本当に誤字脱字多くて申し訳ない……(今更
今回は真面目に会議してもらいます。
「さて、色々とハプニングがあったが……改めて、ここへ集まってくれたことに礼を言う」
仕切り直しを兼ねてドフラミンゴが挨拶を行う。
「俺のことは知っているだろうから自己紹介は省くが、俺の隣に座っているコイツが噂の新入りだ。挨拶しろ、キリア」
「お初にお目にかかります先輩方。王下七武海に新しく加入したキリアです。以後お見知りおきを」
キリアとて常時ふざけているわけではない。
真剣な雰囲気の中で普通に会話をする分には問題ないタイプの狂人だ。
急にまともになった男に戸惑いを隠せない様子の七武海たち。
ドフラミンゴは内心で七武海たちの反応に凄い共感しながら次にキリアの隣に座るヤマトを紹介した。
「そして、コイツの名前はヤマト。――カイドウの息子だ」
「なにッ⁉」
「カイドウの息子だとぉ⁉」
「……娘じゃなくてか?」
「わらわには到底及ばぬが中々美しい顔をしておる」
各々思うことはあれど、やはりカイドウの子息というインパクトはかなり大きいらしい。
驚きの表情を浮かべている者がほとんどだ。
「全てはこのヤマトと鬼ヶ島で出会ったことから始まった」
本当はクソ馬鹿が酔っぱらってやらかしたせいだが、そこは説明していてもしょうがないので端折っていく。
これ以上キリアの好感度を下げたら本当に全員帰りかねない。
「カイドウの息子と言ったが、コイツ自身はカイドウと敵対し、長年殺し合ってきた仲だ」
「ほう?」
「カイドウと……」
「親と殺し合いとはのお……」
「……」
七武海たちが各々反応を見せる。
「本人たっての希望でな。コイツから自身の生い立ちとワノ国の現状について説明をしてもらうことにする。ヤマト」
「あぁ、分かった」
ドフラミンゴからバトンを手渡されたヤマトは立ち上がり、改めて七武海たちを相手に名乗りを上げた。
「改めて僕の名はヤマトだ! ドフラミンゴが言った通り、僕はカイドウの息子として生まれ、そして父と対立することを選んだ。でも勘違いをしないでほしい。これは単なる親子喧嘩ではないんだ! 僕とカイドウの対立には、ある侍が関わっている」
ヤマトはチラリと隣を見た。
頼りになる相棒は静かに頷く。
(そうだ。僕はカイドウを倒す戦力を集めるためにあの島を出たんだ)
聞けば、彼らはドフラミンゴやキリアに匹敵する力の持ち主だという。
是が非でも仲間にしなければならない。
「どうか聞いてほしい! ワノ国で起きた悲劇と我が父、カイドウの非道を!」
ヤマトは語り始めた。
ワノ国にいたおでんという偉大な侍の話を。
そしてワノ国の歴史と、そこに現れた傍若無人の悪党にして実父であるカイドウの話を。
鬼ヶ島に囚われ続けていた自分の話を。
熱を込め、時には激情のあまり涙も流しながら必死に訴える。
カイドウを倒したい、と。
ワノ国を救いたい、と。
でも自分だけでは力が足りない。
侍たちの無念を晴らすには圧倒的に戦力が足りない。
いきなり現れて命を懸けろということがどれほど無茶苦茶なことか理解はしているけれど。
――それでも一緒に戦ってほしいと訴える。
「お願いだ! 僕たちに力を貸してほしい!」
「「「「「……」」」」」
七武海たちは誰も口を挟むことなく最後までヤマトの話を聞き終えた。
さて、果たして何人が賛同してくれるのか。
