水星武闘伝Aガンダム   作:足洗

37 / 61
集団戦作戦会議?宣戦布告のレネ・コスタ

 

 

 地球寮でのどんちゃん騒ぎから明けた午後。

 学園のパイロット科Ⅱ号棟。

 

「リリッケ・カドカ・リパティ! 当然あんたも決闘に出るってわかってるよねぇ?」

「え、あ、はい?」

「どっちが上か、体でわからせてあげるから。覚悟してなよ……?」

「はあ……」

 

 講義の終わった講堂の壇上で、小柄な少女ら二人が向かい合う。

 片や腰を折って豹の威嚇の如く下から睨め上げるレネ。それを小動物のような仕草できょとんと見受けるリリッケ。

 

「……え、それだけ、ですか?」

「それ言う為だけにわざわざ校舎渡って来たのか」

「律儀~」

「実は暇なんじゃね」

「外野……うるせぇぞ……!?」

『ヒエッ』

 

 その喉奥からドスの利いた低い声が響く。平素被っている猫の毛皮を脱ぎ捨てたレネの迫力は虎にも勝る。

 男子は軒並み、出回っている映像や評判との落差に慄いた。

 その光景を前に、やや興奮気味に一歩踏み寄ってスレッタは大きく頷く。

 

「正々堂々のファイト申し込み。その意気や良し! です! 受けましょうリリッケさん!」

「はい! わかりました。受けて立ちましょう!」

「ノリノリだね!?」

「スレッタも煽らないでくれ」

 

 本日分の全学年の座学カリキュラムが消化され人気の失せた講義室、そして講義棟は、作戦会議には打って付けの場だった。

 そこへ授業終了の鐘と同時に乗り込んできたレネ、付き添いのイリーシャ、メイジー、そして暇だったエナオ。

 グラスレーの主戦力が堂々揃い踏みしている。

 ミオリネはその顔触れを順々に睨み回して言った。

 

「で? まさか本当にそんな宣言する為だけにのこのこ現れた訳じゃないんでしょう」

「半分は挨拶」

「いつもはうちらが決闘申し込まれる立場なんだけど、今回はすんごい特例だしさ。ちょっとこっちも浮足立っちゃって。えへへ」

 

 エナオが胸の前に合掌を置く。

 メイジーは朗らかに笑った。

 

「確認、したくて来たの。ミオリネちゃんに。今回の決闘で賭けるもの」

「ラウンジでは保留とか言ってはぐらかされたからね。シャディクが早く教えろって急かしてる。ほら、さっさと言いなさいよ」

「そうね……」

 

 グラスレー側の要求はシンプルだった。

 株式会社ガンダムの譲渡。その権利。技術。物資……ガンダム・エアリアル。そしてその内部に組み込まれたオーバーテクノロジー・モビルトレースシステム。それら全てを。

 法外、とは言えなかった。アスティカシア学園の決闘では、その程度の裁量を許容されている。無論、明らかな犯罪行為に当たる殺人、暴行傷害、強姦等、人間的倫理観に照らして不適当なものは、外聞や体面、所属企業へのイメージ毀損もあって流石に認められることはないが。

 勝利者は()()()()()敗者の生殺与奪の権利を握る。

 旧時代の決闘制度と比較しても、その点は変わらない。

 ゆえにこそ、グラスレーの少女達は問わねばならない。ミオリネ・レンブランの要求を。

 己達の頭目の万一の行く末を。自分達の目的成就の障害を。

 

「こっちの邪魔をしないで。干渉、妨害工作、諸々一切お断り。こんなとこかしらね」

「へぇ、無利子無担保無期限融資とかせびってくるかと思った」

「まあそういう生臭いことも考えたわ。けど、金銭にせよコネにせよ貰えば何かしら払わなきゃいけない。それがタダなら尚の事厄介。結局は経営にシャディクを噛ませることになる。口出しの口実作られても迷惑なのよ」

「……なーる。完全なシャットアウトがお望みってわけ」

「そういうこと」

「シャディク……可哀想……」

 

 イリーシャが密かに囁く。それは心底の同情だった。

 

「話は済んだ? ならとっとと……」

「まだ終わってないし」

 

 つかつかとレネが壇上を下り、真っ直ぐに歩み寄って行く。

 他の何に者に目も呉れず、スレッタの前に仁王立つ。

 身長体格共に上回るスレッタが小柄なレネを見下ろす構図だが、少女の肩から立ち昇る怒気が明らかにその体躯を巨大に見せていた。

 

「あんたの所為よ!」

「はいぃ!?」

「あんたの馬鹿の所為で……見ろ! これ!」

 

