【完結】世界を救ったヒーローの二週目特典である完璧美少女ボクがライバル全員TSしてるせいで負けヒロインな件   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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お題:自分ヒロイン、負けヒロイン、オセロ、特撮、二周目より


ゲーム1:大勝利? 否、負けヒロイン

 

「―――今日こそ、決着をつけるぜ≪ゾディアック・キング≫!」

 

 いつか、どこかの採石場。

 傷だらけの、しかして目に強い光を宿す青年が叫んだ。

 対するは怪人だった。

 そう、怪人。

 チェスの駒、そのキングを模した白と黒の化け物。

 発せられる威圧感は尋常ではなく、常人ならばその前に立つことすら叶わない。

 だが、青年は一歩も引かなかった。

 むしろ、前に出て、懐からドライバーを取り出す。

 

『リバースドライバー!』

 

 長方形の、二つの円形スロットが開いたバックル。それを腰に押し当てると端からベルトが伸び自動で装着される。

 続け、ジャケットの内側ポケットから掌サイズの分厚いコインを取り出し、両手で握る。

 表裏が白と黒で二つに配色されたそれに、力を込めればそれぞれ分離し、ドライバーのスロットに差し込む。

 

『オルターブラック! オルターホワイト!』

 

 ベルトから発せられるテンションの高い機械音声。

 スロットの中の黒のコインは縁に金、白のコインは縁に銀の装飾が同時に追加。

 足元に黒縁緑色の碁盤の目状のフィールドが展開。

 それぞれの目に半透明な金縁の黒、銀縁の白のオセロの駒がずらりと並ぶ。

 同時、バックルの二つのコインから黒と白のスパークが発生し、青年の全身を蝕むように広がり、

 

「―――ハァッ!」

 

 気合い一声。

 スパークが身体から消え、足元のオセロの駒が青年の背後に集結し、システマチックな太極図を模した魔法陣となる。

 そして、青年は右手の甲を前に、左手の平を前にして腕をクロスし叫ぶ。

 

「―――()()!」

 

矛盾してる(コントラディクション)!?――――否!(ノー) 表裏一体(インディヴァイデッド)!』

 

 歌の様に流れるシステムボイス。 

 背後の魔法陣が少年を潜り抜け、閃光を放った時―――青年は変身を完了させていた。

 

『オセロー――――オルタナティヴ・ゼロ!!』

 

 白と黒を基調にし、随所に金と銀をアクセントとした機械的なアーマー。

 左右の複眼はやはりそれぞれ白と黒であり、同じように右腕、左足と左腕、右足がアシンメトリーで黒白を纏う。

 腰から生じたチェック柄マントをはためかせ、ソレは叫んだ。

 世界を滅ぼそうとする悪逆非道の怪人へと。

 自らがいかなるものかを証明するために。

 

「救世プレイヤー―――オセロー! さぁ、ここからひっくり返すぜ!」

 

 世界を救う、最後の闘いが此処に始まった。

 

「ウオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 長谷川シロウ。

 彼は転生者である。

 前世で死んで、神に転生させられて、第二の生を得た。

 『武装プレイヤーオセロー』として。

 それは生前、日曜朝の時間帯にやっている特撮ヒーローシリーズの一つだった。ボードゲームをモチーフにしたそれは番組枠としては子供向けながら、そのストーリーの複雑さとオセロならぬ信頼と裏切りをテーマにし、大人からも人気の一作だったが、同時にその複雑さと人間関係の重さ故に賛否両論にもなっていたらしい。

 らしい、というのはシロウはその手のヒーローものを見たことなかった故に。

 

 いずれにしても彼は転生し、ヒーローになり。

 出会いと結束、別れと裏切りを繰り返し、世界を救った。

 

 そして、今。

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「うるさいですよ、シロウ。キングを倒したようなテンションでゲームをしないで―――、ボクの勝ち」

 

「うわああああああああああ!!!!」

 

「キングとの戦いだったら世界が滅んでましたね」

 

 ある高層マンションのリビングにて、ゲームで大敗していた。

 黒髪黒目、黒シャツに黒のスウェット。筋肉質な身体や整った顔立ちは若手俳優やタレントのようだ。

 全身真っ黒の二十代の青年。

 それがシロウ。

 彼はソファにひっくり返りった姿はまるで世界を救ったヒーローのようには思えない。

 

