翳り裂く欲望   作:火野ミライ

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3:出会いと変身とシンフォギア

時は前回のラストから少し巻き戻る。

 

「お買い上げありがとうございました!」

 

初々しいバイト店員の声を背に映司はコンビニを後にする。購入したソーダ缶のプルタブを開け口に含みながら辺りを探索を再開する映司。彼の記憶の中にある街並みとどこか似ており、どこか違う。その僅かな差異を楽しみながらも彼の視線は日常を覆がする人々を見つめていた。

 

オーズの戦いを終えた後の映司は基本海外を旅しており、彼が日本に訪れた際には何かしらの事件の対処をしていた事もあって平和な日本を見るのは何気に10年ぶり。仕事の忙しさに追われる人、甘酸っぱいにオーラを放つ男女、子供の我儘に翻弄される親。そんなありきたりな日常を見るのは何時ぶりだろうか?

 

そんな事を考えながら雨上がりの町中を進む映司。しかしその平穏はすぐに崩れ去った。何の脈絡もなく胸騒ぎを覚えたその時、後方より女性の悲鳴が響き渡る。思わず振り返った先にいたのは輪郭だけが浮かび上がった透明の生命体。

 

「キャーーーーアアアアッ!」

 

「ノイズよ」

 

その生物群を見るや否や周囲の人々は恐怖の声を上げ怪物・ノイズから逃げていく。

 

「____ッ!」

 

状況の把握が出来ずにいた映司。だがすぐさま人々がノイズを恐れる理由を察したのだった。ノイズに触れられ絶望の表情を浮かべながら灰となって死んでいくの目にして。唾液を飲み緊張が走る映司。

 

次はランドセルを背負う少年を狙うノイズ。その姿を目にした瞬間、考えるよりも先に映司は走り出していた。いつもの様に懐から3つの窪みのあるオーズドライバーを腰に巻き、続けて取り出したメダルを窪みにはめる。そのままベルトの前面を傾け、右腰に出現した金と黒の円状のアイテム・オースキャナーをベルトに滑らせメダルを連続スキャン。

 

キン!キン!キン!

「変身!」

 

次の瞬間、映司の周囲に無数のメダルがスロットの様に舞う。それを気にも留めずスキャナーを胸の前へ。

 

タカ!トラ!バッタ! 

 

スキャナー彼発せられるエネルギーの振動。それが使用者の映司にのみが歌と言う形で捉えられると同時に、その余波がノイズへ浴び去られるとその身体に色が付く。ノイズに変化が訪れると同時に浮かび上がっていたメダルの内の3枚が一つとなり、映司の身体に刻まれる。

 

動物の意匠が刻まれたコアメダルの力を受け肉体が変化。この世界では存在しないはずの仮面ライダーへと変身する。バッタの力を内包した脚部を使い跳躍と同時にノイズを蹴り上げ吹き飛ばす。

 

「大丈夫?」

 

「__うん!」

 

少年へと黄色の外骨格に覆われた手のを差し伸べる映司……いや、仮面ライダーオーズ。その手を掴み立ち上がった少年。お礼の言葉と共にノイズから逃げ去って行く姿に背を向け、進行するノイズへと緑の瞳を向ける。

 

なぜベルトとメダルを持っているのか? その疑問を浮かべるよりも先に腕の爪、トラクローを展開し無意識にいつもの構えを取る。目の前の怪物が何であれ、映司がする事は一つ。

 

「ハアッ!」

 

目の前で助けを求める人達へ救いの手を伸ばす事。ただそれだけだった。

 


 

そして時間は現在へ。人々の避難も終わり、戦闘音が響き渡る大通り。オーズの爪がノイズを切り裂き、響の拳がノイズを砕く。

 

風が吹くたび周囲に灰が舞い上がるがそれを気にも留めず歌い続ける響。シンフォギアと呼ばれる鎧から流れるリズムに合わせて紡がれる旋律により発生する特殊なエネルギー。それにより響はノイズと戦う力を得るのだ。

 

一方のオーズはノイズとまともに戦闘できるかは不明。しいて言うのであれば映司の未知なる怪物(ノイズ)から人々を救いたいと言う欲望にメダルが答えているからだろう。明確な理由は映司にはどうでもいいのだ。戦えるから戦う、変身できなくても変わらない思いを胸に蹴りを放つ。

 

「っく!」

 

「空の敵は俺に任せて、君は地上の敵を!」

 

「____え?」

 

空から一方的に空爆を受ける両者。攻撃がやんだ一瞬の隙に隣で駆けだそうとした響に言葉を掛けると映司はベルトのメダルを交換。セットされた同色・同系統のメダルが共鳴し淡い光を放つ中メダルをスキャン。

 

キン!キン!キン! タカ!クジャク!コンドル! タ~ジャ~ドルゥ~~!