初めて外の世界の人間に自分から勧誘を掛けたヤマトはドキドキしながら彼らの反応を待つ。
しかし、現実は世間知らずの小娘に対して非常に冷酷だった。
「――で、わらわたちには何があるのじゃ?」
「……えっ?」
熱くなっていたヤマトに冷水を浴びせるかのように冷たい声が響く。
海賊女帝は無表情でこてんと首を傾げた。
「カイドウを倒すことでわらわたちには何のメリットがあるのじゃ?」
「め、メリットって……ワノ国の人たちを救うことが……」
「それは貴様のメリットであろうが、小娘。わらわたちには何が提供されるのかと聞いておるのじゃ」
「ッ⁉」
冷酷にヤマトの熱弁を切って捨てるボア・ハンコック。
しかし、彼女だけではない。
他の面々も殆どが同じように興味がないといった顔をしている。
(こ、これが……これが海賊だっていうのか……⁉)
少なくとも、ヤマトがおでんの日誌から知った海賊とはこういう薄情な連中ではなかった。
彼らは仁義の世界の中で人との縁を全力で大切にし、船員たちと笑い合い、理不尽を見過ごせない――そういう者が海賊であるはずだったのだ。
(いや……いきなり会ったばかりの人間に命を懸けて戦ってくれと言われたところで賛同してくれるはずもないか……僕は、馬鹿だ)
失意と無力な自分への怒りでさらなる涙が溢れてくるヤマト。
そんな彼の肩にそっと手を乗せながらキリアは目を伏せた。
やはり、情に訴えかけるだけではダメか――
「その話、乗った」
力強い声が円卓の間に響く。
顔を上げたヤマトの先にいたのは威風堂々たる魚人族の益荒男。
「海侠の、ジンベエ」
席を立ったジンベエはヤマトの前までやってくると、彼の肩にそっと手を置いて言った。
「お前さんの思いはよう伝わった。今まで長い間、1人でよう耐えてきたのぉ……微力ながらこの海侠のジンベエ、助太刀させていただく」
「……僕の話を、信じてくれるのか?」
「信じるとも。お前さんの声に、涙に、嘘などなかった。仁義を欠いてこの海は渡れん。お前さんのように一本筋が通った侍をどうして見捨てられようか」
「ジ、ジンベエ……!」
「それに、お前さんの話に出てきたおでんという侍……確か白ひげのおやっさんが言っていた元2番隊の隊長じゃろう?」
「白ひげ海賊団を知っているのか⁉」
「知っているも何もわしの大恩人じゃ!」
ジンベエは男気溢れる笑みを浮かべて言った。
「おでんの無念を晴らすこと、それは白ひげ海賊団への恩を返すことに繋がるとわしは考える。どうか手助けをさせてくれ、侍よ」
「うん……うん! お願いします!」
「わっはっは! よろしく頼むぞ!」
王下七武海 海侠のジンベエ
参戦決定。
「なんて……」
「うん?」
「なんていい奴なんだ! 海侠のジンベエ!」
急に大声を上げる怪物キリア。
何事かと困惑するジンベエに右手を差し出し、理解不能の狂人は満面の笑みで言った。
「気に入った! 握手してくれ!」
「あ、握手? まぁ、別に構わんが……」
「ムフフフ……今後とも、是非よろしくお願いしますよ! 新世界の荒波は厳しいですからねェ……!」
「????」
言っていることは1㎜も理解できなかったが、多分、理解しようとしてもできないタイプの人種と悟ったジンベエは深く考えるのを止めた。
(あぁ……未来の操舵手と握手してるぅ……麦わらの一味としてちゃんと出会うことになるのは3年後だけど、その時はよろしく頼むぜ! ジンベエ!)
