リコリコ・チャイルド(完結)   作:とりなんこつ

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19.烈花の如く

 

『…君は、我々の意見を一顧だにしないのか?』

 

 荒い呼吸を繰り返す千束の肩に、遥か天上から声が降ってくる。

 

『このフィールドにいる他の参加者を全て殺害出来れば、君の友人たちに差し向けた兵士たちの行動を停止させる。悪くない取引だと思うんだがね?』

 

 千束の足元には長い髪を束ねた中年女性が転がっていた。

 至って普通の見た目はちょっと街にウインドウショッピングへ出かけるような軽装だったが、鍛えられた体幹は尋常ではなかった。

 数分に渡る死闘を演じてどうにか千束がワイヤーガンで拘束できたことからも、その実力は伺い知れる。

 

『未だ君が才能を十全に発揮せず、不殺主義を貫く理由が分からないのだが…』

 

 心底困惑したような声を無視して、千束はコテンと右に首を傾げる。

 目を狙った含み針を躱したのだ。

 床に転ばされてもなお戦意を失っていない女の頭を不本意ながら蹴飛ばし、昏倒させた。

 あくまで命を奪う気はないとのアピールでもある。

 

『…やんぬるかな。古来より実を結ばず朽ちた名花も少なくない』

  

 至極残念そうな声を肩に受け、千束は自分が複数の殺気に囲まれているのを感じた。

 ここに集められた人間の全てが殺しの才能の所持者であることは今さら言うまでもない。

 そして殺しの才能とは、言い換えれば自分が死なないように立ち回れることに特化した才能と同義だ。

 各々が初対面の個人にも関わらず、彼らは共通の認識を抱く。

 

 ―――さっきから相手を殺さずに無力化しているヤツがいる。

 ―――温いヤツだ。そいつからまず全員で仕留めてしまえ。

 

 まずは弱者から集団で排除していく。

 個対個におけるサバイバルゲームの鉄則である。

 

 そんな相対的弱者と見做された千束の目前に、天からするするとロープが降りてきた。

 これは、修羅地獄を脱するための蜘蛛の糸か?

 

 否。

 分厚い床の上でとぐろを巻くロープが震えた。

 誰かがロープを滑り落ちてくる。

 

 今まさに地獄と化そうとするタンカーの底へ降り立つものは、生者にして生者にあらず。死者にして死者にあらず。

 そしておそらく本人は、その立ち位置こそを好ましく考えている。

 

 無国籍のテロリストにしてデモリッションマン。

 幾つもの異名を欲しい侭にする、黒のロングコートにピンクのシャツを着た男。

 真島だ。

 

「よっと。どうやらクライマックスには間にあったみてぇだな?」

 

 へらへらとした表情を浮かべ、真島はロープから手を離しタンカーの底へと降り立つ。

 対する千束は胸を反らし、露骨に不満げな表情で言い返す。

 

「遅い!」

 

「わりぃな。ちょいとコイツを取りに戻っていたもんでね」

 

 言いながら、真島はコートの内ポケットから愛銃のライノを取り出して見せる。

 

 続いて、そらよ、と千束に向けて小さな物体を放った。

 難なく受け止めた千束は、そのカナル型通信機を耳へと装着。

 

 真島は周囲へ視線を飛ばす。

 こちらを包囲しようとしているのは、いずれも千束に勝るとも劣らぬ才能の持ち主たち。

 どんな逆境であろうと不敵な笑みを浮かべるのが真島の常であるが、千束と真島の二人組に対し、敵は八人残っている。

 彼我の戦力差は実に4倍だ。単純に苦戦は避けられないはず。

 

「さあてダンスタイムだ。コケたら置いていくぜ?」

「はあん? そっちこそちゃんとエスコートして見せなさいよね!」

 

 真島に対し、いーっと歯を剥いて見せる千束。

 だが、そのコミカルな表情も一変、赤い瞳に獰猛な光が宿る。

 歴代最強リコリスの唇が力強い笑みを描き、ポップな声が木霊する。

 

 

