水星武闘伝Aガンダム   作:足洗

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終わらぬ闘争!その先に待つは

 

『プラント・クエタから巡回艦隊へ。こちらジェターク社旗艦“レーヴェケニヒ”。現在この宙域は不明勢力からの攻撃を受けている。至急救援を乞う。確認されている敵戦力はモビルスーツ八機、艦艇三隻。繰り返す。プラント・クエタから巡回艦隊へ……』

 

 株式会社ガンダム保有艦艇(仮称)、その艦橋において。

 外部出力した音声は先程から同じ文言を繰り返している。プラント宙域を超えた広範囲に対してほぼ無差別に回線を開き、メッセージを発信している。

 

「て、敵に見付かったりしないの? これ」

「とっくに見付かってる」

「え!?」

「やべぇだろ! 早く報せてやんねぇと!」

「なのに今もこうして喋り続けてられるってことは、まだ襲われてないか」

「敵が攻めて来られない理由があるんだと思う」

「艦載MSだ。おそらく迎撃に出ている。父さんなら、そうする……」

 

 グエルの言に、一同は息を呑んだ。

 

「クソッ、まるっきり戦争じゃねぇか! こんなの!」

「これからどうすんだよ。外はテロ屋のモビルスーツがうろついてんだろ」

「モビルホースを船に積み込んでさえいれば……」

「今それ言ったってしゃーねーだろが!」

 

 スレッタとエアリアル不在の今、地球寮の最強戦力は間違いなく風雲再起のモビルホース。しかし、モビルトレースシステムの解析とモビルスーツへの転用試験の為に機体は計測機器類に繋がれたまま地球寮の格納庫に安置されている。

 当然ながらこの艦艇は戦艦ではない。武装はなく、一度宇宙空間に出ればモビルスーツの良い的だ

 

「……少なくとも安全が確認できるまでは発艦するべきじゃないな。なんにせよプラント内にいる限りは安全だ。風雲再起が防衛に当たれば……いや逆撃でも結果は変わらんだろうが」

「まあテロリスト百人くらい来てもどうにかなるんだろうな」

「そこは心配してねぇ」

「大気さえありゃモビルスーツもイケんだろ」

「ですねー」

「……みんな危機感麻痺してるね」

「スレッタとあの馬が悪い」

『うん』

 

 満場一致の心境で少年少女は頷き合う。

 絵物語か狂言のようなあの武勇が、恐怖と不安を拭ってくれると。

 グエルは笑った。外では今なお砲火が飛び交っているというのに、牧歌的な心地に陥る彼らに、自分に。

 スレッタ・マーキュリーを想い、その瞬間に青年の心は決まった。

 

「チュアチュリー・パンランチ。頼みがある」

「あ? んだよ、改まって……」

 

 常になく神妙な態度のグエルに、チュチュは戸惑いを隠してしかめっ面を作った。

 

「確か作業用に一機持ってきていたな」

「……おい、お前、なに考えて」

「お前のデミトレーナーを俺に貸してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビームサーベルを振り回し、ルブリス・ウルは狂乱する。

 エアリアルが僅かにでも間合を空ければ即座に左手のビームガトリングで追い撃つ。

 エアリアルは躱す。秒間数十発の光子の弾丸を縦横無尽に飛翔跳躍を繰り返しながらに躱す。躱す。

 それを意にも介さずルブリス・ウルは無理矢理ににじり寄った。

 ビームの刃を振り下ろす。

 抜き打ち一閃、エアリアルもまたサーベルで受ける。

 鍔迫り。エネルギー、パーメットが光と火勢を上げて砕け交ざり、また散った。

 

『戦場に来てさぁ! ガンダムに乗ってさぁ! そんだけ強い癖になに温いことやってるのかなぁ!? ガッカリさせないで欲しいんだけど!?』

「知ったことじゃない!! です!!」

 

 ソフィの喜悦と憧憬、それらに対する裏切り、失望。

 そんなものはスレッタの斟酌するところではなかった。癇癪のような乱打を巧みに()()()ながら、少女の心中を占めるのは。

 

「みんな……ミオリネさん……!」

 

 予期せぬ開戦から依然として今もなお、気掛かりは仲間達の安否。そしてなによりミオリネの無事。

 スレッタは眼前のモビルスーツの所属、目的、正体等一切合切知り得ていない。

 しかし、一つ確信はあった。敵方は問答無用。なんらかの意図を以てこのプラント・クエタを破壊し内部に残留する人間を無差別に害さんとする者共であると。

 これは尋常の勝負ではない。純粋な技量と武力を競い合うファイトなどでは決してなかった。

 