ジンベエとの握手を堪能したキリアは満足げに頷いた。
「……まぁ、コイツは良く分からないから放っておこう。さて、ジンベエの他に四皇との戦争に参加してくれる奴はいるか?」
「キシシシシ……質問がある」
「なんだ? ゲッコー・モリア」
「仮に俺たち全員でカイドウに挑むとして……勝算はあるのか?」
「当然だ」
「本当かァ……?」
怪訝そうな表情でドフラミンゴを見ながらモリアは語る。
「聞いた話によればテメェら3人、ドレスローザでカイドウを迎え撃ったらしいが……海軍の力も借りてようやく撃退した程度だったそうだなァ? しかもカイドウは幹部も連れずに単騎だったそうじゃねぇか」
「……」
「自分たちだけじゃあ勝てねェから俺たちを招集するって考えは分からなくもねェが、次にぶつかるのはカイドウではなく百獣海賊団だろう? 本当に勝ち目が――」
「ある」
きっぱりと言い切ったドフラミンゴの言葉には確かに絶対なる自信が込められていた。
「策があるんだ。俺たちが手を組めば四皇なんざ敵じゃねェ」
「その根拠は?」
「こっちはカイドウの手の内を知り尽くしているからだ。なァ、ヤマト?」
「……カイドウの息子」
「ドフラミンゴの言葉は嘘じゃない。僕は百獣海賊団のことを知り尽くしているし、カイドウとは数えきれないくらい戦ってきた。役に立てるはずだ」
「敵の能力、数、鬼ヶ島の構造……全て情報は揃っている。それに俺の送り込んだスパイたちがまだ百獣海賊団内に潜入している。最新の動向を掴むことも可能だ」
「……」
「そして確かに俺たちはカイドウに敵わなかったが、それはあそこが俺の国だったからだ。次に戦う時はこちらから直々に鬼ヶ島へ殴り込みを掛ける。何の躊躇もなく全力で暴れてやるさ」
「……余程自信があるようだな」
モリアの言葉を受け、ドフラミンゴは不敵に笑った。
「まぁ、別に参加したくないなら構わねェぜ? それならこっちも別の手を打つだけだ。ただ――テメェがカイドウにリベンジする機会は二度となくなるけどな」
「……」
嘗て百獣海賊団と鎬を削っていたゲッコー・モリア。
大事な仲間たちを全員失ってからは他力本願になり、新世界に足を踏み入れることもなくなったが……恐らく集った七武海たちの中で最も“カイドウ”の名に導かれてここに来たことを否定はできまい。
「キシシシシ……戦いの中で生まれた死体は全て俺に寄越せ。それが条件だ」
「いいだろう。好きにしろ」
王下七武海 ゲッコー・モリア
参戦決定。
「“条件”って話で思い出したが、これも説明しておこう。今回の戦争に参加するメリットとして、戦いに参加した奴らはカイドウ撃破後に七武海の地位をさらに向上させる報酬が用意されている」
「随分と曖昧な報酬じゃな」
「噛みつくなよハンコック。条件は今世界政府側と擦り合わせている最中だ。だが、そう悪くない報酬にはできそうだぜ?」
「……」
報酬の存在を仄めかしつつドフラミンゴはまだ参戦を決めていない面々に語る。
「キリア、七武海の存在理由を言ってみろ」
「海軍大将から逃げるためです」
「そうだ、その通り。この新世界に君臨する四皇どもに対抗するためだ」
(((((……言ったか?)))))
心の中で疑問府を浮かべる七武海たち。
だが、細かいことにツッコミを入れていたら話が前に進まないことは何となく分かったのでドフラミンゴに舵取り役を任せ、話の続きに耳を傾ける。
「世界は四皇・七武海・海軍のバランスで成り立っている。それはカイドウだって認識していたはずだ。だが、奴は何の断りもなく俺の――七武海が治める国へと侵略してきた。これが意味するところが分かるか?」
両腕を広げ、天夜叉は大仰に語る。
「四皇は舐めてやがるのさ! 七武海程度、恐れるに足りんとな!」
安い挑発ではあるが、何名かが反応したのを見逃さず語り部は続ける。
「テメェらが秩序や海軍の思惑に興味がないことは知っている。だが、それでもこうして手に入れた七武海の座が――延いては自分を低く見積もられるのは我慢ならねェだろ?」
「……低く見積もられたのは貴様だろう、ドフラミンゴ」
「いいや、違うぜ鷹の目。
「……」
「四皇に教えてやらなきゃならねェ。何のための均衡かを。何のための七武海かを」
それに、とドフラミンゴは不敵に笑った。