「It's SHOWTIME !」

 

 

 次の瞬間、タンカーの底は暗闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『そこ、10時の方向! 三歩先を右に曲がって撃て!』

 

 装着した通信機から流れる真島の声。

 応じて千束は暗闇の中を流れるように移動。

 言われた通り三歩進んで上体を右に捩じり、発砲。

 

「ぐうッ!?」

 

 闇の中で彼岸花が咲いたのは見えないが、衝撃とくぐもった苦悶の声が上がる。

 

『五歩後ろに下がれ。壁沿いに左奥に二人いるな』

 

 素直に従い身を引いたところで、闇の中でマズルフラッシュが煌めく。

 敵の苦し紛れの反撃は、千束にとっての絶好の的だ。

 すかさず光った場所へと特殊弾を撃ち込めば、これまた悲鳴にも似た声が響く。

 

 視界が完全に闇に包まれた中、真島はエコーロケーションで獲得した情報を、通信機で千束に対し伝達。千束は天性の勘を働かせ、指示に応じて暗闇の中で確実に敵を被弾させる。

 この共同戦術はぶっつけ本番であるにも関わらず、二人のシナジーは凶悪に過ぎた。

 人間ソナーと化した真島が頭脳とすれば、千束は正しく爪。

 まさに闇の中を疾駆する一匹の獣のように、次々と相手を捕捉し屠って行く。

 

『おっと、こっちは行き止まりだぜ』

 

 通信機越しに真島の笑う気配。

 千束に指示を飛ばしながら彼自身も攻撃に参加してくるのだから、相手にしてはたまったものではないだろう。

 

「殺しちゃ駄目だよ?」

『…面倒くせえなぁ』

 

 直後、何かを殴打する音。

 呼びかける千束の声に応じてから一撃を喰らわせている余裕も鑑みれば、如何にこの戦闘が一方的なものか分かろうというものだ。

 さらに。

 

『おっと。そっちのヤツは随分と準備が良いみてえだな?』

 

 真島の予想に応じて、千束はゼロ距離で特殊弾を撃ち込んで昏倒させた相手の顔から手探りで暗視ゴーグルをむしり取る。

 

「はっは~♪ 丸見えだ~♪」

 

 装着した千束が、ご機嫌な声を上げてはタンカーの底を走り回る。

 真島の指示で位置は特定されている上に千束の視力まで解放されれば、まさに鬼に金棒。もはや鴨打ちも同然だ。

 

『残りは一人だけだな』

 

 その真島の呟きが聞こえたわけではないだろうが、最後に残った一人は真っ暗闇の中で賢明にも両手を挙げていた。降参の合図。

 千束は遠慮なくワイヤーガンを打ち込んで拘束。

 これで稀有な才能を持つ花たちは悉く狩り尽くされた。

 ほぼ同時に頭上のライトが瞬き、間もなくタンカーの底に光が戻ってくる。

 

『…これは、どういうことだ?』

 

 天井からの声もさすがに動揺を隠せていない。

 ごく短時間の停電から回復して見れば、自らの丹精込めた花壇は一瞬にして蹂躙されてしまっている。

 死んだと思われた乱入者と、己の才能を封印したままの少女によって。

 

「まだ分からないの?」

 

 千束は天井を見上げた。

 とびっきりのドヤ顔を浮かべて告げる。

 

「わたしたちは、アンタらを狩りに来たんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

「そぉい!」

 

 ダッシュで搬入用エレベータに飛び込んだ千束が、勢いそのままに上昇スイッチへと飛び蹴りを喰らわす。

 たちまち上昇を開始するエレベーターに、ギリギリで真島も飛び込んできた。

 肩で息をする真島に、千束はロコツな三白眼。

 

「ちょっと鈍ってるんじゃない?」

「良く言うぜ。俺の両腕両足を撃ち抜いたくせによ」

「ざんね~ん! あれはたきなの射撃だもんね!」

「この野郎…」

 

 真島が犬歯を剥き出しにして唸るのも当然で、常人であれば掛け値なしの重傷だ。

 それを一ヵ月ほどで動き回れる真島の回復力は、相変わらず尋常ではない。

 だからといって、額を撃ち抜かれてここまで回復するものだろうか?

