今回からトニーが日本へ来る前のお話が始まります。
舞台はもちろん祖国アメリカ!
お楽しみいただけたら幸いです。
Another Worldへようこそ!
〜18 months ago〜
僕は空から落ちていた。比喩でもなく、冗談でもなく本当に落ちていた。別に空から落ちるなんてことはよくあることだから普通に対応できる。ただ今回焦っているのは、少しばかり状況が悪かったからだ。なにせスーツがボロボロで言うことを聞いてくれないからね。
「フライデー起動しろ!もう朝だ!」
[F.R.I.D.A.Y.再起動しました。お呼びですか?随分久し振りな気がしますね、ボス。]
スーツの損傷が大きすぎて心配だったが、取り敢えずフライデーが起動してくれたのはデカい。後は、どうやって着地するかだ。
「そうかい、僕はさっきぶりな気がするよ。そんなことよりスーツの損傷は?」
[損傷率合計82%。装備の93%、回路類の72%がオフライン状態にあります。既に緊急補助用のナノマシンも底をついているので修復は不可能です。現在機能しているのはリパルサーが一台、背部スラスターが「もういい、最悪な報告をどうも。いや、電気があるだけマシか?」
当然の話だが空中では修理している時間も道具も無く、ナノマシンは”さっきの戦い”でとっくに枯渇している。現状で頼りになるのは、いつの間にか光を取り戻し煌々と輝くアークリアクターと僕の頭脳のみだ。
こういう時にブルースが居てくれたら助かるんだが、ないものねだりをしていても仕方がない。多少無理矢理でも生きて戻れれば及第点だ。
「よし、フライデー生きてる箇所の出力を上げろ!リパルサーを撃つぞ!」
雲を抜けた僕は、真下に見える褐色の景色へとリパルサーを放射した。
それは突然の出来事だった。
「さてと、まず今日の訓練は、、、?!みんな伏せろ!!」
目の前にあった戦闘機が赤いレーザーで爆散するのと、僅かな殺気に気づいた俺が皆にそう呼びかけるのとはほとんど同時だった。不測の事態に混乱し始めている訓練生達を落ち着かせるために、俺は敢えて声のトーンをそのままに指示を出す。
「おいおい、そんなに焦らなくって大丈夫だ。悪党が新兵器を狙うなんてフィクションではお馴染みの展開だろ?よし、皆落ち着いたな?これから君たちには初めてのミッションをしてもらう。よく聞けよ、全員が生きて本部まで戻り応援を呼ぶ。それだけだ、行動開始!」
「待って下さい!それじゃ中佐は「上官の命令は絶対だ!早く行け!!」
まったく、俺はこう見えてもエリート軍人なんだから時間稼ぎ位できる。とは言っても、アレ程の威力を持つレーザー砲を装備した相手だ。めんどくさがらずに無線を持ってくるんだったと心の底から後悔する。
そんなことを考えていると、ガシャンと瓦礫が音を立てた。直後には人間のものと思われる手がヌッと出てきて外へ出ようと手をかける。
俺は懐から銃を抜いて、その手へゆっくりと詰め寄りながら声をかけた。
「やめときな、それ以上動いたらアンタの頭が粗挽きになっちまうぞ?」
「ん?ああ、すまない。緊急だったもんでね、諸々込みで弁償するよ。このくらい安いものだ。」
口調から敵意は感じないな、奇襲に失敗して落ちてきた間抜けヴィランでは無いらしい。
「そうかい。ということは、お前は5000万ドル以上する最新機体くらいの出費はなんとも無いと言っていることになるが?」
緊急ということは事故か・・・。そもそも空の上であんな光線をぶっ放すこと自体、事件性が無いとは思えないが。というかこの男、登場とは裏腹に落ち着いた声で話す奴だ。何様なんだ、この自信に満ち溢れた物言いは。
「そりゃ安いさ。なにせ私は、、、アイアンマンだからね。」
そう言いながら残骸から現れたコスプレ男、、、知らん。なんだこのむさ苦しい髭面は。おまけにその中古屋で買ったフライトスーツみたいなボロいコスチュームはどうしたんだ?多分どっかの州所属のヒーローなんだろう、にしても全く見覚えが無い。
「あー、、、見たところ危険な奴じゃなさそうだが、アイアンマンという名のヒーローは生憎存じ上げなくてね。何か身元が分かる物はないか?」
「何?世界の英雄アイアンマンをエドワーズ空軍基地のド真ん中にいる癖して知らないのか?トニー・スタークという名を聞いたことが無いとでも?」
「残念ながらな」
本名を言われても全くピンと来ない。自分で「世界の」とか言う野郎だ、どうせマイナーな底辺ヒーローだろう。取り敢えずコイツの事務所と、本部へ連絡を入れないとな。