「なんでだ……なんで俺が負け続けるんだ……? おかしいだろ……」

 

 呪いの言葉のように負け惜しみを呟く姿は憐みすら誘う。

 だが、シロウを負かした相手は鼻を鳴らし勝ち誇るだけだった。

 

「ふふん。頭の出来が同じはずなのにこれとは。またボクの方が優れていると証明してしまいました……顔もいいし、ゲームも上手い……困りましたね、これは」

 

 澄んだ声を持つ女性。

 カーペットに直接座り、抱えたクッションの上でコントローラーを握っている。

 白の長い髪、透き通るような白い肌。赤い瞳。白いカッターシャツに白いハーフパンツ。

 瞳以外は真っ白の美女。

 カッターシャツを押し上げる胸は豊満に膨らみ、露わになった太ももは肉感的で艶めかしい。

 彼女もまた人気女優やモデルのような外見をしている。

 だが、女の溢れる女性的魅力にはまるで構わず、

 

「それは間接的に俺を褒めているのか?」

 

「君の顔が良いのは認めますが、それでも中身が……」

 

「それは間接的に自分を貶しているぞ、あほめ」

 

「貴女もですよそれ――――何せ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女の名はクロエ。

 長谷川クロエ。

 クロエと性別と色の違いはあれど同じ顔立ちは双子のようであり―――もっと、深いものだ。

 

 クロエはシロウの中にいた()()()()()()()である。

 

 ある戦いにおいて≪オセロー≫の力を限界まで引き出す為に、シロウは自らの裏側と対面した。

 それが自分そっくりな、性別や性格が反転した女。

 彼女と対立し、和解し、理解し合うことでシロウはオセローの最強の姿≪オルタナティヴ・ゼロ≫となり世界を救った。

 救ったのだが。

 

「くそっ……何度思い出しても腹が立つぜ」

 

 シロウはゲームのコントローラーを背の低い机に起きながら毒づく。

 壁に備え付けの大型液晶テレビには自分のキャラクターが倒れ、同じキャラを使っていたクロエが屈伸を繰り返している。

 キレそう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう、彼は世界を救った。

 オセローにおける敵組織≪ゾディアック≫の王、キングを倒して物語はハッピーエンドになった。

 なるはずだった。

 

 問題はその後。

 

 世界を救ってひと眠りしたシロウの夢の中に、彼を転生した神が現れて色々なことを言った。

 要約すると、

 

『おつー。頑張ったので経験や能力そのままにもう一回人生やり直してエンジョイできるようにするね! 作中の裏切りとか死人とかそういうの全部なくなった平和な世界! やったぜ! ループ、というか一応よく似た世界に転生だから、特典で君に最高のヒロインも付けてあげる!』

 

 というものだった。

 色々と筆舌にしがたい。

 平和な世界、というのは嬉しい。

 特にシロウは転生して、仲間に何度も裏切られ、心を痛め、結局別のプレイヤーは最後にはほとんど死んでいた。

 それぞれに色々な理由があり、恨んでいる相手も、恨み切れなかった相手もいる。

 

 だから、ご都合主義だとしても、二周目の平和な世界があるのならそれでもよかった。

 特典とかいう最高のヒロインが、もう1人の自分であることを除けば。

 

「世界を救って平和な二週目の特典ヒロインが自分なんてどうかしてる……!」

 

「君、特典扱いされたボクの気持ちも慮ってください」

 

「自分を慮る必要は?」

 

「あるでしょう」

 

「それはそう」

 

 肩を竦めつつ、立ち上がる。

 一周目では知り合いの家に居候――最終決戦の直前に知り合いの家族ごと爆破された――をしていたが二周目は高層・高級マンションの一室だ。

 一週目は転生として生まれた時から始まったが、二週目では≪ゾディアック≫との戦いが始まる一年前からスタートし、どういうわけか高い生活水準や安定した収入が確保されていた。

 なので今のシロウは無職である。

 

 無職のヒーローだ。

 ちょっとどうかと思う。

 

 二週目特典、というやつだろう。 

 ちなみに≪ゾディアック≫は二周目開始直後にシロウとクロエで速攻で組織丸ごと潰しているので世界の危機は最早ない。

 収入も安定しているので概ね彼と彼女は暇なので、平和な日々を謳歌するだけだ。

 

