銃声と焦げ臭い硝煙の匂いを頼りに現場へと辿り着いたイレイザーヘッドとプレゼント・マイクは絶句していた。国が直々に招くほどのビッグネームが来日するともあり、通常の3倍の人数で警備していたにも関わらず警備員達は既に全滅していた。
「おい、殺すんじゃねえぞ。」
「わかってるって、コイツラがいれば万が一トニー・スタークを確保できなくても人質にできるからな。・・・ん?誰だ!」
その言葉をキッカケにして、全員が二人へ銃口を向ける。彼らは総勢10人弱、不揃いながらも全員がミリタリーな服装に身を包んでいた。
「大人しく手を上げろ、さもなくばコイツラは殺す」
アラブ系と思しき男は、そう言うと自動小銃に弾丸を装填しながらゆっくりと歩み寄る。
二人は言われた通り、大人しく手を上げた。
「見たところヒーローか?まあいい、そのまま跪いて両手を頭に回せ。」
思ったより素直に言うことを聞く二人に機嫌を良くしたらしい男は、笑いながらそう命令した。
その言葉通り二人は頭に手を当てて、ゆっくりしゃがみ込む、、、ことは無かった。
「グオオ!!」
イレイザーヘッドは曲げていた膝を垂直跳びの要領で一気に伸ばし、油断した男の顎に渾身の蹴りを食らわせた。
男が意識を失うのを確認することもなく、イレイザーは脱兎のごとく駆け出し捕縛布で前方三人のライフルを絡め取るとそのまま捕縛布をハンマー投げのようにぶん回し三人まとめて先端のライフルで殴り飛ばした。ここまでにかかった時間は僅か6秒。
「く、くそう!おい、お前!コイツラがどうなっても?!」
「悪いな、こちとらプロなんでね」
一人残された男は右手でライフルを構えたままリボルバー銃を取り出して人質に突きつけた。
しかしライフルは捕縛布の一閃ですぐさま叩き落とされる。敗北を悟ったらしい男はイレイザーにヤケクソになりながら叫んだ。
「クソヒーローが!テメエのせいでコイツは死んだんだ、後悔しやがれ!!」
そう言いながら男はトリガーを引いた。ハンマーが可動し薬莢を叩く、そして放たれた銃弾が目の前の哀れな警備員の頭に血の花を咲かせる。普通なら、そうなる筈だった。
「やっぱお前らは素人だな。撃鉄を引いていないリボルバーはシリンダーを抑えられると発砲できない。常識だ」
「馬鹿な、、、アレ程の距離を一瞬で詰めるなんて・・・」
男が手にしていたリボルバーをイレイザーは相手の腕ごと無理矢理捻り上げる。痛みに顔を顰める男が最後に見たのは好戦的な笑みを浮かべる抹消ヒーロー、イレイザーヘッドの姿だった。
「ようイレイザー、中々カッコいいことしてくれるじゃないの。ま、個性柄瞬殺できちゃう俺には敵わないけどな!」
「なら最初から全員倒せ、わざわざ離れていくんじゃない」
「巻き込むと悪いかな〜って思ったから気ぃ使ったの!」
イレイザーが戦闘している間にマイクも男達を引き付けて、そのままヴォイスで倒していた。
「警備員達も命に別状は無し。マスコミや係員のいる場所にも影響は無かったそうだ。」
「銃持った相手10人でそれなら大金星じゃねえか、ジョン・ウィックもビックリだろ!」
マイクがそう言って笑い飛ばそうとしたときだった。
カラン、と何か硬い物が落ちるような音が小さいながらもはっきりと響いた。
「あん?なんの音、、ってヤベ!!」
「ッ!!」
僅かな殺気を感じた二人が身を翻すと同時に、転がってきた何かが爆発。周囲に爆風を巻き起こし、焼けるような熱が広がった。
「フハハハ、流石だなヒーロー」
「Shit!まだ残党がいやがったか!」
黒煙の中から聞こえてきた笑い声にマイクが声を荒らげた。
「いくら二人とは言えど、寄せ集めのゴミ共では勝てなかったか。本当はトニー・スタークを人質に取った上で、集まったヒーロー共を一網打尽にするはずだったのだがそう安々とは行かなそうだ。」
徐々に晴れていく煙の中から現れたのは、身長3m以上はあろうかという鋼鉄の巨人だった。くすんだ鉄色をした体、その至るところに兵器が仕込まれているらしき切込みがある。