 ずずいとレネは自身の端末の画面をスレッタの顔面に押し付けた。

 

 【わからせ隊】ドナドナされてるレネたん可愛いパート4(145)

 【グラスレー】馬並なのね……(772)

 水星女がレネたんをお持ち帰りしてた件wwwwwちな馬で(608)

 グラスレーガールズの黒い(馬)繋がり……2(382)

 お馬でデート!? 水星女とグラスレー寮(119)

 馬車に積まれたグラスレー3(495)

 馬とグラスレー★2(876)

 アスティカシア学園七不思議【学校であった怖い話】56(84)

 イリーシャ・プラノを語るスレ99(174)

 【急募】メイジーちゃんの画像【流出】(888)

 今日のエナオちゃんポーズ集17(414)

 レネちゃん目撃情報13(67)

 レネたんを愛でる会その44(280)

 【レネ・コスタ】キープの集い【被害者の会】25(196)

 グラスレーガールズを見守るスレ☆32(55)

 【サビーナ様】自分も罵ってください!!【ドM集合】108(987)

 

 それは学生有志によって立ち上げれられた学園内ネットワーク上の電子掲示板だった。

 ずらりと並んだグラスレー関連のスレッド。

 覗き込んだ地球寮の面々は口々に呻く。

 

「うわぁ」

「半分くらい馬だな」

「馬だ」

「丸一日も経ってねぇのにめっちゃ伸びてて草」

「っつかお前らスレとか見んのな」

「エゴサは心の健康に悪いですよ~」

「わ、見て見て、これ完全に隠し撮りじゃない? こっわいね」

「有名人も大変だ」

「じゃねぇし!! どーしてくれんだって言ってんの!? 知らない間に訳わかんない噂広まってるし画像は流出してっしキープくん達にはなんか変に同情されるしッ!」

 

 烈火の如く怒り散らすレネを、メイジーやイリーシャが肩を叩き腕を取って宥める。

 

「まあまあレネ。噂されるのなんてもう慣れっこじゃん」

「ば、馬車なんて乗る機会、あんまりないし……良い経験? だったじゃない?」

「経験も糞も意識ねぇし! ってか中世じゃねぇんだよ! 荷馬車で運ばれるって私らは小麦か!? レンズマメか!?」

「微妙に具体的だな」

「農耕と運搬の歴史だねぇ」

「すすすすみません!! よ、よく眠ってたから、起こしたら不味いとおもおも、思って」

「なにが一番腹立つってさあ! あんたとデキてるとか噂されんのがいっちばん腹立つのよ!? 誰があんたみたいなイモいブス相手にするかって────」

「あ゛ぁ?」

 

 ミオリネがレネの鼻面まで詰め寄り、眼光鋭く気息を吐き捨て威圧する。

 

「うちの花婿がなんだって? もう一遍言ってみなさいな。啖呵切りたいからって適当吹かしてんじゃないわよこの顔のどこがブスっだってぇの?」

「お、おう」

「ひゃっはははは! 突然キレんなしお嬢様がよぉ! 似合わねぇ~」

 

 やや怯むレネと青筋を浮かべるミオリネ、そして両者の様に膝を叩いて爆笑するチュチュ。

 その他の面子は心底うんざりとしていきり立つ少女達を見守った。というか、渦中に入りたくなかった。他人のふりしたかった。

 

「猫かぶりの性格ブスが」

「あ? 調子乗るなよ白髪女」

「いいねぇいいねぇ! やるか? ここでやるか? それとも表出るか」

「チュチュ、やめよ」

 

 煽り倒すチュチュの肩をニカが掴んだ。顔を青褪めさせてチュチュはカクカク頷いた。

 

「ミ、ミオリネさん、おち、落ち着いてください! 私が、その、考え足らずだったんです。だから」

「は? なに? あんたはこの女の肩持つわけ?」

「えぇ!? そ、そういうわけじゃ、なくて」

「ふんっ、ま、現ホルダーってステータスは悪くないか……顔も、うん、ブスって言ったのは訂正したげる。野暮ったいのをなんとかすれば……結構イケるわね……キープくん13号くらいにならしてあげてもいいけど?」

「キ、キープ?」

「寝言は寝て言えフェルシー第2進化」

「殺すぞお前」

「女って怖ぇなぁ」

「うん」

「えー、一緒にしないでくださーい」

「十人十色だよ~」

「アス学にまともな女なんているのか?」

「あーしは見たことねぇな」

 

 気付けば、(どうでもいい)いがみ合いの溝がまた一列分増えている。

 地球寮とグラスレー寮は互いに色濃い疲労を滲ませて溜息を落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。