「まあ、何でもいい。一先ず俺と一緒に「なら、これは知らないか?」
しつこいヤローだ。だから何を見せられても分からない、そう言おうと振り返った俺は思わず目を見張った。
トニー・スタークと名乗る男の手に乗った透明な板から空中に映し出されるモニター。だが、俺が驚いたのはそれでは無い。そのモニターで再生されていた映像に驚いたのだ。
そこに映っていたのは、ロボットの軍団がSF映画のようにニューヨークを襲う様子だった。人型のそいつ等が人々に襲いかかり、蛇のようなバカでかい飛行船が高層ビルを次々と瓦礫へ変えていく。
「なんだこの映画は?自主制作にしては随分リアルなCGだな。」
「だろうね、第一CGじゃ無いからな。」
ニヒルに笑う目の前の男から出たその言葉を嘘とは思えなかった。善悪問わず、嘘つきは世の中いくらでもいる。何度もそういう奴と顔を合わせてきたからこそ、そう思えた。
唖然とする俺をさも面白そうに見ていたスタークは、思い出したように手にした端末を操作する。そして俺の目を見ながらはっきりと言葉を放った。
「さあ、名シーンだ!」
「名シーンだっt、危ない!!」
画面が切り替わって真っ先に映し出されたのは、降り注ぐ瓦礫の中に取り残された親子。待ち受けるであろう最悪の結末を想像した俺は思わずそう叫んだ。
・・・しかし、俺が想像していた悲劇は突然現れた”英雄”によって打ち砕かれた。
緑色の巨人がタンクローリー程もある剛腕を振るって降り注ぐ瓦礫の雨を一瞬にして吹き飛ばす。そのパワーは、日本のナンバー1ヒーロー「オールマイト」を彷彿とさせた。
現れたのは巨人だけではない。
ブロンドの髪を振り乱しながらハンマーを手にした男が雷を放って周囲を一気に焼き払い、その隣では2丁拳銃を乱れ撃つ美女の姿がある。
横転したバスから逃げる人々を庇いながら弓矢を持ったナイスガイが次々とロボットをスクラップに変え、助太刀に現れた青いコスチュームの青年がシールドを投擲しながら参戦した。
多勢に無勢と思われた戦局は彼等の「ありえないほど<強力>」な力を前に見る見る覆されていく。勇ましいその姿には、同じく戦場に身を置く者として胸を熱くさせられた
「凄いな・・・」
「感動するのはまだ早い、ここから真打ち登場だ」
次に現れたのは音速を超える速度で空を飛び、掌底からレーザーを照射する赤い影。間違いなくその影の正体は、目の前にいる「アイアンマン」ことトニー・スタークであった。
映像の中の彼は、あろうことか宙を漂う蛇とも龍とも言い得ない飛行船へ真正面から特攻する。そして大胆にも、その勢いのままに巨大な敵をぶち抜き見事撃破したのだった。
その映像が終わるなり、こちらへ笑みを向けるスタークがゆっくりと口を開く。
「今のは僕の自伝コレクションだよ、感想はどうかな?」
「詳しく話を聞こう」
・・・一つ残らず全て聞かせてもらおうじゃないか。
「ところで君の名前は?雰囲気が僕の知り合いによく似ているから気になってしょうがない。」
部下が寄越してくれた武装バギーで本部へ戻る道中、わざとらしいジェスチャーをしながらスタークに尋ねられた。きっと悪い意味で長い付き合いになるだろうから、先に名乗ることにしよう。
「ジェームズだ、ジェームズ・ルパート・ローズ中佐。好きに呼んでくれ。」
「?!」
「あ?そんなに珍しい名前でもないだろう?」
俺が名乗るなりスタークはキンカジューみたいな顔で固まった。何がそんなに驚いたんだかまるで分からん、おかしな男だ。
「いや、、、そうか。うん、なんとなく状況に整理がついた。そういうことか。」
「キッカケは分からんがそりゃ良かった。お前が整理ついてもこっちは絶賛混乱中だが。」
「なあルパート?」
スタークはブツブツ言っていたかと思うと、唐突に先程までの軽薄な雰囲気を消して話し始めた。
「偶然とは時に必然的に舞い込むことがある。それが悲劇にしろ喜劇にしろ関係なく、人はその一連を”奇跡”というふうに呼ぶわけだ。」
「・・・何がいいたい?」
「もしも自分が、、、その奇跡の中心に限りなく近い人間だったら君はどうする?」
そう語るトニー・スタークの瞳はほくそ笑んでいた。
〜 A year later...スターク・インダストリーズ設立1周年パーティー 〜
今日でこの世界に来て一年と少し、会社を立ち上げて丁度一年になる。僕が初代社長となったスターク・インダストリーズver2は僕という天才を運良く手に入れた米軍による施設提供の元、今や世界一の大企業となった。
