【完結】世界を救ったヒーローの二週目特典である完璧美少女ボクがライバル全員TSしてるせいで負けヒロインな件 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「きゃああ!」
「うわあああ!」
「化物だぁー!」
街に悲鳴が響き渡る。
遊全市の中央公園、すり鉢状の広場は四方は階段状の噴水となり街の憩いの場である。
だが今、そこには全身に回路基板のような細かいコードを張りつけたのっぺりとした怪人――というよりも戦闘員と呼ぶべき何かが大量に出現し、市民を襲っていた。
多くの人が逃げ惑う。
二週目の世界において、≪ゾディアック≫という組織が行動を起こす前に壊滅されたために脅威にしたする耐性がない。故に、状況を理解できずにただ我を忘れて逃げ惑うだけしかできなかった。
そんな誰もが怪人たちに背を向けて逃げ、走り出す中で。
――――たった一人、黒い影が駆け抜けていく。
混乱と恐怖の波を切り裂くように、確固たる意志を秘めたように、流れに逆らう様に。
黒は驚くべき速さで広場に辿りつき、
「うわぁ!?」
今まさに、戦闘員が逃げ遅れた少年に剣を振り下ろそうとした瞬間。
「ハァッ!!」
駆け抜け様に跳躍し、飛び蹴りを叩きつけた。
戦闘員を吹き飛ばし華麗に着地したシロウは、腰が抜けていた男の子の手を引き立たせ、
「もう大丈夫だ」
力づける様に優しく肩を叩く。
「う、うん……ありがとう、かっこいいお兄さん!」
「ふっ……そうだろう。お前も俺ほどではないがかっこよくなれる。だが今は離れるんだ」
「うん!」
少年がしっかりと走り出すのを見届けるとシロウは広場を見回した。
いつのまに数十体にもなり広場を埋め尽くす戦闘員。それに倒れ、もう息の無い人々に顔を歪める。
広場内にはもう一般人はいないが、それでも避難が完了とは言えないだろう。
しかし目下の危険、それは、
「ポーン……の、亜種か?」
シロウは眉を潜めながら記憶から似た存在を思い出す。
≪ゾディアック≫の怪人において最下級の戦闘員、ポーンによく似ている。ただ、あれはチェスの駒のポーンを模していたが、これは電子回路。
或いは同じ素体で、別のモチーフで設計されたような。そんな存在だった。
一周目の世界では見たことがないタイプの怪人。
「……まぁ、いい。やることは1つだ」
『リバースドライバー!』
懐からドライバーを取り出し装着。サングラスをジャケットの内ポケットにしまい、同時にコインを取り出す。
表裏が黒と白のプレイヤーコイン。
二つ空いたスロットの内、右側にそれを差し込むことでシロウの足元に碁盤目状のフィールドが展開、黒と白のオセロの駒がずらりと並ぶ。
腕を胸の前に十字でクロスし、彼は叫ぶ。
「―――変身!」
『
叫んだ瞬間、フィールドのオセロの駒が跳ね、シロウの身体にぶつかり素体スーツに、アーマーとなっていく。
『オセロー! ベーシック!』
初期形態、武装プレイヤーオセロー・ベーシックモデル。
左右異なるアイレンズがそれぞれの色に輝く。
白と黒の二色モノトーンのプレイヤー。
「せっかく救った街で好き勝手はさせない……!」
●
「逃げてください、早く!」
撫子に、加えて先ほどまでシロウと一緒にいた5人は広場の周辺で避難誘導を行っていた。
逃げ惑う人には子供やお年寄りのように逃げるのが難しい人もいれば、パニックで冷静さを失っている人もいる。
≪ゾディアック≫が世に出る前に関わったこととまだ落ち着けていたのと、真っ先に走っていたシロウの存在が大きかった。
「バイトガール!」
「撫子さん!」
「ひぃ……ひぃっ……」
「ふぅ……ふぅ……一先ずこの辺りは平気そう……かの」
「っ……皆さん」
広場の周りの避難が済み、気づいたら全員が一度集まっている。
シャーリーと風は普段から運動していてるので平気そうだが、日々研究室にこもっている蓮に幼い故に体力の少ないであろうフリッツは息を切らしているようだった。
「!!」
広場を見下ろせば、シロウ――オセローが戦っている。
「なにか……私たちにできることはありませんか?」
今の撫子たちにプレイヤーシステムはない。
手に入れるきっかけとなる事件、そもそも戦う相手である≪ゾディアック≫が存在していないからだ。
それでも、彼の力になりと撫子だけではなく誰もが思う。
「……風さん、何か便利なものはないのかしら?」
