御大将が行く異世界旅   作:テムテムLvMAX

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花屋の一日。日常回。


六話

 シンジュクゲットーの戦いは公式には軍事演習を兼ねた区画整備のためのちょっとした騒動として片付けられた、ブリタニア人、名誉ブリタニア人の住むトウキョウ租界では誰もがそれで納得していた。

 シンジュクゲットー内で生活していた人々はクロヴィスの命令で軍に捕えられるか殺されていたのにも関わらずちょっとした事としていずれ忘れ去られる、真実はいつも強者によって隠蔽され作られる。

 

 

「区画整備なぁ……アハハハ! しばらくは大人しくしていることだろう」

「ギンガナムさん、何をしたのです?」

「ちょっと暴れてきただけだ、大した事はしていない」

「守ってくれたんですか?」

「結果的にそうなっただけだ」

 

 

 ギンガナムは散々暴れ回ったあとはスッと戦場から引き上げ拠点にしている花屋に帰っていた。ここが仮にブリタニア軍に攻められようとも上空のターンXXが全て撃墜するようになっている。

 

 

「今暫くは暇になるか、次の戦が待ち遠しいなぁ」

「やめてくださいよ、そうなれば貴方もその周りの人間も無事では居られませんよ」

「人が争いをやめれば残るのは緩やかな停滞、そして退化よ。逃れることのできないものだ、楽しまないのは損ではないか?」

「発展した文明なら争いを別の形に変えられないのですか?」

「無理だな、行き着くところは命の取り合いだ」

「……ギンガナムさん」

「なんだ?」

「味噌汁が冷めてしまいましたね」

「むぅ話しすぎたな」

 

 

 ぬるい味噌汁を一気に飲み干し米をかき込み腹を満たす、戦帰りは腹が減る。それに腹が減っては戦はできぬ。

 

 

 ★★★★★

 

 

 次の日、ギンガナムは舞と共にシンジュクゲットーを練り歩いていた。その手には色とりどりの花が入ったバスケットを持っている。あのギンガナムが花売りをするとは、かつての部下たちが見れば本人かどうか疑いもせず偽物と言うだろう。

 

 

「すいません無理を言って、またあの借金取りがくると思うと」

「たまには良い、それにこちらは居候だ。つまりお前は城の主、守るのは当たり前だ」

「ふふふ、まるで昔のお侍の考え方ですね」

「小生は恩は恩で返すだけだ、仇で返すのは懲り懲りよ」

「何があったのかは聞きませんが、いつか話してください。貴方の心が軽くなるかも知れませんよ?」

「お前は知るな、背負い込むものではない」

 

 

 花を売りながらゲットーをあっちこっちに歩いて花言葉とともに励ましている、と舞は以前語っていた。荒んだ世界には荒んだ心があるがそれに慣れることはなく自覚無く苦しみ続ける、それを癒やすとするなら花だ、花は楽しかったあの日を思い出させる。

 

 それが舞の思う花の在り方、一人でも多く必要にしている人に渡したいと語るその言葉には仕えていた月の女王にも似た信念の強さがあった。

 

 

「ゼフィランサス、サイサリス、ガーベラ、デンドロビウム。何故このチョイスなのですか? 思い出の花ですかね?」

「それは小生の気まぐれよ、選んで良いと言ったのは舞だが?」

「珍しい花を選んでいたものですから不思議だったのですよ」

 

 

 花を売る、そう言ってもゲットーの中で通貨はあまり機能しない、ほぼほぼ物々交換の形で花屋を営んでいる。交換で得たものは租界にいる業者に買い取ってもらい、その金で花を仕入れていた。足らない時には借金をして花を仕入れていた。

 

 

「なぁ舞よ、お前はいつから花屋をしているんだ?」

「日本が攻められたときからですよ」

「思ったより若いな」

「そうですか? ……あ、もう時間が経ってしまいましたね」

「帰る時間だな、今日はここま「ギンガナムだな?」ほう? 生きていたのか緑の女」

 