 

 種を明かせば、たきなが自分の銃を千束に渡した時、装填されていたのは空砲である。

 その空砲に合わせて真島は自身のボルサリーノに仕込んでいた装置を起動。

 殺害を偽装することに。

 

 全てはどこに目を光らせているか分からないアラン機関を欺くため。

 もちろん互いに事前の打ち合わせなどは行っていない。

 真島に対してもプランナーが指示を出してこそいたが、実際はいきなり本番の一発勝負。

 

 敢えて外した初弾から、次の四発きっかりで真島の四肢を撃ち抜き、六発目の空砲へと繋げる。

 ピーキーすぎる作戦を完璧にやってのけたたきなに、千束は賞賛を惜しまなかった。

 出先の埠頭でこそ我慢したが、リコリコに戻ってから盛大にその黒髪を撫でまわしてやったほど。

 

「それはともかく、おまえ、倉庫で俺を撃つとき『ハム野郎』って言ってたよな? あれはどういう意味だ?」

「ん? 外国じゃ、大根役者のことをハムっていうんだぞ~」

「おいおい、俺の演技は完璧だったろうが。ラズベリー賞を取るくらいの自信はあったぜ?」

「それって最低映画の賞じゃん!」

 

 くだらないやりとりを交わしつつ、エレベーターは甲板へと再浮上。

 

「こっちだな」

 

 真島が別の入口を指し示す。

 

「本当~?」

 

 たっぷり疑わし気な千束に、肩をすくめて見せる。

 

「いい加減信用してもらいたいもんだぜ」

「はッ、信用? アンタは信頼はしても信用できるかってーの!」

 

 愚痴る真島に千束はとことん容赦がない。

 そんな掛け合いをしつつ、足早の千束は「さて、どうしようかしらん?」なんて考えている。

 というのも、プランナーこと姫蒲の計画での千束の役割は、真島と組んで品評会の参加者を撃破するところまで。

 そのあとはノープランというか、先ほど「アンタらを狩りに来た」と啖呵を切りはしたけれど、物理的に首チョンパする気は毛頭ない。

 それでも主催者には一言、面と向かって文句を言ってやるつもりだ。

 いい歳こいた大人たちが悪趣味なことをしてんじゃないよ、と。

 第一、たきなたちに差し向けたとかいう兵士もさっさと撤収させなきゃ。

 

 というわけで、千束は例の特別な鑑賞室を目指す。

 悔しいが、まったく構造を把握できてない建物の中で、真島にナビゲートしてもらうのが一番早くて正確なのだ。

 

 そんな千束の耳にも不意に銃声が響く。

 まずは一発。少し間を置いてから四連発。

 

「こっち?」

「ああ、その突き当りの部屋だ」

 

 真島に先駆けて千束は部屋へと飛び込む。

 幸い鍵はかかっておらず、銃を構えて見回せば、間違いない、床が透明になっている例の特別室だ。

 中には幾人もの男性が雁首を並べていた。揃いも揃って上物のスーツを着ている。

 そんな中に紅一点というか、異質の存在が一人。

 延空木でも同様のボディスーツを装着していた姫蒲だ。

 

 彼女は銃を手に、床を見下ろしていた。

 そして床には、こちらも銃を片手に初老の男性が倒れていた。

 その両腕と両足は撃ち抜かれていて、かつての真島の姿を千束は重ねる。

 

「…だめッ!!」 

 

 千束の短い悲鳴。

 しかし、無慈悲に姫蒲は引鉄を引く。

 放たれた弾丸は、容赦なく倒れていた男の眉間に黒い穴を開ける。

 そこから溢れ出る血は真島の時とは違い本物だ。

 つまり、正しく致命傷となる。

 

「…あんた!」

 

