桃の華は鮮血に染まる~人格が変わった時、女桃太郎は血の海で嗤う~   作:A-3

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12話

---死者の洞窟内---

 

「旅の途中で『イザナミノミコト』様と『イザナギノミコト』様のお話しを聞きました。『イザナギノミコト』様に対して思う事は私にもあります。私だって女性ですから」

 

左肩と左足に肉塊が更に飛んできて燿は押し付けられたが、燿はそれでも『イザナミノミコト』に顔だけでも近づけようとぐいと前に出して続ける。

 

「ま・・・まだ愛しているのですよね?『イザナギノミコト』様を」

 

右足を狙って飛んできた肉塊が途中で止まる。

 

「イザナギは・・・逃げた・・・今の・・・私を見て・・・・醜い・・・私を見て!」

 

「それでも!『イザナミノミコト』様は逃げた『イザナギノミコト』様を追う事を止めた!黄泉の国の女王である『イザナミノミコト』様なら『イザナギノミコト』様を追い詰めて殺すことも出来るのに!」

 

「それ・・・は・・・」

 

「でも、口で言うほど簡単には気持ちの整理は付かないから憎んでいる自分を演じている!神も人も変わらないのです!」

 

「・・・」

 

「鬼ヶ島の封印が解かれれば『イザナギノミコト』様がお作りになられた人々はいずれ居なくなってしまいましょう。ですから、どうか羽衣をお貸しください」

 

『イザナミノミコト』と燿はしばらく見つめ合っていた。どれくらい時が経ったろうか。不意に燿の身体が地面に落とされた。先程の肉塊と着地したお尻が痛み意識が飛びそうになるが、唇を自ら噛みしめなんとか耐える。『イザナミノミコト』は燿の前で見下ろしていた。

 

「燿と・・・いったか」

 

「は、はい」

 

「話を・・・聞こう・・・」

 

そう言うと『イザナミノミコト』は燿の頭に手を乗せた。すると不思議な事がおきた。燿は何処を見ても真っ白な空間に立っていた。手にしていた筈の悠もいない。少し離れた正面に『イザナミノミコト』が佇んでいた。

 

「すまぬな。こちらの方が話しやすいのでな。お主と話をする前にお主の心を覗かせておくれ」

 

「私の、ですか?」

 

「お主が今まで何を経験して何を考えてきたのかを見せておくれ」

 

「・・・わかりました」

 

燿が承諾すると、燿の心の中に『イザナミノミコト』が入ってくるような不思議な感覚と、それと共に今まで自分の見てきた景色、感情が入り込んできては消えていく。動悸が収まらず、呼吸が上手く出来ないまま視線を戻すと『イザナミノミコト』は正面から背後に移動していた。

 

「なるほど。燿よ、お主面白いのう。よく今まで生きてこられたものよ」

 

「?」

 

「まぁよい。嘘を言っていない事はわかった。羽衣を貸すことを約束しよう。外の死人も全てお主の妹達に殺されてしまったから案ずるがよい」

 

「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」

 

「あとは『憑き人』についてか・・・あれは一度なってしまえば祓う事は出来ぬであろうな。速やかに命を絶ってやるのがよかろう」

 

「‼」

 

わかってはいた。自分で今まで試してきたのだ。それでも神であれば、『イザナミノミコト』であればと期待していたのだ。神が言うのであれば自分の中で仕方ないと言い訳ができると思ってしまった燿はひどい罪悪感に苛まれた。

 

「さて、お主の希望は全て叶えてやったぞ。その代償ではないが、我の質問に答えてはくれぬか」

 

「質問ですか・・・答えられるものであれば」

 

「何、構える事はない。まず、お主は鬼ヶ島の結界を張る為に妹達と旅をしてきたのであろう?何故じゃ?」

 

「何故って・・・『イザナミノミコト』様が今、仰られたではないですか」

 

「鬼は悪か?」

 

「え・・・?」

 

「燿は鬼を見た事が無いのに悪だと思っておるのか」

 

「それは・・・島から邪悪な気を感じて・・・」

 

「邪悪な気と思い込んでいるだけではないのか?これは清い気、これは邪悪な気と教えられたからではないのか」

 

「・・・」

 

「では、人は正しいのか。正しいか正しくないかを決めるのは我ら神か、人自身か」

 

「『イザナミノミコト』様が何を言っているのかがわかりません・・・まるで人が正しくないと言っているように・・・」

 

「何だ。分かっているではないか。我はそうではないのかと尋ねておるのだ」

 

「・・・正しいと思っています。少なくとも私達は正しいか、いつも考えながら行動をしております」

 

「その正しさを教えた者が正しくなかったら、とは思わないのか。お主が人に育てられたからそう思い込んでいるのではないのか。もし、人では無く鬼に拾われて育てられていたら今と同じ事を言えると思うか」

 

燿はもう何も言えなくなっていた。

 

「人は力が有りすぎる者、人とは違う者、それらを理解しようともせずに勝手に恐怖しそれを悪と呼ぶのではないか」

 

今まで燈子と月代に正しさを教え込まれてきた。人を守れ、人に仇名す者を祓えと。もし、もしもだ。『イザナミノミコト』が言っているような事があれば・・・燈子と月代が悪であったら・・・自分が行ってきた事が全て悪であったなら・・・燿の中で何かが崩れはじめた。。次の『イザナミノミコト』の台詞は駄目押しの一言だった。

 

「鬼は人とさして変わらぬよ。力が強い、賢い、身体が大きい等な。違いがあるとすればそれだけぞ。そして燿よ、お主にも鬼の血が流れておる」

 

「あ、ああ、ああああああ」

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