袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第十六話「内政」

 荊州の半分を支配下に置いた板垣は本格的に内政に力を入れる事になった。先ず、これまでの文官を倍以上に増やすために様々な場所で仕官の募集を行った。これは領地が急激に広がったが故に人手が足りなくなっていたからであり、その補充を狙っての事だった。この募集には中華全土から応募が殺到する。ただでさえ豊かな南陽袁家のもとで暮らしたいと願う者は多いのに、更にかなりの数の文官を募集するとあっては無所属やまだ野に隠れている者達がこぞって名乗りを上げるのは当然と言えた。

 結果的にそれなりに優秀な文官が一定数手に入り、それらを領土中に振り分けて統治を開始した。新規で入った文官数名を古参の文官一名がリーダーを務めてやり方などを教えていく事になる。加えて、沛の太守である陳珪が協力した事もあり文官方面の人手不足は大幅に改善されていく事になる。

 一方で武官でもそれなりの応募があったが、一番の大きな功績は典韋を引き込む事に成功した点だろう。元々は許褚の勧めで孫策に仕える予定であったが途中で立ち寄った南陽で料理を披露したところ、その腕を見込まれて城の料理人として登用された。本人は路銀を貯めるまでの短期のつもりだったが居心地が良い事と南陽で許褚と再会出来、仕えている孫策が板垣の配下と言う事もあってそのまま料理人として働く事になった。しかし、本人は武勇にも優れていた為に武将兼料理人のような立場となり、戦場における炊事の責任者として抜擢されるようになった。

 他にも豫洲を故郷とする者が多く仕官しており、周沙や孫策の下で鍛錬を積み、南陽袁家の誇る兵として強力な存在となっていくことになる。そして、これらの中には黄巾党に参加した周倉と廖化の姿もあった。彼らは黄巾党の壊滅後もしぶとく生き残っていたが板垣は黄巾党の残党も組み込むために恩赦を出しており、日々疲弊していた二人はわらをもつかむ思いで仕官したのである。結果的に板垣は即応可能な両者の兵数千すら指揮下に置き、軍事面において紀霊将軍の穴を埋める事に成功したのである。

 

「よし、そろそろだな」

 

 文官と武官の補充を終えた板垣は武官の中で100名を選び、城の地下に新設された特殊訓練場に招集した。この100名は親族がおらず、いなくなっても誰も気にも留めない程人脈がない者達ばかりであり、実際に彼らが姿を消したのを知るのはごくわずかとなっていた。

 

「諸君、何故集められたのか。それを理解できない者もいるだろう」

 

 訓練場の中央に整列した100名の兵に板垣は台に上り演説を始める。

 

「もし粛清を恐れている者がいるのであれば安心してほしい。諸君らは南陽袁家軍約10万の中からえらばれた精鋭の卵である。これより、諸君らには特殊部隊の隊員としての訓練を受けてもらう。はっきりいって死人が出る可能性が高い厳しい訓練であるがそれを乗り越えた先には精鋭として、我が軍最強の兵士となる事を約束しよう。

……おっと、先に言っておくがこれは受けるも受けないも自由である。この事を口外しないのであれば普通の職務に戻ってくれて構わない。死ぬ事さえ厭わないという覚悟のある者だけ参加してくれ」

 

 板垣の厳しい演説を聞き、訓練に参加すると希望したのは30名。予想通りと言える数に板垣は満足しつつ早速訓練を開始した。

 走り込み、筋トレから始まりロッククライミングや匍匐前進、重りを背負っての水泳等訓練は過酷を極めた。当初こそ音を上げる者が続出していたが無視して進めていくうちに声を上げる者はいなくなり、板垣が求める水準に達した精鋭兵が誕生した。

 

「では次にこれの使い方を学んでもらう」

 

 そう言うと板垣は()()()()()()()()()()()()()()()()を取り出すと一人一人に手渡した。

 

「これは()()と呼ばれる武器だ。鉄の塊をすさまじい速度で飛ばす武器と考えれば良い。扱い方は弩と同じだ。引き金を引き、弾を出す。なくなれば弾を装填する。……先ずはこの武器の力を見てもらおう」

 

 板垣はそう言うと慣れた手つきで遠くに設置された鎧を打ち抜く。凄まじい破裂音に呆気なく風穴を開ける鎧。鉄で出来ている事さえ忘れそうな程簡単に貫いて見せる小銃に誰もが恐怖を覚える。

 

「見たな? これからこの小銃がお前達の武器だ。では今から弾薬を配る。先ずは装填の仕方を教えよう」

 

 30人の精鋭たちは戸惑いや恐怖心を感じつつも板垣の指導を受けて小銃の扱いをマスターしていく。そして実弾による射撃訓練も始まり、メキメキと上達していく。

 

「よし、では次にお前達に小銃を武装する前提の動きと隊列、陣形を教えていく」

「次は小銃を装備した状態での近接戦闘の方法だ。基本は銃剣を用いるが零距離となれば組手による相手の無力化が好ましい。小銃を持った状態、落とした状態両方での組み手を学んでもらう」

「小銃は慣れたな? 次は手投げ弾と呼ばれる兵器の扱い方を教える。小銃以上に失敗すれば死の危険が存在する武器だ。心して扱う様に」

「ここでは無理だがいずれ野砲と呼ばれる兵器も使えるようになってもらう。その時の為に使い方に空砲の射撃訓練も行おう。ん? 野砲だけで終わりではないぞ。武器はまだまだ存在する。どれだけ時間があっても訓練時間は足りないと思っていろ」

「弾薬の心配はしなくていい。使()()()()()()()()()()()()()()()()()。何しろ()()()()()()()()()()()()()()()。……なに、気にするな。ただの独り言だ」

 

 板垣による直接指導は続けられ、30人の精鋭は現代兵器で武装した中華、いや世界最強の部隊へと昇華していった。

 しかし、板垣が訓練を施している間にも中華の情勢は少しづつ悪化の一途をたどっていた。彼ら精鋭兵が活躍する機会は直ぐ近くまで迫っていた。

 

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