 

その姿は不死鳥の様に華麗に空を舞う炎の形態、映司にとっていろいろと思い出深い姿。胸部に不死鳥が刻まれた紅蓮の姿・タジャドルコンボへ。頭部のタカヘッドの瞳が赤く染まり、胸部のオーラングサークルから浮かび上がった模様が左腕の武装へ変化。背中から翼を広げ空へ舞い上がるとタジャスピナーから火球を放ち次々とノイズを撃破していく。

 

「……………」

 

頭上で行われている空中戦を唖然と眺めていた響であったがすぐさま意識を目の前のノイズへと向け一気に駆ける。ノイズとの戦いの中で身についた我流の拳が次々とノイズを貫きチリと化す。

 

響が歌と他共に口に紡ぐ後ろ向きな復讐の音色。理不尽に対する怒りも悲しみも苦しみも拳に込める事で体の内から外へと放出する。だがいくら響が拳を振るおうともその心が晴れる事は無い。

 

「___あの子に手を届かせるのは、大変だな」

 

光を失い、絶望の底なし沼から抜け出せなくなった悲鳴のような歌詞。その歌を強化された聴覚で聞き続ける映司が小さく言葉を零す。それでもクジャクの羽を模した光弾で次々と空を覆いつくすノイズを撃破するのは流石と言った所だろうか。

 

スキャニングチャージ!

 

残るは10メートル級のノイズのみとなったその時、両者は必殺の体制へと入る。右腕にエネルギーを溜める響、ベルトのメダルを再スキャンし力を開放するオーズ。

 

「ハァァアアアーーーー!」

 

大地を一気に駆け上がり拳を振るいノイズと接触瞬間、腕のジャッキが稼働しパイルバンカーの要領でダメージを称える一撃。

 

「セイヤァァアアアアーーーーー!」

 

赤いリングを潜り抜け両足をノイズへ向けると足が変化し猛禽類のようなツメへ、その状態のまま繰り出す燃え盛る音速の蹴りプロミネンスドロップ。

 

空と地上から必殺技を受け、胴体に2つの穴が開通すると身体を終え上がらせ喪失。全ての敵を倒した二人は改めて視線を合わせる。

 

「俺はオーズ、仮面ライダーオーズ。火野映司だ、よろしく」

 

「フン……!」

 

優しい声で自己紹介をし手を指し伸ばした映司を無視し背を向ける響。その様子に仮面の下で苦笑いを浮かべる中、めげずに正面に回り込み声を掛け続ける。

 

「さっきはありがとう、おかげで助かったよ。君が来てくれなきゃ、もっと多くの人が犠牲になってたからさ」

 

「_____(私は……)」

 

再び背を向けこの場去ろうと歩み始めた響の後を追おうとしたその時、ビルの影から1本の刃が二人に目掛けて放たれる。

 

「ハァーーーッ!」

 

「……っく!」

 

それぞれが刃を対処した直後、響の頭上より振り下ろされる刀。咄嗟に腕の装甲を盾にする事で直撃を防いだ響の瞳に映るのは青く靡く髪。襲撃者は不意を突いた斬撃が防がれたと分かるや否や後方へ跳躍し距離を取る。

 

「今日こそ二課に来てもらうぞ、立花!」

 

「……風鳴、翼」

 

刀の切先を自身に向ける襲撃者の名を呟く響。似て異なるシンフォギアに身を包む翼が一気に距離を包むと迷いなく刀を振り下ろす。

 

「なにがどうなってるの?」

 

困惑する映司を他所にぶつかり合う両者。しかし戦局は一方的だった。翼の激しい斬撃の嵐に響は防ぐので手一杯、反撃の余地すら許されずに不意に放たれた蹴りをもろに受け吹き飛ばされる。

 

「良く関係性が分からないけど、一方的すぎるだろ!」

 

手に持つ刀を巨大化させ響に向けて蹴り放った翼。迫りくる鉄の塊に思わず目を瞑り視線を逸らす。だがいつまで来ぬ痛みに金属が地面に落ちた音に疑問を持ち視線を戻すとそこには、足を振りぬいたオーズの背中があった。

 

「…………? __ッ! な、なんであんたは関係ないのに」

 

「でも、朝からの長い付き合いでしょ?」

 

響の疑問にさも当然の様に答える映司。

 

「アンノウン、貴様が立花を庇い立てするのなら容赦はしない」

 

「話し合いでの解決は無理か…」

 

一方の翼が怒りの表情に顔を染め映司を睨みつけ新たな獲物を手に取り向ける。そんな彼女の様子に衝突は避けられないと仮面の下で表情を歪めながらベルトのメダルを抜き、新たなダルを装填・スキャン。

 

キン!キン!キン! ライオン!カマキリ!バッタ!

 

三度姿を変えると手に持つ緑の刃を翼へと向け互いに睨み合う。一瞬の隙も許さぬ緊張感の中、雨音が曲を奏でるのだった。




〈作者コメント〉

最近財団B癒えかけた傷を開かれて上に塩と泥を塗りこまれたので誤魔化すように完成させました。読者の皆さん的に現在予約受付中のアレはどうですか?
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