「それはそれで困るけどな……」

 

 立ち上がり、リビングからシステムキッチンまで足を運び、冷蔵庫から炭酸飲料を取り出す。

 

「私のもお願いしますー」

 

「おー」

 

 何を、とは聞かずにミネラルウォーターのボトルを手に取る。

 シロウは炭酸が好きで、クロエは炭酸が嫌い。

 味の好みも反対だ。

 リビングのソファに戻り、彼女に適当に放れば、危なげなくキャッチ。

 

「今日の予定は」

 

「あー」

 

 時計を見れば、もうすぐ正午で、

 

「昼過ぎからシャーリーとランチだ」

 

「!!」

 

 クロエの反応は劇的だった。

 シャーリー。

 シャーリー・B・田中。

 アメリカ人とのハーフであり、金髪碧眼の美女。

 そして、救世プレイヤーモノポリーでもある。

 一週目ではシロウにとってライバルと呼ぶべき存在だった。

 初めて出会う自分以外のプレイヤーであり、最初は敵であり、何度か信じて仲間になり、また何度か裏切られて敵になって――――最後にはシロウが自ら殺した相手でもある。

 変身アイテムである≪ゲームコイン≫の奪い合いから始まり、ゾディアックに対する意見で対立し、1人では倒せなかった敵を倒す為に共闘し、ゾディアックの姦計で決裂し、それを超えて共闘し、彼の目的のために裏切られ、その目的が故に許し、結局わかり合えることはできなかった。

 信頼できる敵であり、油断できない味方。

 そんな女。

 そんな女―――――に、なった。

 

 シャーリーは一週目では男だった。

 完全に生物学的にも外見的にも男であり、金髪碧眼のイケメンだった。

 が、何故か二周目では女になっていて、色々な問題は解決し、偶然にも出会い、シロウとはまっとうな友人関係を結んでいる。

 

「それは……」

 

 クロエはこっちを見なかった。

 

「おう」

 

「それは……デート、ですか?」

 

「え? いや、ははは。そんなわけないだろ。シャーリーだぜ?」

 

「はははー、そうですねー。釣り合いませんねー。おっぱい大きいですし」

 

「ははは、お前も大概だ」

 

 シロウは笑い、

 

「じゃ、俺は行ってくるよ」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああ絶対デートだああああああぁぁぁ少なくとも向こうはそのつもりだあああああ」

 

 シロウが家を出た直後。

 1人広い部屋に残ったクロエはクッションに顔を突っ込みながら呻き声を上げた。

 シャーリーという女を、クロエは知っている。

 前世では男としてだが、シロウとして、彼の内側からずっと見ていたのだから。

 そして二週目で出会い、

 

「シャーリーは完全にシロウを狙っています……!」

 

 金髪碧眼、ついでに巨乳長身。

 アメリカパワーとでもいうのか、身長170ほどのクロエよりもさらに高く、全体的にボリュームにあふれている。

 おまけに一週目の男は面倒に粘着して戦っている相手だったが、抱えていた問題が解決したからだろう優しくお淑やかな淑女になってしまった。

 

 抱えていた問題。

 彼女、或いは彼は所謂本編開始前に妹をゾディアックに囚われ、妹を救うためにプレイヤーとして戦い、そのためにはシロウを裏切ることも厭わなかった。

 だが、二周目に入り、当然それを知っていたシロウはゾディアックを潰す際、攫われる事件をそもそも潰した。

 だからシャーリーの問題は解決されたのだが。

 新たな問題は、妹を助けた場面をシャーリーが目撃してしまったということ。

 

 化物に攫われそうになった妹を颯爽とかっこよく助けたイケメンのヒーロー。

 惚れない理由がない。

 

 そしてそんなのはシャーリーだけではない。

 

 ≪救世プレイヤーチェッカー≫市松風。

 糸目関西弁の詐欺師は二周目では糸目関西弁のままの、飄々とした美女になった。

 ゾディアックの傘下だった宗教団体に両親を洗脳され、彼女も同じ目にあったところをシロウが救った。

 

