「で」
「で、ってなんだよ」
あれから歩き回ること数時間。
朝はとうに過ぎ、既に時間はお昼頃。
ちょうど俺を探していたラスナに拾ってもらい、アルキナたちと合流したのだった。
グランもちょうど戻ってきており、大量の食料を抱えていた。
今はラスナとともに武器の準備をしている。
「アンタ、今までどこにいたのよ」
「いや、俺も知らん……気づいたら変なとこいた」
「気づいたらってアンタねぇ……」
「だってよ、急に変な男が現れたと思ったら、無茶苦茶やりやがって……まぁ、そのおかげで助かったんだけども」
銃を取り出し残った弾丸一発を抜く。
そしてラスナから新しく作ってもらった弾丸を受け取り、新たに装填した。
弾丸の数を確認しながら話を続ける。
「ともかく。邪魔したのはそうせざるを得なかったからだ。それにお前だってラスナを攻撃すりゃ離れられたのに、そうしなかったろ」
「それはっ……はぁ、聞かないでよ」
「……?」
「それよりも。さっきの話、男、なんて名乗ってたのよ」
「【旅行者】つってた」
俺が奴の名乗った名前を言った瞬間、アルキナの目の色が変わる。
見たら明らかにわかるぐらい苛立ち始めている。
どうやら奴のことを知っているらしい。
「あのクソ野郎……!! 【
必死に考え込んで爪まで噛み始めた。
あそこまでしているアルキナは珍しい通り越して幻なのではないだろうか。
少なくとも普通じゃ見れない姿だ。
「なんだアルキナ、知ってんのか?」
「厄介な縁があるだけよ……次会ったら殺すわ」
「……切るじゃなくて?」
「ええ。ぶっ殺してやる」
遂に殺してやる宣言まで出てきちゃったよ。
てかあの男、なにやったんだよ。
なにしたらアルキナの口から殺してやるとか言わせれるんだよ。
怖すぎ。
刀を強く握りしめているアルキナを微妙な目で見ていると、グランが作業をやめて近づいてきた。
「あの、兄貴……ちと聞いてもいいすか?」
「なんだグラン」
「あの、あれって……【傭兵】、すよね?」
「あー……そうだ。忘れてた」
グランが指差した少し離れたところを見てみると、そこには意識のない【傭兵】が倒れていた。
気絶ではない、根本的に意識が遮断されているため起きる気配はなし。
あれもあれでちょっと弄る必要があるが……まぁ、後でいいだろう。
「ほっといていいぞ、あれ。電源切ってから」
「で、電源? そんなものあったんすか? 俺ァ知りませんでしたよ……」
「そりゃ自然に見えるように設計されてるからなぁ……そんなことよりもだ。まずいことになった」
「ま、まずいこと、すか?」
「……主任看守に目ぇ、つけられたわね」
「ああ……」
「それで、作戦は? やるの? いい作戦はとは言ったけど、それは万全の状態でやったときのことよ。お世辞でも今の状況は……」
「整ってる、とすら言えねぇよ。状況は最悪だ……が。もうこうなった以上、明日、ゴリ押しで行く」
状況は最悪、目はつけられて下手な動きは一切できない。
ならばもうゴリ押しでもなんでも押し通すしかない。
切断しちまえばこっちのものだからな。
ガバガバでもなんでもいい、とにかく作戦を組み上げろ。
「ラスナ、情報収集はどうだった?」
そう聞くとラスナは手を止めて一瞬で俺のそばまで来た。
「潜入ルートは確保しております」
「よし。なすりつけは…… 予定とちと違うが、【傭兵】を利用するとして……潜入ルートの確認と、あとは行動の……」
「……ま、そっちは任せるわ。作戦開始は明日でいいのよね?」
「ん……? あ、ああ。明日だな」
「そ。じゃあ、ちょっと準備してくるわ。まだいるかしら、あのクソ親父……」
準備って……と、聞こうとした時にはもう既に、窓から出て行っていた。