「ふぅ……ふぅ……!」
「いやもうちょっと体力つけぇや」
「体力なさ過ぎでしょう……」
「ぐぅ……科学者なんだが……ふぅ……いや、そもそも私は武器屋でもないんだがねぇ……」
「任せるがいい、妾の力なら、少しは――」
「―――止めておいたほうがいいですよ、皆さん」
「!」
その白い女は突然現れた。
髪も肌も真っ白で、ワンピースも靴も同じ色。
この場にいる全員が美女美少女なれど―――それでも、次元が違うと思われされるような美貌。
純白の髪が、さらりと風に揺れ、しかしその瞳だけが紅玉の様に真紅。
アルビノの美女。
長谷川クロエ。
長谷川シロウの対極たる彼女が、5人の前に現れた。
●
『ウィニング・メソッド!』
ドライバーの必殺技ボタンを叩くと、軽快なサウンドボイスが鳴り響く。
両足にそれぞれ黒と白の光が集まり、
「ハァ――ッ!」
飛び上がり、前宙、戦闘員の群れに両足によるキックを叩き込む。
必殺キックを叩き込み、十体近い戦闘員を巻き込みながら爆散、地面を削りながら滑り振り返れば、
「……やれやれ。たまにやたら数が多い時があったな」
思わずため息を吐く。
徒手空拳で何体も倒したし、一度にまとめて爆発させたがそれでもまだまだ広場を埋め尽くすように戦闘員が残っている。
加え、いつの間にかただの戦闘員とは違う、装甲のようなものを追加し、胸の中央に四角い回路――ICチップのようなものを付けた怪人が数体現れていた。
中にはチップが二つ付けられている怪人もおり、二体しかいないが、見るからに装甲が多く、握っている武器も物々しい。
≪ゾディアック≫でいうルークやビショップ、或いはナイトの階級に近い気配がある。
ゾディアックの怪人は戦闘員であるポーン、通常怪人のルークの強化怪人のビショップ、上級怪人のナイトがいた。
ナイトになればなるほど数は少なく強くなり、最上級であるクイーンとキングは一体だけしかいなかった。
新しい階級が現れるたびに、プレイヤーシステムをアップデートしたり、他のプレイヤーと協力せざるを得なかったのは懐かしい思い出だ。
「まぁいい」
腰のコインホルダーから新たなゲームコインを手にする。
表裏黒と白のそれは、最初の変身に用いた『オセローコイン』とよく似たもの。
それを黒を表にしてバックルの空きスロットに差し込む。
『オルターブラック!』
バックルのスロットに『オセローコイン』と『オルターオセロ』コインが並び、『オルターオセロ』に黒いスパークが弾け、二つのコインの縁に金色の装飾が追加。
通常変身と同じように碁盤目状のフィールドと黒白のオセロの駒が展開され、
「―――アップグレード」
パチンと指を鳴らし、白のコインがひっくり返り、フィールドが黒一色に染まる。それはオセローへと集結し、
『
銀色の光に包まれ、オセローの姿が変わった。
白のパーツは消え、全身真っ黒。肩や腕の装甲が鋭角的になり、随所に銀色の装飾が施される。
『オセロー! オルターブラック!』
強化形態、武装プレイヤーオセロー・オルターブラックモデル。
「さぁ―――パーフェクトゲームと行こう」
襲い掛かる怪人と戦闘員。
真っ先に来たチップの一つ持ちが振り下ろした棍棒を右腕で受け止める。
「―――」
直撃の瞬間、腕が一瞬銀に輝き、オセローは一切揺らがない。
同じように槍を突き刺してきた他の一つ持ちの一撃も左手で掴み、同じように輝く。
不動の構えに戦闘員たちもオセローを囲み、殴り、蹴り、体当たりを続け、純黒は一切反応を見せず、
「――――ハァッ!」
『リリース!』
豪! と、掛け声と共に衝撃波が怪人も戦闘員も吹き飛ばした。
オルターブラックは近接に特化したモデルであり、純粋なパンチ力やキック力はベーシックモデルの数倍に向上している。
そして、当然それだけではない。
拡張特性として、「受けた衝撃を蓄積し、衝撃波として開放する」という固有の能力を持っているのだ。
即ち、追い込まれれば追い込まれるほど逆転の一撃が大きくなるというモデルに他ならない。
戦闘員の素手の攻撃は勿論、『一つ持ち』の武器による攻撃も動きを見極め的確に両腕を使い受け止め、衝撃を蓄積。
腰を落とした掌底と共に開放すれば戦闘員たちが吹っ飛び爆発。
『パーフェクト・ウィニング・メソッド!』
全身の銀の装飾が輝き、拳に集う。
『一つ持ち』の一体に叩き込めば、着弾地点を中心にブラックホールのような漆黒の力場が発生。