 

 ギンガナム達が帰ろうとしていたらふらりと物陰から少女が現れた、それはC.C.だった。舞は見知らぬ女のコが拘束服を着ていることに何があったのかと心配していたがギンガナムが早く帰るように促し、その表情にただならぬ気配を感じた彼女は素直に帰っていった。今この場にいるのはギンガナムとC.C.だけだ。

 

 

「なんだなんだ隅に置けない奴め」

「そういう横の関係ではないぞ」

「そうか、少なくともあの女はその気だったように見えたが? 

 ふっ、まぁいい。ギンガナム、お前は力に興味はないか? 王の力だ」

「ある、だが……」

「だが?」

「お前の目的は何だ? なんの狙いがある?」

 

 

 当然の疑問だった。目的が不明瞭な奴から力を貰う、それは相手の好きにさせることと同義だ。

 それに王の力などと言うからにはそれ相応の力を秘めているはず、それをバラ撒くが如く渡している筈はない、何かしら基準がありそれにギンガナムが適った。ではそれは何だ? ギンガナムには不思議だった。

 

 

「隠しても無駄だろうから言ってやる、私は殺してほしいのさ」

「その程度で良いなら殺してやろうか? 大方自分は不死身と言うんだろう? 肉片残らず焼き尽くしてしまえばどうだ?」

「凄まじい勘の良さだな、そうだよ。不死身だ。だが本当に殺せるのか?」

「今にもな。ナノマシンによるすべての細胞の破壊、ビーム兵器での滅却、太陽に投げ捨ててもいいぞ」

「くふっ、冗談の上手いやつだよ」

「……本当にそう思うか?」

「っ!? いつの間に、新型のナイトメアフレームか?」

 

 

 ターンXXがいつの間にかギンガナムの背後に降りてきていた、光学迷彩で今は二人にしか見えていない、見せたあとはまた上空で待機させた。

 

 

「お前は何者なんだ? ギンガナム」

「さぁな、教えてやらん」

「私の敵でないならいい、お前なら私を殺せるなギンガナム」

「無論だ」

「そうか……ふぅ、いつでも死ねると思えば気が少し楽になった。手を出せ、お前に授けてやるぞ? ギアスをな」

「それが力の名前か、貰ってやろう」

 

 

 ギンガナムが手を出すと彼女は手を掴む、するとギンガナムに激痛が走り目が熱くなる。同時に頭の中に元々あったかのように力の使い方が流れ込んでくるが、何かにせき止められる感覚もあるがそれを乗り越えて我がものとした。

 ギンガナムはギアスを手に入れたのだった。

 

 

「ぐうぅ……」

「ふむ、拒絶反応か? まぁ成功したようだな」

「はぁぁぁ……なるほどな、王の力とは言うだけのことはある。名付けるなら『闘争のギアス』か」

「面白そうだ、お前もお前の世界もな」

「なんだと?」

「『黒歴史』と言われた戦争の記録、私にとってはおもしろい戦争映画程度の感想しか出ないな」

「記憶すら覗けるか……ならば良い、このギンガナムの配下になってもらうぞ。C.C」

「配下か、それは無理だが居候にはなりたいな」

「元よりそのつもりだったか」

「あの少年の家にでも転がり込むつもりだったがお前のほうが楽しそうだ」

「だ、そうだが舞はどう思う?」

 

 

 ギンガナムが物陰に話しかけるとビクッとした動きで舞が出てきた、帰ったフリをして二人の会話を盗み聞きしていたようだ。C.C.も分かっていて話していたらしく舞のリアクションで笑っていた。

 

 舞は二人目の居候を歓迎した、彼女にとって一人も二人も変わらないのだろう。

 

 次の日には花屋の看板娘が増えたとゲットー内で少し話題になったらしい。

 

 

 

 




日常回と言いつつ日常してない気がする
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