七武海ですが麦わらの一味に入れますか?   作:赤坂緑語

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今回のキリア君は結構真面目です。



憧れは止められないですよね?

時は再びキリアとヤマトの出会い後まで移る――

 

「クソ親父め……空からキリアのことを探すつもりだな……良し! キリア、こっちへ来てくれ。今は一先ず隠れることを優先しよう!」

「お、おう。分かった」

 

青龍と化したカイドウを見たおでんはそう言って俺の手を引いて駆け出した。

 

確かに彼の言う通り、今船を奪えば間違いなくカイドウに見つかってしまうだろう。

俺はおでんに案内してもらって鬼ヶ島の中にある彼の隠れ家的なところに匿ってもらうことになった。

まぁ、隠れ家といっても岩場を無理やり貫いて作った洞穴のようなものだが。

 

「ごめんね、狭くて」

「いやいや、こうして隠れる場所を提供してもらえるだけでもありがたいよ。寧ろ、君の方は大丈夫なのかおでん?」

「僕の心配をしてくるのか? 優しいんだな、キリアは。……心配ないよ。僕は腐ってもカイドウの息子だからね。仮に見つかったとしてもある程度言い訳はつく。今は君の命の方が大事だ」

 

真っすぐな瞳でそう言ってくれるおでん。

なんて……なんていい奴なんだ……。

 

「ありがとう……おでん。この恩は一生忘れない」

「……大丈夫だ。僕も昔、同じように恩を受けたことがある。だから気にしないでくれ」

 

そう言って親切なおでんは食べ物まで提供してくれた。

つくづくありがたい……。

ちなみにおでんが先ほど宴会会場にいたのは食べ物を盗むためだったらしく、幾つか酒もくすねてきていた。

 

「ぷはー! どう? キリアも飲むかい?」

「いや……暫く酒は止めておくよ」

「えぇ? またあの酔っぱらった君を見たかったんだけどなぁ」

 

ニヤニヤと笑うおでん。

よっぽど酔っぱらった状態の俺を気に入ったらしい。

 

「なんか、とんでもないことを言った記憶は思い出したんだが、やっぱり全部は思い出せないなぁ……」

「思っていたより脳へのダメージが深刻だったのかもしれないね……」

「……正直知りたくはないんだが、どんな感じだったか教えてくれないか?」

「いいよ! では、この僕が君の大立ち回りを再現するとしよう! まず、いきなりクソ親父に啖呵を切った君は――」

 

そうして始まったおでんによる俺のやらかし解説。

 

彼の熱演込みで語られる暴挙の数々。

これまで散々カイドウに痛めつけられてきたおでんは俺がカイドウをボコボコに言いくるめている場面が大層お気に入りらしく、俺の台詞を一字一句全て覚えているほどだった。

 

「――というわけで、君はうちのクソ親父をこう、思いっきり殴り倒したんだ! いやぁー、あの時はスカッとしたなぁ! 最高だったよ!」

「……」

「あれ? どうしたの? 顔色悪そうだけど」

「……」

 

残念ながら――非常に残念ながら、全部思い出してしまった。

 

そうだった……日本酒を浴びるように飲んだ結果、理性のブレーキが効かなくなってとんでもないことをやらかしたんだった……。

 

ヤバいなぁ、これ。カイドウに殺されちまうよ……。

何より、パイセンにも殺される気がする。

 

「えーと……俺が殴り倒したとかいうカイドウはその後どうだった? やっぱり怒ってた?」

「いや、僕はすぐに君を助けに会場を抜けたからアイツが怒っていたかどうかはちょっと分からないなぁ……」

「そうか……」

 

反応が分からないのが一番怖いんだが。

しかし参ったなぁ……まさか四皇になるとか世迷い言を口にしていたパイセンより先に俺がカイドウに喧嘩を売ることになるとは。

 

「そういえばおでん。君は会った時に言っていたな。俺と同じく、カイドウを倒すべく戦っている者だって。どうしてカイドウの息子である君が父を倒そうとするんだ?」

「それを説明するにはまず、光(・)月(・)お(・)で(・)ん(・)という侍について話す必要があるね」

「おでん? 君と同じ名前だな」

 

事情は知っているものの、突っ込まないのは不自然かと思ったので聞いてみた。

するとおでんは俯き、顔を曇らせながら言った。

 

