七武海連合結成。
そのニュースは瞬く間に世界中を駆け巡った。
自身が治める国を襲撃されたドフラミンゴが招集を掛けたことは周知の事実だったものの、まさか本当に七武海による連合が実現するとは誰も予想できず、世界は大いに盛り上がった。
当然、その知らせはカイドウの元にも伝わり、ドレスローザ周辺海域に攻め入ろうとも堅牢な守りを維持する海軍に手を焼いていた彼は楽しくなってきたと大いに喜んでからワノ国へと引き返していった。
世界中が注目する四皇VS七武海の戦い。
一体どちらが勝つのか。
開戦の狼煙はいつ上がるのか。
どこが戦場となるのか。
あれやこれやと噂が飛び交う中、件の七武海連合は結成から一週間後に再び円卓の間に集まっていた。
◆◆◆◆
「作戦を説明する」
連合の盟主であるドフラミンゴが円卓に座る面々を見渡しながら話を切り出す。
「まずカイドウが保有する戦力についてだが、本船の戦力数は少なくとも2万は下らないという話だ。さらにワノ国を牛耳っているカイドウの協力者であるオロチとかいう奴の戦力も加算すると3万も超えるらしい」
さらに百獣海賊団の恐ろしい点はその勢力がただの寄せ集めではなく、きっちり戦力として機能しているところだ。
原作のゾロをして「数が多いだけじゃなく、層も厚い」と言わせた戦力は伊達ではない。
ただ、原作の相違点としてドフラミンゴがSMILEを生産していない為、能力者の数は圧倒的に減少しているが。
「だからこそ開戦前にある程度厄介な連中の戦力は削っておくことを考えている。まぁ、こっちは俺とモリアの部下たちで何とかするからテメェらは気にしなくていい」
「……少しいいか、ドフラミンゴ」
「なんだ?」
急に話に入って来たヤマトを怪訝な表情で見るドフラミンゴ。
彼は覚悟を決めた強い眼差しで言った。
「オロチたちを制圧するなら僕も同行した方がいいと思うんだ。鬼ヶ島に長い間閉じ込められていたけれどワノ国の地形は頭の中に入っているし、それに何よりおでんに苦痛の限りを与えたオロチの野郎は僕の手で討ちたいんだ……!」
「……そうか。ワノ国に派遣する面々はモリアと相談してある程度決まっている。そこにテメェも加わるってことでいいんだな?」
「あぁ。構わない。それに、上手くやればカイドウと敵対している侍たちを味方にできるかもしれない。……カイドウの息子である僕が言ったところで意味はないのかもしれないけどね」
「侍か……確かに戦力は幾つあってもいい。潜入させている俺のスパイたちにもコンタクトを取るよう命令しておこう」
こうしてヤマトはワノ国に潜入してから鬼ヶ島の討ち入りに参加することが決まった。
「さて、次に決行時期だが、ちょうどいいタイミングがある。ヤマト」
「あぁ。実は今からちょうど一か月後に“金色神楽”と呼ばれる年に一度の大騒ぎがあるんだ。カイドウの部下たちが勢ぞろいし、さらにオロチの配下たちも合流して大騒ぎする祭りの日。狙うならここがいいと思う」
「さっき言ったようにワノ国から来る増援はヤマト主導で無効化させる。俺たちの敵はカイドウと幹部、そして2万の兵力と考えればいい。……まぁ、2万とは言ったが幹部以下はヤマト、俺とモリアの部下たちが合流すれば何の問題もなく片付けられるだろう」
それを可能とするだけの恐ろしい能力者たちが七武海傘下に揃っている。
これもまた七武海連合が恐ろしい理由の一つである。
「さて、次に幹部連中との戦いについてだが――」
「ちょっと待ってください、パイセン」
「あぁ?」
話しに割り込んできたキリアを見て露骨に嫌そうな顔をするドフラミンゴ。
彼は知っていた。
コイツがこういうタイミングで口を挟む時は大抵ろくでもないことを言うつもりだと。
「鬼ヶ島に攻め込む時の
「どうって……普通に俺の船か、他の連中の船でいくつもりだったが……」
「パイセンの船で⁉ 正気ですか――‼」
