「いやー、素晴らしい肉壁だったよ!」
気づいたら真っ白い空間で1人、座っていた。耳に響く明るい声はお日様のような暖かみがあり、不可思議な状況だが何故か心が落ち着いた。
「君は陰キャの誉れだね!中学時代からのその献身!自分を自分で貶めることで前を向くその姿勢!素晴らしい!」
よく分からないが、絶賛されているらしい。素晴らしい肉壁って、ちゃんと褒めてるつもりなのかな?
「あ、ど、どうも」
どもった。初手に陰キャムーヴをカマスのは慣れているが、なんだろうか。なんとなく変なかんじがした。
「さて。君は死んだよ。覚えてる?」
謎の声に言われるまま記憶を思い返す。うん。確かに僕は死んだ。
バイトをしていたある日のこと。突然隣国が僕の母国へ侵攻した。相手は100年後を考えて動く国だったので仕込みは100年分だったらしく、ウダウダと先取防衛を守り続けた母国はアッサリと制圧されていった。まぁ戦車が信号機で止まる国だから、軍の失態ではないと思う。どんどんと軍人が死んで、やがて国は義勇兵を募るようになった。陰キャで自分の価値を探していた僕はそこの一期生として応募して従軍し、そして肉壁となって仲間を守った。別にカッコ良くもない最後だったけど、ダサい奴なりに頑張ってたとは思う。
「そう。君は死んだ。自己評価は低いみたいだけど、結構カッコ良かったよ」
「あ、あざます」
「それでね。僕は君という魂をこのまま輪廻の輪に送るのはもったいないと思ったんだよ」
「・・・はぁ。輪廻の輪」
僕も陰キャの例に漏れずオタクなので、『輪廻の輪』と呼ばれるソレが何なのかは察しがついた。そして、この後の展開も。
「だからね。別の世界へ君を転生させようと思うんだ。好きでしょ?転生もの」
好きではある。でも死ぬほど痛いのは嫌だ。あとリアルなチーレムは陰キャに毒なので避けたい。
「・・・その、そこは痛い思いをしたりは・・・」
「・・・うん。選択によっては痛い思いはするかもね」
「選択・・・」
「・・・君を思っての転生だよ。そこは信じて欲しい。あ、転生特典もあげるよ!何がいいかな?」
転生特典。俺Tueeeee作品ではよくある神様チートがもらえたら最高なんだけど、そっか。選べるシステムなんだ。
「じゃあ『顔』を、イケメンじゃなくて良いので、その、マシ?なものに変えて下さい。それで充分なので」
僕の顔面は絶望的に酷かった。無駄に顔だけが骨格を含めて肥大化していて、眉毛と唇は異様に太く、ヒゲが伸びまくり鼻は太く逞しくなり、ブツブツばかりで誉める部分の方が少ない顔だった。なので同級生からは色々言われ、付いた渾名は顔面凶器。刃のように攻撃力のある顔面らしい。曲がり角で鉢合わせたら、うわっ、と言われて距離を離されたりしたし、職務質問も2回経験した。店に入れば高い確率で万引きを疑われて睨まれる。そんな顔面をしているので恋愛を含めて色々と青春を諦めた僕だが、それでも悔しくはあった。
だから望んだのは『マシな顔』だ。少なくとも普通の人として扱われるぐらいには、できれば顔採用で落とされないくらいにはなりたい。絶対に。
「言うと思ったよ。手元の鏡を見てみて」
いつの間にか手鏡を握っていたのでその鏡で自分の顔を見た。そこに映っていたのは、ピンク色の長髪。ピンク色の瞳。左目はガーゼみたいな眼帯で隠れていた。
なんと言うか、美少女というか、男の娘?
「君の性格的にイケメンは似合わないからね。愛嬌を振りまく系の顔にしたよ。これならイケメンよりもヘイトを集めないハズ」
自分へのヘイトの管理は陰キャの義務みたいなものなので、確かにこれは有り難いのかもしれない。
「あ、ぁりがとうございます」
今度は声がカスレたが、なんとか言い切った。
「ただ、僕としてもコレを転生特典と言って送り出すのは忍びないから、ちゃんとその左目に仕込んでおいたよ。それが君の転生特典だ」
「左目?」
「時が来れば分かるハズだよ。それじゃあ、僕は仕事に戻らないといけないから、そろそろ送るね」
お別れらしい。
「あ、あの、」
「ん?」
「ありがとう、ございました」
ちゃんと言い切れるように中盤で切って、全部言い切った。
「うん。頑張ってね」
その瞬間、僕の視界が真っ白に染まった。
一応、海賊が航路を寸断させていて地球の状況が分からないという設定は用意しています。ただ地球のことを誰が喋って、どうやって目指すかとか目的はもう少し練りたいです。