幼いころから人を殺しなれている私(名前)は、特に抵抗はなく。気が付けば笑っていた。彼の死体を見て。
「はは、……これで巴の家族は事切れた……。なのに、どうして、悲しいんだ……。私は裏切った人を許さない。でも、巴は私を裏切ってない。裏切ってないのにどうして……。」
こんなに苦しいの……??
私はあいつと同じじゃないから、あいつとは違うから。あいつとは信念が違う。もう私はこの世に生を享受した時点で、人から裏切られることが確定していたのかもしれないのだから。
私は彼とは相容れない。
私はこの先も恨まれ、捨てられ、刃を向けられ、暴言を言われ、精神が腐敗していくのだろうか……。
私は、東条様が居なければ生きてゆけない。
私は、東条様から命を受けた。殺しは慣れてる。何だろうかと思えば、雪代巴の弟を惨殺してほしいというお願いだった。
舞台は明治12年となった東京。剣心たちの全ての戦いが終わった後のお話である。
今もなお、人斬りとして暗躍している一人の女性がいた。夜の森にある男がいた。
女性の名前は(苗字)(名前)。歳は29歳。
緋村とは別の幕府と政府どちらも要らない派の派閥に入っていてその派閥のお頭の東条
今も暗殺者として活躍している。ちなみに緋村とは面識はある。
「ふう。急がなきゃ。東条様に叱られちゃう。」
スタタタタ_。という地を掛ける音が辺りの森に響いた。その音を出しているものは紛れもない(名前)本人。しかし、その服装は完全に男そのものだが性別が女である以上、女にしかみられないのである。その夜の森には髪色が特徴的なある男がいた。
「ここだな、アイツと闘ったのは……。」
そういうのは
「ん?? 誰かいるのか?? 」
と言って振り向いたとき、
「ふふっ。いた。コイツですね東条様。」
歪に笑った顔が見えた気がした。
「なっ。誰だ!!__って、女!! 」
「ははっ!! 東条様に褒めてもらえる!! あははは!! 」
「な、なんだ、コイツ?? まさか、人斬り……か?? 」
この人格の切り替えに彼はゾッと身震いした。
「こんにちは。あなた、縁よね?? 」
「ああ、そうだが。お前は誰だ?? 」
私?私は(苗字)(名前)と申します。巴を知ってる_??と聞かれてああ、勿論だと言った瞬間、腹部と胸に激しい痛みを感じた。
「巴を知ってる人は、排除しなきゃ、ね?? ねえ、はやくしんで?? 」
「な、俺は償うんだ、お前みたいなやつに殺されるなど……。」
償う、と言った瞬間、目の前に対峙している女は真顔でこういった。その真顔が、歪だった。
「殺されろ。この外道が。私は剣豪が嫌いだから_償いなんて、イラナイ。はやく、死になさいよ。」
と言って刀を体に何回も抜き差した。
「あははははは!! いい気味ね!! 」
そういったあとすぐに体を突き刺した。瞬間_彼の絶叫とともに深紅の雨が降ってきた。
「ふふっ。さようなら。それにしてもあの時
「おま、えは、誰、だ。」
「ん?? 」
「私は、深紅の
「な、裏切りの、姫君、だと?? ぐっ、……、ごほっ。剣心と、おな、じじゃあ、ないか……はあ、はあ。」
「あんた知ってんだ。剣心のこと。アイツはすごいよ。(名前)なんかとは違う。」
「(名前)とは……ちが、う??ど、う、いうこと……だ、ごほっ__、当たり、まえ、だ。きょ、ねん、アイツと闘ったからな。負け、たが……。そろそろ終わり、だな。」
「うんうん。死ぬ覚悟ができてるのはいいことだよ??さあ、苦しまないように殺してあげるねえ!! 」
「まて!!お前の目的は、なんだ!!ぐっ、あああ!!!」
そう言って、私は、彼の心臓めがけて刀を滅多刺し。断末魔の叫びが夜の森に響き渡った。
「……私は東条様に従っているから東条様の命は絶対なの。理由は言えないんだ。ごめんね!! ふふっ。でもあなたの死に際とっても美しい。でも私はもう行かなきゃ。東条様に怒られちゃうよ。じゃーね。」
遺体を残し、女剣士は森を軽快な走りで抜けていった。でも。彼女が走ったあとに感じたのは_。
