とある日こと、居候のC.C.はふらふらと出掛けていった。
「すぐに戻るさ」
それだけ言い残してトコトコとシンジュクゲットーの瓦礫の中へ消えた、年端も行かぬ少女一人で危険じゃないのかと舞は不安を募らせる、二時間もせずに戻ってきたC.C.のリアカーに冷凍ピザがこれでもかと乗せられていた。
一店舗の在庫全部買い占めたのかと疑う程、そもそもリアカーも何処から調達したのか分からないが、とにかく大量に冷凍ピザがある。
「自分の食料は自分で用意するさ、本当は頼りたい所だがね」
「それの代金は?」
「ん? 落ちていた屋台から回収しただけだか?」
「ハッハッハッ!」
「フハハハッ」
「「ワハハハハ!」」
「どうしたんですか二人して……なんですかその大量のピザはっ?!」
舞の心労が増加した瞬間だった。
あまりに大量のピザ、保管するには場所も設備もないので冷蔵庫に入るだけ詰めて残りは近所に分配した。持ってきた本人は不満タラタラであるがそもそもそんなに沢山入り切る訳がないと正論を返されてすぐに沈黙、こういうところは見た目相応だろうか。
「それにしてもピザが好きなのだな」
「そうだな、ギンガナムが大好きな戦争と同じぐらいだぞ」
「モノの例えにしても物騒だと思うのですが?」
「む? 死ぬほど好きだとか言うならこれもありではないか? 家主殿」
「全然別なんですー!」
舞が可愛らしい憤慨を見せたのでからかうのもそこそこに、ギンガナムとC.C.は用事があると言って揃って外出した。二人の関係を怪しむもその前に大量のピザを消費するために栄養バランスを崩さないようなアレンジレシピを考えないといけない舞なのであった。
★★★★
「ギンガナム、クロヴィスが、あぁここの行政のトップが死んだそうだ。知っていたか?」
「無論だな」
「誰がやったと思う?」
「そこまでは知らんな、少なくともあやつではあるまい。小生と戦っていたのだからな」
彼らはトウキョウ租界に向けて歩みながらクロヴィスについて話をしていた、ギンガナムが大暴れしていた戦場にクロヴィスも来ていたのだがそこで戦死したものと租界では報じられている。ゲットーにあってもそれは自ずと伝わってきた。
犯人はブリタニア軍所属の名誉ブリタニア人と名前は伏せられていたがニュースの映像を見るに枢木スザクと確認できている、しかし真犯人は別にいるとギンガナムもC.C.も思っていた、いや彼女に至っては知っていると表現した方がいいだろう
「誰だろうな? 当てて見ろギンガナム」
「試すような事を……あの状況でクロヴィスとやらを殺せる人間か、テロリストはない、内部の裏切りもない、前者はそもそも戦力不足。後者は何がしたいか意味不明だ、クロヴィス某は日本でのブリタニアの旗印と聞く、それを殺すとはつまりブリタニアに反旗を翻すことだ、影武者に名誉ブリタニア人を仕立てている時点で怪しい、ここがイレブン、日本人ならばまだ納得がいく。同化し始めた者たちを今更削ぎ落とすのは非合理的だ」
ギンガナムの考察をうんうんと聞きながら楽しげに嗤う、違っていたのか合っていたのか、そのどちらでもないのか反応からは読み取れない。
「推察ご苦労様、だが奴らには純血派というものもある」
「ふん、そこまで加味してやれるか。面倒だ」
「まぁ話を戻そうじゃないか、お前が飽きる前に答えを教えよう。あの坊やだよ、黒い制服のな」
「ほう、意外だな。復讐心を持った半端者と見ていたが」
「私に掛かれば一人前だよ」
「ギアス……か」
「どのような力を発現したかは分かりかねるが確実にあの状況下でクロヴィスを殺せたのはギアスの力あってこそだと、そう思うがね」
C.C.の力の籠もった言葉に彼は何かしらの感情、特に待望や切望と言った思いを感じていた。彼女がこれまでどんな人生を歩んできたのか想像しがたい、不死身の存在というだけで碌な人生ではなかったとは誰もが思うだろうが。
「案外しぶといな、あの坊や」
「そんな訳無いだろう、私が庇ってやったのさ。その後は死んだふりだよ、血が出てないからバレるかと思ったがね」
「ハッ! 意地の悪い女よなぁ」
「我ながら良く出来たよ、あれは」
不死の女と蘇った男、世界は違えど何百年と生きてきた二人は通じ合うものがあったのか和気あいあいとまで行かないが柔らかな雰囲気がそこにはあった。
話を戻すと答えを知ったギンガナムはこれから行く目的地が予想出来た、あの坊や、ルルーシュと名乗る青年の所だろう。C.C.はもう分かっているだろう? と言わんばかりにギンガナムを見ていた。
「それで小生をその坊やの所へ連れて行くことになんの意味がある?」
「ん? 理由なら簡単だよ、これは対価、私がお前に払える対価だ。お前は戦が好きだなようだから、これから戦争の中心になり得る存在と引き合わせるのは恩返しになるだろう?」
「お前も大概倫理観というものが無いと見える」
「倫理観なぁ、人より薄いとは思うぞ」
租界に入り込んだらC.C.がギアスホルダーを感知出来るのでそれに頼り、ルルーシュ・ランペルージの居住地に進む。面の皮が厚い二人は都会の視線は気にしなかった。
ブリタニア貴族のアッシュフォード家が運営するアッシュフォード学園の下手な屋敷より大きなクラブハウスにルルーシュは妹のナナリー・ランペルージとメイドの咲世子と共に住む。
ランペルージ兄妹には面倒を見てくれる両親がいないが、二人はメイドや後ろ盾のアッシュフォード家の助けもあり不自由なく暮らせていた。しかしそれもこれまでのこと、ズカズカと乗り込んでくる緑の二人。
★★★★
「よぉ」
「またあったな」
「!?!?」
ルルーシュが学業を終えてクラブハウスへ戻ってくるとソファで寛ぐ二人とナナリー、それをもてなす咲世子の姿があった。
「おま、お前は死んだんじゃないのか!?」
「あ? 私は実は不死身でね、死ねないんだよ」
「そっちは事故現場であった大男!」
「ギム・ギンガナムである! 中々よい部屋ではないか」
「どうやってここへ来た! いやまずはここから場所を移そう、俺の部屋へ来てくれ。咲世子さんはナナリーを頼む」
いきなり現れた二人に肝をつぶしたあとに抜かれた彼は冷静に成り切れないがひとまず妹から距離を取らせることにした、何処までも妹思いの兄だがこれから起きるだろう騒動にずっと胃を痛め続けることになろうとは知る由もないのだった。
時系列的にはスザク冤罪の辺りかな