七武海ですが麦わらの一味に入れますか?   作:赤坂緑

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たくさんの感想ありがとうございます!
色々とご意見いただいておりますが、一先ず突っ走るところまで走ってから細かいところは修正していく形でいきたいと思います。

ノリとバイブスが大事だって黄猿師匠も言ってたし(言ってない

今回は題名通り海軍サイドのお話です。


海軍サイド:今後の方針

 

◆◆海軍本部 マリンフォード◆◆

 

大事な会議が開かれる際に使用される最も大きな会議室には、所狭しと大勢の海兵たちが集っていた。

大将赤犬を始め、中将以下招集可能な海兵は全員集められている。

 

「――全員揃っているな」

 

遅れて会議室に現れたのはこの場において最も権限が高い男。

海軍元帥 仏のセンゴクである。

 

センゴクは近くの海兵に命じて全員にある資料を回させた。

そこに記載された名を見た瞬間、全員の顔が引き締まる。

海兵であれば――いや、海兵でなくともその名を知らぬ者はいないだろう。

 

「怪物キリア。もう皆も把握していると思うが、今一番世界を騒がせている最悪の犯罪者だ」

 

センゴクは仏という異名が間違ってつけられたのかと思われるほど恐ろしい鬼の形相でその名を呼んだ。

 

会議室が暗くなり、電伝虫がプロジェクターのような形で大きな写真を皆の前に投影した。

そこに写っているのは屈託ない笑みを浮かべる幼い金髪の少年だ。

 

世界政府と協力して資料を作った、と前置きしつつセンゴクは説明を始めた。

 

「奴の名を昔から知っている者もいるだろう。奴は幼少期より天竜人に対して強い憎悪を抱いており、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

本人が聞いたら何のこと⁉ とツッコミを入れそうな内容を淡々と話すセンゴク。

 

「これは奴が8歳の時に出回った手配書だ」

 

露骨に表情に出すことはなかったが、何名かの海兵は複雑な思いを抱いた。

こんな純粋な笑みを浮かべる少年を銃を手に大人たちが追い掛け回したという事実。

そして、その結果として生み出された今の怪物。

彼はもしかしたら世界の歪みによって生み出された存在なのかもしれない。

 

「そしてこれが――」

 

電伝虫の映像が切り替わる。

そこにいたのは金髪をオールバックにし、凶悪な笑みを浮かべた少年の写真。

事情を知らない海兵たちが誰の写真かと首を傾げる中、センゴクは告げた。

 

「奴が10歳の時の写真だ」

 

海兵たちの間に動揺が広がった。

8歳から10歳までの間に何があったのか。

痛々しいものを見るような目をする海兵もいる中、さらに写真が切り替わった。

 

そこにいたのは、綺麗な笑みを浮かべる()()()()()

誰だこの子?

電伝虫が間違えた映像を出力したのかと皆が疑問に思う中、センゴクは真顔で告げた。

 

「これは、奴が11歳の時の写真だ」

「「「「えっ」」」」

 

確かに11歳というのはまだ明確に性の区別がでにくい年齢ではあるが……それともこのキリアという少年は所謂、精神が女性だったというタイプだったのだろうか。

だが、そこまで思い至った海兵たちは同時に現在のキリアのことを思い出した。

 

違う! 奴は今、明確に男として振舞っている。

それ即ち――

 

「もう分かっただろう? 奴は幼い頃より確かな知性と狡猾さを持って何年も世界政府と我々を欺いてきた知能犯だ」

 

さらに、と続けながらセンゴクは手元の資料を手で叩いた。

 

「奴は父親譲りの計算の素早さと会計士としての知識を利用してマフィアに取り入り、信頼を獲得してからその金品を強奪して姿をくらませるという行為を何度も繰り返している。幼少期よりその頭のキレと豪胆さは恐るべきものだったというわけだ」

 

さらに、と手元の資料を血管が浮き出る手で握りつぶしながら続けた。

 

「悪魔の実を手に入れてからの奴は空と海を主な活動範囲とし、我々が手を焼いていた海賊を襲っては金品を奪って逃走するという、海軍の面子を舐め腐ったような行動を繰り返す愉快犯と化した!」

 

海兵たちの認識は改められた。

脳とは単純なもので、屈託ない笑顔を浮かべる手配書の少年が悪魔に見えてくる。

 

「そして、現在進行形で奴が起こしている凶悪事件の数々はお前たちも耳にしているだろう。航行中の天竜人の船を襲い5名を殺害。さらにシャボンディ諸島でも天竜人を1名殺害し、ついでと言わんばかりに()()()()()()()()()()()を完膚なきまでに破壊。中にいた()()たちが大勢脱走し――」

「すいません、センゴク元帥。中にいた()()たちが脱走したというのはどういう――」

 

まだ海軍に入隊して日が浅い怖いもの知らずの新人が挙手して尋ねるが、

 

聞くなッ!

