ガリレオの従姪   作:けーてぃー

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憑霊く2

 

 

 

憑霊(とりつ)く2

 

 既に夕日も沈み、夜の帳が下りた頃。

 とある一台の国産セダン車が、路上に停車している。運転席には人影があった。右手で掴んだハンドルを、指の腹で、とんっ、と一度だけ叩く。無機質な音が車内に響いた。

 運転席の窓から、道路沿いに建った小綺麗なアパートの方へと、視線を向ける。

 伊川琴音の部屋、一○五号室の電気が点いていることを確認し、イヤホンを耳に挿して、受信機のスイッチを入れた。

 ザーザーと、数瞬、ノイズが走った。不快な音が止むと、すぐにクリアな音が聴こえてくる。伊川琴音の部屋に仕込んだ盗聴器が拾った音だ。

 笑い声が聴こえた。それも、数人の哄笑が混ざったような声だった。もちろん、伊川琴音のものではない。

 今、あの部屋には彼女一人しかいないはずだった。テレビでも観ているのだろう、つまらない音に辟易とする。

 思わず舌打ちが漏れた。琴音には同い年の恋人がいたはずだが、最近は、部屋に連れ込んだり電話をかけたりという事をしていない。おそらく、その恋人とは既に別れたのだろう。

 今日もハズレか、と意気消沈しかけたところで、イヤホン越しに電話の着信音が鳴った。

 

——はい、もしもし——

 

 琴音の声が聴こえた。耳に挿さったイヤホンを手で押さえて、姿勢を正す。お誂え向きに、耳障りだったテレビの音が小さくなった。リモコンで音量を下げたらしい。

 

——ええ、大丈夫よ。テレビ観てたところ。ああ、いいの、暇だから適当に流してただけだから——

 

 仕方のないことではあるが、電話相手の声が聴こえないのは不満であった。家庭用電話機ならば、電話機にも盗聴器を仕込むことで相手の声も聴くことができるのだが、最近の一人暮らしの学生は、家庭用の電話は設置していないことが多い。琴音もその一人だった。

 電話相手は、特に重要な用件があって電話をかけてきたわけではないようだ。聴いていてもつまらない雑談が、無為に続いていく。

 

——そうね、私も後輩が出来てうれしいわ——

 

 相手は後輩らしいが、大学の後輩だろうか。彼女はバーのようなところでバイトをしているはずだから、そこの後輩という可能性もある。琴音の声だけでは判断がつかなかった。

 時折、サヨコちゃん、という名前を呼んでいるのが聴こえた。相手は女か、と少しがっかりした。

 他人のプライベートを盗み聴く下卑た趣味。どうせ聴くなら、やはり、出来るだけ秘密めいた音を聴きたくなる。女同士のどうでもいい会話など、いくら聴いても心が沸き立つ事はなかった。

 

——ええ、それじゃ、またね。バイバイ、おやすみ——

 

 電話が終わると、また、テレビの音量が大きくなった。

 琴音の部屋は、最近、ハズレが多い。恋人がいた頃は、彼女の日常を聴くのも楽しかったのだが、やはり、彼氏のいない女の生活など、面白くもなんともない。

 人好きのする顔をした若い女だから、そのうちまた、恋人の一人や二人できるだろう。その時まで、琴音の部屋の音を聴くのはやめておこうか、と思った。

 受信機のスイッチをオフにして、ダッシュボードにしまった。そして、また新しく、違う周波数の受信機を取り出す。

 一○五号室の伊川琴音は期待はずれだったので、次の部屋は当たりであることを望む。次のターゲット、一○一号室の住人も、女子大生だった。

 食いしばった歯の隙間から、細い息が抜けていく。昏い笑みが浮かぶのを自覚した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝都大学のキャンパス中央あたりにある図書館の前には、真ん中に噴水が流れる、西洋風の庭園があった。その庭園に置かれたベンチに、玲於奈と小夜子は並んで座っていた。

 

 小夜子の細い指の上を五百円玉がパタパタと転がっていく。

 五百円玉が人差し指の上から、半回転して中指へ、また半回転して薬指へ。そして薬指と小指の間から、親指を使って手のひら側へ抜き取り、また人差し指の上へと五百円玉を乗せる。

 初心者ゆえのぎこちなさはあったが、練習を始めたばかりにしては悪くないコインロールだった。

 

「そうそう、上手いよ。上達早いね」玲於奈が誉めると、小夜子は照れくさそうに笑った。

「暇な時間はこればっかりやってるんだ。割と凝り性なんだよね、わたし」

「嵌るのはいいけど、勉強の方もちゃんとやりなよ?」

「いいのいいの、そっちも試験前に玲於奈に教えてもらうから」

「もう、あんまり頼らないでよ。私だって初めての定期試験なんだから、どうなるかわかんないよ」

「まあまあ、まだ五月だし、焦っても仕方ないよ」

 