 ≪救世プレイヤーナインモリス≫十六夜撫子。

 協力や共闘を厭い、1人で戦うことを望んだ孤高の男は、スレンダーでクールな美少女高校生になった。

 ゾディアックの襲撃に逢い、当時の友人らに裏切られ、唯一の親友を失い、復讐の鬼になるはずだった彼女を、友人ごとシロウは救った。

 

 ≪救世プレイヤーコネクト≫水門蓮。

 ゾディアックやプレイヤーシステムを研究材料とする神経質な科学者の男は、機知に富んだ美女になった。

 自分が知らないものの存在を納得できない彼女に対して、ゾディアックが何故生まれたのか、どういう存在なのかを教え、何より最大の研究対象と定められることによってその知識欲をシロウは救った。

 

 ≪救世プレイヤーフリッツ≫フリッツ。

 本来ゾディアックのキングの息子であり、次代のキングとなるはずの子供は、カリスマを秘めた美少女になった。

 正しく優しい心を持ちながら、自らの運命に諦め、偽悪的に振る舞わねばならなかった少女に、その運命ごと破壊することで彼女をシロウは救った。

 

 一周目で男だったはずのプレイヤーは全員女になっていて、その上で、シロウはその全てを救った。

 二周目というアドバンテージを活かし――なにより彼は、人を救うヒーローだったから。

 転生とかループとかそんなの関係なく、長谷川シロウは誰かを助けるヒーローだった。

 なのに、

 

「どうして……どうしてそのヒーローのヒロインとして生まれたボクとは何の進展もしないんですか……!?」

 

 神という上位存在はシロウにとって最高のヒロインとしてクロエを生んだ。

 元々はシロウの人格の一部であったが、二周目が始まると同時に別の存在として、そしてシロウのヒロインとしての存在を確立されている。

 クロエにとってシロウのヒロインになることは存在理由だから。

 

 だって、シロウは一周目、あまりにも多くに裏切られ、失った。

 モノポリーの話だけではない。

 

 チェッカーが自らの嘘で自滅していく様をシロウは見た。

 ナインモリスが復讐のために命を削り、そして復讐を果たして死ぬ様をシロウは見た。

 コネクトが研究欲の為にゾディアックへと裏切り、そしてそのゾディアックの実験体として怪人になるのをシロウは見た。

 フリッツが運命に負けて敵になり、それを倒したらキングに失敗作と殺されるのをシロウは見た。

 

 その度に彼の心はひび割れ、しかしそれでも世界を救った。

 それはあまりにも美しく、痛ましく――――愛おしい。

 

 全てが平和の――――シロウが平和にした世界で、彼が救われて欲しいと思う。

 

 なので、二周目が始まって真・ヒロインとしてラブコメを始めようとしたのだが。

 

「ナルシストのシロウが自分ヒロインのボクに全くなびかないのはおかしいでしょう……!」

 

 彼はナルシストだ。

 実際顔がいい。

 そして行動が伴っているのでナルシストが様になっている。

 ナルシストというが嫌味な雰囲気はないし、むしろ自分に自信が溢れているのは彼の魅力でもある。

 だが、それは彼の反対である彼女も同じで、

 

「シロウ……告ってください……! 押し倒してくださいよ……!」

 

 クロエは自分からアクションを起こすことが、そのナルシスト性故に許さなかった。

 遠回しなアピールはしているが、どうにもシロウに意味はない。

 直接的なアピールは、クロエの精神性のせいで行動できない。

 

「あぁぁあ……」

 

 解っている。

 解ってはいるのだ。

 素直になればいいだけの話。

 それができれば苦労しないのだが。

 正直、性別反転したプレイヤーたちなんて相手にならないと思っていたが。

 クロエが手をこまねいているせいで、いつのまにか毎日誰かしらとシロウとデートをしている。シロウが鈍いせいなのかなんなのか決定的なことにはなってないらしいがそれも時間の問題だ。

 

 愛しい相手に、想いはあるけれど、行動できないし、意味がない。

 人はそういう存在をこう呼ぶ。

 

 ――――負けヒロインと。

 

「世界を救ったヒーローの二週目特典である完璧美少女ボクがライバル全員TSしてるせいで負けヒロインなのおかしいじゃないですか……!」

 

 

 




3~5話ほどの予定です
普段描いてる一次長編の息抜き短編。
よろしければそちらもどうぞ。

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