デッドマンズジェイルの囚人   作:御魚天国

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第二章:冥土の土産と主任看守
お仕事大好き!って言えたら良いのに


 さて、あれから数時間が経過した。

 深夜もいいとこ、時計的にはそろそろ朝になるかって時間帯だ。

 取り敢えずラスナが情報収集に出かけたため、俺は無人の建物で待機していた。

 

 何かできることがあればよかったんだが、下手に行動もできないもんで。

 取り敢えず俺は部屋で、睡魔に襲われながらこれからどうしようかぼーっと考えていた。

 ちなみにアルキナは部屋から出てきたグランと何かを話すと、少し考え事したのちどっかへ行ってしまった。

 何をしに行ったかは知らんが、すぐ戻るとは言っていた。

 

 一応俺がいることで彼女の望む境遇が手に入るのだから、どっかへ行くことはないだろうが少し心配だ。

 色んな意味で。

 手当たり次第に切り落としてなきゃいいけど。

 

 で、もう一方のグランだが、食料の方を調達しに行くと言っていた。

 影が薄く顔バレもしていない自分ならばやりやすいだろうと自ら志願してくれた。

 正直、ここまでやってくれる義理がないのだが、俺が行動できないのも確か。

 ということで言ってもらうことにした。

 まぁ、仮に逃げたとしても、俺の行動にこれと言って害はないのだが。

 

 で、俺の方だが。

 次々と崩落する建物の中、周囲からは火の粉が上がっている状況で。

 勝手に一人、瓦礫の裏に隠れて追い詰められていた。

 建物の外から拡声器のようなものを使って話しかけてくる少女一人相手に。

 

「おいクソガキァッ!! とっとと吐かねぇと、糞を顔面にぶち込んでぶっ殺してやらァッ!!」

「し、し、知るかぁぁあああッ!!? クソガキはテメェだろうがぁぁぁああああッ!!?」

「最高の遺言だなァ……おしッ!! ぶち殺してアルキナの居場所吐かしてやらァッ!!!」

 

 あまりにも無慈悲な回答に、俺は自分自身の運を嘆く。

 しかしかなり奥に逃げ込んだのに、よく俺たちの居場所がわかったものだ。

 と褒めてやりたいところだが、実のところ俺は奴のことを知っている。

 ゲームに出てきたキャラの一人で、例に漏れずキチガイの一人だ。

 

 通称【傭兵】。

 名前と言うか名称を『MnX(マニックス)β(ベータ)モデル』と呼ばれていた。

 取り敢えず奴のことはニックスと呼ぶことにして。

 外見の方だがこれがまた美少女で、大体十三、四ぐらいのラスナより少し大きいくらいの少女。

 長い金髪と牙のようなキザ歯が特徴的な、黒と赤を基調とした服装で身を包んだ超絶美少女だ。

 作中でも【傭兵】の話題が出れば美少女と聞こえてくるほどには美少女だ。

 

 まぁ、それも結構な理由があってのことだが。

 

 ともかくそんな美少女だが、中身はクソッタレである。

 暴言や下ネタは当たり前の吐き捨て、【傭兵】の名の通り金さえ貰えればどんな仕事すら請け負う。

 人を殺すことをなんとも思わないような奴だ。

 ……いや、それは別にいっぱいいたな。

 

 それで奴の目的はアルキナ、大方予想はできる。

 どうせまたロクでもないこと引っ張ってきたんだろう。

 それとも、看守からの依頼か。

 どちらにしろ状況は最悪である。

 

 あー、なんでこんな目に合わなきゃなんねぇんだよ……ただ脱獄したいだけなのになぁ。

 取り敢えずなんでもいいから、この場を脱するべきだろう。

 俺は抜き足差し足で、スライド移動しながら逃げ出そうとしたところに、大体五センチほどの鉄球が俺の鼻の上を通り抜け、その先にあった壁に突き刺さる。

 ほんの少し掠れて血は出ているが、大した傷にはなっていない。

 

 だが速度は明らかに尋常ではなかった。

 それこそ、風を切る音がする前に壁に突き刺さっていたのだから。

 恐怖でしかねぇ。

 

 この世界にも銃というものは存在している、俺の持つエルダーMD7なんていい例だろう。

 だが今のは銃の類によるものではない。

 じゃあ一体なんだと言うのか、と言われるとそれははっきりしている。

 奴の能力によるものだ。

 