まぁ、任せても大丈夫だろう、多分。
とにかく作戦は簡単だ。
【傭兵】を利用し騒ぎを起こす、本来はもう少し緻密にやる予定だったが、ここで適当に擦りつける。
全ての罪をヴィクトルファミリーのドンに。
で、その間に別行動でこの階層を掌握、主任看守を隔離した上で切断する。
……うん、これじゃ無理だな。
「もう少し考えっか……」
なんて呟いたところで、グランが窓の方に近づいて下の方を見る。
何かを見ていたが、少しすると入り口に向かう。
「兄貴、ちと出てきます」
「お、おう……?」
かなり真剣な顔をしていたが、どうしたのだろうか。
緊張してんのかな、俺もしてる。
そんなことよりもだ、大事なことがある。
「そろそろ作業に移るか……ラスナ、それこっちに持ってきてくれ」
「了解しました」
ラスナは返事をした瞬間に飛んで、一瞬で持って戻ってきた。
距離はすぐそこだが、目で追うことが不可能なぐらい早かった。
流石と言わざるを得ない。
「こっちに来てから機械は結構弄ってるが……
俺は【傭兵】を持ち上げてから改めて椅子に座る。
そして【傭兵】を座らせてから、頭が膝に来るようにした。
髪をかき分けると、線が一つ入っている。
そこに上手いこと動かすと、ガコッと音がして髪とともに頭が外れる。
「……なんだこりゃ……これ作ったやつ、イかれてるだろ……」
俺はこういった機械に関しては完全に素人だが、それでもわかる。
だって中身がほぼガラクタで構成されているのだ。
いや、ある程度の歯車は入っているのだが、基本的な構成要素は缶詰の破片だとかそんなのばかりだ。
その上で、
「どうなってやがる……」
「これは……設計が私たちと酷似しているようです」
「え?」
「使われているものは全く違いますし、脳みそ部分では擬似物体が使われていますが、それを除けば配置などは同じです。見ますか?」
「いやいい」
「そうですか……」
少し顔がシュンとなっていた、そんなに見せたかったのか……。
そんなことより、設計が同じというのはラスナを作った人と同じなのは確定した、と思われる。
確定! というには少し微妙だが。
「よし……やるか!」
俺はその脳みその中に、部品が触れないように手を入れて行く。
そこから作業をすること二時間程。
俺は一つの結論に至った。
「無理!」
無理だった。
わけわっかんねぇもん、これ。
歯車が全く関係ない歯車と繋がっていたり、動かすためのものが予想不可能な動きを取り始めるのだ。
頭の中が??? で埋まっていたしな。
「……ラスナ、任せた」
「お任せください」
どうしようもなくなってラスナに頼むと、五分程度で終わらせてしまった。
俺の二時間はなんだったのだろうか、これなら初めから任せるべきだった。
「電源をつけますよ」
「ああ、頼む」
ラスナが【傭兵】の背中を触り、電源ボタンを押す。
すると【傭兵】はまず目を大きく見開いて、前方を見つめた。
かと思うと、すぐぐったりしてしまう。
「……大丈夫、だよな?」
「はい」
心配していると、右手がピクッと一瞬動いて、顔を上げ目を開く。
「ん、あ……あァ……? ここ、はァ……あー……どこだァ……?」
「お、起きた。よう、【傭兵】」
「……てめェ、は。ウィルターだなァ……?」
「よし、俺がわかるな。お目覚めのとこ悪りぃがよ、取引しようぜ。つっても、ほぼ脅しみたいなもんだが」
そう言うと俺はラスナからボタンを受け取って【傭兵】に見せつける。
「なんだ、そりゃァ……」
「自爆ボタン。お前のな」
「あァ……?」
「言ったろ、
俺は【傭兵】と向き合って話を始める。
これからの未来を決定づける大切な話を。