「はは、……これで巴の家族は事切れた……。なのに、どうして、悲しいんだ……。私は裏切った人を許さない。でも、巴は私を裏切ってない。裏切ってないのにどうして……。」
その頃_。
「東条。進んでいるか?? 」
「ああ、それでもうすぐ(名前)の絶望する顔が見られる。桂。」
と言って、密かに笑みを浮かべるのだった。
「コイツの性格を利用できる最大のチャンスだ。」
「その最大のチャンスとはどのようなことをするんだ?? 」
「アイツに俺を殺させる、誰かに殺させるかのどちらかだ。」
「誰かに殺させる……それは、剣心に、か……?? 東条。」
「彼は不殺を自らに律している、彼は使わない……が、協力をしてもらうかもしれない。」
「じゃあ、どうするんですか。」
「それは考える必要があるな。」
「そうですか。では私はこれで。」
そう言って、踵を返した桂に東条は声をかけた。決して、彼女にバレるな、よ……と言ったのである。
朝。久しぶりに集まった剣心、薫、弥彦たちは食材を買うために町へと繰り出ていた。
「町は人が多いでござるな。」
「そうね。弥彦、赤べこの牛鍋を私たちでつくるって言ってたけど……、できそう……?? 」
「できんにきまってんだろ??」と言ってにこりと笑った。
「なんだ、ガヤガヤしてやがる。」
「行ってみましょう。」
「本物の抜刀斎……。怖いなあ。」
「なあ、こいつ抜刀斎じゃないぞ。よくみてみろ……。」
「裏切りの姫君……。まさか!!!あの抜刀斎の__。」
「いや、たぶん彼の仲間じゃあない。こいつは自分でやってるんだ。彼は今は人を殺してはいない。みたろ??お前らも彼に似た人物を。」
「ああ、確かに見たな。人を殺したことは許されないことだが、こうやって今の時代があるんだ。誇らしいよ。それにしても怖いな、こいつは、見たところ女、か? 」
掲示板に書いてあるのはあの裏切りの姫君の顔写真で。町の人たちがお触書の看板を見て畏怖している。
「こんにちは。どうかされたんですか??」
男の人に尋ねる薫。
「おや、別嬪さんだねえ、これ見てくれよ。」
「……抜刀斎……?? 」
「ああ、髪が白い男が、殺されたみたいでねえ。」
「髪が、白い……。その殺した人がどんな人物かはわかるでござるか??」
「うーん、わからないなあ。兄ちゃんごめんな、役に立てなくて。」
「大丈夫でござるよ。」
「剣心、考え事?」
「ん?食材のことを少し考えていただけでござるよ。」
「そっか。」
と言い、薫に笑い掛けたが、妙だな、と考え込む。自らがついだ剣術は俺を含め、師と後継者の三人のみ。まさか、それ以外にも存在するのか……?? 「やっぱり剣心、お前、なんか考えてるだろ。」と言ったのは弥彦で。
「おろ??」
「はー、惚けんなって。……話は帰ってからにするぞ。左之助が待ってるから。」
「そーね、そーしましょー。」
「お嬢ちゃんたち、気を付けろよ。」
と薫に言って食材を買うために八百屋まで急ぐのであった。
昨日未明_。東京の町外の家。男物の着物から女物の着物に着替えた彼女はそこに、向かっていた。
「どうだ?? (名前)。」
「東条さま、支障はございません!! きちんと始末して参りました。」
「うん、いいことだ。これで完全に
「緋村……という人を探しだして殺せばよいのですね。了解しました!! 」
そう言って、任務の説明を受ける。その顔はハレバレとしていた。でも、それは今日で最後なのだと。彼女はしらなかった。
彼女は任務地へと向かう際、反芻する。
私は、東条様から命を受けた。殺しは慣れてる。何だろうかと思えば、雪代巴の弟を惨殺してほしいというお願いだった。
幼いころから人を殺しなれている私(名前)は、特に抵抗はなく。気が付けば笑っていた。彼の死体を見て。
「はは、……これで巴の家族は事切れた……。なのに、どうして、悲しいんだ……。私は裏切った人を許さない。でも、巴は私を裏切ってない。裏切ってないのにどうして……。」
こんなに苦しいの……??