「……キリア。これまで黙っていてごめん。おでんというのは僕の本当の名前ではない。僕が憧れている、偉大な侍の名前なんだ」

「そうだったのか……でも謝る必要なんてないよ。君がおでんと名乗りたいのであれば俺はそれを肯定するだけだから」

「……君は立派な人だな。でも、そんな君にだからこそ本当の名前を伝えておきたい」

 

そう言っておでんは立ち上がり、金棒を地面に突き刺して仁王立ちに。

俺の目を真摯に見つめながら威風堂々とその真名を語った。

 

「生まれはワノ国鬼ヶ島。父は外道の海賊なれど、この国を支配する一匹の龍。生まれてこの方、鬼の子として生きてきた。――僕の名はヤマト! いずれ父を倒し、この国を開国して光月おでんとなる者だッ!」

「ヤマト……それが君の名前か」

「あぁ。今まで騙していてごめんね」

「いや、だから謝る必要なんてないよ。これからはヤマトと呼んだ方がいいかい? それともおでんと?」

「……君におでんと呼んでもらえるのはとても光栄なことだったけれど、それでもこの国を救えていない以上、僕はまだヤマトだ。だから、これからはヤマトと呼んでくれ」

「あぁ、分かった。それが君の意志なら尊重しよう。改めてこれからよろしく頼む。ヤマト」

「あぁ! もちろんだ! キリア!」

 

そして俺たちは固い握手をかわした。

出会ってまだ数時間しか経っていない俺たちだが、そこには確かに友情のようなものが芽生え始めていた。

 

 

◆◆閑話休題◆◆

 

 

「さて、僕がカイドウと戦っている理由だが、さっきも言ったように光月おでんという侍について知ってもらう必要があるんだ。そして彼については僕の聖書(バイブル)に全てが記されている」

「聖書(バイブル)か……実は俺にも聖書(バイブル)があるんだ。103巻くらい」

「多いな⁉ いったい、どんな聖書(バイブル)なんだ?」

「とある男と彼の仲間たちの冒険譚だ。本当に面白くてね……読むだけで心が震えたのを覚えているよ」

「冒険譚⁉ なんてこった! 偶然にも僕の聖書(バイブル)も同じなんだ! 正確には航海日誌なんだけど、でもこれは紛れもなく彼の冒険譚! これ、これ! 見てくれ!」

 

大興奮のおでんは大事なものを大人に自慢したい子供のように可愛らしい挙動で懐から取り出した聖書を俺に手渡そうとしてくる。

 

「これが君の聖書(バイブル)か……すまない。ちょっと手が汚れているかもしれないから洗ってきてもいいか?」

「ッ⁉ 聖書(バイブル)の取り扱いにも気を遣うその姿勢……君はなんて素晴らしい人なんだ⁉ しまった! 僕にも君みたいな心があれば、この聖書(バイブル)を僕の手垢で汚すこともなかったのに……!」

「ヤマト、大丈夫だ。これは君の聖書(バイブル)だ。君が汚す分には問題ないんだ。ただ、俺が君の聖書(バイブル)に敬意を払いたいだけだから――」

「ッ! ……君のことを心から尊敬するよ。その奥に進んだところへ沸騰させた綺麗な水を貯めてあるんだ。良かったら使ってくれ」

「ありがとう」

 

というわけで、手を丁寧に洗った後、彼の聖書を拝見することになった。

 

「では、失礼して――」

「ゴクリ」

 

何やらお互いに緊張しながらゆっくりとページをめくっていく。

ふむ、ふむ、ふむ……これが光月おでんの記した航海――いや、その壮大な人生の記録か。

一通りページを捲り終えた俺は聖書を汚さないように気を遣いながらヤマトに返却した。

 

「すまない。全然読めなかった……」

「……いや、僕の方もごめん。それはワノ国の言葉なんだから、読めなくて当然のことだったんだ……つい興奮してしまって」

「でも、これが一人の男が命を懸けて書き記した価値あるものだということは十分に分かったよ。よければ、君の口から聞かせてくれないか?」

「! もちろんだ!」

 

そしてヤマトは語り出した。

 

