ヤーナムの詩人狩人   作:はらはら

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ヤーナム編
狩人の目覚め


 

 「無意味だ」

 

色の無い空間で少年が目の前にいる男に話しかける…

 

 「俺たちはどちらか一人で良かった」

 

 

 「あいつもそう思ってるさ」

 

少年は目を伏せながらもう言う事はないとばかりに話を打ち切る。

 

まるでいじける様に話す少年に男は苦笑する、自分の事などどうでもいいのだと拗ねるその姿はまさしく唯の子供ようだった。

 

 「そうかな」

 

男は地面に落ちた本を拾い上げる、自分達にとって大切な…だが目を背け続けた過去の悪夢を思い出させる象徴を…

 

 「俺が思うに…まあ想像だが」

 

本の汚れを払いながら男は少年に語りかける

 

 「もし選べるなら、あいつはまた双子を選ぶと思うね」

 

 「…なんで」

 

顔を上げて少年は問う、男は本を差し出して答え述べた。

 

 「喧嘩できるから」

 

男は空を見上げる、空間の外にいる自分達の片割れの存在を感じ取る。

 

 「ダンテが来てる」

 

自分達の…バージルの双子の弟

 

弟に勝つ為にバージルは自分達に分かれた、だが結局は勝てなかった。

 

自分は逃げていただけだったから、過去の悪夢から、自分の弱さから。

 

自分はようやくそれに気付けた

 

過去を見つめ直して、母親の幻影と出会って、そしてネロを見て…

 

 「…だから?また戦うのか?俺は負けたのに」

 

だが目の前の自分は違う、まだ逃げたままだ、ならば振り返らせる。

 

 「決まってる、負けっぱなしじゃ終われないだろう」

 

自分はvと呼ばれた自分は消える、正確にはひとつに戻るのだがそれでも今いる自分が消えるのは事実だ。

 

だから最後にその背中を押してやろう 

 

 「弟と戦うのは嫌いか?」

 

 

少年はしばらく黙り込むそして目を逸らしながら…

 

 「…好きだよ」

 

本心を語った

 

 「なら喧嘩しに行こう」

 

vは本を差し出す

 

 「負けっぱなしの弟をブン殴って、最強になりに行こうじゃないか」

 

そして差し出された本を

 

 「……」

 

少年は受け取った…

 

 

 

 

 

 

 

色の無い世界が消え目の前が光に包まれる、自分達は再び一つに戻る。

 

 

 (お前が笑い)(私は歌う)(お前の喜びがどうか)

 

自分達は消える、そしてバージルは帰ってくる。

 

さあ行こう、あいつに打ち勝ちに。

 

 (ずっと続きますように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"始めようぜバージル最後の喧嘩をよ"

 

 "兄は俺だ貴様には負けん"

 

 

( 何だこれは?夢なのか?)

 

 

"次は負けん、それまでは預けておく"

 

 

(待て、何故意識がある?)

 

 

vは疑問を感じると同時に自分が何処かに寝かされている事を確認する。

 

メス等の医療器具や輸血袋が置いてあるところを見ると診療所か何からしい…

 

 (一体なぜ…それに何だこの匂いは…)

 

自分の体が消失していない事や誰に連れて来られたか、色々な疑問はあるがそれ以上に気になる事があった。

 

 (血の匂い…)

 

そう此処が診療所であることを差し引いてもおかしな程強く香る血の匂い、しかもこの匂いは人のものだけでは無い…

 

 (…悪魔か?いやこの匂いは…)

 

 「獣…?いや…」

 

口に出してからその可能性を否定する、確かに獣臭はするがこれは明らかに人外の者の匂いがする…

 

 

 「うっ!くっ!」

 

こうして居ても仕方ない、寝かされていた診療台から起き上がろうと体を動かすが中々思うようにいかない。

 

ゆっくりと体を動かし足を床に下ろし上半身を起こす

 

 「ぐっぁ…っ」

 

寝ている体を起こす事に成功したが体にまだ倦怠感が残っている、おそらくまだ歩く事は難しいだろう。

 

vは周囲に使える物が無いか探しているとある事に気づく…

 

自分の腕に輸血針が刺さっていた…しかも繋がっている先にはあの匂いの元である血が…

 

 「!!…っぅ!!」

 

それを認識した瞬間思わず一気に引き抜いてしまい腕に傷がつく、しかしそんな事は気にしてはいられない…

 

すぐにこの建物を出る、自分の体に鞭を打ち輸血袋が引っ掛けてあったスタンドを支えにし立ち上がる

 

ゆっくりと部屋の奥にある扉に向かって歩いていくv

 

そして扉を体全体を使って押し開ける

 

 (クソ…)

 

開けた先は階段だった、悪態を吐きながらも手擦りとスタンドを支えにして階段を降りていく。

 

 

 「ハァ…ハァ…」

 

息を切らしながらも何とか階段を降りきる、しかしすぐに降りた先を警戒し周囲を見回す

 

下の階はどうやら一階の様でどうやらここから外に出れるようだ…

 

だがvは警戒を緩めない、何故なら床に妙な者達がいたからだ。

 

白い亡者の様なそいつらを視認してスタンドを持つ手に力を入れる。

 

しかし何やら様子がおかしい、亡者達は自分に何もしてこない、それどころか此方にくるなとばかりに手を押し出してくる

 

目を細めながら亡者達の居る方を見る、彼らが現れた床には夥しい程の血痕があり、何かが暴れた様な後があった…

 

そうまるで獣の爪痕の様な…

 

 

"グルルゥゥゥゥゥゥ"

 

亡者達のいた部屋の奥に視線を向ける、そこには明らかに理性など持ち合わさない狂気を瞳に宿した獣がいた

 

 「ぐっ…」

 

獣から距離を取ろうと後ろに下がる、しかし上手く体を動かせずに両足が絡んで床に叩き付けられる

 

 "グォォォォォ"

 

床に倒れた音を聞いて此方に気付いた獣が向かってくる。

 

vは上半身を起こしスタンドを両手に持ち構える、しかし…

 

 "ガァァァァァ"

 

獣が腕を振り下ろし、その手にある鋭い爪がvの持つスタンドを両断する、そしてそのまま爪を振り上げ裏拳をくらう。

 

 「グハァ!!」

 

くらった勢いのまま吹き飛ばされ壁に叩き付けられる、痛みに悶え立ち上がる事が出来ない…

 

 "グルルルルルルル"

 

そうしている間にも獣が迫ってくる、だが逃げることもできない

 

 死ぬ、死ぬ、死ぬ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「イィィヤッハァァァァァ!!バーベキューだ!!」

 

目の前の獣に落雷が落ちた

 

"ガァァァァァァァァ"

 

自分の体を焼かれ身をよじり絶叫をあげる、すると獣の影から刃が飛びだしその身を貫く

 

もはや瀕死の状態の獣、そのから飲み込むように床下から泥が溢れてくる、泥は獣をvの前まで運んでくる…

 

vは切断されたスタンドを握りしめその切っ先を獣の体に突き立てる。

 

獣からスタンドを引き抜く、死体から噴水のように血が飛び散りvの体を濡らしていく。

 

 「ヨォ!vチャン久しぶりー!!アレそんな久しぶりでもなかったか?」

 

声のする方に目を向ける、相も変わらず喧しいが懐かしいその声

 

 「まぁイイヤ!ネコちゃんもデカイのも会いたかったってよ!そんじゃマ取り敢えず…」

 

 グリフォン、シャドウ、ナイトメア、バージルの悪夢達

 

 「契約しようぜ!!」

 

終わった筈の旅がまた始まった。

 

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