 小夜子は握りしめた五百円玉をカーディガンのポケットにしまい、玲於奈の肩をポンと叩いた。

 

「それよりもさ、なんか他にも、今すぐできる手品教えてくれない? わたしも誰かに披露してみたいんだよね」

「今すぐ? まあ、そんなに練習しなくてもできる手品はいくつかあるけれど」

 

 マジックショップなどで売っているギミック付きの道具を、玲於奈はいくつか持っている。そういう道具を使えば、比較的簡単に手品を披露することはできるが、生憎、いまは何も持ってきていなかった。

 技術的要素が介入しないトランプマジックなどもそれなりに知っているが、さてどうしようか、と顎を指で擦ること数秒、ちょうどいい名案が思い浮かんだ。

 玲於奈が今日、大学に着てきたジャケットには、胸ポケットにちょっとした細工が施されている。

 

「よし、じゃあ、これ着てくれる?」ジャケットを脱いだ玲於奈は、小夜子に手渡す。

「いいけど、なんで?」

「このジャケットを使う、とても簡単な手品を教えてあげるわ」

「本当? どんなの?」

「チェスが途轍もなく強くなる手品よ」

 

 チェスが強くなるとは、どういうことだろうか。あまりよくわからなかったが、小夜子は自分が着ているカーディガンを脱いで、素直にジャケットを受け取った。

 

 

 

 

 高野小夜子が進学先に帝都大学理工学部を選んだのは、はっきりいえば至極適当な理由であった。

 勉強は幼い頃から得意だった。高校の担任との進路相談でも、頑張れば大抵の大学には入れるだろうとお墨付きをもらったので、自分の偏差値と相談した結果、とりあえず帝都大学を目指すことにした。

 学部に関しては、文系よりは理系に興味があったので、ならば理工学部だろうと即決した。将来への明確な展望などは、高校の頃はもちろんのこと、大学生になった今でも持っていない。

 なんとなく、科学者とか格好いいかもな、とか、教員免許は取るつもりだから高校教師なんてのも有りかも、とは思っていたが、差し当たっては、いま出来ることを全力で楽しもうと心に決めている。

 よくいえば自由奔放、悪くいえば行き当たりばったりが信条であった。

 入学してから最初に仲良くなった友人である玲於奈の影響を受けて、手品にのめり込もうとしているのも、そんな信条に従った結果だった。

 

 いま、小夜子は玲於奈から受け取ったジャケットを着て、帝都大学理学部の建物をひとり歩いている。階段を昇り、廊下を進むと、目的の場所があった。

 ドアには第十三研究室と書かれた札が出ていて、少し古びた行き先表示板が張ってあった。その表示板によると、小夜子が会おうとしている人物は在室中らしい。

 ドアをノックすると、どうぞ、という無愛想な声が聴こえた。

 

「お邪魔します」

 

 小夜子が入室すると、冷めた表情をした白衣の男が、彼女に顔を向けた。縁なしの眼鏡が良く似合っている。

 男は自分の机に座り、マグカップでインスタントコーヒーを飲んでいた。部屋の中に彼以外の姿はない。小夜子はゆっくりと近づいて、「お暇ですか?」と声をかけた。

 

「暇、か……その言葉が、このあとの講義の予定について訊ねたものならば、今日はもうその予定はないと答えざるを得ない……しかし、やるべきことは何も無いのかという意味の質問ならば、答えは否だ。やることはそれなりに、いくらでもある」男はマグカップを机に置いた。「例えば、出来の良し悪し以前に、著作権についてから教えなければならない学生の、レポートの採点など、だ」

 

 男の回りくどい返答に対して、小夜子は思わず吹き出して笑った。突然の破顔に、彼は眉根を寄せた。

 

「なにか、可笑しかっただろうか」

「いえ、失礼しました。聞いていた通りの方だったので、ちょっと驚いてしまいました。ごめんなさい、湯川先生」

 

 湯川学がどういう人間かについて、玲於奈から聞いたのは先程のことだ。彼女曰く、とても頭が良いけれど、理屈っぽいのが玉に瑕。ついたあだ名は変人ガリレオ、らしい。

 

「誰からどういう噂話を聞いたのかは知らないが、用件があるなら早目に本題に入ってくれると有難い。いまは休憩中だが、午後に人が訪ねてくる予定があってね」

「あら、そうなんですね。ちなみにいつ頃ですか?」

 

 湯川はちらりと腕時計に目をやった。

 

「およそ一時間後だ」

「そうですか、じゃあ、本題に入らせてもらいますね。湯川先生、わたしとチェスで勝負をしてください」

「チェス?」意表をつかれた湯川は、眼鏡の奥で目を少し見開いた。「君は、講義内容でなにか質問があってきたのでは無いのか」

「ええ、そもそもわたし、湯川先生の講義はとってませんから。今日は、先生とチェスをやってみたいなと思って訪ねました」

「揶揄っているのかい。暇潰しなら、他を当たってくれ」

「まあまあ、とりあえず、これを読んで頂けますか?」

 

