ヤーナムの詩人狩人   作:はらはら

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ブラボ編はとりあえず終わりです


始まり

 

「包帯を持ってきて!それから消毒薬と鎮静剤!急いで!!」

 

「は、はい!」

 

「お姉ちゃんコレはどうすれば良い?」

 

「ありがとうね、汚れた服はアリアンナさんに渡して洗ってもらってね、そこサボらない!!」

 

「は〜い」

 

大勢の怪我人を捌きながら指示を出していく女性、彼女はヨセフカ

 

このヨセフカ診療所の医者である…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の獣狩りのよる惨劇から一週間が経った…

 

診療所に倒れていたヨセフカはすぐに自分の体を見て驚愕した、自分の体が人の姿に戻っていたのだ…

 

獣狩りの夜、自分と同じ顔をした女に異界の者に変えられ患者達と一緒に実験材料にされ絶望していた

 

あの偽物は殺されたが例え女が死んだとしても自分達は元には戻れない

 

いっそのこと自殺しようとすら考えた

 

しかし女を殺した狩人の男が自分達に言ったのだ

 

「元に戻りたければ夜の終わりまで生き残れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは診療所の部屋の中で患者達と共に身を寄せ合い隠れていた…

 

獣や他の狩人達に見つからない様に

 

異形の姿になってしまった事や、長い夜の恐怖から心が壊れそうになったが、それでも彼を信じて心を奮い立たせた…

 

そしてあの黒い波がきた…

 

絶望も恐怖も全て飲み込む黒い波…異形になった自分達も例外なく飲み込まれ気がついたら朝を迎えていた…あの夜の出来事を全て洗い流された状態で

 

 

 

「ふぅ〜これでひと段落ね」

 

「先生…私お腹空いた…」

 

患者達を全て診終わりようやくひと段落した頃には日が暮れ始めていた、手伝いをしてくれていた少女が空腹を訴えてくる…

 

「ああ、ごめんなさい!もうそんな時間!すぐに準備するから待っててねヴィオラ!」

 

ヴィオラと呼ばれた少女はゆっくり頷く…そんな彼女の頭を撫でヨセフカは厨房へ向かう

 

彼女の名前は本来の名前ではない…彼女は異界の使者へと姿を変えられ、その時の精神的ショックで自分の過去を失ってしまった

 

今は数少ない自分の持ち物の中にあったブローチに記されていた名前を名乗り暮らしている…

 

(そう言えばこの娘も彼が連れて来たのよね…)

 

あの女を殺した狩人…ヴィオラを肩に担いで扉を開け置いていきそのまま何も言わずに出て行った

 

今いる患者だけで大変だと伝えた筈なのに…しかも何も言わないときた…

 

だがそのまま放り出すわけにもいかず、簡単な手伝いをしてもらっていた

 

そして自分や患者達と一緒に実験材料にされた…

 

今思えば彼は責任を感じていたのだろう、彼のせいでは決して無いのに…

 

だからこそ扉越しに異変を感じてすぐに踏み込んだ、窓から侵入し偽物を鉈で斬り裂き自分達を捜しにきた

 

「まぁ、本人は認めないでしょうけど」

 

扉越しにしか会話をした事はないが、それでも何となくわかった

 

彼は素直ではないと…

 

 

 

 

「アデーラさん、アリアンナさん、食事の用意が出来たのでご一緒にどうですか?」

 

「あら?良いの?」

 

「あ…ありがとうございます」

 

二人の女性に配膳を頼みながら、食器にシチューを注いでいく

 

オドン教会から来た二人には人手不足の中色々助けられているが、それでもまるで手が足りない

 

動ける街の住民や狩人たちもいる事はいるが住民達は自分達の事で手一杯で狩人はハッキリ言って戦力にならない…

 

何というかダメだ、一部を除いて血生臭いことしか役に立たないのでは?と考えてしまう程だめだった

 

医療教会の人間が消えた今、医者は自分しかいないのだがそれでも人手が欲しい…

 

だからこそ彼女たちの助力はありがたかった…医療の知識はないにしてもその他の仕事をサポートしてくれるので助かっている、だが

 

 

(せめて彼がいてくれたらね…)

 

 

やはり考えてしまう、彼が居れば心強いのにと…

 

医療の知識があるかは関係ない、彼がいるだけで良いそれだけで自分達の支えになる

 

だが彼はいない…このヤーナムから完全に姿を消してしまった

 

診療所を訪れる他の狩人達に彼の行方を訪ねたが皆知らないの一言だ

 

「一体どこに行ったのかしらね…」

 

まだお礼も言えていないのに、そうため息をつく様に呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪夢は上書きされた、しかし全てではない…

 

狩人達がヤーナムの探索を行い街を徘徊している、動員人数数十人の大規模なパトロールを行なっている理由はただ一つ、獣の生き残りを探し狩る為だ

 