「俺たちは海賊だ。世間から政府に飼われていると罵倒されようがそれは変わらない。だからそろそろ手綱を握っているつもりでいる連中に教えてやらねェか? テメェらがどういう化け物たちを雇っているのかを」
「「「「「……」」」」」
七武海たちは各々考え込む。
実際のところ、ドフラミンゴの話には筋が通っていた。
このまま四皇に舐められたままでは七武海解体とまではいかなくとも、今後の方針について政府が見直しを図る可能性はある。
「ドフラミンゴ」
「なんだ? 鷹の目」
「俺たちを焚き付けようという貴様の意図は良く分かった」
ドフラミンゴ、キリアにとっての大本命である世界最強の剣士が口を開いた。
「正直に言って、四皇との戦いに興味がないわけではない」
「ほう?」
「だが、この鷹の目を動かそうというのだ。それ相応の対価を差し出す必要があるのではないか?」
「対価……対価か。意外に強欲なんだなァ、鷹の目」
「そこの海賊女帝と同じく七武海の地位向上などという曖昧な報酬では満足できないという話だ。他に見返りはないのか?」
予想以上にやる気をみせているミホークに内心期待しつつ、ドフラミンゴは思案してから答えた。
「手に入れたカイドウの縄張り、ワノ国から好きなものを持っていけばいい。特に鷹の目、テメェだったらワノ国に眠っている伝説の妖刀やら名刀やらに興味あるんじゃねェのか?」
「……興味がないといえば嘘になるな」
「それにワノ国には侍とかいう大層強い連中がうじゃうじゃいるらしい。鷹の目に限った話じゃねェが、ここ最近の海は平和でいけねェ。テメェらも七武海に相応しい実力を維持するために偶には運動した方がいいと思うぜ? なァ、モリア」
「なぜ俺を見る!」
「テメェの膨らんだ下っ腹に聞いてみな」
「舐めやがって……!」
ギャーギャーと騒ぐドフラミンゴとモリアを尻目にミホークは思考する。
七武海の地位向上、四皇との戦闘、ワノ国の刀。侍と名乗る戦士たち。
(……ここら辺が妥協点か)
「――いいだろう。その話、俺も乗ることにする」
「鷹の目⁉」
「ほう?」
「……」
「わっはっは! お主が加わるなら百人力じゃのう!」
随分とあっさり参戦を決意したミホークは席を立った。
「おい? どこへ行く気だ?」
「決行日が決まったら呼べ。それまでは自由にやらせてもらうぞ」
一方的にそう言い残すとミホークは歩き出し――キリアの席の後ろで立ち止まってから彼の耳元でそっと囁いた。
「……良い眼を持っている。よく気が付いたな」
「……連中には詳しくてね。でも、アンタも大概いい眼をしているよ」
「侮るな。俺は鷹の目だ」
2人だけにしか分からない会話を交わし、世界最強の剣士は円卓の間を立ち去って行った。
◆◆◆◆
円卓の間を出て廊下を歩くミホークは先程キリアが覇王色で追い払った男が次の飲み物を持っていくべくこちらへ歩いてくるのを発見した。
「おや、ジュラキュール・ミホーク様。もうお帰りですか?」
「……」
使用人の問いには答えず、ミホークは一瞬で抜刀した黒刀“夜”を喉元に突きつけた。
「ひっ⁉」
「……貴様、何者だ?」
「な、なにを……⁉」
「歩幅が妙だった。それに懐に何か隠しているな」
「……」
「政府のエージェントか? 上に言われて監視にでも来たか」
「クソッ!」
咄嗟に逃げ出していくエージェントを……ミホークは追わなかった。
恐らく七武海連合の話を聞き、監視役として送り込まれてきた諜報員なのだろう。
懐に隠していたのも盗聴器の類に違いない。
(あの一瞬で政府のエージェントを見抜くとは……なかなかやる)
夜を納刀したミホークは自身の小舟へ歩きながらあの怪物について考える。
騒々しく、破天荒で、人を無意識に振り回すタイプ。
自由奔放に見えるが――あぁいう手合いこそ油断ならないことをミホークはよく知っている。
それに、すれ違った一瞬にミホークを睨みつけたあの黄金の瞳。
「……怪物、か」
世界最強の剣士は良い暇潰しになりそうだと楽し気に笑った。
王下七武海 鷹の目のミホーク
参戦決定。
◆◆円卓の間◆◆
ミホークが立ち去った円卓の間にてドフラミンゴは内心狂喜乱舞していた。
なにせ、大本命のミホーク参戦が決まったのだ。
正直、これだけでもこの会議を開いた意味はあっただろう。
さらにはやる気を漲らせているゲッコー・モリアに、こちらは意外だったが最強の魚人であるジンベエまで参戦するという。
上手くいきすぎて怖いまであるが、いい流れは彼としても大歓迎だ。