何故かぶち切れ寸前の表情で叫びながらキリアは懐から取り出した写真の束を円卓に叩きつけた。
「――あっ、女王。それ人数分印刷しておいたんで隣に回してください」
「うむ」
「テメェ、いつの間に……」
変なところで用意周到な狂人に頭を痛めつつ、一周して隣のヤマトから回って来た写真に目を通すドフラミンゴ。
「……って、こりゃあ俺のヌマンシア・フラミンゴ号の写真じゃねェか⁉」
「えぇ、そうです。あなたのスーパーハイパークソダサヌマンシア・フラミンゴ号の写真です」
「どんだけダサいと思ってんだお前……」
内心ちょっと落ち込むドフラミンゴだが、スイッチが入ってしまったキリアの勢いは止まらない。
彼は立ち上がると手元の写真をバンバン叩きながら七武海の面々に向かって言い放った。
「いいですか皆さん! 我々は七武海です! 世間より四皇の抑止力として期待されている最高戦力です! だというのに討ち入りの際に使用するのがこんなピンク一色で、自分の名前が“ドフラミンゴ”だからフラミンゴにしておこう、的な安易な考えでデザインされたおまる同然のクソほどダサい船でいいのでしょうか⁉」
「おい」
「いや、良くはない! だからどうか皆さんの感想をお聞かせいただきたい! 俺の美的感覚が間違っているのであればヌマンシア・フラミンゴ号に謝罪しましょう!」
「俺への謝罪は?」
「皆さんもまた俺と同じ感想なのであれば、ワノ国へ乗り込む船は再度検討する必要があるということです。――さぁ、お聞かせください! 皆さんの率直な意見を!」
「「「「「……」」」」」
キリアの言葉を受け、再度手元の写真をじっくりと見つめる七武海たち。
さぁ、ヌマンシア・フラミンゴ号の評価は如何に――‼
「ダサいな」
「なんじゃこの美しさの欠片もないデザインは」
「うーむ、コメントに困るのぉ」
「俺をこの船に乗せる気か?」
「ダサッ」←キリア
「……」
ボロクソに言う七武海たち。
まさかここまで批判を食らうことになると思っていなかったドフラミンゴは唖然としつつもう一度手元の写真を見る。
(……そんなにダサいか、これ?)
ピンクで統一されたデザインと言い、優雅なフラミンゴの形と言い、完璧なデザインだ。
しかし、彼自身がいいと思っていても今回は同盟相手が相手だ。
乗りたくないと言う船に無理やり乗せていっても途中で下船されかねない。
「……」
ドフラミンゴは思った。
船買い換えようかな、と。
◆◆鬼ヶ島◆◆
時は流れ、一か月後。
鬼ヶ島は年に一度のお祭りにて大いに盛り上がっていた。
「ウオロロロ……飲めよテメェら! 今日は無礼講だ!」
機嫌よく酒を呷るカイドウ。
彼とて七武海が連合を結成し、四皇討伐に向けて動き出したことは知っている。
だが、警戒したところでどうにかなるわけでもなし。
そもそもどれほど劣勢に陥ろうともその腕っ節一本で状況をひっくり返してきたカイドウだ。
七武海が束になろうとも負ける気はしなかった。
「ちょっと飲み過ぎじゃないすか? カイドウさん」
「ウオロロロ! 金色神楽で飲まずにどうするってんだ! 今日は無礼講だって言っただろう? いいからお前も飲んで歌え! クイーン!」
「うっす」
完全に宴が始まる前から酔っぱらっているカイドウにぞんざいな対応をするクイーンだが、カイドウは気にも留めない。
(やれやれ……今日は潰れるまで飲む気だな……)
呆れるクイーンだが、正直カイドウの気持ちも分からないでもなかった。
ここ最近はドレスローザ周辺でいまいち盛り上がりに欠ける海軍との戦いに追われていたこともあり、皆ストレスが溜まっていたのだ。
こうして羽目を外せることは非常にありがたかった。
「……おい、クイーン」
「なんだアホキング」
「お前ももう知っていると思うが、七武海たちが連合を組んだそうだ。カイドウさんを倒すためにな」
「あぁ、なんか聞いたことはあんなぁ……でも、連合つったってどうせ数人だろ? カイドウさんと