打撃エネルギーをその地点で増幅し―――解き放たれる。
『一つ持ち』が爆散し、さらには他の『一つ持ち』も巻き込んで爆散した。
「――――次はこいつだ」
『ユニバーサルドライバー!』
戦闘員の数は減り、『一つ持ち』も消え、後には二体いる『二つ持ち』と数体の戦闘員。
『二つ持ち』は見るからにこれまでのよりも強力だ。
故にオセローは、別のドライバーを取り出し、取り換えた。
スロットが二つあるリバースドライバーとは違い、スロットが一つ、さらに装飾が増え、白黒に加えて金色がメインのカラーリングになっているベルトだ。
腰のホルダーから取り出したコインはルーレットのように黒白、青、黄、紫、緑、赤で色分けされた見るからに豪華なゲームコイン。
スロットに装填し、
『ユニバーサル!』
足元に六角系のフィールドが展開。
コインと同じように六分割に色分けされた中心にオセローは立ち、
「アップグレード!」
『オセロー! モノポリー! チェッカー! ナインモリス! コネクト! フリッツ! ――――
六つの各辺にオセロ、モノポリー、チェッカー、ナイン・メンズ・モリス、フォーコネクト、チェスのボード盤が彼を囲み隠すように発生。
倒れながら重なり、光は弾け、オセローの姿はさらなる強化を見せていた。
『ユニバーサルオセロー!』
金をベースに黒と白。加えて他の五色を全身に散りばめた戦士。
最強形態、武装プレイヤーオセロー・ユニバーサルモデル。
一周目の世界、ナイトまでとは比べ物にならない強さを持つクイーンを斃す為にプレイヤーたちが一度だけ、手を結ばざるを得なかったことがある。
そのために一周目のコネクトが中心になり開発したのが全てのプレイヤーシステムを統合進化させた≪ユニバーサル≫だ。
全てのプレイヤーを使えることは勿論、固有能力を合わせることもできる、まさにてんこ盛りと呼ぶべき最強形態である。
『ユニバーサル・ウィニング・メソッド!』
「はぁっ!」
ユニバーサルオセローが腕を振り、背後に各ゲームの巨大な駒が出現。
六つのゲームの駒は遊び合うように、二体の怪人を囲みながら飛び跳ね、ついでに様に戦闘員を爆発させる。
怪人二体を中心に跳ね回る六つの駒は反撃どころから避けることさえ許さずに、それらのを拘束し一か所に止め、
「ハッ!」
飛び上がり、空中キックを叩き込む軌道上にゲームボード6種類が展開。それを潜り抜けるたびに、白黒、青、黄、紫、緑、赤の光を纏い
「ハアアアア―――――ッ!」
『二つ持ち』へと叩き込んだ。
爆発四散。
最早広場には怪人どころか戦闘員は一人も残っていない。
つまり、
「―――完全勝利」
●
「――――お見事だ、オセロー」
「!」
倒した直後。
それは広場に現れた。
若い少年だった。金髪に、毛先だけが赤くなっている。おそらく十代半ばといったところ。
不敵な笑みをたたえた少年はゆっくりとユニバーサルオセローを見据え、
「妹がお世話になっているね、長谷川シロウ」
「あぁ……? お前、一体――」
「僕かい?」
オセローの質問を遮りながら彼は答えた。
そして、
「僕の名はオデッセイ」
ドライバーを取り出した。
「そして」
「!?」
ユニバーサルドライバーによく似た意匠。だが丸いコインスロットが四角な所が違う。
続いて彼が取り出したのは、それに合わせたようなフロッピーディスクのようなもの。
「――――変身」
『CREATE NEW GENERATION!』
緑、青、黄のネオン光に包まれ、そして少年は変身を完了させた。
三色のネオンカラー、電子回路を模したデザインの装甲に包んだそれは、
「……武装、プレイヤー……?」
「そうだ」
彼は笑う。
「僕はキングのもう1人の子供にして―――武装プレイヤーオデッセイだ」
連続フォームチェンジしたいだけの回
映画でたまにでるあれ、いいですよね。
初期:オセロー・ベーシック
強化:オセローオルターブラック
黒に純化する=盤面黒一色=オセロで完全勝利
最強:ユニバーサルオセロー
色々なゲームは世界共通、皆で遊べる姿
一周目における最初最後の全員共闘で生まれた姿
実際にはみんなで遊ぶなんて光景はなかったのですが。
遠距離用のオルターホワイトもある。
オデッセイ:なんかVシネで出てくるタイプの敵
TSヒロインズ→クロエの感情は次回描いて、そろそろ完結かなという感じ