デッドマンズジェイルの囚人   作:御魚天国

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序章:囚人と解体魔
囚人だけど質問ある?


【デッドマンズジェイルの囚人】。

 俺が生前……と言うより前世、死ぬほどプレイしていたRPGである。

 魔王を倒しに行く、と言ったような王道なストーリーではなく、いわゆるフリーシナリオ系のゲームだった。

 

 人々が特殊な能力を持つ地球によく似た、ファンタジーの混じったサイバーパンクな異世界で、世界各地に存在する犯罪者たちを倒し、世界の中心に存在する巨大な塔、《デッドマンズジェイル》に収監するということが目的の。

 情報量が多い気がするが、気にしてはいけない。

 

 やり込み要素の多さに関しては発狂者が出るほどで、俺も数千時間やり込んでいた。

 やり込んでやり込んで、とにかくやり込みまくった。

 そして俺は、ついに──死んだ。

 気づいたら死んでいた。

 

 いやぁ、八徹目もいけると思っていたんだけどなぁ。

 流石に幻覚と幻聴と空腹がカンストした時点で止めるべきだった。

 まさか紙袋をドーナツと見間違えて喉を詰まらせて死ぬとは。

 

 そして俺はそんな死因を神様を名乗る男によって教えられ、あまりにも惨めな死に様に別の世界への転生を提案した。

 なんでそんなことを? と聞いてみたものの、暇だから、だそうだ。

 流石神様、ロクでもない。

 

 と、言うわけで俺もそんな死に方は嫌だったから、転生することに。

 さっき言ってた【デッドマンズジェイルの囚人】の世界に。

 これはもう、自分のプレイしていたキャラしかねぇだろ! とか思っていたが、結局のところ知らない奴になった。

 知らない、普通の一般赤ちゃん。

 

 一般赤ちゃんとして生まれた俺は、それならそれでと、将来はゲームと同じように敵を監獄に埋めるべく修行をした。

 修行と言っても近所の警察をやってたおっちゃんに、攻撃の避け方や相手の制圧の仕方を教えてもらった程度だけど。

 だがそれも二、三年ほどで中途半端に辞めた。

 理由は至極単純で、既に犯罪者達は永久に時間の止まった監獄の中にぶち込まれていることを知ったからである。

 

 あ、犯罪者と言ってもゲームに出てくる犯罪者だけだが。

 世界を破滅させるような思想の持ち主ばっかだけどさ。

 

 ともかく、それを情報盤(スマホによく似た何か)伝いで知った俺は、修行をやめて普通の人間として生きることに決めた。

 

 まぁ、そこからは平凡極まった生活を一人で送っていた。

 遥か彼方に聳え立つ巨大な塔を見ながら、昨日まで。

 

「……おーい……誰か、いないかー……」

 

 俺の呼び声は悲しく彼方へと響き渡る。

 声は当然ながら帰ってこない、当たり前だろ、俺しかいねぇもん。

 辺り見渡してみるが、世界観に似合わないコケついた石レンガの壁。

 そして俺の両手に嵌められた錆びついた手錠。

 

 俺は今、監獄の中にいる。

 あの毎日のように見ていた世界の中心に存在する塔。

【デッドマンズジェイル】の中、その最底辺に位置する唯一無二の最下層の囚人房に。

 

 この【デッドマンズジェイル】の構造は地下まで続いており、地上まで数千キロあるとかないとか。

 で、階層ごとに犯罪のレベルが分けられているのだが、上に行けば行くほど軽犯罪となる。

 一番上なんか飴玉盗んだ程度の犯罪だ。

 程度とはいうが、犯罪は犯罪なのでダメなことだが。

 

 ともかく、そんな構造だから下に行けば行くほど、とんでもない犯罪したことになる。

 世界を破滅させようとしていたやつなんか、下から数えた方が早い階層にいる。

 これはゲーム内での話なのだが、連続殺人鬼やマフィアの王、挙げ句の果てにはアンドロイドやオートマタまでいた。

 で、ここまで言えばお分かりだろう。

 

 もう一度言う、俺は今その監獄の最底辺の最下層にいる。

 つまり一番下、考えうる全ての犯罪したところで入れるような場所ではない。

 そんなところに俺はぶち込まれてしまっていた。

 

 昨日のことだ。

 夕飯も食べ終えてスラムにある俺の部屋から夜景を見ていた時。

 突然ゲームにも出てきた軍服を着た奴らが俺の部屋に押し入ってきたのだ。

 わけもわからずあっという間に制圧された俺は、一瞬のうちに車に入れられて連行。

 よくわかんないまま手続きされて、気づいたらここにいた。

 

「囚人番号二億三千九百八十七万六千……覚えられるわけねぇだろ!!? バカなの!? 覚えてる間に死ぬわ!? ……いや、マジで覚えてる間に死ぬな、俺。はぁ」

 

 どうでもいいことで気分が落ち、ため息をついてまた周りを見る。

 見えるのは苔むした石レンガと俺にかけられた錆びた手錠のみ。

 牢屋のドアは開いており、まるで俺を煽っているかのようだった。

 

 実際昨日飯持ってきた看守に煽られたしな。

 玉蹴り飛ばしてやったら飯抜きにされたから、今の俺は極度の腹減りにある。

 アレは流石に突発的な行動だったかなぁ、と反省はしている。

 してるけど、正直もう一発ぐらいはぶち込んでやりたい。

 

「……さて、正直に言ってこのまま何もわからないまま死にたくはねぇ。だがここから出る方法が脱獄ぐらいしか思いつかねぇ。よし、脱獄しよう。と言えたら楽なんだろうが……はぁ。能力があればなぁ」

 

 この世界は人々が特殊な能力を持つ、いわゆる固有能力というやつ。

 それはそれとして魔法とかあったりするんだが、固有能力ってのは魔法すらも超越した最早別次元の何かで。

 力関係的には固有能力が先に来る、つまり魔法を固有能力で上書きすることが可能というわけだ。

 で、その固有能力は絶対万人に与えられる、生まれてから五年ぐらいで。

 与えられない人間は絶対にいない、はずだった。

 

 例外として今ここに、俺という存在がいる。

 なんでか知らんが、俺はもらえなかった。

 神様は意地悪らしい。

 

「次会ったら殴ってやる……って、そんときゃもう死んでるか! あはははは、はは……はぁ」

 

 ため息をついて上を見上げる。

 天井一つ、何もねぇ。

 身動き一つ取れるような手立てすらねぇ。

 でもこのままではただ死に行くだけだ。

 

「……よしッ!! 看守からどうにかして鍵を奪って脱獄してやらァッ!! ……あ」

 

 気合いを入れるべく、癖で手を下に振った。

 普通ならば俺の腕の振りは壁につけられた手錠によって遮られる。

 普通ならば、だが。

 

 生憎ここは普通ではなかった。

 公式設定ではここは永久に時の動かない場所、囚人も看守も無限に増えて行く。

 

 ただ一箇所、一番下の監獄を除いて、と。

 つまり俺がいる、この場所で。

 それは要するに滅多に使われない上に、上の階は備品の劣化による管理をする必要のない場所。

 ここは()()()()を引き起こすには最適なわけで。

 

「壊れちゃった、手錠」

 

 完全に錆びついた手錠は、俺の腕の一振りによって破壊されたのだった。

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