「確かに問題ないだろうが、妙な胸騒ぎがする。警戒だけは怠るなよ」
「はいはい。俺はこれからライブで忙しいからよ、お前が勝手に警戒しておけキング」
「おい! 待てクイーン!」
「年に一度の金色神楽で羽目を外せないとは哀れな奴だぜ! 一生そこでシリアス顔晒しときな!」
「……ッチ、あの間抜けめ」
舌打ちをしたキングは誰も彼もが気を抜いている金色神楽の中で一人、神経を尖らせることに集中し始めた。
自身の右腕がしっかりと警戒を怠らない中、べろんべろんに酔っぱらった百獣海賊団の総督は至極幸せな気持ちで宴を謳歌している。
そんな中、部下の一人が何らかのリストを手に駆け寄って来た。
「カイドウさん!」
「あぁ? なんだ~?」
「このリストに記載がある黒炭オロチと言う方がまだ到着されていないようですが……」
「あぁ、オロチだぁ?」
カイドウは心底不思議そうに首を傾げた。
「
今まで一度もそんな名前を聞いたことがない。
頭の中に靄が掛かっているような違和感はあるが、酔っぱらっているカイドウはどうでもいいことだと切り捨てて再び宴会に戻っていった。
◆◆◆◆
百獣海賊団が金色神楽で有頂天になる少し前。
鬼ヶ島に向けて進む一隻の巨大な海賊船があった。
それは王下七武海であるゲッコー・モリアが所有するスリラーバークを小型化させたような巨大な船で、掲げられている海賊旗には
乗船者は七武海連合の面々とその傘下にいる者たちが何名か。
過剰なほどの戦力を乗せたその巨大な船の名は「Seven Pirates」。
モリアのスリラーバークの一部を切り離し、ウォーターセブンにて世界政府特権とドフラミンゴの大金によって無理やり完成させた七武海連合専用の船である。
「見えてきたぞ。あれが鬼ヶ島じゃろう?」
海から船に乗り込んできた魚人――海侠のジンベエが船内の面々に通告する。
「ご苦労だったなジンベエ。お前のお陰で簡単に入国できそうだ」
「わっはっは! この船は能力者が大半だからのぉ。わしがやるしかなかったのじゃから気にするな!」
ジンベエは快活に笑ってここまで連れてきてくれた鯉たちに礼を述べた。
圧倒的な大きさを誇るSeven Piratesだ。
当然、鯉が一匹や二匹で足りるはずもなく、魚人であるジンベエの力も活用した上で計30匹の鯉が必要となった。
「……それじゃあキリア、予定通り僕は先に行くよ。一緒に討ち入りの瞬間に立ち会えないのは残念だけど、すぐに合流するから」
「あぁ。気をつけてな、ヤマト」
キリアとヤマトは固い握手を交わした後、がっちりと抱き合って互いの体温を感じ合った。
「……覚悟は決まったか。カイドウの息子」
「僕の名前はヤマトだ。今は、そうとだけ呼んでくれ」
「……分かった。他のメンバーも準備はいいか?」
くまは後ろを振り向き、先行でワノ国へ突入する面々へ確認する。
「ホロホロホロ! いつでもいけるぞ!」
「ワノ国か……どんな美女がいるんだろうなぁ……」
「おいアブサロム。お前、蛇女に石にされたこと忘れたのか? 妙なことして私の足引っ張るんじゃねぇぞ!」
「分かってるさペローナ。モリア様に迷惑は掛けねぇよ」
スリラーバーク四怪人より招集されたペローナとアブサロムが愚痴を言い合いながらもモリアからの命令を忠実に実行すべく肩を並べる。
さらに追加で船室から現れた人影が四名。
「……早くおねえちゃんを迎えにいかなくちゃ」
「シュガーお嬢ちゃん。そう肩に力を込めていても時間は先に進まねぇんだぜ? ドーンと構えておきな。大丈夫、モネは強い女だ」
「セニョール・ピンク……」
「若様に滅茶苦茶必要とされた! これは私の出番ってことでいいのよね⁉」
「だ〜す〜や〜〜ん! 若様のお役に立ってみせるだすやん!」
ドンキホーテファミリーより選出された4名。
シュガー、セニョール・ピンク、ベビー5、バッファロー。
