ご指摘いただいた方々、ありがとうございました!
※サブタイトルの図々しさが全てを物語っている回
海軍大将2名との戦いで消耗しきった怪物キリア。
そこへ止めを刺すべく派遣された王下七武海――
“天夜叉 ドンキホーテ・ドフラミンゴ”
“暴君 バーソロミュー・くま”
上記2名は休養のため撤退した黄猿の情報をもとに怪物を追跡。
人気がない島で同じく休養していた対象を発見。
命令に従い、交戦を開始。
満身創痍に思われた怪物キリアだが、極限状態から暴走した悪魔の実の力に振り回され、島を一つ沈めるほどの大暴れを繰り広げる。
派遣された七武海2名は追い込まれるも、苦し紛れにくまのニキュニキュの能力で遠方に弾き飛ばすことに成功。
王下七武海2名は今度こそ確実に止めを刺すべく、怪物キリアの追跡を開始した――
「――フッフッフッフ、ま、こんなところか」
特徴的な笑い声と共に何やら電伝虫とブツブツ話していたドフラミンゴが帰って来た。
「よう、待たせたなァ。上の馬鹿どもには適当な報告をしておいたから、数日は安泰だろうさ、フッフッフッフ」
「悪いな。何から何まで」
「気にすんな。大事な客人だ。もてなしをさせてくれ」
そう言って特徴的なサングラスを光らせながらドフラミンゴは笑った。
さて、どうして俺を殺しにやって来た筈の七武海が友好的なのか。
そして俺はどうして彼が治める国、
話は数日前まで遡る。
◆◆とある島◆◆
「旅行するなら、どこに行きたい?」
「天竜人と海軍大将がいないところ」
馬鹿真面目に答えた俺は正直言って疲労困憊であり、この二人を相手に勝てる未来など欠片も想像できない状況だった。
何とか隙を見つけて逃げ出そうと思っていたが、俺の回答を聞いたくまが手袋を外したあたりで四肢の一本くらいくれてやる覚悟を決めていた。
だが――
「フッフッフッフ、まぁ待てよ、くま。せっかく向こうが要望を出したんだ。できるだけ希望通りの場所に飛ばしてやろうじゃねぇか」
「天夜叉……何を考えている?」
「俺か? 俺は単なるスカウトだ。アイツを殺すつもりなんて一切ない。お前はどうだ?」
「……似たようなものだ」
「利害の一致だな。――おい、怪物野郎!」
「なんだ?」
「情熱の国は嫌いか?」
「大好きです」
こうして俺はドレスローザに飛ばしてもらうこととなったのだった。
もちろん、しっかりと俺が戦った証を残すために名もなき島にはしっかりと犠牲になってもらった。
◆◆ドレスローザ ドフラミンゴ所有の秘密の屋敷◆◆
「フッフッフッフ、この国はどうだい? 気候、女、酒、食い物、全部が最高の国だ。海軍大将もいないし、お前の希望には沿っていると思うが?」
「……まぁ、悪くはないな。だが、何を考えているのかは知らねぇが俺が簡単に油断すると思うなよ」
「その割にはさっきから死ぬほど俺の金で飲み食いしているようだが」
「気のせいだ」
「……フッフッフッフ、気のせいか。ま、いいだろう。ここは俺の国だ。何をしようと俺の言ったことがルールになる夢の国なのさ!」
両手を広げ、自慢げに語るドフラミンゴ。
その様は生粋の悪党でありながら確かに国王としての威厳的な何かを纏っているようにも見えた。
「七武海ってのは便利なものなんだな」
「おぉ? どうした。興味がわいてきたか」
「あぁ、割と興味はあるな。特に海軍大将から追われなくなるってのが最高だ」
「フッフッフッフ、お前はよくやったよ。あの化け物2人を相手によく生き延びたもんだ」
「かなりギリギリだったけどな。正直、アンタらが来た時にはもうくたばり掛けていてね、真面目にやっていたら殺されていたよ」
ごちそうさまでした。
さて、本題に入るとしよう。
「で――アンタら、どうして俺を助けた?」
ちなみにこの豪華な屋敷の中には俺とくまとドフラミンゴ、そして口が堅いという彼の使用人しかいない。
くまは別室で待機しているらしい。
後で「俺も話がある」とだけ言っていた。
「俺は世界政府の上と伝手があってな、色々とお前の過去のことを調べさせてもらった」
そう言ってドフラミンゴはソファに置いてあった資料を俺に投げて寄越した。
「怪物キリア――フッフッフッフ、なかなかどうして数奇な人生を歩んでいるようだなァ」
そう言って俺のこれまでの経緯をつらつらと語り出すドフラミンゴ。
8歳で賞金首になり、20歳で天竜人を5人殺害し、海軍大将に狙われても生き延び、さらに懲りずにまた天竜人を殺し、海軍大将2名を相手にまだ生き残っている。
……まぁ、なんだ。
不本意ながら俺のこれまでを客観的に見た場合、かなり気合の入った狂人だなこれ……