ワノ国の閉ざされた鎖国の歴史。そこで窮屈そうにしていた自由な侍、光月おでん。

九里の大名となった彼が偶然にも出会った白ひげたちの船に(強引に)乗りこむことによって始まった波瀾万丈な冒険譚。

興奮したヤマトはゴール・D・ロジャーの夢の果ても語ろうとしたが、それは流石に止めた。

それは未来の俺がルフィから直接聞くものだから、今の俺が知っていていいものじゃない。

 

「――というわけで、おでんは僕の父によって処刑されてしまったんだ……」

「……」

「僕が戦う理由、分かってもらえたかい?」

「……あぁ。十分すぎるほど分かったよ」

「そうか! それは良かっ――「ヤマト」」

 

俺は不意に昔のことを思い出していた。

 

「つらいよな。父親を誇りに思えないのは」

 

“いいキリア。お父さんを誇りに思いなさい”

 

「……君の過去に何があったかは聞かない。だが、ありがとう。君と気持ちを共有できて嬉しいよ」

「あぁ……」

 

酒は飲まないと言ったが、少しだけしんみりした空気を払拭するためにヤマトと一杯だけ乾杯した。

 

「――それにしても、長く語りすぎたね。クソ親父のせいで天気がいまいち分からないけれど、多分そろそろ夜なんじゃないかな?」

「カイドウも流石に探索を打ち切ってくれているといいんだが……」

「そういえば、君と一緒に来たという桃色衣装の男は大丈夫なのかな?」

「あ~、パイセンか。ま、多分生きているでしょ。俺(・)に(・)く(・)っ(・)つ(・)け(・)て(・)あ(・)る(・)糸(・)が(・)切(・)れ(・)て(・)な(・)い(・)し(・)」

「?」

「おっ、噂をすれば何とやら。パイセンがこっちに来たみたい。それに……船の気配も感じるな」

「あっ、待ってよキリア!」

 

俺はこちらへ迫ってくるパイセンの気配を察知し、立ち上がって入り口まで向かう。

ちなみにくっつけてある糸というのは目覚めた時に気が付いたものだ。

ドレスローザでやらかしてから監視用としてパイセンが俺の位置を把握するために引っ付け始めたのだが、まさかこんな形で役に立つとはな。

 

「おっ、来た来た。お~い! パイセン! こっちっす!」

 

空を飛んでくるお馴染みのピンクジャケットを見た俺は手を振ってパイセンに位置を知らせる。スーツ姿のパイセンは糸で飛行しているという特性を生かして不自然な軌道で俺の元に急降下し、拳(・)を(・)思(・)い(・)っ(・)き(・)り(・)振(・)り(・)か(・)ぶ(・)っ(・)て(・)――⁉

 

「色々と言いたいことはあるが、取り敢えず一発殴らせろッ‼」

「ぶべらッ‼」

 

武装色の覇気を纏った右ストレートを顔面に食らわされたのだった。

 

「キ、キリア~~~‼」

 

驚いたのはヤマトである。

急に立ち上がったキリアが表に出たと思ったら、空から降って来た桃色衣装の男に思いっきり殴り飛ばされたのだ。

防御態勢も取れなかったキリアは岩場に衝突して思いっきり伸びていた。

 

「ハァ……ハァ……テメェはいつもいつも人に迷惑ばかり掛けやがって……」

 

ドフラミンゴは地面に着地し、たった今自分で殴り飛ばしたクソ馬鹿に向かってぼやいた。

 

「ちょっとカイドウと力比べさせて、ついでに百獣海賊団の内部調査に出していた俺のスパイたちを回収するだけの予定だったのによぉ……テメェのせいで随分と目論見が外れたじゃねぇか。クソッタレめ」

「おい! お前!」

「あぁ?」

「いきなりキリアを殴り飛ばしてどういうつもりだ! 彼の友達じゃないのか⁉」

「お友達じゃあ、ねェよ」

 

ビックリするぐらい怖い顔で言われ、思わず固まるヤマト。

 

「だ、だが! 彼の味方ではあるんだろう⁉ それなのにいきなりこんなことをして……恥を知れ!」

「恥はそこのアホが知るべきだが……まぁ、待て。そいつの肩を持つお前は誰だ?」

 

聞かれたからには名乗らねばなるまい。

鬼の娘は金棒を地面に突き刺し、再び堂々と名乗った。

 

