水星武闘伝Aガンダム   作:足洗

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五機+一頭!?VSグラスレー寮

 

 

 

 第4戦術試験区域。

 この日、戦闘空間投影ホログラムによって再現された決戦の場は市街地。

 荒廃したビル群の只中。そこは暗雲立ち込める廃墟の街だった。

 

『ペイル社からちょっぱったザウォート三機とデミトレーナーカスタムに地球寮から三人と助っ人一人、風雲再起のモビルホース、そしてあんたのエアリアル。相手がパイロット科成績上位者だろうと蹴り飛ばしてひっくり返すくらいできる筈。ううん、できないなんて言わせないから』

『はい……!』

『ぶっ飛ばしてやんよぉ!!』

『頑張ります!』

『うん』

 

 緊張を滲ませたスレッタ、戦気を吹くチュチュ、溌溂とリリッケ、落ち着いたティル。

 そして締め括りとばかり風雲再起がクールに嘶いた。

 

『ってわけだから、助っ人の()()()()くん? リーダー機の弾除けくらいには役立ってもらうわよ』

『言ってろ。お前こそ、管制室(そこ)で精々戦術を練り続けてろ。リアルタイムに変化する戦況に、机上で丁寧に描いた絵図が通用するとは限らない。空論と心中するのは御免だぞ』

『偉そうに』

 

 左手にハンドガン、右手にビームランスを装備した一機のザウォート。そのコクピットで、各種センサー類、管制システム等、機体の簡易チェックを終えた青年が悪態を返す。

 開放されるMSコンテナ。そこから飛び出す地球寮モビルスーツ達。

 

『LM232オジェロ・ギャベル』

『LM231ティル・ネイス』

『MS119リリッケ・カドカ・リパティ!』

『MP039! チュアチュリー・パンランチッ!』

『LP041スレッタ・マーキュリー+SFS風雲再起! 行きます!』

 

 オープンチャンネルにて向顔。決闘の当事者二人。被告にして原告。ミオリネとシャディクが宣誓を終える。

 立ち合い人たるラウダは、ラウンジのメインモニターを見やって目を細めた。槍を雄々しく構える一機のザウォートを。それはまるで、手の届かないほど遠くにあるものに焦がれる幼子のように。

 

『────フィックス・リリース』

 

 それは誰の決心を告げてのものか。

 いやさ、この場、この戦場に立つ全ての者の闘志、その口火を切って。

 戦列が動く。両陣営全機による総員攻勢。

 

『前衛後衛、分けないんですか?』

『あんたに携行火器の一丁でもあればね。あんたは敵に肉薄し過ぎ。格闘、っていうか肉弾戦特化のモビルスーツなんて現代戦では普通ありえないのよ。本当ならチュチュのスナイピングで援護と牽制しつつリーダー機に特攻懸けたかったけど……』

『無いものを当てにしても仕方ない。とにかく速攻だ。相手にチームプレーの隙を与えるな』

『殴り込みってか? おもしれぇ! やってやんよ!』

『僕は随伴しつつ周囲に弾をばら撒く』

『私は風雲再起さんと!』

 

 各々の段取りを短く交わし、全機がスラスターの出力を上げた。

 

 

 

 

『敵勢六機。真っ直ぐ向かってくる』

『脳死の突撃戦法? バッカじゃない、ミオリネって戦略科じゃないの?』

『いや、あの面子ならそれも有効だ』

『どーするー? 固まられちゃうと各個撃破は難しいよ』

『でもその分、囲みやすい、かな』

『ああ、セオリーに則ろう。エナオ、レネ、メイジーは回り込んで背後に付け。サビーナ、イリーシャは敵進撃の足を止めろ』

 

 華やかな五色の了解(コピー)が返る。

 グラスレー正式採用量産機ベギルペンデ。鮮やかな菫色が空間を奔り、五条の残光が戦場に散った。

 倒壊した廃ビルを一つ越えれば、メインカメラが対象を捕捉した。

 高所からサビーナ、イリーシャの二機がビームライフルの斉射を浴びせ掛ける。足止めの為とはいえ、その射撃は正確無比。

 

『あっぶね!?』

 

 未だライフルの有効射程外にも関わらず数発を先行するデミトレーナーの装甲に掠めさせた。

 地表を滑走するデミトレーナー、ザウォート、両機を侍らせ後続するエアリアル。その進行速度は確実に落とされた。

 三機の────。

 

『!? イリーシャ、散開しろ!』

『えぇ!?』

 

 ベギルペンデ二機の合間を、漆黒の軌跡が駆け抜ける。

 