「さて、残るは――――」
ボア・ハンコックとくまだ。
だが正直、この2人に関しては勧誘を半ば諦めてもいた。
なにせ、どちらにも参戦する理由がなさすぎるからだ。
ジンベエのように義理人情と白ひげへの恩返しもなければ、
ゲッコー・モリアのようにリベンジマッチの理由もなく、
ミホークのように戦闘狂的な気配もない。
(さて、どうしたもんかな……)
ドフラミンゴはどうやって説得したものかと後ろを振り返り――
「くま先輩、参戦してくれますよね?」
「……あぁ」
2秒で参戦が決まったくまを見て白目を剥いた。
「あざーっす。じゃ、そういうことで」
「……あぁ」
「ちょっと待て‼」
いくら何でも話が早く進み過ぎである。
地道に説得をしていたドフラミンゴが馬鹿みたいだ。
「おい、待てくま! テメェ、今までだんまり決め込んでいたくせに急に参加するとはどういうことだ?」
「……七武海の地位向上は俺にとっても必要なことだ。だから参加を決めた。それだけだ」
「本当にそれだけか?」
「では俺は参加しない方がいいのか?」
「……ッチ」
無論、くまも参加してくれるならそれに越したことはない。
ただ、いまいち腑に落ちないところがあるというだけで。
「おいキリア。テメェ、くまに何を吹き込みやがった?」
「何も吹き込んでなんかないっすよ。くま先輩がパイセン先輩より優しかっただけです」
「なんだそりゃあ?」
「……俺も失礼する」
「ちょっと待てくま! 話はまだ終わってねェぞ!」
ミホークと同じく円卓の間の扉に向かうくまはキリアの席の後ろで立ち止まり、彼の耳元でそっと囁いた。
「……ドラゴンとの契約、忘れるなよ」
「もちろん」
2人だけにしか分からない会話を交わし、暴君は円卓の間を立ち去って行った。
王下七武海 暴君バーソロミュー・くま
参戦決定。
◆◆◆◆
「……えぇ、はい。そうです。七武海たちは本気で同盟を組んで百獣のカイドウに挑むつもりのようで……」
七武海たちが滞在する屋敷の中でコソコソと電伝虫に話しかけている男がいた。
使用人の格好をしているこの男はイケメンだからと覇王色で部屋から追い出され、ミホークに夜を突きつけられるなど散々な一日を過ごしている最中だ。
「このまま連合を結成させてもよろしいのでしょうか」
『……構わん。カイドウと七武海たちが勝手に殺し合ってくれるならそれに越したことはないだろう』
電伝虫の向こうにいる老人が答えた。
それだけで男は安堵する。
あんな化け物揃いの中に飛び込んで連合を阻止するなど至難の業だったろうから。
『だが――』
今度は別の老人が口を開く。
『確実に死んでもらわなければならない男が1人いる』
電伝虫越しでも相当な怒りが伝わってくる。
この老人たちをここまで怒らせるとは相当だなと内心思いながら男は耳を傾ける。
『奴は調子に乗りすぎた』
『あぁ。超えてはいけない一線を越えたのだ』
『だというのに世界を引っ搔き回して強引に七武海の座につくその図々しさ』
『非常に目障りだ』
『以前は革命の流れが邪魔だったが、今となっては奴も革命軍の裏切り者』
『死んだところで革命が燃え上がることもないだろう』
男は静かに問い掛けた。
「ご指示を」
『連合結成の邪魔はせんでいい。代わりに、奴がカイドウと当たった際に――』
『――確実に殺せ』
そして電伝虫は切れた。
「……あんな怪物を殺せって?」
尋常ではない覇気と一瞬で自分の正体を見抜いた黄金の瞳を思い出す。
「……人間に任せていい仕事じゃないだろう」
男は乾いた声で笑った。
◆◆円卓の間◆◆
くまが立ち去った円卓の間にてドフラミンゴは内心さらに狂喜乱舞していた。
なにせ、七武海4名の参戦が決まったのだ。
正直、これだけでもこの会議を開いた意味はあっただろう。
「さて、残るは――――」
この場にいないクロコダイルを除けばボア・ハンコックのみだ。
(さて、どうしたもんかな……)
ドフラミンゴはどうやって説得したものかと後ろを振り返り――
ガチンッ
「……本当にしつこいな、下郎」
「キ、キリア――――‼」
「……」
「ど、どうしよう桃色! キリアがまた石になっちゃった!」
「……」
何故かまた勝手に石化したクソ馬鹿がいた。
ヤマトは涙目で焦り、ボア・ハンコックは心底呆れた表情で溜息をついている。
ドフラミンゴは思った。
このままこの
もう割っちゃったらいいんじゃないかな?