「それでも、あなたがみんなを……ミオリネさんを危険に晒すならば!」

『んなっ。押しっ、負け……!?』

 

 無重力下でモビルスーツ同士が正面からぶつかり合う時、優劣を決定付けるのは推進装置の最大出力。

 エアリアルとルブリス・ウル。いずれも宇宙戦闘を想定しチューンアップされた機体。スラスターの性能に大きな開きはない。

 ない筈のものがしかし、覆る。

 マシンスペックを超えた何かがそれを為す。

 エアリアルの、スレッタの覇気が。

 

「押し通る!」

『……あっはは! そうそう! それでいいの! それがイイのぉ! じゃあこっちもお礼しなくっちゃねぇ! パーメットスコアァ!!』

 

 ルブリス・ウルの背部より屹立するフェイズドアキャノン。それがまるで曼珠沙華の花弁の如く咲き割れる。

 赤いパーメット、血脈めいたシェルユニットの発光。

 GUNDフォーマット搭載機ガンダムの真骨頂。スコアの上昇によって、ルブリスはパワーとスピード、そしてなにより人外に近しい反応速度(インパルス)を得る。

 

『アハハハハハハハハハッ!!』

 

 少女は獣のような哄笑を上げ、獣にも等しい敏捷と瞬発の攻勢を仕掛けた。

 瞬き一つの内に三合、斬撃が虚空を走る。

 そしてスレッタはきっかり三度それを躱し、四度目を振りかぶったところの、その柄頭に蹴りを入れた。

 滑稽なほど綺麗にサーベルの柄はルブリスのマニピュレータをすっぽ抜けていった。

 

『はれ?』

「……」

 

 続け様エアリアルは逆手に握ったサーベルの柄を、無手となったルブリスの腕に添えビームを放出。

 その右腕を溶断した。

 

『ひぎゃあ』

 

 一定の深度(スコア)に到達したGUNDフォーマットは、モビルトレースに及ばぬまでもそのダメージ、感覚をパイロットにフィードバックする。

 腕を喪失した痛み、それを遥かに超える不快感がソフィの脳神経を焼いた。

 対するスレッタは冷徹だった。

 もう一手。返す刀。次の一撃で止めを呉れよう。

 ガンダムファイトならずとも、センサーとメインカメラの凝集物たる頭を潰せば敵機の無力化は叶う。

 その時、横合いから無数の発光体が瞬いた。

 

「散弾……!」

 

 身躱しとスラスター点火で離脱。弾雨をやり過ごす。

 振り返ればそこに、カーキ色の機影がエアリアルに対して銃口を向けている。

 

 

 

『このタイミングでもダメか……!』

 

 ノレアは怖気に呻く。敵機の、まるで背中に目が付いているかのような挙動、超絶した反応に。

 ソフィの暴走を相手取り、反撃に転じたその瞬間を狙い澄ましてもなおこの様。

 

『ソフィ! いい加減にしな! ウルごと(なます)にされたいの!?』

『はぁ、はぁ、はぁ、あぁっ……サイッコー。マジ堪んない。ヒヒ、ヒャハハ……でもまだだよ。まだまだ』

『あんたは……』

『だってさノレア! この人には“先”があるんだよ。わかる。私感じるの。もっとやばいのが隠れてるって!』

 

 熱に浮かされた相棒の蕩けた声音に、ノレアはヘルメットの内側で荒く気息を吐いた。

 処置無し。そう断じて見捨てるのは容易い。

 生の実感を死の瀬戸際でしか見出せない。そんな救い難い性。

 目の前の敵機が過去類を見ない確実さでそれを体現していることはノレアにも理解できた。

 だが、我々には目的がある。フォルドの夜明けを地球にもたらすという、アーシアンとしての大事が。

 

『ノレア、応答しろ』

『ナジ? こちらはアスティカシアの新型と交戦中。でもそろそろ限界。ソフィが使い物にならなくなる』

『例のガンダムタイプか』

 

 通信が沈黙する。思索の間はほんの数秒。ナジは即断して言った。

 

『全機合流。全戦力でそのガンダムを叩くぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






テンポ死んでて申し訳ない。
次回ないし次々回くらいで一期の内容を踏襲し終えるかと思われます。


終わるといいな(白目)
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