袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第八話「激戦」

「予想外にも敵は多いですね」

 

 1万5千の兵を率いて潁川へと雪崩れ込んだ周沙だったがここには10万を超える黄巾党が集結していた。これらを率いるのは史実においては南陽で決起した張曼成、今は無名だが頭角を現していた周倉、廖化などの強者が揃っていた。明らかに豊かな南陽に攻め入るための軍勢であり、これらが雪崩れ込めば1年で発展した南陽は再び荒廃するだろう。それが分かった周沙は圧倒的戦力があると理解しながら奇襲と言う形で戦端を開いた。

 最初こそ敵の虚をついて大暴れをしていた周沙だが直ぐに数の差に飲み込まれ始めた。張曼成は将として黄巾党を軍隊に育てつつあった周倉と廖化を中心に包囲戦を仕掛けてきている。突破を図ろうとすれば周倉と廖化が邪魔をする。撤退すら難しい現状では戦線を保つことが精いっぱいだった。

 とは言えこの軍勢を発見した時には孫策と板垣に使者を送っている。この事態は把握しているはずであり、南陽が奇襲を受ける心配はないだろう。それが分かるからこそ周沙は時間稼ぎと敵の力を削っておくことも兼ねて周倉と廖化によって鍛え上げられた兵を自らの手で血祭りにあげていく。10人単位で敵を切り殺すと休憩と指揮を執るためにいったん後方に下がり暫くすると再び前線に出る、を繰り返す周沙に戦場は膠着し始めていた。

 

「姉御! 右の部隊がやられそうだ! それと左で兵がやられちまってる!」

「中間の兵を500送ります! 左は私が行きます!」

 

 山賊上がりの者達から姉御と呼ばれて慕われる周沙から何時もの雰囲気は気づけば消えて、真剣な表情で指示に攻めにと無我夢中で取り組んでいた。そんな彼女をみて兵たちも負けられないと力を振り絞っていく。

 しかし、兵は周沙が1万2千、黄巾党が9万と戦力差こそ減ってきているが、それでもまだまだ相手の方が大軍である事に変わりはない。

 

「そろそろやばいかもね……」

 

 負傷兵が全軍の三割近くまで増えて来た事で戦線の維持が難しくなり、周沙の頭に壊走の文字が出てきた時だった。俄かに左側で歓声があがる。しかしそれは黄巾党の者ではなかった。

 

「っ!? まだ私達の運は尽きていないみたいですね。全軍! 左翼に攻撃を集中せよ!」

 

 援軍なのかそれとも第三勢力なのか。周沙は新たな乱入者の下に圧力をかけ始めた。

 

 

 

 

 

「進めぇ! 袁術の軍勢を助けるのだ!」

 

 9万の黄巾党に囲まれていた周沙を助けようと乱入してきたのは漢軍5万を率いる皇甫嵩だった。彼女は同僚の朱儁や洛陽で頭角を現してきた曹操を引き連れてきており、それらの活躍であっという間に黄巾党を蹴散らしていく。元々練度の低いと言われる漢軍だがそれは中枢が腐敗している故にきちんとした調練が行われないからであり、将軍として堅実に生きて来た皇甫嵩の軍勢は彼女と同じように高い戦闘能力を有していた。

 故に、前後から自分たち以上の猛者に挟まれる形となった黄巾党は呆気なく瓦解した。正確には先方を務めた曹操率いる軍勢が黄巾党右翼内を縦横無尽に駆け回り陣形を散々に降すとそこを皇甫嵩や朱儁の軍勢が踏みつぶすように進軍した結果僅かな時で三分の一を失ってしまったのだ。

 

「おのれ! まさかこうもしてやられるとは……!」

 

 本陣にて張曼成はせっかく集めた軍勢が蜂起する前に崩されていく様子に地団駄を踏んだ。この直前には周倉と廖化も戦線を離脱しており、更に戦力の減った黄巾党は立て直す事も出来ずに壊走となっていた。

 

「将軍! ここも危険です! 袁術の軍勢がすぐそこまで……!」

「逃がさない!」

「なっ!?」

 

 黄巾党が崩れたのを確認した周沙は自らの精鋭のみを連れると壊走する黄巾党内を通って本陣を強襲した。結果として奇襲となり、張曼成は無防備な状態を周沙に晒す結果となった。

 

「ま、待たれよ! 貴殿らの実力誠に感服の至り! この張曼s……!」

「死ね」

 

 慌てて降伏しようとした張曼成の体を真っ二つに切り裂いた周沙は周囲で固まる黄巾党と気付かないで逃げている残党に聞こえるように大声で宣言した。

 

「敵将! 張曼成を討ち取ったりぃ!」

「「「「「ウオォォォッ!!!!」」」」」

 

 瞬間、割れんばかりの歓声が上がり、両者の戦いの軍配がどちらに上がったのかを知らしめると同時にこの潁川における黄巾党の流れを完全に消す勝利となるのだった。

 

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