袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第十四話「決着」

 襄陽北部にある開けた場所。そこが内乱の行く末を決めるであろう決戦の舞台となった。劉琮側3万5千に対して劉琦側は2万5千。数において1万の差があるがその内1万が周沙率いる南陽袁家の兵である。荊州兵を上回る実力を持っていた。

 それゆえだろう。周沙達を警戒しているのが丸分かりな陣形となっていた。

 

【挿絵表示】

 

 周沙の対応するのは蔡瑁率いる1万3千であり、最も数が多い部隊となっている。

 

こっち(劉琦側)は私達が敵陣を突破して本陣を陥落させる。相手は私達を抑えつつ他を突破する事が狙いって事ね」

 

 お互いに真逆と言える作戦内容だが同時に周沙達がどれだけ重要な立ち位置にいるかを理解させられる。とは言え兵たちに緊張はない。自分たちは出来るという自信で溢れており、必ず成功させると闘志を燃やしていた。

 

「よし。それじゃぁ……、始めようか」

「「「「「オオォォォォォォォォッ!!!」」」」」

 

 周沙率いる南陽袁家の兵が動き出したことにより、荊州内乱最大の決戦が幕を開けた。

 最初に激突したのは当然周沙軍と蔡瑁軍だった。兵数の上ではわずかに蔡瑁軍が上回っていたがそんな事は関係ないと言わんばかりに周沙軍は圧倒していく。

 

申馥(シン フク)は敵陣に突撃! 楼随(ロウ ズイ)雅祗(ガ シ)は開いた穴を広げるように左右に展開! 卑顗(ヒ ギ)は歩兵を率いて内部に突入せよ!」

 

 後方からの指揮に徹する周沙は適確な指示で蔡瑁軍を蹂躙していく。互角に戦えたのは最初の三太刀程であり、そこからは良い様に陣形を崩されていく。

 

「馬鹿な!? こうも簡単に……! 何をしている! さっさと立て直せ!」

 

 蔡瑁は自軍の兵のもろさに驚くが元々彼の兵は水上戦闘こそ得意であるが陸上での戦闘には不慣れな者が多い。陣形の組み方など理解は出来ても実戦で出来る訳ではなかった。

 加えて、申馥や楼随などの周沙の下で鍛錬を励んだ者達は精鋭として敵陣を蹂躙していく。僅か一時間程で蔡瑁軍はズタズタにされた。他の軍が必死に劉琦軍を抜こうとしている中での敗北である。

 

「よし、総員! 突撃! 蔡瑁を討ち取り、本陣を叩く!」

 

 そして、止めと言わんばかりに周沙が本陣の精鋭を率いて突撃を開始した。既に蔡瑁軍にこれを止める力は残っておらず、横陣をつきやぶっていく。その先には蔡瑁がいた。騎乗し、抜刀する彼は逃げる事は考えていないと誰もが分かる程の覇気に満ちていた。

 

「袁家の将よ! ここを通させはせん!」

「それはどうかしら? 今降伏すれば命は助かるかもしれないよ?」

「それは不可能だろう。劉琦殿とて内乱を起した首謀者を許しはすまい。それにここは戦場である! 言葉は無粋! 通りたければ押し通れ!」

 

 互いに対面に立った二人は短い言葉の応酬をすると蔡瑁は一気に駆ける。どちらかと言えば後方での指揮を得意とし、接近戦は苦手な蔡瑁だがこの剣にはこれまでの生涯で出した事のない一撃が載っていた。

 

「見事、ね。だけど私には届かない」

 

 そして周沙はそれを真っ向から打ち破り、蔡瑁の体を両断する。蔡瑁の上半身は宙を舞い、戦っている蔡瑁軍たちに自分たちの当主の死を見せつける。やがて地面に落下し、無残に散ると周沙は偃月刀を掲げて大声で叫ぶ。

 

「敵将! 蔡瑁を討ち取ったりぃ!!」

 

 蔡瑁の死。それは片翼がもがれた事を意味しているだけではなく、劉琮側の主要メンバーの一人が死ぬという事を意味していた。周沙は蔡瑁の亡骸をそのままに親衛隊や敵陣を突破した兵数百を連れると劉琮がいる本陣の横を付く様に攻撃を開始した。

 

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 劉琮の本陣には5千の兵がいるが蔡瑁が抜かれた時の為に右翼側に兵を多く集中させていた。それゆえに周沙は厚い敵兵の中を突入する事になったがそんな事は関係ないと馬の速度を緩めず、むしろ速度を上げていく。それに答えるように親衛隊も突撃し、劉琮の陣営を縦横無尽に突き進んでいく。劉琮の代わりに指揮をする老将は立て直しを図ろうとするが蔡瑁が出来なかったように周沙を止めるには至らなかった。

 

「馬鹿な……! 袁家はこれほどまでに強いというのか……!」

「当たり前でしょう。尤も、袁家がと言うよりも板垣宰相が強いのだけれどもね」

「あの者か……」

 

 老将は板垣宰相と言う人物に改めて恐怖を感じながら周沙の一撃で胴と頭を別々にされる。本陣の守備兵の掃討は親衛隊に任せると恐怖で動く事も出来ずに震える劉琮のもとに向かっていく。

 

「へぇ、事前に知っていたとはいえ実際に見ると違うね」

「……」

 

 劉琦よりも幼い少年は戦場の恐怖から声すら出せずに震えている。その瞳には生気はなく、既に幼い少年の心は壊れた後だった。周沙はせめて苦しまないようにと偃月刀を振り上げると一刀で以てその首を切り落とす。そして劉琮の頭を偃月刀で刺すと天高く掲げ宣言する。

 

「敵将劉琮は死んだ! 反乱兵どもよ! 降伏せよ! この戦、我らの勝利である!」

「「「「「ウオオォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」

 

 周沙の宣言により雄たけびを上げる親衛隊。それだけで戦闘中の兵が何が起きたのか、勝敗がどうなったのかを悟った。やがて一人、また一人と武器を落としていき、劉琮側の兵は投降していった。

 

 

 

 

 

 こうして黄巾の乱後に起きた内乱は劉琦の勝利で幕を閉じた。この決戦後に江夏太守黄租は南陽袁家に降伏。板垣も()()()それを受け入れ南郷、義陽、江夏を板垣派が領有する事となった。更に板垣は劉琦に支援した褒賞として襄陽をももぎり取っていった。そして残った長沙すらかつての太守にと孫策が統治する事が決められ、劉琦は刺史として名乗りを上げながら隣国の豫洲刺史である南陽袁家に荊州の半分を持っていかれる事となった。

 更には厳顔の働きもあって劉琦は様々な方面で失敗の連続となり、刺史としての信頼を失っていくことになる。

 




舞台裏は次回やるかも
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