袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第十九話「志願」

「さて、最初の関門である汜水関についてですが……」

 

 自己紹介を終え、早速軍議に入る。その前に袁紹による連合の盟主が誰かを決めるような事を話そうとしたが板垣が「今回この連合を作り上げたのは袁紹様です。そんな袁紹様を差し置いて盟主となりうる者がおりましょうか? 私はいないと考えています。よって私は袁紹様が相応しいと考えております」と言う言葉に誰もが賛同した事で話を強制的に終えると、そのまま板垣が司会進行のような役回りとなって軍議を円滑に進め始めた。あまりにも自然にその役についた板垣に誰もがん?となりつつも口を挟む事が出来なかった。

 

「汜水関には華と張の旗が翻っております。更に偵察した者の証言で董卓配下の華雄と張遼がいることが分かっております。兵はおおよそ3万。現在の連合の10分の1の兵力です」

「意外と少ないわね。汜水関は捨てるつもりなのかしら?」

 

 董卓は漢軍も吸収して10万近い兵を用意している。それらすべて、とまでいかないまでも5万くらいはいると思っていただけに予想外にも少ない兵に曹操は疑問を投げかける。

 

「可能性は低いと思われます。何しろ董卓はここ以外にも守備兵を多少なりとも置かなくてはなりません。それに、ここに居る諸侯も領地に兵を残しているでしょう。そこからの奇襲を警戒していると考えられます」

「いくら盟主が正面からの突撃しか知らない麗羽と言えどもその下に着いた諸侯も同じ阿呆とは限らない、と董卓は考えている訳ね。それなら3万と言う兵は多いわね」

「……華琳さん? 遠まわしにわたくしを侮辱してませんこと?」

「あら、それに気づく脳はあったのね」

「何ですって!!」

「……話を続けますよ」

 

 曹操の見え透いた挑発に乗った袁紹が騒がしいものの、板垣は無視して話を続ける。

 

「汜水関は虎牢関程ではないにしろ洛陽を守る関として堅牢を誇っています。そしてここに武勇に優れた華雄と張遼を配置する事で盤石の体制となっています。これを正面から打ち破るのは厳しく、加えて並みの兵では両者の相手すら出来ません」

「つまり汜水関を攻略できる策と二人の猛者を相手に出来る武将を持つ者が行うべきと言う事か?」

「公孫瓚殿、そう言う事になります」

 

 板垣の話を簡潔にまとめる公孫瓚。彼女の言う通りそれが前提となるがそれが出来る勢力は限られている。まとめた公孫瓚は自身では不可能だと思い、汜水関の攻略には消極的であった。

 他の諸侯も兵の少なさや相手できる将の不足等から汜水関攻略をしようという勢力は誰もいなかった。

 

「まったく……。皆さんはなぜこうも消極的ですの!? 志願し、名を上げようとする者はおりませんの!?」

「なら貴方がやればいいじゃない」

「わたくしはこの連合の盟主ですよ!? いきなり総大将が出ては舐められますわ!」

「それもそうね」

 

 連合の盟主が初戦に出てくる。それは他の諸侯に自分たちを相手に出来る勢力はいないと侮られたり嘲笑される事になりかねない。そう言う事は曹操も分かっている為に軽口程度で言っていた。だが、もう片方の袁家なら可能でもあった。

 

「……では、ここは我ら南陽袁家が志願するとしましょうか」

「あら? 貴方の所で出来るのかしら?」

「我らは12万の軍勢を誇っています。周沙を始め孫策などの猛者も多いです。そしてここは南陽袁家の勢力圏です。兵の補充も多少ですが可能であり、損害をある程度は気にしなくても問題ありません。いかがでしょうか?」

 

 板垣の賛同を得るような問いかけに諸侯は答えられない。本音を言えば板垣に任せても良いと考えているがそれを最初に口に出すのは……、と言う思いもあった。とは言えここで誰かが言わなければ先には進めない。

 

「あ、あの。私は良いと思います……」

 

 そしてついに、一人の諸侯が賛同した。先の黄巾の乱で平原の相に任じられた劉備である。この連合内では一番の弱小とは言え反董卓の意思を持った同志である。諸侯は端を発したように賛同し、先鋒が南陽袁家で確定した。

 

「(南陽袁家をここまで大きくした板垣宰相の腕前、見せてもらおうかしら)」

「(まさか美羽さんの所が出て来るとは思いませんでしたわ。とは言え美羽さんはいないのですから失敗したらこの男に責任を丸投げしましょうか)」

「(南陽袁家か。最近急速に勢力を拡大しているみたいだし上り調子と判断したのかな? 失敗しないと良いけど……)」

「(姉さま、蒲公英たちが先鋒じゃなくてよかったね)」

「(まぁ、私達は騎兵が中心だしこういう攻めには向かないからなぁ)」

「(すごいなぁ、私達の10倍以上の兵を持ってるなんて……)」

 

 諸侯はそれぞれの思いを抱きながら板垣のお手並みを拝見する。汜水関攻略に関する事が決定されたために軍議はこれでお開きとなり、板垣は直ぐに軍を動かすべく自軍へと戻った。そして、そこには既に準備万端の周沙達が待機しており、板垣の命令を待っていた。

 

「諸君。我らの力を本格的に天下に知らしめる時が来た。ありとあらゆる準備を整え、厳しい鍛錬を乗り越えた諸君らならどのような相手でも攻略できるだろう。故に、俺が命じるのはただ一つ。勝利をつかみ取れ!」

「「「「「ウオオォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」

 

 板垣の短い激に兵たちは雄たけびを以て返す。板垣は自身の馬に乗り込むと高々と宣言した。

 

「南陽袁家軍! 前進!」

 

 その言葉と共に、反董卓連合最初の戦闘である汜水関攻防戦が幕を開けた。

 

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