさんを応援し続けていた。
それが悔しくて悲しくて、ファンをライスの物にすべく努力してきた。
今回だってマックイーンさんのファンを奪ってやろうと思って勝負に挑んだんだ。
そしてそれが実り今この状態になっている。
満足すべき状況のはずなのに、なんだろうこのおぞましさは?
実際にそうなってみて初めて分かった。この人たちはファンじゃないんだ。
ただ強いウマ娘が好きなだけだったんだ。
あの時ライスが本当に欲しかったのは、ライスを応援してくれる人じゃなくて、
勝ったのが応援してるウマ娘じゃなくても称えられるような人だったんだ。
ブルボンさんのファンでいい。マックイーンさんのファンでいい。その他の子のファンでいい。
ライスのファンじゃなくていいから、ただライスのことを認めてほしかっただけだったんだ。
だけど現実はどうだろう?この人たちは単に勝った人を称えるのではなく、
好きなウマ娘なら負けても称えるのでもなく、
ただその時目立っていたウマ娘に靡いていくだけの存在らしい。
ライスは元々みんなから愛されていなかったから、
私の場合は勝ち続けた結果だけが認めてもらえると思っていた。
でもみんなに愛されているマックイーンさんでさえもこうなってしまうなんて。
なにこれ?ライスはこんな人たちのために頑張っていたの?
こんな人たちのために?
…マックイーンさんは間違っていて、正しいのはライスのはずだった。
マックイーンさんは敵で、ライスがヒーローのはずだった。
だけどちょっと違ったんだね。
マックイーンさんは間違っているけど、ライスも全部が正しいわけじゃなかった。
ライスはヒーローだけど、マックイーンさんは敵ではなかった。
マックイーンさんも被害者だったんだ。
ライスと同じ、観客たちに振り回される同じウマ娘の一人だったんだ。
それならウマ娘はみんな敵じゃなくて…仲間だったのかもしれない。
これまでに向けてきた敵意は、ずいぶん失礼な事をしてしまったなと反省する。
前にお姉さまが言っていたっけ、相手に敬意を持てと。
ごめんなさいお姉さま、これからは敬意を持って走るね。
「ウマ娘」に対しては。
逆に観客の人たちは汚らしい存在だと知ってしまった。
だけどこの人たちを無視することはできないんだよね。
レースをただ見ているだけの立場なのに、
何千何万という数がいて数の暴力で私たちウマ娘に干渉してくるんだ。
ライスはヒーローになる、それは変わらない。だけど認識を変えなくては。
お姉さまを認めさせる必要のある相手はこんな人たちだった。
だったらこれまで以上にヒーローらしくならなくては。
観客が望むヒーロー像、それを示せるようなウマ娘にならなくては。
ライスはヒーロー。私はヒーローになるんだ。
だからヒーローとしてふさわしい振る舞いをしていかなくてはならない。
私はライスシャワー、皆の望むヒーローになるんだ…!
ここのライスはたぶん圧迫感・八方にらみ・束縛・熱いまなざしとか使ってます。
オーラはアニメでは何人かそれっぽいの出してたから気軽に使ってますが、
ゲームでもスーパーミークが纏ってたので完全に公式ですね!
マックイーンは本編と違ってお姉さまの意思を継承してなかったので精神的にだいぶ弱くなりました。