デッドマンズジェイルの囚人   作:御魚天国

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ぽけもんたのしい


刀も思想も危険物

 この世の終わりみたいな戦いから、数時間が経過した。

 時間的には多分もう深夜だろうか。

 と言っても空……と言うか天井、の明るさは変わらないから、時計だけが頼りなんだが。

 

 とにかく数時間が経過したところで、俺たちは適当な無人の建物に潜伏していた。

 理由は単純で、潜伏している奴らの数が予想以上に多かったこと、あの注目を受けすぎたことだ。

 なんせあの戦いが終わってアルキナが端から全員解体しているときに、数人の看守たちが姿を現した。

 

 まぁ、数人ならアルキナとラスナでちゃちゃっと消し炭にできるだろう。

 だがここは【デッドマンズジェイル】、一人二人消したところで、後から無限に湧き出てくる。

 見張りならばまだいいだろうが、あの地獄を納めるために来た奴らだ。

 間違いなく次が投入されるだろう。

 しかもある程度、消し炭にしたところで間違いなく、あの主任看守が出張ってくることは間違いない。

 

 そうなったらもう最悪だ、アルキナとラスナでもいいとこ行けるかどうか。

 奴の能力的に少し難しいかもしれない。

 と言うわけで看守を切り刻もうとするアルキナを連れて、ラスナにグランを運ばせて逃げ出したわけだ。

 

 ここはまるで九龍城砦、上や下に行ったり来たりを繰り返し、アルキナの力で建物を崩落させたりすれば簡単に奴らを巻くことが出来る。

 てな訳で、適当に巻いて適当に無人な建物に入って。

 今は作戦会議みたいなことしてるわけだが、それよりも前に話すべきことが一つあった。

 俺はバラすのを邪魔されて不機嫌そうなアルキナに向けて聞いた。

 

「なぁ、アルキナ」

「なによ」

「なんでバラした、アレ」

 

 そう言って俺が指を指した先には、バラバラになったグランと、それを組み立て直すラスナの姿があった。

 グランは一応頭だけは完成しており、会話だけは可能になっていた。

 

 生首が喋っているってなんかやだな。

 バラバラにされた男とそれを組み立て直し幼女、光景が普通にスプラッター。

 

「これでしょうか」

「あ、ラスナさん! それ他人の肉片です。俺のじゃないです」

「……申し訳ありません。パズルが苦手なものでして……」

 

 何も感情がなさそうなラスナが少ししょぼくれていた。

 パズルが苦手なのは初めて聞いた。

 ファンブックにすら書いてなかった情報を知れると言うのは大変嬉しいことだ。

 だが、それはそれ、これはこれである。

 

「なぁ、アルキナ」

「目の前にいたからに決まってるじゃない! 何よ、仲間は切っちゃダメなの?」

「ダメに決まってんだろ!!? 何考えてたらそんなこと言えんのお前ぇ!!?」

 

 俺は恐ろしい発言に思わず立ち上がって叫んでしまった。

 まぁここは建物のかなり奥の方なので、バレる可能性は多分少ないだろう。

 

「いやまぁ、お前、確かにその癖はどうにもならないのはわかるけどさ。俺とこいつ仲良く隠れてたのはわかるだろ!?」

「見てたわよ、そんぐらい。それがなによ?」

「仲間だよねぇ!? なかま! わかる? ナカーマ!!」

「その言い方うざいからやめてくれないかしら」

「あ、ごめん……じゃなくてさぁ!?」

 

 結構なマジトーンだった、ちょっと怖い。

 

「……もういいや。これ以上話してたら本筋に行けねぇ」

「本筋? なにを話すのよ」

「上に行くための方法だよ。俺がラスナを手に入れたかった理由は覚えてるよな?」

「協力者。だったわよね?」

「ああ、お前が数百億のする壺をバラしたおかげで、どっかの人間からも命を狙われてるわけだからな……ところでどこの奴ら?」

「知らないわよ。なんとか教とか、なんとかエルフからとか、うっさい連中だったわ」

「どうしたの」

「心臓だけくり抜いて四分割してあげたけど」

「……そのあとは聞かないでおく」

「ここからが楽しいのに」

 