 小夜子は鞄から、封筒を取り出した。封筒には、愛しの玲於奈より、と書いてある。

 差出人の名前を見て、なるほど彼女の仕業かと合点がいった湯川は、封筒を受け取り、表情を変えることなく中にあった手紙を読んだ。

 

「君は、玲於奈の友人か」

「ええ、一緒に奇術研究会というサークルに入りました。今日はちょっと、湯川先生に手品を披露しようかと」

「手品、ね……いいだろう、チェス盤を用意しよう」

 

 湯川は席を立ち、ロッカーにしまってあるチェスセットを取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 草薙がドアを開けると、白衣姿の背中が見えた。静かに椅子に座って、机に頬杖をついている。何をしているのかと近づいてみれば、机の上にはチェス盤があった。

 湯川の目は、チェスの駒に向けられている。意外なことに、湯川側の駒の方が詰んでいる状況だった。

 

「なんだ、負けた試合の検討か。暇そうだな」

 

 草薙が軽口を叩くと、湯川は目を閉じて嘆息した。

 

「退屈凌ぎにやってきた暇な刑事にまで、暇そう、などと言われるとは、よっぽど怠けてみえるのかな、僕は」

「おいおい、俺だってそういつも暇なわけじゃあない。先日まで掛かり切りだった事件がやっと落ち着いたから、時間をみつけて、こいつを持ってきてやったのに」

 

 草薙は提げていた袋から細長い箱を取り出し、チェス盤をよけて机の上に置いた。

 

「日頃の礼、オーバーチュアとかいうワインだ。店員の話じゃあ、まあまあ珍しいものらしいぜ」

「オーパスワンのセカンドか。ノンヴィンテージだが、たしかに希少性はオーパスワンより上だ」

 

 飲んで美味けりゃそれでいい、というのが草薙の酒に対する主義であったが、この友人に進呈する酒に関しては、それなりに良いものを、と思っていた。あまり安価なものを選んで、妙な文句を垂れられても面倒だ。

 

「しかし、このチェスの相手、どんな奴だ? まさか、お前に勝つなんてな」草薙は湯川の対面に腰を下ろした。以前、彼は湯川にチェスで惨敗したことがある。

「別に、僕はこの道のプロフェッショナルというわけでもない。それに、チェスでは負けたが、一応、勝負には勝った」

「はあ?」

 

 勝負に勝ったとは、どういう意味だろうか。湯川が適当な負け惜しみをいうような男とも思えないが。

 

「対局相手は、奇術研究会というサークルの会員だ」

「奇術研究会?」いまはそんなサークルがあるのか、と思った。実は草薙が現役で帝都大に通っているころからあったのだが、生憎、彼は知らなかった。

「この対局は、相手のみ、手品によるイカサマありというルールで戦った。手品のトリックを見破るか、対局で普通に相手を詰ませれば僕の勝ち、というルールだ。残念ながら対局は負けたが、イカサマは見破った」

「なんだそりゃ、変な遊びだな」

「どういうトリックだったか、君にわかるかい?」

 

 草薙は盤面のポーンを一つ摘み、かなり離れたマスにあるキングを蹴散らした。

 

「本来、動けない場所に駒を動かした、とか」

「そんなチンケな小細工じゃあ、子供もだませない」

「取られた駒を、もう一度盤面にもどした?」

「それも無理だ。そもそもチェスの盤は狭い。不自然な動作や駒の増減があれば、必ず気づくだろう」

「そこはほら、相手は奇術師なんだろう? 視線を誘導するとか、手のひらに駒を隠すとかして、なんとかしたんじゃないか」

 

 草薙は、適当な駒を手のひらに握った。大人の手ならば、駒の一つや二つ隠すのは容易い。

 湯川は、僕も最初はそう考えていた、といった。

 たとえどんな手品を使われようと、チェスでイカサマを見破る程度、造作もないはずだった。

 駒の配置を全て憶えていれば、視線を外されようが、駒を隠されようが関係ないからだ。

 

「しかし、対局中、駒の動きや配置に違和感を抱くことは一度もなかった」湯川が断言すると、草薙は唇を尖らせて、むう、と唸った。

 

「わからんな、それでもお前は、手品を見破ったんだろ」

「ああ」

「降参だ。俺にはわからん」

 

 草薙は、軽く両手を挙げる。湯川は、吐息をもらして短く笑った。

 

「対局者は、穴を開けた胸ポケットにスマートフォンを仕込んでいた。そいつのカメラで盤面を写し、髪に隠したブルートゥースイヤホンで外部とビデオ通話をしていたんだ」湯川は楽しそうにタネをバラした。