私はあいつと同じじゃないから、あいつとは違うから。あいつとは信念が違う。もう私はこの世に生を享受した時点で、人から裏切られることが確定していたのかもしれないのだから。
私は彼とは相容れない。
私はこの先も恨まれ、捨てられ、刃を向けられ、暴言を言われ、精神が腐敗していくのだろうか……。
私は、東条様が居なければ生きてゆけない。
「それで、剣心、お前妙に神妙な顔してたけど、どうしたんだよ??」
買い物が終わり神谷道場の室内に緊張感が漂う中、弥彦が淡々と剣心に尋ねた。
「嫌な予感がするんだ。薫殿たちに危害が及ぶかも知れぬからな。」
「は、それ、どういうことだよ!? 」と弥彦。
「勘でござるよ。」
「そういえばあの遺体はどうなったんだよ……。」
「回収されたでござるよ、左之助。やはり、あの遺体は……巴の弟のものでござった……。」
悲しそうにいう彼に薫は慰めるように彼の名前を言った。彼は幕末、密かに人斬りとしての命を桂から受け、何万人もの人を殺した。そのときに巴の婚約者を殺したが、その翌日くらいに巴と会い、愛する関係となった。だが。巴を狙う悪者から守ろうとしたゆえに、この手で、殺してしまったのだ。
「なに、気にする必要はない。拙者は巴のぶんも生きるのみ、でござるからな。」
そう言いつつも、彼の表情は哀しみを帯びていた。
その頃。(名前)は神谷道場の門前にいた。
「ここ_か。私、彼を殺せるかな……。だって、彼は私と同類だったんだもの。……頑張ろう。でも、東条さまはどうして私にここに行けと言ったんだろう。あー、どうしようどうしよう。」
「大丈夫よ、(名前)ならできるよ。いざとなったらあたしが狩ってあげるからさ!! 」
「ははっ、物騒だな。ありがとう。もう一人の私。」
彼女はもう一人の自分にそう言った。
「あー、でも殺すのはやだな。」
「なんで??」
「人間は嫌いだけど……だって剣心、だから。」
その言葉を聞いてもう一人の自分は「は??」と訳が分からないというように言った。
「なに??まさかあんた抜刀斎の事、好きなの??」
「(ruby:実花:みか)の殺し方、笑ってて……。こ、怖いもん……。抜刀斎以上だもん……。って、え!?ち、違うよ違う!!……抜刀斎とはあの時以来会ってないもん……。」
「……何焦ってんだか。……そういえばそうだったわね、あんたの思想に付き合えない。それに関しては彼がよっぽど正しいわ。それに、それだったら無感情でやすやすと虐殺する方がよっぽど怖いわ。」
そういった実花に微笑むようにとぼける(名前)。
「あ、焦ってません!!……それにそんなに感情こもってないかな??」
「まさかあんた自覚なし??まるで西洋のろぼっと、みたいな感じだわ。」
「そ、そんな!?」
とかひょええええ、とか声を少し上げながらいろいろ門前で話していると……。
「__はあ、ほら人来るかもしれないでしょ?? 今のあんたの服装は女子の服装なんだからちゃんとしないと_。」
「おい!!!侵入者!!!」
という少年の声。
「あ、えと。ご、ごめんなさい!!! 」
「入るんならさっさと入れ!! 」
怒り出す男の子。歳は、十、くらいだろうか。
「えっと……。」
戸惑っていると門の中から髪を後ろ上で束ねた女性が小走りでやってきた。
「ちょっと弥彦!! 」
「ちぇなんだよ!! 」
「_あんたが勝手にサボるからでしょー!! あ、すみませんあの、中に入りますか?? 」
そういったのはかわいらしい女の子で。
「あ、えと入らせていただきます!!よ、よろしいですか??」
「はい!! 構いませんよ。」
そう言って(名前)は道場の中へと歩を進めたのだった。
やっぱり殺すのは、無理かもしれない。と思いながら。