「フッフッフッフ、俺も長く海賊稼業をやっているが、ここまでイカレた奴には会ったことがねェ。――なぁ、教えてくれねぇか? 何がお前を突き動かしている? お前の人生を滅茶苦茶にした天竜人への復讐心か?」
“天竜人”、“復讐”、その二つの単語には強い感情が込められているように感じた。
あるいは、期待のようなものも。
「そんなんじゃないさ。俺はただ、生き残りたいだけだ」
「……天竜人を6人も殺しておいて言うセリフじゃねぇなァ」
表情には出さなかったが少し失望したような雰囲気を感じた。
だが、それはそれとして訂正しておかなければならない点がある。
「おい! 言っておくが、俺が殺したのは5人だけだ。1人は完全に黄猿のせいだからな! 何故か紙面に載らないからこれだけはハッキリと言っておく!」
「数の問題か……? だが、天地がひっくり返っても黄猿がやったことにはならねぇよ。残念ながら奴らの方が正義、だからな」
「ちっ、これだから海軍は……」
まぁ、ドフラミンゴに言われるまでもなくそんなことは分かっていた。
一応、世界で一番自由なジャーナリスト――世界経済新聞のモルガンズにもこの事実を記事にしてくれとお願いをしたが、逆に取材をさせてくれと言われて取り合ってもらえない始末。
おい、こんなに面白そうな記事他にないだろ。えっ? 俺がやったことにした方が面白い? もっと殺してくれ? そういうのいいから……。
「で、話がそれたが、結局アンタはどうして俺を助けたんだ?」
「フッフッフッフ、俺が期待していたタイプとは少し違うから言うのを躊躇っていたが、まぁ、これはこれでいいだろう――」
そしてドフラミンゴは言った。
「お前、俺の仲間にならねぇか?」
「……どうした急に?」
「誰にだって野心ってのがあるもんだろう? 俺には俺の野心があり、そのためにお前のように頭のネジがぶっ壊れた奴が欲しいのさ」
「……アンタにはたった今恩が出来ている最中だが、会って一日も経ってない奴に仲間になれと言われてもな……」
「話は最後まで聞くもんだぜ? フッフッフッフ、まずとびっきりの好待遇を用意しよう。好きなものはなんだ? 金か? 酒か? 女か?」
「全部だ」
「フッフッフッフ、強欲な奴だ。だが正直者は嫌いじゃない。それに加えて俺の国にあるものは全てお前の好きにしていい」
「……好きにしていいとは?」
「気にいらない奴がいれば殺すもよし。気にいった奴を玩具にするもよし。文字通り、お前の好きにしていいってことさ」
「……悪趣味な奴め」
「あと、来るべき日が来るまで海軍大将に見つからないようにこの国に――」
「それは最高に魅力的だな」
「……」
あまりにも俺が真剣だったからか、ドフラミンゴは少し引いているようだ。
おい、そんな顔をするなよ。こっちは死活問題なんだ。
「まぁ、さっきも言ったように来るべき日が来た時にはお前に働いてもらうからそのつもりではいろよ?」
「おい、まだ俺は仲間になるとは言ってないぞ」
「これだけの好条件を積んでまだ首を縦に振らねぇのか? ――もう少し賢い奴かと思ったんだがな」
残念そうな表情を浮かべるドフラミンゴ。
条件は完璧。海軍大将に追われている今の状況を考えれば断るなんて選択肢が思い浮かばないくらいに魅力的な提案ではあったのだが……俺には譲れない夢がある。
「悪いが、もう入りたい海賊団は決めているんだ。魅力的な誘いだが、断らせてもらうよ」
「ほう? どこだ、聞かせろよ。白ひげか? カイドウか? ビッグマムか?」
「
「! フ――フッフッフッフ! コイツは一本取られたぜ!」
ドフラミンゴは誘いを断られたにも関わらず機嫌良さそうに笑った。
ぶっちゃけ、断った時点で戦闘になるかと思っていたが、現状では襲い掛かってくる様子はない。
「――で、話ってのはそれで終わりか?」
「おいおい、冷たい奴だな。仲間にはなれなくとも、俺の同盟相手ってのはどうだ? 条件は多少落ちるが、お前の望む楽園を用意してやることはできるぞ?」
「悪いがそれもお断りだ。……やけに熱心に勧誘してくるな」
「フッフッフッフ、お前、自分の持っている影響力のデカさに気が付いていないのか?」
「影響力のデカさ?」
やれやれ仕方ないな、と言いながら説明大好きドフラミンゴおじさんは話し始めた。
「今、お前を巡って世界政府、海軍、革命軍の連中が必死こいて動き回っているのは知っているな?」
「あぁ、特に海軍のしつこさは身に染みているよ……あと、革命軍って連中も前に大将から逃げる時に手を貸してくれた記憶があるな」
「その革命軍は今、天竜人への反逆に際してお前を旗頭にしようとする動きがあるようだ」