『はいどー!』

『く、あ……!』

『HIHIIIIIIINッ!!』

 

 モビルホース風雲再起、そしてそれに騎乗したリリッケのザウォート、さらにビーム手綱で牽引されたティルのザウォートがモビルスーツ単機ではありえない速度で飛翔する。

 ティル機の両腕部に装着された三連装ビームガンが火を噴いた。

 行き掛けの駄賃とばかり、降り注ぐビーム光を、それでもサビーナとイリーシャは危なげなく躱す。

 

『しまった! 中央突破か!』

『迎撃……むぅりぃー!』

『ひゃぁあああはははははは! 風雲再起さん速いはやーい!』

『き、気持ち、悪い……』

 

 はしゃぐリリッケとは裏腹に、西部劇の拷問めいて引き回されるティルは早くもグロッキーだった。

 過ぎ去っていく黒い機影。当然に、後続の三機がグラスレーの二機と相対した。

 

『ヒャッハー!』

『二機だけか。なら……!』

 

 デミトレーナーが躍り出る。その手には武骨にして肉厚の刃、戦斧(まさかり)が握られている。

 ザウォートもまたランスを構えて踏み込む。推進剤を吹かせての神速の刺突である。

 斧の一撃をサビーナは盾で受ける。受け切らず、流す。

 ヘッドの重量に相応の遠心力に、堪らずデミトレーナーは傾いだ。

 

『ちぃ……! 巧ぇな』

『力押しなど!』

 

 所変わって、グエル、もといオジェロ機の槍の一突きがイリーシャ機の右肩を殺いだ。

 

『きゃあっ!』

『くっ、浅いか!』

 

 攻撃と回避運動、進行を鈍らされた分だけザウォートの推進剤発破が出遅れた。同じ量産型とはいえ片や最新鋭、片や旧来の汎用機体。いかにしても性能の差は現れる。

 

 あのザウォート! イリーシャさんを!

 僕らのイリーシャさんを傷付けたなぁ!

 よくも俺らのイリーシャさんをぉ!

 誰だったあれ!? オジェロ? 二年の奴か!?

 絶対に許さねぇオジェロ・ギャベル!!

 

 それはそうと、槍持ちザウォートに対する学園内ファンクラブからの殺意が上昇した。

 

『騎馬の突進には面食らったが、リーダー機はがら空きだぞ!』

 

 追い縋るデミトレーナーを巧みに躱し、サビーナのベギルペンデが銃口をエアリアルへ定める。

 そしてその背後からは、エナオ、レネ、メイジーら三機が既にして追い付いていた。

 

『後ろを取った』

『これで!』

『もーらいぃ!』

 

 挟撃、エアリアルをベギルペンデ達が半包囲する。

 逃げ場無し。

 加えてこの間合。ライフルの最適射程。無手のエアリアルでは断じて敵に届かぬ距離。

 

『っ!? まさか、これほど速く!?』

 

 ────嘶きが轟く。

 漆黒の馬体。金属の躯体が廃墟の群を貫通し、来る。戻って来る。

 半包囲の三機の只中を、メイジー機を弾き飛ばした。

 

『い、ったぁい!?』

『なんっつう』

『重力発生下であの速度……この旋回性……!?』

 

 第二宇宙速度を超える速力を誇りながら、ありえぬ旋回、直角軌道。空間を()()()転身する高速の怪物馬。

 物理法則を蹴り潰す。それこそは二代目風雲再起。流派東方不敗直弟子が一頭。

 

『ちょっと、やばい、かも』

『うぷっ、私も……』

『リリッケ・カドカ・リパティィィイ!! 馬とか乗ってんじゃあねぇーーー!!』

 

 烈火の憤怒でビームライフルを撃ちまくるレネ、それを苦も無く躱す駿馬。

 その暴れる背で悶えるリリッケにレネの怒りは届かなかった。

 ティルは昇天間際に在った。

 

『シャディクがいない……? スレッタ』

『はい、わかってます』

 

 混戦の様相を呈し始めた戦場。

 その中心に佇立するエアリアル、スレッタは感覚を研ぎ澄ませ、空間に意識の指先を這わせた。

 音が遠ざかる。足元に突き刺さるビーム光にも微動だにせず、スレッタは待った。一瞬、二瞬、そうして半瞬。

 現実時間にしてニ秒に満たぬその空隙に。

 

『! 下!』

 

 地中から、それが這い出てくる。

 三枚の花弁を開いて、その口腔を晒して、ラベンダー色の爪が、腕が。

 エアリアルを襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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