 目前で人が殺されたことに千束はいきり立つ。

 姫蒲は千束を見る。

 限りなく平坦な顔つきは無表情。まるで機械のような冷たい瞳が千束を映し――一ほんの一瞬だけ微かに揺らめいた。

 それだけだった。

 なのに、千束は胸倉を掴み上げようとした手を空中で停止してしまう。

 

 豪華絢爛たる部屋に血の臭いが漂う。

 そこで棒立ちのままの男たちは、みな一様にして姫蒲のような無表情を浮かべている。

 なんの感動もない、というより、目前の惨状どころか自分たちの身にも何の意味も価値も見出していないような。

   

 千束としては、許されるなら遠慮なく悲鳴を上げたいほどの異様な空間。

 そこへ、男性の穏やかな声が降り注ぐ。

 包容力に溢れた豊かなバリトンが響く。

 

 

 

『アラン・アダムスの名に於いて、このたびの結末に祝福を』

 

 

 

 おお、と居合わせた男性たちが揃って声を上げる。

 人形のようだった顔に喜色が宿る。

 

 

 

『また一つ世界に豊かな花が咲いたことを寿ぐ。

 

 諸君らの献身に感謝を。そして、より一層の奉仕を。 

 

 祝福の花で満たされた世界こそを、我ら神に捧げん』

 

 

 男性たちはスッと背筋を伸ばす。

 それから実に敬虔な動作で、それぞれが自分の胸に片手を当てていた。

 

「全てはアランの御心のままに―――」

 

 男たちの声が唱和した、彼らの表情は感極まっていて、今にも落涙しそうなものもいたほど。

 だけに千束はますます強烈な違和感と不快感を覚えずにはいられない。

 すぐそばに銃で撃ち抜かれた男の死体が転がっているのに、この感性は一体なに?

 

「行きましょう」

 

 姫蒲が踵を返す。

 

「だな」

 

 真島も素直に従って部屋を出て行く。

 

 え? え? と珍しく戸惑う千束に、真島の詰まらなそうな声が。

 

「ほっとけ。そんなゾンビどもを潰しても何にもならねえよ」

 

 言われてみれば言い得て妙だった。

 自分の感じた気味の悪さは、ホラー映画に良く似ていた。

 

 銃を納め、千束も部屋を出る。

 開いたドアの隙間から、最後にチラリと見た光景。 

 未だ恍惚の表情を浮かべる彼らは、このまま船ごと沈んでしまってもきっと後悔はしないのだろう。

 そんな奇妙な確信を胸に、もう振り返らなかった。

 

 甲板に戻り、姫蒲は手近にあったスーパーピューマへと乗り込む。

 当然のように運転席で、慣れた手つきでスイッチ類を入れればローターが回転を始める。

 

「本土へ戻りましょう。ここに、もうすべきことはありません」

 

 千束の疑問を先取りするように、そっけない視線と声。

 ぐむむと歯噛みと腕組みをして後部座席でシートベルトを締める千束。

 一通り訓練を受けているのでヘリの操作もできないことはなかったが、ここは餅は餅やだ。

 ちなみに対面に腰を下ろした真島はベルトを締めようとすらしなかった。

 身体が一瞬重力から解放される。

 すわ離陸か、と機体が軽く持ち上がったところで、こちらに向けて走ってくる人影が。

 

「ちょっと~! 待って待って~!」

 

 遠目にその人物の姿を認め、千束はげんなりとした表情になる。

 そして真島は珍しく目を見張っていた。

 

「…おい。こいつはなんの冗談だ…!?」

 

 躊躇なくヘリの後部へと乗り込んできた人物は、千束と全く瓜二つの容貌をしていた。

 違う点を挙げれば、彼女が制服ではなく白いワンピースを着ていたことか。

 

「ああ、こっちは偽物か?」

 

 すぐに落ち着きを取り戻した真島は、偽物の方の心音を聞き取ったに違いない。

 

「そ。わたしに変装した自称お姫さまよ」

 

 千束の説明はうんざりという表現にチョコスプレーでデコレーションしたかのよう。

 変装のギフトがあるなら、何でわたしの顔のままなの? と問い詰めたい。小一時間ほど問い詰めたい。

 