「俺を……? この間初めて会ったくらいだが……」
「フッフッフッフ、奴らは明確なシンボルが欲しいだけなのさ。例えそれがお前という、怖いもの知らずの化け物でも構わねェ。それで革命が成されるなら幸せなのさ」
「ふーん……」
「世界政府は革命が伝播していく今の状況を恐れているようだな。なんせ、お前を七武海に招こうという動きも出ているくらいだ」
「俺を七武海に? ……自分で言うのもなんだが、俺、天竜人殺しだぞ? 本当になれるのか?」
「どうだろうな……だが、案外不可能ではないのかもしれねェ。それくらい、世界政府は今必死だ。お前を七武海に招き、実質的に世界政府に屈服すれば革命の動きを抑えられると考えてもおかしくはない」
「俺が七武海、か」
「フッフッフッフ、もし本当に七武海になれた時は先輩として歓迎してやるよ」
取り敢えず、ドフラミンゴの話はここで終わりらしい。
俺は招かれておきながら相手の提案を全部断った立場なのだが、意外にも寛容なドフラミンゴはこの屋敷を出るまでは客人として扱うことを約束してくれた。
「俺がもてなすと言ったんだ。もてなしをさせてくれ」とも。
なんか、意外といい奴だったな……。
その後、ドフラミンゴに言われるままに“くま”の話を聞くべく彼が滞在している部屋を訪ねたが、
【急用で席を空ける。明日の午後には戻ってくる】とだけ書き置きが残されてあった。
「……ま、久々の休みだ。ゆっくりするか」
ここは海軍大将が来ない楽園の地。
同じく暇しているらしいドフラミンゴと二人で飲むことになった。
美味い酒を飲み、美味い飯を食い、話をする。
ごく普通の行為だが、俺はこの普通を追い求めていたんだと今更ながら気が付いた。
ドフラミンゴなんて本編での所業を知っているので全然仲良くするつもりなんてなかったのだが、なんか妙に話が合う。
「――で、俺は黄猿師匠に言ってやったんだよ。“流石は天竜人を殺した蹴り”っつってな!」
「フッフッフッフ! いいねェ!」
アホな話で盛り上がりつつ、ひたすら酒を飲みまくる。
いやー、最高! クソ楽しいっすわ!
「……なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」
「なんだ?」
お互いに話すこともなくなってきたタイミングでドフラミンゴは切り出した。
「――天竜人を殺すってのはどんな気分だ?」
口元は笑っているように見えるが、サングラス越しの視線は真剣だった。
「気分……気分ねぇ……」
自分の中でいろいろと考えてみたが、結局答えは出なかった。
「――ふん。気分も何もあるか。俺の進行方向にアイツらがいただけだ。悪いとは思っているが、人には寿命ってもんがあるだろ? 俺にも来るべき時がきたら同じように死ぬだけさ」
「フッフッフッフ、そうか。そんなもんか……」
もっと苛烈に反応をするかと思っていたが、意外と穏やかな様子。
もしかしたらアルコールが回ってきたのかもしれない。
……チャンスだな。
「で、どうしてそんなことを聞くんだ?」
「フッフッフッフ、なーに、単に興味があっただけだ」
「アンタが
「――――」
弛緩していた空気が張りつめる。
部屋の空気が凍った。
さーて、正念場だぞキリア。
気合い入れろ。
「ドンキホーテ……どっかで聞いたことある名前だと思っていたんだが、その反応を見る感じ、当たりだったようだな」
「……鎌をかけたってのか。この俺に」
「あぁ、あの
ドフラミンゴの額に血管が浮き出る。
それと同時、強烈なプレッシャーのようなものが全身を襲い掛って来た。
これは……覇王色の覇気か。
コントロールしていた酔いがすっかり醒めてしまった。
「なんだ、威嚇か? 俺も吠えた方がいいか?」
「……フッフッフッフ、随分と年上を舐め腐った奴だ。生意気な奴は嫌いじゃないが、流石に鬱陶しいな小僧ォ……!」
「おいおい、そう本気になるなよ。俺はただ事実確認をしただけだ。何もアンタを脅しているわけじゃない。楽しくいこうぜ、
「ッ⁉ ……なるほど、俺の期待していたタイプじゃねぇが、なかなかいい性格をしている……! いいぞ、小僧。好きに話してみろ。ただし俺が気に食わない内容だったら殺す」
おーおー、物騒なこって。
俺は裏社会で会計士をしていた時のことを思い出しながら口を開いた。
「
「……取引、だと?」
「お前の欲しいものをやる。そして、お前にとって不都合な事実については口外しないことを約束しよう。その代わりに――」
「代わりに?」
俺は望みを口にした。
「俺を七武海にしろ」
可愛い後輩からのお願い、当然聞いてくれるよね!