本当はグラディウスやピーカなど圧倒的な攻撃力を持つ面々をピックアップしたかったドフラミンゴだが、生憎と未だに復活できる目途がない状況の為、上記のメンバーが選出された。
「では行くぞ」
気合十分の面々を見たくまは手袋を外し、その手でヤマトに触れ――その瞬間、彼の身体は一瞬で消えた。
さらにペローナ、アブサロム、シュガー、セニョール・ピンク、ベビー5、バッファローにも順番に触れ、ワノ国へと飛ばしていく。
「キシシシシ……くま、俺の物を飛ばすのを忘れるなよ」
「あぁ。鬼ヶ島のドーム上に飛ばせばいいんだな」
「そうだ」
ゲッコー・モリアの指示を受けたくまは小型スリラーバークの中央で厳重に封印されていたそれを希望通り鬼ヶ島のドーム上に飛ばした。
「……しっかし、恐ろしい作戦を立てるなぁ、パイセンも」
原作と共に彼らの能力を知っているキリアは飛んでいった面々を見つめながらそっと呟いた。
この面子で何をしようというのか。
ドフラミンゴが考えた作戦は下記の通りだ。
まずは優秀なスパイであるモネをワノ国に潜入させ、現地のスパイと合わせて情報収集。
敵の行動パターンを把握したうえでワノ国の勢力合流を防ぐべく、増援無力化チームを投入。
投入された面々のうち、アブサロムが透明になってシュガーを運び、誰にも気づかれないように敵勢力を玩具にして無力化。
気配を悟られかねない強者はペローナがホロホロの能力で一時的に無効化してしまえば玩具にしてしまうのはそう難しくない。
異変に気付かれてもヤマトという超火力のアタッカーやベビー5&バッファローがいる以上、ほぼ盤石と言ってもいいだろう。
玩具にした連中はセニョール・ピンクを始めとするドレスローザ陣営で回収し、ワノ国に着艦予定のSeven Piratesに搭載されている海桜石の牢屋にぶち込み、今度は鬼ヶ島に上陸する予定となっている。
決して気絶させてはいけないシュガーを連れてくることに抵抗がなかったといえば嘘になるが、カイドウに感づかれないよう戦力を削るという意味で彼女は必要不可欠だった。
それにドレスローザは英雄ガープに目を付けられたこともあり、既に危機的状況にある。
ドフラミンゴはワノ国を手に入れた後は、全員でこちらへ移住することを計画していた。
「後はアイツらが上手くやるのを祈るだけだな」
「ヤマトがいるし、現地にはモネちゃんが待機しています。問題ないでしょう。俺たちは中で合図を待ちましょう」
「あぁ……」
嵐の中、船頭に立ち鬼ヶ島を睨みつけていたドフラミンゴを室内へと誘うキリア。
2人は他の七武海たちも待機している豪華客船のように贅の限りを尽くされた船内へと移動し、くつろぎ始めた。
これから四皇との戦争だというのに、彼らには一切緊張している様子は見受けられない。
このメンタルの強さは流石王下七武海というべきか。
そうして各々暇を潰しながら待つこと一時間後。
『キリア聞こえているか? こちらヤマト』
「あぁ、聞こえているよヤマト。首尾はどうだい?」
『順調だよ。花の都はあらかた制圧した。幾つか用事を済ませたらそちらへ合流するよ』
「分かった。こっちも行くよ」
『あぁ――武運を祈っている』
「ヤマトもね」
電伝虫の通話を終えたキリアは顔を上げ、こちらを見つめていたドフラミンゴと視線を合わせ、静かに頷いた。
準備は整った。
あとは本丸に乗り込むだけだ。
◆◆◆◆
「さて――行くか」
連合の盟主であるドフラミンゴが号令を発すれば船内でくつろいでいた彼らが重い腰を上げて立ち上がり、嵐が吹き荒れる甲板まで出てきた。
天夜叉ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
怪物キリア。
海賊女帝ボア・ハンコック。
鷹の目のミホーク。
海侠のジンベエ。
暴君バーソロミュー・くま。
ゲッコー・モリア。
七人の海賊が揃い踏み――
時は夕刻 嵐が吹き荒れる海の真ん中にあってその影は揺らぐことなく。
