ヤーナムの詩人狩人 作:はらはら
いつものように悪夢から狩人の夢へと帰還したv
初めに目に飛び込んで来たのは燃え盛る工房だった
最初の狩人ゲールマンが拠点としていた場所は業火に包まれ崩れ始めていた
「狩人様、お待ちしておりました」
vの前にいた人形が語りかけてくる
「間も無く夜明け、夜と夢の終わりですね」
「ああ、くだらない現実逃避もこれまでだ」
人形の言葉に冷たく返すvは剣を構えて振り下ろし人形を切断する、剣を鞘にしまい込み月を見上げ告げた
「俺はお前達の子供ではない」
大樹の下にいるゲールマンと向かい合う、互いの視線が交差し車椅子から立ち上がり彼は武器を取り出す
「なるほど、君は介錯を受け入れる気は無いか…」
「当然だ」
何を当たり前の事をとvは言う
「君も何かにのまれたか、狩りか血か、それとも「勘違いしているようだが」?」
ゲールマンの言葉を遮りvは話す
「俺はこの悪夢にいる事を望んではいない、むしろとっとと終わらせたいとすら思っている」
「ならば何故介錯を拒む?受け入れれば獣狩りの夜を終え悪夢から目覚める事が出来る」
「簡単な話だ奴等は俺を逃す気はないからだ」
「…何?」
その言葉にゲールマンは構えをとき疑問を口にする、vは話しを続ける
「元々俺は既に消えた存在だった、だと言うのにこうして今俺はここにいる」
そう自分はバージルに戻った時に消滅した、グリフィン達はその後もしばらく存在していたようだがそれでもvと呼ばれる存在は消えた、それでも自分がここにいる理由
「俺自身も夢だったんだ」
バージルが見た人間としての側面、レッドグレイブやダンテやネロ達と共に行動していた時の記憶…
「それを奴等は夢として写し取り形を作った…」
自分と言う存在を、上位者達の一部かそれとも全てかは分からないが自分を作り上げこの街に紛れ込ませた、ご丁寧に杖や悪夢達も一緒に
「思えば最初から違和感はあった、診療所から目覚めた時に身に覚えのない記憶が頭の中にあった」
あれは恐らくバージルに戻った後のものだろう、記憶を写した時に余分な記憶まで入れてしまった
だが問題はないと判断し自分を作り上げた、それが致命的なミスである事に気付かず
「…何故かね?」
話を聴き終えたゲールマンは質問する
「君が人と人以外の存在から生まれたと言うのは人形から以前聞いた、そして以前にも人ならざる者を狩っていた事も…」
ゲールマンはvについて自身が知り得る事を話す
「だからこそ解らない、何故上位者達は君を作り此処にいる事を望む?君は脅威に慣れど益にはなり得ない、そもそも生み出す事が出来るならもっと自分達にとってやり易い者がいる筈だ」
君である必要がない…ゲールマンはそう告げる
「上位者達だけでは無理だった」
「?」
「だがあの街に関して言えば話は変わる」
クリフォト…魔王を生み出す魔界の大樹
あの樹は斬り倒された、二人のスパーダの息子に、だが…
「上位者共はよりにもよってクリフォトに干渉した」
自分が消え行く前に魔王の種を遺そうとしたクリフォト…
自分達の子供を欲する上位者…
利害は一致し此処に産み出された、vと呼ばれた男が…
人間の女と悪魔の男に愛されていた者を、異形である親を愛せる存在を、だからこそ
「俺を蘇らせたのは、恐らく上位者達の方だろう」
もしクリフォトが蘇らせるとしたら間違いなくユリゼンの方を選ぶだろう
だが上位者達はユリゼンではなくvを選んだ、自分達の子供に相応しい存在として
何よりvは母を求めていたから、助けて欲しかったと愛されたいと願っていたから
だから上位者達はvを選んだ、自分達の愛する我が子として自分達を狩らせその血をもって完全なる上位者の子とする為に…
「奴等を狩り続け…その血を浴びる度に奴等は俺に伝えてきた、愛している、助けてやると」
剣を鞘から引き抜き地面に乱雑に突き立てvは言う
「巫山戯るなっ!!」
これ以上ない程の怒りを顔に顕にしてvは告げた
「貴様らの家族ごっこの代用品等真っ平ごめんだ!!母の愛!?そんな物貴様らに求めてはいない!!」
月を睨んで叫ぶ、自分は本物のバージルどころかvですら無い、過去の思い出も言ってしまえば複製された作り物でしかない…
それでもこの思い出を、輝いていた家族の記憶を奴等は汚し踏み弄った…
母の優しさを、父の温かさを、ムカつく弟との日々を
「そんな奴等を愛せだと!?何の冗談だっ!!」
「…ならば君はどうしたいのかね?」
激昂するvにゲールマンはゆっくりと語りかける
「いくらキミが夢を拒もうとも彼らが君を離そうとしないので在ればなにをしようと意味は無い、私の様に悪夢に囚われ続けるのみだ…」
最早闘うこともないだろうと、崩れ落ちる様に車椅子に座るゲールマン…
「獣狩りの夜は明けた、しかしまた新たな夜が来る…その時に私やキミがどうなるかは解らないが、少なくとも解放されることはない…」
全てを諦めた様にゲールマンは告げる、何もできない唯々受け入れるしかないのだと…
「お前はそれで満足か?」
そんなゲールマンを不愉快そうに見てvは問う
「愛した者を思わせるあの人形に世話をやかれ続けて、思い出の場所を再現した偽りの空間に隔離され続けるのがそんなに幸せか?そんなに悪夢と向き合うのが怖いのか?」
その言葉にゲールマンは静かに反論する、そんな訳ないと
「君が何れだけ私の事を知り得たか解らないが…この夢は私にとって苦痛であれど安らぎにはなり得ない、愚かな自分が侵した過ちを見せ続けられるのだ…そんなものが幸福である筈だがないだろう?」
自分の心情を明かしたゲールマンは続ける
「だが何れだけ私がこの夢を苦痛に感じても、上位者はこれを終わらせるつもりは無い…この世界を生み出した者たちが望む限り、終わりは来ないのだ…」
話を終え顔を俯かせるゲールマンにvは短く告げる
「ならばそこで見ていろ、悪夢が終わる瞬間を」
何を?とゲールマンが顔を上げた瞬間
世界は黒く染まった