「えっ」

「外部にいる協力者は、チェスソフトを使って最善手を導き出し、対局者に指示していた。チェスは趣味で嗜む程度の僕の腕では、最新のAIが導入されたチェスソフトには敵わない」

「なんだそりゃ、それが手品かよ」

「マジシャンが手品を見せるというならば、手先を使ったテクニックに頼るだろう……そんな思い込みによる盲点をついたトリックだ。中々、巧妙だと思うよ」湯川は眼鏡のブリッジを指でそっと押し上げた。

「思い込みによる盲点ねえ」草薙は、何かを思い出そうとするように虚空を見上げる。

 

 とある数学者が、似たようなことを言っていた。そんな記憶が頭をよぎった。

 

——難しくはありません。ただ、思い込みによる盲点をついているだけです——

——例えば、幾何の問題に見せかけて、関数の問題であるとか——

 

 図らずも、湯川と視線が交錯する。何を考えていたのか、見透かされたような気がした。

 

「そもそも奇術、手品とは、様々な方法で人の目を欺き、不思議な現象が起きたようにみせる芸のことだ」湯川がいった。「彼女たちの演った芸は、充分、奇術と呼ぶに値するだろう。なにしろ、普通の学生が、プロ並みのチェスの腕を披露したのだから」

「彼女? 相手は女か。ふうん、それはまた、変なことを考えつく女だな」

「ああ、まあ、おそらくこのトリックを考えたであろう協力者の方は、子供の頃からそういう変わった発想をするところがあった」

「子供の頃から?」そんな昔から知っている相手なのか、と疑問が浮かんだ。「知り合いか誰かの子供か?」

 

「知り合いの子供というか、親戚だな」

 

 なんでもないことのようにあっさりと、湯川はいった。はっ、と草薙は大口を開け、間の抜けた表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 小夜子はドア横の読み取り機に、IC付き学生証を通した。かちっ、という音と共に、コンピュータ室の鍵が開く。

 部屋の中を見回すと、椅子を回転させて振り向いた玲於奈と目があった。小夜子は手招きして部屋の外へと彼女を誘う。このコンピュータ室は、あまり私語ができる雰囲気ではなかった。

 

「残念、ばれちゃったわね」廊下に出てすぐに、玲於奈がいった。

「そうだね、でも、結構たのしかったよ」小夜子と玲於奈は、交換していたジャケットとカーディガンを脱ぎ、相手に返した。

 

 小夜子はチェスについて、ひと通りのルールくらいは知っていたが、ほぼド素人だ。湯川のような熟練者を相手に勝利するというのは、イカサマをしているとはいえ貴重な体験だった。

 

「こういう手品もあるんだね」小夜子がいった。

「サクラとか、協力者と秘密裏に連絡を取るってのは、ひとつの手法としてあるわよ。ただ、あまり多用するのはおすすめしないけれど。マジック愛好家には、サクラ厳禁派とか結構いるから」

「ああ、確かに、サクラに答えを教えてもらってたりとかしたら、そんな簡単なタネなのかよって、ちょっと興醒めかも」

「まあ、どんな簡単なトリックでも、見せ方次第だけどね」

 

 そういって玲於奈は、ポケットから取り出したコインを指で真上に弾いた。空中に放たれたコインが胸の高さあたりまで落ちてきたところで、素早く両手を交差させて受けとる。小夜子の目には、右手で掴んだようにみえた。

 

「コインはどっちでしょうか?」両手を小夜子の前に突き出す。

「みぎて」小夜子は即答した。

 

 玲於奈が右手を開いたが、コインはない。

 

「じゃあ、ひだりて?」

「残念、左にもないわよ」その言葉通り、左手も開くがそこにコインはなかった。

「どこに消したの?」

「小夜子のカーディガンのポケット」

 

 そういわれて、小夜子はポケットに両手を突っ込んだ。右手に、コインの感触があった。慌てて掴み、取り出す。

 

「ええっ……て、これ、わたしの五百円玉じゃないの」

「ばれたか」

 

 その五百円玉は、コインロールの練習用に持ち歩いているものだった。財布にはしまわず、そのままポケットに入れている。

 玲於奈がその気になれば、小夜子のポケットに別のコインを仕込んで、本当にテレポーテーションしたように見せることもできたが、今回はやめておいた。

 

「本当は、ジャケットの袖に隠したのよ」

 

 玲於奈は左手を受け皿にして、右手の袖を下に向ける。軽く振ると、袖口からコインが出てきた。

 

「なるほど、わたしも明日からジャケット着ようかな」

「ジャケットじゃなくても、袖に余裕があれば、どんな服でもできるわ。好きな服を着ればいいわよ」

 

 玲於奈はもう一度、コインを指で弾いた。きいん、と、綺麗な音が鳴った。

 

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