以前とは違い獣達は滅多に姿を現さなくなった、現れるのは夜…人通りの少ない裏路地や水路などにしか姿を見せず数も多くて二、三匹だった…

 

数十人の狩人に多くても三匹、下手をすれば遭遇しない日もある…

 

「…ああ、もっと狩りたい」

 

狩人の一人がそう言うと頭に拳が落とされる

 

「いった!!何するんだジジイ!!」

 

「ふざけた事を言うからだ、我々は皆の安全と病の発症者の手向が目的だ…血に酔い狩りを愉しむ為ではない」

 

その一言に暴言を吐いた狩人は押し黙る…

 

その様子を見て握った拳を下ろし老人は状況を確認する

 

「市街にいる獣は狩り終えた様だな…」

 

「しかしまたしばらくすれば新たに現れます…やはり聖堂街の方から流れて来ているのかと…」

 

「やはりか…」

 

老人の言葉に若い狩人が推測する…それに対して老人ゲールマンは同意して頷きしばらく考えた後皆に指示を出す

 

「なら私が聖堂街に向かうとしよう…他の者たちは民間人の護衛についてくれ」

 

「えっ!一人でですか!?」

 

ゲールマンの言葉に動揺する若き狩人、他の狩人達も目を見開いている

 

「ああそうだ、とりあえず三日程調査して戻ってくる、三日間経っても戻って来なければまぁ死んだと思ってくれ…」

 

 

そう言ってゲールマンは聖堂街へ向かう…自分は他の狩人達と違いもう夢を見ない…恐らく死んだとしてもやり直しは効かないだろう

 

だがそれで良い、元々それが自然なのだ…

 

彼は復活した両足を動かし歩いていく…自分の犯してしまった罪を少しでも償う為に、後ろではなく前を向いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海の見える断崖絶壁の崖、そこに一人の男がいた

 

杖をついて本を読むその男はしばらくすると本を閉じて呟く

 

「私を誕生せしめた天使は言った、歓喜によって創造されし小さき者よ、愛せ、全てが敵となろうとも」

 

自分の好きな詩の一節を口に出し男は、vは海を眺める…

 

あの月の魔物を滅した後、彼はその力と記憶を奪いヤーナムを解放した…

 

しかし幾ら力を持っていても自分は夢の中だけの存在…

 

消える事を覚悟していたのだが生き残った…

 

理由はただ一つ…親の愛である

 

自分はバージルの記憶を材料に生み出された存在だが他にもある物が使わせていた…スパーダの血である

 

正確にはその一族達の血だ…バージル、ダンテ、ネロがクリフォトの中で流した血液を使って自分を再現した…

 

vはこの街の上位者達を始末し悪夢を終わらせるために行動した、その行為がスパーダの血を覚醒させるトリガーとなった…

 

そんな彼にスパーダの血は答え力を与えた、vは新たなるスパーダの一族として此処に誕生したのだ、愛の力以外のなにものでも無い

 

人々を守るために異形に立ち向かった彼は紛れもなくスパーダの息子だ、彼の血がそれを認めたのだ…

 

しかしそんなことを知らない本人からすれば困惑しかない…

 

「これからどうするか…」

 

再び目線を海に向け考える…そう海だ

 

元々ヤーナムにこんな風に海が見える崖はない…しかし今はある

 

もっと言えばヤーナムの街とその周りの土地がまるで切り取られ無人島の中心に持ってこられた様な感じになっている…

 

全く訳がわからない…これではどうやって此処から出れば良い?

 

周りを見渡してもここ以外に陸は見えない、泳いで行くのは無理だ…

 

本来の姿に戻ったグリフォンに自分を運ばせる?それも無理だ、陸地に着くまで魔力が保つか怪しい

 

そもそもこの海にここ以外の陸地があるのかさえわからない…

 

月の魔物の記憶を見てわかったが、上位者達は本命である自分以外にも候補になる人物達をあらゆる世界から隔離された悪夢に連れて来る…

 

そうあらゆる世界だ…場所ではなく

 

パラレルワールドと呼ばれるもの、自分のいた世界にも次元を超えて世界を移動する魔具はあった為それ自体に驚きはしないが…

 

「どうにもならないな…」

 

元の世界に未練が無いとは言わない、だが帰りたいかと聞かれればそうでもない、自分の役目は終わったのだから…

 

かと言ってこの街に残る気はない、また上位者達に目をつけられるかも知れない

 

八方塞がりだ…そんな風に考えていると海の向こうから陸地を探しに飛んでいったグリフォンが戻ってくる

 

「オ〜イ!!vチャ〜ンたっだいまー!!」

 

「喧しい、それでどうだった」

 