「お得意の【念力(サイコキネシス)】とは景気がいいな!! アルキナが隠れているとでも思ってんのかッ!!?」

「おいおい、オレの能力把握してんのかァ!? ……なるほど、そうか!! テメェがウィルターかッ!! スラムのクソガキ……いや、()()()()ッ!! はははははッ!!!」

「俺のことはどこまで知ってるのか聞いても!?」

「大方把握してらァ!! 情報収集は戦闘の基本、当たり前の事してるだけだァッ!!」

 

 だ、そうだ。

 と言うわけで奴の能力だが、【念力】。

 世間一般的に超能力とか言われる真っ先に思いつきそうな奴の一種である。

 そしてこの世界において最も能力被りの多い能力である。

 ちなみに能力被りってのはそのまんまの意味で、同じ能力を所有していることを指す。

 

 で、奴の【念力】だが。

 そんじょそこらの【念力】と一緒にしてはいけない。

 それは奴の能力の範囲が数キロに渡り、そして同時に百を越す物体を同時操作。

 重さに関してもトンを軽く越す重さを持ち上げることが可能。

 普通ならば最強格とも言える能力だ。

 普通ならね。

 

「何を警戒してんのか知らねぇが、俺は何も持っちゃいねぇし、できることは何もねぇッ!! 言ってやる!! 降参だッ!!」

 

 はい、無理です。

 戦えるわけねぇだろ、あんなの。

 奴は基本戦術として数百の強化マシンガンを後方に配置、それを同時に操って徹底的に的を追い詰める。

 機械化した体によって生まれた多重思考、それを用いることでそれぞれがまるで意思を持ったように操ることを可能としている。

 もっとも、本気で戦った場合はまた別の戦い方になるのだが。

 

 で、そんな戦い方ができる奴だ。

 無理やりゴリ押ししてこない方がおかしい。

 ならば奴は何かを警戒しているのだろう、大方アルキナかラスナだろうが。

 

「……おい、なんの冗談だァ」

「冗談じゃねぇッ!! 勝てるわけねぇだろ、お前にッ!! どうせ俺が出て行ったところで一斉射撃。穴まみれでおっ死ぬだけぇッ!! 無理ッ!!」

「おい、おいおいおいおいおいッ!! 少しはよォ!! 遊びにィ──!!」

 

 そう言った瞬間だった。

 俺が今の今まで隠れていた瓦礫が突然持ち上がる。

 ハッとして周囲を見ればありとあらゆる壁が取り払われていて、綺麗なフィールドのようなものができていた。

 

「ま、さか……ッ!!」

「──付き合えやァァアアアアアッ!!!」

 

 気付いて振り向いた時にはもう遅く、奴の機械で出来た剣が真後ろから俺の顔面へと迫っていた。

 死ぬ、と思った瞬間に、俺は懐からMD7を取り出して引き金を引く。

 銃声とともに放たれる一発、奴は【念力】で瓦礫を浮き上げる手繰り寄せ銃弾を防ぎ、自分の体を大きく捻って着地し俺から距離を取る。

 予想外の一発に奴は少し驚いたような顔をして、姿勢を立て直した。

 

「んァ……なんでテメェ、弾入ってやがる。補給する暇なんざなかったろうがァ」

「教えるかボケぇぇええええッ!!! はぁ、はぁ……補充はできた。それだけ言っといてやるよ」

 

 俺は息を切らしながら燃える戦場の中、銃を片手に奴との距離感を図る。

 奴の持ち物は鈍く光る機械剣が一つ。

 細身のロングソードと言ったところだが、奴の得意とする武器の一つだ。

 他に武器は見えないが、大方隠してるんだろう。

 

 なら、今気をつけるのはあの剣だけ。

 クソっ……日にちも変わってこれからだってのに、戦ってばっかりだ。

 まだ死ぬわけにはいかねぇ、なら今はあの野郎をどうにかするしかない。

 あの、()()()()()を。

 

「まァ、いい。後でじっくり教えてもらうまでだァ。行くぞォッ!!」

 

 奴が剣を構え走り出したのを見て、俺も銃を手に走り出したのだった。

 真逆の方へ、逃亡経路へと。

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