少し時を戻して、Sideシーガ
「…」
自分の予選ブロックを難無く突破した俺はアルメールさんの決勝戦を観戦していた。
人間の二倍近くの反応速度を持っているウマ娘故にそして数少ないプラフスキー粒子の流れを読み取れる彼女についていけるファイターなど数えるぐらいしかいないとしか思っていなかったが甘かったか…!
対戦相手の青いギラーガの青年はアルメールさんに粒子の流れを読み取る余裕を与えない程のスピードで翻弄し圧倒していたからだ。
「トレーニングが立て込んでて遅くなってしまいましたね~ミッ君の試合は…」
「よかった間に合った~!まだ終わっていないみたいね」
そこで黒髪ポニーテールと特徴的な紋様がある茶髪ロングの美少女が観客席に駆け込んできた。
「まるで本来ならもう終わっているみたいな言い方ですね…」
「ミー君が作ったガンプラについていける人は少ないですからね、流石私達と同じウマ娘さんといった所かしら。
私はサトノクラウンよ」
「私はサトノダイヤモンドといいます」
やはり彼女達もウマ娘みたいだ。
俺のふとした呟きに黒髪ポニテの子、サトノクラウンがそう答えた。
「だけど彼の真の実力はあんなものではないんですよ?」
「うん、」
「…!アレは…!不味い!?アルメールさん駄目だ!今奴に近付いたら…」
彼のギラーガの纏うモノが変わったのを感じ取った俺はアルメールさんに警告を発したがこの距離では届かない。
アルメールさんは誘い込まれているとも分からずにアスクレプオスのクローを構えて仕掛けてしまった。
その結果、ギラーガの発した波動、サイコクラッシュに当てられてしまった。
慌てて防御に徹したがアスクレプオスの片腕は見るも無残に大破してしまっていた。
ふと見ると青かった筈のギラーガの全身は黄金に染まり光輝いていた。
「真逆スーパーモード?…いや…俺の知っているスーパーモードじゃない!?…サイコクラッシュを放つ程の余波エネルギーはスーパーモードの出力では不可能な筈…ま、真逆!?…」
「気が付きましたか…ミー君のガンプラのスピードの秘密に…」
俺はそこで漸く彼のギラーガの持ち得た秘めたるポテンシャルに気が付いた。
「MFのスーパーモードシステムを参考にギラーガの各部位を利用して独自的なシステムを組んだ訳か!?…何故青に統一せずに所々を様々なカラーリングに塗装しているのか…それこそがあのギラーガの爆発的なスピードを生み出していたからに他ならなかった訳だ!…」
「御名答です!ミッ君はうちのグループの看板ゲームが大好きですから!」
「彼のガンプラネームのSDの意味はそういう事か!アルメールさん…」
彼のギラーガの全貌に気付いた俺だったが今はバトルの行く末を只見守る事しか出来なかった。
Sideアルメール
「その機体が放つ輝きは…」
「これこそが僕のギラーガの持てる全てSSD(スーパーソニックドライブ)モードさ!
僕はウチのグループの看板ゲームである「ソニック・ザ・ヘッジホッグシリーズ」が大好きでねえ!その力をガンプラで可能な限り再現した訳さ!」
どうやらミシヒトさんはゲームのキャラクターの力をガンプラに反映させたようだ。
「さあ!僕のスピード領域についてこれるかな?!」
「くうっ!?…」
先程よりも素早くアスクレプオスへと接近してきてビームランサーを振るってくる。
「其処です!」
「ああっ!?…」
彼のギラーガのスピードに対応し切れず僅かな隙を突かれアスクレプオスの左足を刺し斬られてしまった。
「両足斬り落とせるつもりでいったんだけどね…流石に予想外だけどその状態では最早絶望的じゃないかな」
彼はビームランサーを突き立てながら降参を薦めてきた。
だけどステージは宇宙空間…片足、片腕捥いだくらいでバトルを続行出来ない程私の作ったアスクレプオスは軟じゃない…!それにこのまま敗北を認めるだなんて絶対にしたくない!
「ッ!」
私はアスクレプオスを後退加速させて距離を取った。
そして…
「光の速さで駆け抜ける衝動は♪~」
「!?その歌は!…」
「(Nofear)一度きりの(Trustyou)この瞬間に賭けてみよう 自分を信じて 時には運だって必要というのなら宿命の旋律を引き寄せてみせよう♪~」
本来ならばクラシック級レースを制したウマ娘だけがステージで歌う事を許される曲だ。
今の私には歌う資格は薄い…だけど!
「「Winning the soul」!…この状況でまだ勝利を諦めていないのですか…面白いですね!…ならば此方もアルメールさん、君のその心意気に敬意を評して必殺の一撃を披露致しましょうか!はああああああー!!」
ミシヒトさんも次の一撃で勝負を決めてくるつもりのようだ。
「SSDライダアァーキイィィーーック!!」
ギラーガの輝きが一層強くなり右足にプラフスキー粒子が大量に流れ込んでいきそこから超加速に乗せられたキックが繰り出される。
私もこのクローの一撃に全てを賭ける!…だから答えて!私の…アスクレプオス!…
「PXシステム!」
この状況では付け焼刃にしかならないであろうがアスクレプオスのシステムを発動し彼のギラーガの放ってきたキックとパイソンクローそれぞれの一撃がぶつかり合う。
「でやあああああー!!」
「はああああああああー!!」
それぞれの一撃が拮抗し合ってとんでもない量のプラフスキー粒子がバトルフィールドを覆っていく。
そして…アスクレプオスのクローがギラーガのキックを押し返し始めていた。
「なっ!?…こ、コレは!?…僕のギラーガの領域スピードがく、喰われている!?…」
「果てしなく続くWinningthasoul♪!」
「くあっ!?…」
おされ始めたギラーガのキックは段々とその勢いが弱まっていき脚部がヒビ割れ始めていた。
「!ま、真逆!?彼女はこの土壇場で!?…」
観戦していたユウキさんのそんな呟きが耳に入るが今は集中しなくては!…
「ま、まだです!…この程度ならまだ…」
「いえ…もう貴方の領域は既に私の領域となりました…!」
「ッ!…」
パイソンクローの渾身の一撃で遂には脚部が握り砕け散りそのままの勢いを保ったままギラーガの頭部を捉え貫いた。
「はあはあ…」
「…どうやら僕の負けのようですね…」
黄金の輝きは徐々に弱まりやがてギラーガは元の色に戻り力無く機能停止した。
「『つ、遂に決まったあー!Aブロックの激闘を制し見事世界大会への切符を軽々と手にしたのはヴァイスアルメール選手だあああー!
尚惜しくも優勝を逃したサトノ・ミシヒト選手を含む選手達は二日後の敗者復活戦に挑戦し世界大会への特別参戦権を争う事となります!』」
アナウンスが私の勝利を告げた事で会場が大いに盛り上がりを見せていた。
が…
「うっ!?…」
「「アルメールさん!?」」
私は右腕に痛みを感じその場で蹲りそうになった。
慌ててシーガさん達が駆け寄ってくる。
「『おーっと!?アルメール選手一体どうしたのでしょうか?!』」
「悪いのだが勝者インタビューは又後日にしてもらえないだろうか?至急彼女を医務室に連れていってやる必要性があるのでな!」
「『わ、分かりました!…』」
私の異変に一早く気が付いていたユウキさんがスタッフさんに指示を出してくれ私は医務室に連れていかれたのだった。