「僕の本当の名は光月おでん! またの名をヤマト! あのクソ親父、カイドウの息子だ!」

「カイドウの息子⁉ ……いや、ちょっと待て。ヤ(・)マ(・)ト(・)だと」

 

その瞬間、ドフラミンゴの脳裏にクソアホが放ったある台詞が浮かび上がった。

 

『宇宙戦艦ヤ(・)マ(・)ト(・)って知ってます?』

 

居場所が分からない古代兵器。

その正体は戦艦。

奴が口にした“ヤマト”という名前。

そして目の前にいる女の名は――ヤマト。

 

「……偶にはやるじゃねぇか、キリア。分かったぜ、つまりはそいつがキーマンってわけだ」

「……」(アホ気絶中)

「おい、女! そこのアホを連れて俺についてこい! もうすぐ俺のスパイたちが近くの海岸沿いに船を回してくる! 今は俺の糸分身で上手く錯乱できているが、バレるのも時間の問題だ!」

「僕は女じゃない! ワノ国の侍、光月おでんだ!」

「どうでもいいから! さっさとそいつを連れて一緒に船に乗れっつってんだ!」

「……それはできない」

「あぁん?」

「この錠が見えるか? これはこの島から離れようとすると爆発し、僕を殺すんだ」

「……」

「だから、一緒には行けない」

 

何をバカなことを、とドフラミンゴは思ったが、ヤマトと名乗る女の深刻な表情を見て考えを改めた。

カイドウの息子とは言っていたが、薄汚れた衣服やキリアを助けた様子から見て、何やら訳ありなのだろう。

 

「ちっ、しょうがねェなぁ。じゃあ、そこの馬鹿だけでもこっちに寄越せ。この国を脱出するからよ」

「それもできない!」

「なんでだ⁉」

「いきなり僕の友達を殴り飛ばした奴を信用なんかできるか!」

「友達だぁ? お前ら、今日会ったばかりじゃねぇのかよ?」

「友情に時間は関係ない! 僕は僕の憧れを否定せず、父を殴り飛ばしたこのキリアという男のことが好きだ! 尊敬している! だから、彼を害そうとするものは、すべからく僕の敵だ! 覚えておけ!」

「……呆れたぜ。カイドウにこんな頭のネジが外れた餓鬼がいたとはな……」

 

ドフラミンゴは心底呆れた後、これ以上話がこじれるようだったら排除することも考えそっと右手を動かす。

それを見たヤマトも金棒を握って臨戦態勢を取る中、一つの声が両者の意識を乱した。

 

「……なに……言ってんだよ、ヤマト」

「キリア! 傷は大丈夫?」

「あぁ……あんなへなちょこパンチなんて全然痛くないよ」

「おい」

「カイドウのダメージが頭に残っていたせいでちょっと気を失っただけだ」

「それは良かった……!」

 

ふらつきながらも何とか立ち上がったキリアは真っすぐな瞳でヤマトを見つめた。

 

「それよりも聞こえたぞ。海に出るのにその錠が邪魔なんだって?」

「……あぁ、僕はこの爆発する錠に縛られているせいでこの島から出られないんだ。本物のおでんのように海に出ることもできず、クソ親父に支配されるこの国の人たちを救うこともできない」

「……」

「でも、君という希望がやってきてくれたお陰でもうちょっとこの島の中で耐えられそうだよ。ありがとう、キリア。君と出会えて良かった――」

「違うだろ」

「えっ?」

 

ヤマトの言葉を遮ったのはキリアの力強い言葉だった。

 

「思ってもいないことを口にするのは良くないよ、ヤマト」

「お、思ってもないことを言うわけがないだろう⁉ 僕はここで来るべき時を待つから、君は早くここから逃げて――」

「違う!」

「なにが違う⁉」

「君がどうしたいかを言うんだヤマト! 俺たち友達なんだろ⁉」

「――――」

 

 

 

 

「……うぅ……出たいよ」

「なんだって?」

「この錠を外して、この島を出たいよ! 自由になって、おでんのように冒険がしたいよ!」

「よく言った!」

「えっ」

 

キリアは力強く頷き、ヤマトを縛る鎖を見つめた。

 