扱うジャンルは幅広くこの世界のアベン、、、もといヒーロー達のサポートアイテム生産を主軸として医療機器や生活家電に至るまで。
つい先日は、電子機器の冷却技術を食品保存に適用する冷凍食品ビジネスが成功した。
その他にもあるんだが、あまりにも長くなるので割愛する。
ところで、僕が今いる世界は元々いた世界とは全てが大きく異なる世界だ。簡単に言えば、アベンジャーズがいない代わりに多くの人間が常軌を逸した力を持っている。あくまで簡単に言えば、という漠然とした説明だがそんな感じだ。
僕の仮説ではストレンジの言う「分岐した時間軸」のうちの一つだと思っている。アイツがこっちにもいたらこの世界ができる確率を聞きたいな。
話を戻そう、初めはアベンジャーズが怪しいコスプレ集団に見えるような世界にどうなるものかと不安に思ったりもした。ところが、物事とは案外なるようになるもので、この世界で僕の名を知らない人間などいないわけだ。
最近はこちらの世界最大の特徴である”個性”についての研究も積極的にしているんだが、これが驚くほど上手く行ってね。(そもそもこの世界の科学力が僕に追いついていないレベルだったということもあるが。)
ゆくゆくは僕の技術と併用して個性犯罪の抑制や、高度な医学技術なんかに応用しようと考えている。それもできるだけ近い内にだ。
ま、今日はめでたい日だから面倒事は置いといて楽しむとしよう。
久々のパーティー、それもこうして注目を浴びる場ではますます胸が躍る。
さてと、そろそろ出番だ。
「さあさあ皆様お待ちかね!一年前、世界中の話題を掻っ攫ったあの男の登場だ!!謎の多さから宇宙人説まで飛び交うイカれた天才にして、米軍が誇る生きた最終兵器!!トニー・スタークの登場だアァァ!!!」
司会者のシャウトとノリのいいロックをBGMに、僕が立っているステージの中心がせり上る。悠々と登場した僕が5万人は簡単に超えるであろう観客へポーズを決めると同時に、花火が打ち上げられた音がして一気に会場が沸き立った。
「やあ、こんばんは皆さん!今日は我社のパーティーへようこそ!本当はこういうイベントは何回か検討していたんだが、生憎株が暴落した他社の社長連中から命を狙われていてね。宇宙へ逃げていたら遅くなってしまったよ。」
僕の皮肉を込めに込めたブラックジョークに、観客はもちろんVIP席まで笑いの嵐が起きる。
因みに、他社の連中から命を狙われるというのは半年前くらいに本当にあってニュースにもなった。が、僕が出る幕も無くルパート率いる空軍が全部片付けてくれた。
今や、元々アメリカを拠点にしていたサポートアイテム業者はほぼ全て僕の傘下にある。
行き過ぎた才能は周囲のジェラシーを生む、流石は天下のトニー・スタークだ。優秀過ぎて妬まれるなんて最高にカッコいいぞ、僕。
「それから君、僕は兵器なんかじゃないぞ?僕だけじゃない、僕が生み出した発明も製造する工場もそれを買って使用する君たち民衆も誰しもが平和を守る盾だ!!そうだろみんな?!!」
僕の呼びかけに観客達が一斉に沸き立った。相変わらずスピーチも絶好調。
「すまない、失言だったよ。その口ぶりから察するに、やっぱり兵器はこれからも?」
「いいパスだ、もちろん作らないね。今日は一年という節目に僕がなぜ兵器産業を嫌っているかということについて語ろうと思う。諸君ハンカチは持って、来たようだな。よし。それじゃあ映像を交えて話そうか。」
「臭い台詞吐きやがって、でも良かったよ。俺達軍人の存在を否定しなかったのも高得点だ。」
「だろ?せっかくなら空軍には模範的な中佐がいるってのも言えば良かったな、ローズ中佐?」
「バカ、やめろ!」
ルパートとじゃれ合っていた今の僕には、この場で行ったスピーチが世界中で絶賛されて反戦教育にまで使われるようになるなんて知る由もなかった。
原作コミックより名前のみ拝借させていただき登場したジェームズ・ルパート・ローズ中佐は、映画「アイアンマン」に登場したテレンス・ハワードさん演じるローディがモデルのオリキャラになっています。
トニーがヒロアカ世界で最初に遭遇した人物にして、トニーが今自分がいる世界が元々いた世界と別の場所であることに気づくキッカケになった人です。
恐らくこの作品唯一のオリキャラになるかと思われます。出した理由は中佐(今は大佐)が大好きだからです。これからのMCUではもっとローズ大佐に活躍してもらいたいなぁ。
次回はアメリカ最強の彼女が登場する予定です。気長にお待ち下さい!