七つの骸骨旗を掲げ、鬼へと戦いを挑む。
彼らにはこの国に思い入れなどない。
ワノ国に生まれたわけでもなければ、縁者がいるわけでもない。
野心、友情、革命、戦闘、人情、契約、再戦。
ただ己の我欲の為だけに今日、この場所へ集った。
四皇への抑止力として招集された選りすぐりの強者たち。
世界は彼らのことをこう呼ぶ。
王下七武海、と。
「やれ、くま」
ドフラミンゴの命を受けたくまが各自を一人ずつ能力で鬼ヶ島へと飛ばす。
完璧に制御された能力で鬼ヶ島の入り口に続々と着地する七人の海賊。
左からゲッコー・モリア、ジンベエ、ボア・ハンコック、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、キリア、ミホーク、くまと圧巻の面子。
揃った彼らは横一列に足を揃えて前進し始めた。
「おい、なんだテメェら……!」
「今は金色神楽の最中だ! 邪魔をするんじゃ――」
見張り役たちが彼らを押しとどめようとするが、ドフラミンゴの隣を歩く怪物キリアが一睨みすれば意識を失って倒れていく。
さらにキリアの反対側から出てきた監視役もドフラミンゴの隣を歩くハンコックが一睨みするだけで意識を失って倒れていく。
生半可な連中では彼らの前で意識を保つことさえままならない。
誰も彼らを止めること叶わず、七人の海賊はドフラミンゴを真ん中に堂々と歩みを進める。
「待たせたな ゴミクズ共ォ─────!!!」
やがて海賊たちはクイーンが盛り上げている宴会会場へと辿り着いた。
今日は年に一度の大騒ぎ。
大いに盛り上がっている百獣海賊団たちは監視役が強引に気絶させられたこともあり、まだ彼らの存在には気が付かない。
ならば教えてやろう。
「「「――――ッ‼」」」
ドフラミンゴ、キリア、ハンコックの3名が同時に覇王色の覇気を発動させた。
放たれた3つの王の力は共鳴し合い、大きな波紋となって会場を包み込む。
屈強な百獣海賊団も3つ連続で押し寄せる覇王色にはなかなか対応しきれない。
続々と気を失って倒れる部下たちを見たクイーンはライブを止めて乗り込んできた面子を見てサングラスを割るほど驚き、ここ最近のニュースから彼らが今日攻め込んでくることを予期していたキングは静かに刀へ手を掛けた。
そして――
百獣海賊団総督、百獣のカイドウは笑った。
「随分と遅い到着じゃねぇか。待ちわびていたぜ、テメェらをよ」
「悪りぃな。出航準備に手間取っちまった」
不敵に笑って答えるドフラミンゴ。
まだ何とか意識を保っていた百獣海賊団の船員たちが武器を構える中、七武海たちは特に臨戦態勢を取ることもなく自然体でいる。
「ウオロロロ……流石に壮観だな。七武海が勢ぞろいとは」
正確にはこの場にいない七武海が1人いるが、本質的に七武海は七名からなる組織だ。
戦力的には既に申し分ない域に達している。
決して揃うことはないとされていた七武海たちが七人横並びで立っているその姿は、確かに世界の均衡を保つといわれるだけの威風に満ちていた。
だが、百獣のカイドウが彼らを恐れるはずもなし。
「始める前に一応聞いておこうか……テメェら、何をしにきた?」
自慢の金棒を握り、七武海たちへ問いかける。
自分を倒しに来たことは分かっているが、それでもこうしてドフラミンゴや怪物以外の面々が顔を揃えていることは不自然だった。
「何をしにきたってお前ェ……俺たちは海賊だぜ?」
ドフラミンゴは七武海連合の盟主として――何より海賊として、宣言した。
「この国を奪いに来た」
Q:もしかしてこれがやりかっただけ?
A:そうです。ワノ国編は最後の殴り込みのシーンの為だけに存在していたのだ……。
Q:細かいこと言わず全員で殴りこんだ方が早くない?
A:どうしても七武海の七人で殴りこむ場面を描写したかった。後悔はない。
※3人が制御をかなぐり捨てた全力の覇王色を発動するために他の戦力が邪魔だったという事情もあります。