「憧れは止められない……こんなもので止められていいはずがねぇんだ」

「キリア……」

「その錠がお前をこの島に繋ぎ止めているのなら、俺が断ち切ってやる! 手を前に出してくれ」

「で、でも……この錠は十何年も僕を縛っていた錠で、何をやっても壊せなくて……」

「だから――」

 

怪物と恐れられる男は言った。

 

「それを壊す男が目の前に現れたんだ。これは運命だ! いいから、俺を信じろ」

「……うん! 分かった! 好きにやってくれ!」

 

ヤマトはたった数時間前に会ったばかりの友人に自分の命を預ける覚悟を決めた。

 

「ありがとう、ヤマト。君の期待に応えてみせるよ」

 

さて――皆さんご存じの通り、この錠を壊すには内部にダメージを通す流桜の覇気が必要だ。

 

非常に難易度が高く、ワンピース本編でも使用している人間は限られた実力者だけだったことを覚えている。

だが、俺だって伊達に大将2人を相手に生き残っているわけではない。

覇気の応用編は、既に何度かこの身で体験している。

 

大将黄猿、大将青雉。

頼りになる師匠たちが俺に教えてくれた。(※教えてはいない)

纏う防御の覇気ではなく、物の核を破壊する攻撃の覇気。

 

「ふぅ――――ハァッ‼」

 

俺は全意識を集中させ、以前に何度か成功していた流桜の覇気をヤマトの錠に流し込んだ。

 

「凄い! 錠に亀裂が!」

 

ヤマトの言う通り、錠には亀裂が入っていた。

しかし、ダメだ。これでは内部の破壊が完了していない。

 

(しまった! 浅(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)……!)

 

焦るな。焦りは俺を殺す。

まだ数秒時間はある。俺は意識を集中させてさらに覇気を込めた。

制御が難しい覇気だが、約束を守るのが男というものだ。

 

「クソッタレ……外れろォォォォ!」

 

バキンッ!

 

もはや流桜と呼ぶには力技が過ぎだがしかし、

 

「は、外れた――!」

 

ヤマトは長年自分を縛っていた錠が外れ、感動に打ち震えていた。

だが、ゆっくりしている暇はない。すぐに投げ飛ばさねば、錠は爆発してしまう……かもしれない。

 

「キリア! 早く錠を――えっ……?」

 

突如キリアに突き飛ばされたヤマトは唖然とした表情でその光景を眺めていた。

 

自分を突き飛ばしたキリアの左手。

何故か既に爆発の兆候を見せている錠。

そして、錠(・)を(・)飲(・)み(・)込(・)も(・)う(・)と(・)す(・)る(・)竜(・)の(・)頭(・)に(・)変(・)化(・)し(・)た(・)キ(・)リ(・)ア(・)の(・)右(・)腕(・)。

 

「キリ――――」

 

この距離では回避は間に合わない。

ヤマトの表情が青ざめる中、父が娘に掛けた錠は情け容赦なく爆発した。

本編ではビッグマムさえ吹き飛ばした強烈な爆風は、轟音と共にヤマトの身に降りかかる――ことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――うし、無事に外れて良かったな、ヤマト」

「うぅぅ…………ひっく……えぐ……」

「おい泣くなよ。上手くいったんだから」

「でも! でもぉ……! キリア……」

 

ヤマトは自分を庇い、爆発する錠を飲み込んでダメージを一手に引き受けた彼(・)の(・)右(・)腕(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)場(・)所(・)を見つめて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「腕が‼」

 

 

 

 

 

 

「安いもんだ。腕の一本くらい……無事でよかった」

「キリアァァァァ――――‼」

 

ようやく自由になれた喜び。

父が本当に自分を殺そうとしていたことへの深い悲しみ。

友人への計り知れない感謝。

そして、自分のせいで右腕を失った彼への罪悪感。

 

ヤマトは泣いていた。

ぐちゃぐちゃになった心のままに、ただキリアに縋り付いて泣き続けていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、どうせ生えてくるだろお前」

 

キリアの尋常ならざる回復力を知っているドフラミンゴの至極まっとうなツッコミはしかし、自分たちの世界にいる2人には届かないのであった。

 




というわけで、真面目詐欺キリア君でした。
いや、本人は真面目なんですけどね。
ただ急にシャンクスごっこ始められちゃうとリアクションに困りますよね......。
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