 不満そうにそう呟くと、彼女は刀を抜いてポケットから取り出したハンカチで拭き始めた。

 案外、刀とかは大切にするタイプの人間らしい。

 結構意外なもんで、懇切丁寧に拭いている。

 そう言う事してる時の顔は普通に可愛いのにな。

 

「ともかく、協力者な。それがラスナだ」

「へぇ、ラストナンバー。アレが。なにさせるつもりよ」

「この九百九十九層、全部乗っ取る」

「……はぁ!?」

 

 あまりの驚きっぷりに刀を一瞬落としそうになっていた。

 が、ギリギリのところで掴んで近くに置いた鞘に収めると、本気かどうか疑う目で俺を見た。

 

「乗っ取るって言ってもアレだぞ。機能を全部掌握するだけだ。ラスナの力でな」

「力でって……どうすんのよ」

「ラスナ、ちょっと聞いてもいいか?」

「はい」

「お前の()()()の稼働状況は」

「起き上がったのがつい数時間前となりますので……27%ぐらいで──」

「ちょっと待ちなさい」

 

 突然アルキナがラスナの言葉を遮って、俺の方に視線を向ける。

 流石の彼女も驚きの連続に戸惑いを隠せないようだ。

 そりゃそうだろう、魔力炉と言うとそれは──。

 

「魔力炉? ……ロストテクノロジーもいいとこだわ」

 

 この世界の魔法って言うのは世間一般が認知する魔法とあまり変わりない。

 よくあるファンタジー系RPGで使われるそれと格差はない。

 ただ能力との力関係はと言うと『魔法<能力』と、前に言った通りになる。

 魔法の力は能力には敵わないのだ。

 

 それでその肝心の魔法だが、使うためには当然その操るための力……と言うより要素と言うべきか。

『魔力』と呼ばれるものが必要になる。

 この魔力だが人間からは生まれ出ることはない。

 といっても能力が存在しなかった大昔は普通に体から出ていたそうなのだが、能力が発現した影響だとか言われている。

 ちなみにこれはファンブックに書いてあった。

 

 で、この魔力が人間が生まれなくなった今は、空気中に漂っているものを扱うことになる。

 酸素と同じようなもので、息をするものから放出されている。

 草や葉っぱとか魚とか、動物とか。

 そう言ったものの体から魔力が放出されているのだ。

 その魔力を使って魔法を放つこととなる。

 

 それでこの魔法がまたややこしいのだが。

 とにかく魔法というものは魔力というものを使っては放つもの、と言うことを覚えておけばいい。

 で、それを無視して勝手に魔力を生み出せるのが、この魔力炉ということになる。

 ラスナはこの魔力炉を利用して魔法を放つことができるのだ。

黒落(ブラックアウト)】に使われるような魔法を。

 

「だからこそ、誰も知ることはねぇ。彼女の持つ、接続した機械を掌握する力と、その魔力炉を使って、この階層を全て乗っ取る」

「それしたら、なにが来るかわかって言ってるのよね?」

「まぁ少なくとも主任看守は来るよな」

「どうするつもりなのかしら」

「全部擦りつけてやる。ヴィクトル・ファミリーの頭、グランデ・ヴィクトルに」

 

 唖然としてアルキナは俺の方を見て、なんとか上半身が完成していたグランは倒れていた。

 もう少し取り乱すことかと思ったが意外とグランは落ち着いている。

 まぁ、罪を押し付けられてんだもんな、どうでもいいんだろう、多分。

 