「うん、千束ちゃんってば相変らずの塩対応ね。ワタシも安心したわ♪」

 

 しょっぱ~い! と舌を出すリアクションする表情まで千束に酷似しているものだから、真島に至っては驚きを通り越してニヤニヤしている。

 ヘリがふわりと浮かび上がった。

 そのまま高速で飛翔すれば、ローターの駆動音で互いの声も聞こえない。

 なので千束はさっそく備え付けのレシーバーを装着してがなる。

 

「つーか! アンタはここで何をやっていたわけ!?」

 

 同じくレシーバーを装着したティファの答え。

 

「ん? 一番重要な役目をこなしたじゃない!! 聞いてなかったの!?」

 

 千束が疑わし気な目で見返してくると、ティファは自分の細い喉へと右手を当てた。

 唇が動き、彼女に不釣り合いな男の音声がレシーバーのスピーカーに流れる。

 

「 『アラン・アダムスの名に於いて、このたびの結末に感謝と祝福を』 」

 

「…あれ、アンタの声だったの!?」

「変装と声帯模写はセットじゃなきゃ意味がないのよ?」

 

 ふふん♪ と得意げに足を組む仕草も、オリジナルそっくりだ。

 

「あ、たきなちゃんたちへの襲撃命令も停止させておいたから安心してね♪」

 

 今回の作戦の根底に、まずはアラン機関自体が複雑な構造をしているという事実が前提となる。

 真島が公言していたように組織そのものを壊滅させるのは現実的にも不可能だ。

 であるならば、いわば悪さをしている部分を選んで痛撃を喰らわせる。

 千束は、今回の作戦の概要をそう理解している。

 

 今後こっちに手を出してくるなよ?

 

 そういう含みを持たせて暗黙の不干渉が確立できれば、それはこちらの勝ちだ。

 

 今後もアラン機関は存在し続けるであろう。

 完膚なきまで叩き潰したり、その活動をいちいち妨害できるほど、千束たちには力もなく、人生も長くない。 

 であればこそ、その頭領たるアラン・アダムスとやらにはきっちりと手綱を握っていて貰いたいものだ。

 

 ―――だが。

 

 千束は、真剣な表情で目前に座るティファの顔を覗き込む。

 自分と同じ赤い瞳はきっとカラーコンタクトなんだろうけど、本当に鏡を見ているみたいに錯覚してしまう。

 

「アンタ、ひょっとして、アラン・アダムスってヤツを殺したの?」

 

 初めて会ったとき、ティファが言っていた。自分のもう一つのギフトは『殺しの才能』である、と。

 ん? と可愛らしく小首を傾げるティファに、さらに千束は声を被せていく。

 

「そもそもアラン・アダムスという人物は存在するの?」

 

 その姿は確認されたことはなく、一種の思想が概念の可能性もあるとクルミが言及していた。

 あの特別室で恍惚の表情を浮かべていた彼らでさえ、直接面会どころか言葉を交わしたことさえない可能性。

 

「んん~?」

 

 とティファは相変わらず可愛らしく首を捻っている。

 浮かべた笑顔は、自分とそっくりながらムカつく。

 

「あ」

 

 と、小さな声を上げたのは真島だ。

 

「な、なに? どうしたの?」

「忘れてた。いや、まあ、なんとかなるだろ」

「ちょっとなにそれ! 思わせぶり過ぎて腹が立つんですけどー!」

 

 千束の抗議を受け流し、素っ気なく真島は目と閉じる。

 ヘリの遥か後方、タンカーに横づけされた中型船の中で、ロボの被りものをした男が「いつになったから戻ってくるんだよ~!」と悲鳴を上げていることを彼女は知らない。

 

 埒が開かないと思った千束は、コックピット席を振り返る。

 

「えーと、あなた、姫蒲、さん? 今回の作戦についてね…!」

 

 訊ねる千束を拒否するように、機体は一瞬大きく傾いた。 

 

 

 

 

 

 

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