まさに人間戦車というに相応しい姿のそれは、愉快そうに笑いながら二人を見据えた。
「安心したまえ、トニー・スタークの居場所を吐いてくれれば解放してやろう。」
「誰が貴様に・・・」
イレイザーが捕縛布を構えながらそう言うと、巨人は右腕を前に突き出した。
「そうか、、、ならば力づくで聞き出すのみ!」
突き出した右腕から機械音とともに大型のミニガンが現れる。二人に向けて激しく回転する銃口から、NATO弾が連射され辺りを破壊し始めた。
「おいマイク!お前の声で何とかできないか?!」
「冗談寄せ!一瞬でも顔だしたら蜂の巣にされちまう!!」
イレイザーとマイクは物陰に隠れて射撃から身を守っていたが、反撃の兆しが見えなかった。相手の攻撃手段が個性で無いため抹消は意味を成さず、ヴォイスも相手の方を向いて放たなければ効果が薄いため顔を出せない今は使いようがない。
「応援が来るまで持ちこたえなければ、、、しかしこの勢いじゃあと5分耐えられるかどうかだな。このままではマズイ」
「さあ、勝ち目が無いのは分かっただろう!トニー・スタークの居場所を「お呼びかな?」
突然背後から聞こえた声に巨人は驚いて振り返った。
そこにいたのは赤を基調に、ところどころ金の部品が光るアーマーの男。彼はホバリングするように浮いており、目を引く胸の丸い部品が強烈な光を放っていた。
「朝から花火を上げてくれるなんて、僕は随分と歓迎されているな。まあ、せっかくなら僕が登場するタイミングで上げてほしかったが。」
冷徹そうな印象を受ける無表情なマスクとは裏腹に、余裕を見せながら軽口を叩く男。イレイザーとマイクはその声を知っていた。
「その声は!アンタもしかしてスタークさんか?!」
「まあ、そうとも言うね。でも今の僕を呼ぶなら不適切だ。今の僕は、、、」
そこまで言うと、トニー・スタークを名乗るアーマーの男は一息ついてからこう宣言した。
「アイアンマンだ」
全く、みんな僕のことが好きすぎじゃないか?こうゆう類でパーティーのお誘いを受けたのは一度や二度じゃない。ロクでもない連中しかいないから全部断るがな、今回も。
「トニー・スタークだな、私と一緒に来てもらうぞ!選択肢はYesのみだ!」
デカい声で喚き立てるエセアイアンモンガーを僕は呆れて見守っていた。
サイズの割に装甲が薄いし、関節部分はところどころ錆びている。あれでよく動けるものだ。
洞窟で一週間のうちに拵えたNo,1よりも遥かに劣るそれが、俺は強いとばかりに騒いでいるのは見ていて実に愉快である。
「生憎だが、僕は今無性に機嫌が悪いんだ。朝食を抜きにした罪は重いぞ。」
「は、そんなしょぼくれた鎧で言ってくれるわ!風穴を開けてやる!」
そう言うなりミニガンを乱射するが、僕の装甲は対戦車ライフルを食らっても傷一つつかない強度がある。僕は銃弾の嵐を物ともせず、奴へと歩み寄る。
「な、なぜだ?なぜ傷一つつかない?!」
「悪いな、
僕は近づいたついでに、高速回転するミニガンの砲身をわし掴みにして回転を止める。すると、給弾が止められたミニガンのから回るモーターが悲鳴をあげて発火した。
「グワァ!!おのれぇえ!!」
ダメージを与えたのが気に食わなかったのか、デカブツは激昂しながら今だ燃え盛っている腕を振るう。こんな遅い動きなんてスーツ無しでも避けられるが、僕はスーパーヒーローだ。ここはカッコよく、、、受け止める!!
「デカいからパワーだけはあるのかと思ったら全然だな。キャプテンやバッキー・バーンズの方が何倍もパワフルだ。」
僕は無駄に大きいだけの腕を片手で受け止めて、手は離さないまま押し返す。
そして受け止めた手のひらに電気エネルギーを結集、それをレーザーに変換させて「右腕とお別れだ」放出した。
リパルサーレイ、掌底部から発射するエネルギー光線だ。本気で撃てば一発で戦艦を沈めることができる僕のメインウェポン。
ここで問題だ、それを至近距離で大した強度もない相手に撃つとどうなるか?
