反董卓連合は一度豫洲の潁川群に集まる事となった。ここは南陽袁家の勢力圏内であり、東から洛陽に向かうための要所汜水関と虎牢関と絶妙な位置にある場所であった。それゆえに、本営を置くには最適として決定されたのである。
そして、板垣は本営周辺に柵や天幕を作り、各地からやって来る諸侯を受け入れる準備を整えていく。本来、これらはそれぞれの勢力でやるべきことだが南陽袁家の力を見せる意味合いも兼ての設置だった。
「あら、私達の分までやるなんて気が利くじゃない。それとも? 自分たちの力を見せつけたいのかしら?」
最初に到着したのは目と鼻の先にあると言っても良い陳留の太守曹操だった。板垣と初対面をした曹操は周沙が配下に降るだけの人物だと瞬時に見抜くと同時に自分の覇道の邪魔をする最大の壁になる事が理解できてしまった。
「(この男、私の様に覇道を進むわけでもなく、ましてや王道を行くわけでもない。どっちつかずと言うのが適切な感じがするわ。でも、それは意見が簡単に変わるのではなく、どちらでも選んで適切に行動できる方ね。味方として見ればこれ以上ない程頼もしい人物だけど敵にだけは絶対にしたくない相手ね)」
「(流石は未来の王、と言った所か。やはり曹操が目標の障害となりそうだ。今のうちに排除できればいいんだが……)」
互いに最大の敵として認識しつつ表面上は穏やかに対話を続けていく。未来は敵だとしても今は協力するべき相手である。私情を挟む事はしないし、相手に見せればそこを突いてくるだろうと本能的に理解できてしまっていた。故に、本心を見せないようにしながら友好的に接していく。
「お待たせしました」
「おーほっほっほ! 袁本初華麗に参戦ですわ!」
次に到着したのは劉琦と袁本初だった。劉琦より近いとはいえその倍近い兵を動員した割には素早い行軍に板垣は袁紹の警戒度を上げていく。本人は馬鹿に近いが不思議なカリスマ性を持っており、優秀な部下がいたとはいえ河北を切り取っていったのは紛れもない彼女の実力だった。
「お、お待たせしまた~!」
次に到着したのが冀州平原の相である劉備だった。袁紹より近い位置にいるはずの劉備だが義勇軍から成りあがった為か行軍速度はそこまで早くはなく、袁紹に追い抜かれた結果となっていた。とは言え後の蜀を建国する人たらしとも言える才能を持つ人物である。警戒する相手としては当然と言えた。
「私達で最後か?」
「そうみたいだな」
最後に到着したのは最も遠い位置に存在する幽州の公孫瓚と涼州の馬超だった。お互いに騎兵を主力とするために距離の割には素早い到着であり、大幅に予定を繰り上げて行動するができるだろう。板垣は参加する諸侯が全員集まった事を確認するとその日の夜に軍議を開く事を通達した。
「おーほっほっほ! 皆さんよく集まってくれましたわ!」
反董卓連合の事実上の盟主として袁紹が諸侯をねぎらう。特に馬超や公孫瓚などの直ぐには駆け付けられない場所からも来ている事がこの連合がどれ程受け入れられているかを示していた。そうでなければ遠くから態々参加しようとはしないのだから。
「早速軍議に……、と行きたいところですが、貴方は誰ですの?」
「これはこれは失礼しました。袁術様の下で宰相を任されている板垣莞爾と申します」
袁紹は袁術がおらず、代わりに板垣が参加する状況を訝しむが板垣は笑顔の仮面で以て接していく。
「袁紹様。我が主君は病気を患ってしまっておりまして、人前に出る事も叶わない状態となっているのです。それはそれとして、袁紹様。初めて顔を合わせる者も多いですし先ずは自己紹介をしてはいかがでしょうか?」
「……確かにそうですわね。ではわたくしから!」
そして自己紹介が始まり、袁紹が長々とした発表を行っていく。あまりにも長すぎて一部の者は眠気を堪える程だった。そして漸く自己紹介を終えた袁紹に続き、板垣が自己紹介を行う。
反董卓連合と言うほぼすべての諸侯が参加する中で初めて板垣は名乗りを上げる。そして、これが自分の国を持つ大きな一歩だと感じながら。
「皆様、私は南陽袁家宰相を務める板垣莞爾と申します。病気で出陣出来ない袁術様に代わり南陽袁家12万の兵を率いてきました。我が主君とその従姉妹である袁紹様、そしてこの場の誰にも恥じぬ戦いをしていきたいと思っています」
そう言って板垣は不敵な笑みを浮かべるのだった。