「エッ?酷くない?俺結構遠くまで飛んだから疲れてンダケド…」

 

「いいから言え」

 

杖をグリフォンに押し付けながら話す様に促す

 

「イッテテテ!!イッテェよ!!ワカッタ!ワカッタから!!見つけた!アッタから!!」

 

それを聴いたvは杖を下げ安堵する…少なくともこの島以外にも陸地があるのがわかった、それならば人間がいる可能性もあるだろう…

 

「それで其処には人間は居そうだったか?」

 

「ン?まぁ多分居んじゃネェカ?遠目だったがみた感じ何か人工物ぽいものがあったし、元のデカさに戻って飛ばしていけば魔力切れになる前に着けると思うゼ!」

 

「…そうか」

 

vは一度だけ後ろに目を向ける、ヤーナムの街がある方向へ…

 

「ならさっさと行くとしよう…」

 

しかし直ぐに目線を戻しグリフォンに告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数年後ある伝説がヤーナムに生まれた…

 

獣の病に侵された街を救った伝説の男、彼は詩集などの本を好み不可思議な怪物と共に行動していた

 

人々は彼を

 

 

詩人の狩人と言う

 

 

 

 




次編の頭です


「おい…」

「どうした?v」

声を掛けられたグリフォンがvの方へ振り向く

其処には悪魔がいた…

いや自分達も悪魔なのだがとにかく恐ろしいオーラを纏ったvがいた

「チョッ!?ナンデ?なんで怒ってんの!?」

「自分が何をしたのか思い出してみろ…」

「エット…」

確か自分は見つけた大陸に着陸しようとした…

しかし其処でvから待ったを受けた、曰くもし人間がいたらこんなデカい鳥が空から現れればパニックになると…

仕方がないので着陸ではなく着水することにした、それから通常のサイズに戻り…

「……アッ!!」

そう戻ったのだ、よりにもよって海の上で

当然vはそのまま海に落ちた…ちなみにグリフォンはそのまま飛んで行った為自力で岸まで泳ぎ近くにあった森で合流した…今この瞬間まで落ちた事に気づかずにいたこの鶏肉と…

「マテマテ!!悪かった!!許してくださいオネガイしますからー!!」

「ダメだ」

グリフォンの泣き言に聞く耳を持たず杖の切っ先を腹にゆっくりと押し込む…ずぶ濡れにされた事もそうだが命乞いの仕方がヤーナムの蜘蛛男を思い出させるのが余計に腹立たしい

「おごっ!!オエ!!ぎにょ!!」

「うるさい、静かにしろ…」

「ならやめればイイだろーが!?アッゴメンなさいスイマセン許してvチャンー!!」

痛めつけてくる本人に理不尽な事を言われ怒鳴るが、再び睨みつけられ畏縮する忙しい鳥…


「うわぁぁぁぁ!!」

そんな馬鹿な事をしていると何やら人の声が聞こえてきた、それも結構切羽詰まっている感じの声が…

「あっ!ホラvチャン!声!!多分ニンゲンの声だってェ!!だから早くコレ退けてェ〜!!」

仕方なく杖を退けて声のする方へと走る

「見つかると厄介だ、お前は出てくるな」

「ハーイ、カシコマリマシタ〜」

人間がいる可能性を考えて、グリフォンを自分の中に戻し杖に魔力を通し戦闘の準備を行う…

木々の影から悲鳴が上がった方を見る

まず目に入ってきたのは緑色の怪物だった…

3メートルは在ろう巨大な体躯に二本のツノ鋭い牙に片手には石斧を持っている…

「ガァァァァ!!」 「だっ誰かぁー!!」

今まさに喰われそうになっている人間、どうやら声の主はあの男らしい

乗り物の馬車を破壊されて腰を抜かして倒れている、殺されるのは時間の問題だろう

vは木の影から飛び出し杖を怪物に突き刺す

「ギィヤァァァァァァ!?」

突然のことで完全に不意をつかれ地面に膝をつける怪物、そこから一気に体に手を突っ込み内蔵を引き抜く…

怪物は静かになり地面に倒れた…

怪物の死体に一瞥もくれずvは悲鳴の主である男に近づく

「…おい」

「はっはい?」

顔についた血を拭いながら男に言う

「今からお前に質問をする答えろ、それが助けてやった対価だ」

その言葉に男は頷くどうやら言葉は通じるらしい…

「此処はどこだ?」

「へ?」

質問の意図が理解できないのか間抜けな声を出す

「此処は何という名前の土地だ?この大陸全体の名前と今いる国の名前だ…」

改めて聞き直す、すると質問の意図が通じた様で男は震えながら口を開く

「ア…アーガイル大陸の!ブッ…ブリューワ地方です!」

その言葉にvは天を仰いだ…
















RUNEⅡコルテンの鍵の秘密編に続く

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