「しまった、やりすぎたな」
僕は彼方へ飛んでいくデカいシルエットを見ながら思わず呟いた。
さっきの答え合わせだが、”光線が相手の腕を貫通し、後ろの飛行機を爆破させる。ついでに相手も腕の爆発に吹き飛ばされて滑走路まで飛んでいく”で満点だ。
管制塔の職員が対応に焦っている光景が目に浮かぶ、可哀想に。
「ウオオオ!!スタークゥ!!!」
腕をふっ飛ばされて半分以上体が焦げているのに、まだ懲りないデカブツがそばに止まっていたタラップ車を残っている左腕で投げる。
もちろんそんなことに臆しない僕は、腕からレーザーサイトのような特殊武装200ペタワットレーザーを照射してタラップ車を真っ二つに割って回避する。
「全く君はしつこいな、クドい男に女は近づかないぞ?」
「黙れ!!」
ヒステリックに叫ぶ奴の腰から現れたのは4機のミサイル。僕はそれを空中へと誘導すべく背部スラスターユニットを起動して一気に高々度まで飛翔した。
[ボス、レーダーがミサイルの接近を確認しました。迎撃しますか?]
「いや、わざわざフレアを使うまでも無い。対象をロックオンしてくれ。」
[了解しました。ロックオン完了、目標は4機、時速7000kmで接近中です。]
フライデーの解析が終わると同時に、目視できるところまで来ていたミサイルに向けて肩に内蔵されているマイクロミサイルを発射する。一瞬でミサイル同士は相殺し合って爆発し、ただの鉄屑となって落ちていった。
[・・・フレアを使うのと何がどう違ったのでしょうか?]
「決まっているだろ、見栄えだよ見栄え。今の世の中いつ誰に見られてるかも分からないんだ、どれだけカッコつけるかが重要なのさ。」
[・・・?]
まだまだフライデーは学習が足りないな。カッコいいと誰かに思わせることがどれほど重要かも分からないなんて。
ま、フライデーには後で映画でも見せるとしてさっさと決着をつけよう。
スーツのスラスターユニットを急降下モードに変形させて準備は完了だ。
僕は一気に急降下して雲を突き破り、空に向けてミサイルやらなんやらを乱射しているデカブツを背後から掴む。
「な、なんだ?!」
「なんだじゃないよ、僕はどうしても君へバカンス旅行をプレゼントしたくてね。」
僕はしっかりと見た目だけゴツい鎧を掴んで、上昇した。そのまま太陽の方角へ一気に加速する。丁度いいあたりで雲を割いて下降すると、眼前には青い海が一面に広がっていた。
「貴様、まさか?!」
「それじゃお別れだ、千葉の海を楽しんできてくれ。」
僕は軽々奴を投げ飛ばし、自由落下していくアーマーに狙いを定める。そしてあと数mで着水するというところでリパルサーレイを叩き込んだ。その一撃は重力に力を分け与えるかのごとく、奴の落ちる速度を一気に加速させる。
水面を叩きつけるかのような音と共に奴が落下したのを確認した僕は、会見に間に合わせるため帰りを急ぐ。
後ろの方で何かが爆発するような音がしたがそれを普通に聞き流しつつ、僕は海を後にした。
なお、空港を破壊しすぎて闇堕ちサーファー君に怒られたのはいまだに納得がいかないということも追記しておく。
相澤くんと山田くんが人質を取られながらもあそこまで大胆に動けたのは、二人を発見した時の敵の反応が素人のそれだったから。
本来捕虜や人質をその道のプロが取っている場合は、万が一のことがあっても彼らから目を離しません。一見瀕死に見えても、行動不能に見えても、一瞬の油断が命取りになるからです。
ミッション・インポッシブルや007を見ているとそうやって油断したところを逆転する描写がいくつもあるのはそういうことです。
パワードスーツ紹介
・Mk,7'
今回登場したアベンジャーズ時のものに改良を加えて、一から作り直したスーツ。
主に飛行速度と関節部分の装甲強化が施されている。
飛行速度は時速3500kmでMk,10より100km遅い程度。それ以外は基本Mk,10を上回っている戦闘
特化型のスーツ。
ゴールドチタン合金製とトニー・スターク本人は述べているが、金はチタンより熱伝導しやす
く柔らかいので装甲には本来向かない。恐らくトニーが何らかの加工を施していると思われる。
ブレスレットではなく携帯の情報を受信して向かうため、携帯を忘れると使えないのがたまに
傷。