 

センゴクは鬼のような形相で一喝した。

古くより海軍に努めてきた猛者の強烈な覇気に思わず黙り込む新人。

その施設は職業安定所として認知されているが、その中身はこの世の闇を詰め込んだような非道の場所だ。

センゴクは内心の苛立ちもあったが、敢えてこの場で追及することはないだろうと判断した。

 

元帥は苦虫を嚙み潰したような顔をしながら続ける。

 

「奴の勢いはとどまるところを知らない。確実に奴を仕留めるべく、黄猿と青雉が出撃していることは皆知っていると思うが、つい先日など奴の逃亡に革命軍が手を貸したという情報も出ている」

「革命軍が……?」

「何の躊躇もなく天竜人を殺すような狂人だ。今の世界をひっくり返したい連中にとって、これ以上ないほどの有益な武器となるのだろう。奴のサポートだけしておけば、勝手に暴れて邪魔な連中を排除してくれるんだからな」

「なるほど……」

 

怪物は誰の下にもつかず、また誰も従えない一匹狼だったが、既にその存在そのものが大局を揺るがす巨大な嵐の目となりつつある。

嬉々として天竜人を殺す男など普通なら近づきたくもないが、逆にそれを利用してやろうと近づく連中も現れ始めている。

 

センゴクは頭を抱えた。

 

「さらに恐るべきはその驚異的な成長能力だ。先日の黄猿の報告によれば、奴は悪魔の実を覚醒させたらしく、現状のふざけた防御力と生命力がさらに増したとのことだ。それに、この姿を見ろ」

 

電伝虫が次の写真を映し出した。

 

そこには獅子の顔と山羊の顔、そして竜の顔という三つ頭に。

獅子の身体、竜の翼、蛇の尾を持つこの世の終わりのような生物が写っていた。

 

「これは……一体……」

「今の奴の姿だ。獅子の顔と竜の頭の二つからビームと火炎を放ち、蛇の尾には猛毒があるという。どうだ? お前たちにこいつが捕まえられるか?」

 

一様に黙り込む海兵たち。

ここは海の正義を司るものとして意地でも可能だと答えなければならない場面とは分かっていたが、それでも写真越しでも伝わってくる強烈な威圧感が口を閉ざさせる。

 

センゴクは黙り込んだ海兵たちを見渡してからそっと口を開いた。

 

「……実は、世界政府の中で奴を七武海に推薦する声が上がっている。倒せないのであれば、飼いならせばいいとな」

 

少しの沈黙の後、会議室はすぐに騒々しい声に包まれた。

 

「あり得ない!」

「あんな理解不可能の狂人が我々と肩を並べて戦うというのですか⁉ 気に食わないからとこちらが襲われるに決まっています!」

「ここまで我々の面子をコケにされておいて大人しく味方になれというのですか⁉」

 

「分かっておるっ! 静まれ!」

 

再び炸裂する元帥の一喝。

流石のカリスマ性で会議室はすぐに静寂を取り戻した。

 

「なかなか仕留めきれない現状に業を煮やした面子だけを気にする連中から上がった意見だ。皆の意見は今、ハッキリと分かった。無論、私も皆と同じ気持ちだ。我々は秩序を守る者。暴虐の限りを尽くす悪従を見逃すわけにはいかん。だが――」

 

皆を見渡し、元帥は苦々しい表情で現実を口にする。

 

「現状、海軍大将を2名派遣してもなお、奴を捕まえるには至っていない。寧ろ、黄猿の話では奴は戦えば戦うほど異常な速度で進化を続けるのだという。このまま長期戦になれば不利になるのは我々の方とまで言っていた」

 

ゴクリ、と生唾を飲み込む海兵たち。

海軍大将。それは海兵の一つの到達点だ。

世界の秩序を成り立たせている圧倒的な“個”であり、彼らの出撃は海賊にとって冒険の終わりを意味していた。

これまでは。

 

「青雉はもう少しで捕らえられると言っているが、残念ながら先ほども言ったように革命軍の動きが活発化してきている。中には天竜人を直接狙う凶悪なテロリストも出現してきているという話だ」

 

怪物の投じた石が世界という水に波紋を広げている。

 

“天竜人に逆らってもいいのか?”

“俺たちは理不尽に立ち向かってもいいのか?”

“なんだ、天竜人に逆らっても大丈夫じゃないか”

“偽りの竜を本物の竜が地に引きずり降ろしたんだ!”

“勝てる……勝てるぞ!”

“武器を取れ! 俺たちも戦えるんだ!”

“奪われ続けている俺たちの尊厳を取り戻すんだ!”

“あの黄金の獅子に続け!”

“戦え! 戦うんだ!”

 

「……いつまでも大将2名をたった一人の追跡の為に派遣しておくことは出来ない。事実、世界政府加盟国から大将の派遣要請がいくつも来ている有様だ。中には怪物の滞在歴があったというだけで派遣を要請してきている国もある」

 

深い……とにかく深いため息をついてから、センゴクはようやく本題を切りだした。

 

「さて、以上のことから大将青雉は怪物の追跡を中止し、急遽別の国へ派遣されることとなった。黄猿一人でも圧倒はできているようだが、あいつもここ数か月戦いっぱなしで疲れ切っていることだろう――したがって、ここに王下七武海の出撃を正式に宣言する」

 

大将ならもう一人ここにいるのでは……?

そんな海兵たちの視線がセンゴクの横で腕組をして黙りこくっていた最後の大将に向けられる。

視線に気が付いたのか、大将赤犬は目深に被っていた帽子の下から眼光を覗かせ――

 

あぁん? なんじゃい?

いえ、何でもないです……

 

あれは多分、自分が行きたくてしょうがなかったが、どこかの国から呼び出された顔だなと悟った海兵は下を向いた。

 

「七武海への招集は?」

「既に掛けている。招集に応じた七武海は()名。距離の問題もあり、そのうちの2名を急遽派遣することとなった」

「その2名とは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆とある島◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッフッフッフ、会いたかったぜぇ~、怪物野郎」

 

「旅行するなら、どこに行きたい?」

 

 

満身創痍の男、キリアは真顔で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜人と海軍大将がいないところ」

 

 

 

 

 

 




先輩武海登場

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