「ま、マジで言ってんすか、兄貴。あのドンに?」

「マジで言ってる。まぁ、それまでに色々と準備をする必要があるんだが……」

「その前に一つ聞くわ。仮に掌握したとして、そのあとどうすんのよ。そもそもこれ、やると言ったのはいいけど、作戦がガバガバもいいところじゃない」

「……まぁ落ち着けって、しっかり考えてるあるからさ。掌握した後の動きは簡単さ。何もかも終わらせてやりゃいい」

「…………」

「…………は? 終わらす? ……ねぇ、アンタまさか」

「そのまさかに決まってるだろ。この階層を切断(パージ)する。その時にだけ使える緊急用エレベーターを利用して上に行く。あわよくば主任看守どももバイバイだ」

「……なるほどね。なんでそんな看守しか知らなさそうなこと知ってんのかわかんないけど……確かに、脱獄するのにはいい作戦だわ。でも決定的に──」

「情報が足らない、このままじゃ情報不足で詰むのがオチですぜ。兄貴」

「そこ、なんだよな。取り敢えず擦りつける方法と切断(パージ)方法は頭ん中入ってるんだが、それ以外のことがあまりにも……」

「それならば、私にお任せください。マイマスター」

「ラスナ? どうするつもりだ?」

「私ならば、納得の行く結果が出せるかと」

「……じゃあ任せる」

 

 結果として決まった作戦は、グランデ・ヴィクトルに俺たちのやること、この九百九十九層の掌握と言う罪を擦りつける。

 そして大々的にそれが出た後、奴の持つ『力』を利用して、看守どもと軽く戦争をしてもらう。

 勘違い戦争してもらって主任看守が出張ってきたところで、ゲーム内でもあった隠し通路を通って、この九百九十九層の管理室へ行く。

 そしてあとは切断(パージ)からの逃亡だ。

 

 切断(パージ)すれば、その階層は二度と立ち入ることはできない。

 ゲーム内でも言及されていたが、時空の彼方へ追いやられるとかどうとか。

 それはまぁ、置いといて。

 看守長が手出ししない可能性は否めないが、上は上で色々大変だろうし、とにかくたった一層のことなんてどうでもいいはずだ。

 だから多分大丈夫、多分。

 

 もう一つ懸念することがあるとすれば『グランデ・ヴィクトル』の名前を出した後の話だ。

 こうやって考えてみると、突発的に思いついたことすぎて、死ぬんじゃねぇかな、俺。

 だって実はラスナを仲間にするまでは考えてたけど、その後については今さっき考えたことだからね、これ。

 

「……ところでさ。エレベーターの封鎖って……」

「さぁ。でもあのキチガイ姫騎士と狼畜生のせいで間違いなく使えないわ」

「だよなぁ……じゃあ、しばらくは情報収集待ちって事で」

「わかったわ」

 

 そうして話し合いみたいな何かは終わった。

 その頃にはもうグランも完成しており、なんとか立ち上がることができていた。

 この先の未来、不安しかないがやるしかないだろう。

 死ぬか生きるか、俺の未来は二択のみなのだから。




なんとなくキャラ紹介①

ウィルター・グラジオフ(21)
大体百七十センチ程度の身長に平均的な肉体を持つ、一見すると何の変哲も無いただの男。
だが生まれがスラムの隅っこであり、死と罪が蔓延する地獄の中で生きてきた。

転生後はその環境に戸惑っていたものの、あまりにも酷い環境で生き続けてしまった結果、慣れてしまった。
そのため酷い環境で生きるための力が身についており、パルクールなど軽くこなすことが出来る。
一応何度も死と直面しており、死体や人を殺す場面などには順応している。
調子に乗ると考えが甘くなる節がある。

だがそんな生活の中で突然、罪を告げられることもなく監獄に入れられてしまう。
実は幼馴染がいたり、色々と因縁があるやつがいたりするのだが、それはまた別の話。

ちなみに転生してからの両親の名前と顔を知らない。
ただ間違いなく人間ではあったと、元警察のおっちゃんに教えてもらっている。
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