袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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一年ぶりです。パソコンのデータがなくなり萎えてしまっていましたが一年かけて気力を取り戻して続きを書きました。久しぶりなので少しおかしい部分もあるかもしれないです。


第二十話「無謀」

「さ、宰相様。本当に先頭を行かれるのですか?」

「やめておいた方が良いと思いますよ? 流石に危険です」

 

 南陽袁家軍12万を率いて出陣した板垣に対して全軍の総指揮を執るように命じられた魯粛と5万の主力を率いる周沙は二人そろって批判的な言葉を発した。というのも板垣が放った一言が原因であり、とてもではないが承諾できない内容だった。

 

「やはり反対か?」

「当たり前ですよ! どこの世界に宰相という地位の人が先頭に立とうというのですか!」

「ここにいるが?」

「だ! か! ら! 止めているんじゃないですか! 宰相がもし死んだらどうなると思っているんですか!? 南陽袁家は終わりですよ!? ただでさえ手に入れた荊州の安定化も済んでいないのに死なれたらここは空中分解しますよ?」

「その通りですよ。宰相が好きなように弄った南陽袁家が宰相なしで回るわけないじゃないですか」

 

 声を張り上げる魯粛とおっとりとしている周沙。二人は対照的ながら板垣の行動を止めようとする思いは同じであった。

 そもそも、この戦いにおいて板垣が前に出る必要はない。12万の兵に任せればいいだけの話なのだ。これが板垣が仕官する前の兵たちならそうも言っていられなかっただろう。しかし、ここにいるのはわずか二年程で板垣が鍛え上げた立派な兵士である。そしてそれを率いるのは板垣の弟子にしてその能力を受け継ぎつつある周沙。失言が多いが実力は確かな魯粛。更に普段は炊事をしているがその怪力は確か典韋、元黄巾族でありながら将軍に匹敵する実力を持つ周倉と廖化、そして現在は各軍に散らばせてある孫家が抱える軍師に武将たち。数もあり、現在の中華において間違いなく最強の軍勢と言えた。

 故に、板垣が危険を犯す必要はない。むしろ彼の死で今の南陽袁家が確実に崩壊する事を考えれば完全なる愚策と言えた。それは軍師ではない者でも分かる事であり、魯粛と周沙だけではなく他の面々も板垣を止めようとした。

 

「板垣宰相。流石に私でもこの状況な先頭を行ったりしないわよ? 少し落ち着いたらどうかしら?」

「孫策殿に賛成だな。この状況でのそれは馬鹿のすることと変わらんぞ?」

 

 長沙・江夏の太守である孫策と黄祖も同じように反対した。とはいえ二人とも死んだら死んだで面白い、勢力を拡大できるという思いもあったために反対しつつ死ぬなら死ぬで構わないとさえ思っていたが。

 

「そもそもどうして先頭に行こうとしているんですか?」

「簡単な話だ。そろそろ武の方面でも力を見せておこうと思っただけだ」

 

 板垣は宰相という地位についている為に最近では文官というイメージが定着しつつあるが実際は自ら馬に乗り、戦場を駆け、敵将を屠れる武の持ち主であった。仕官直後など賊退治に軍勢を率いて出陣したこともあるほどで、周沙とはその時に出会っている。

 

「最近では俺を文官と軽んじる武官も出始めている。特に新人に多い傾向だ。故にその思い込みをこの戦いでなくしてやろうと思っただけだ」

「それなら別にここじゃなくていいんじゃないですか?」

「いや、()()()()()()()()()だ。それに敵将にいい感じのやつがいるしな」

「華雄将軍ですね?」

 

 華雄。それは董卓軍の中でも屈指の武勇を誇る将軍だ。その実力は飛翔将軍呂布に並べるほどだ。しかし、そんな彼女には大きな欠点があった。それはプライドが高く、突撃狂と呼べるほど敵を真正面から叩き潰そうとすることだ。

 

「平原での戦いなら華雄の突撃は脅威だ。しかし、今はいうなれば攻城戦。華雄のような将には不得手な戦いだ」

「それに加えてプライドが高い華雄将軍なら挑発して汜水関から飛び出させることも出来ると考えたわけですね」

「つまり宰相は自身の武勇をこの戦いで知らしめるのに華雄将軍を討ち取る事を選んだわけですね?」

 

 周沙と魯粛は板垣の狙いに気づいたがだからと言って賛成できるわけがなかった。そもそも武勇を示すだけなら新人の前で模擬戦でも行えばいい。相手が孫策や周沙などの実力者なら納得できるだろう。態々この場で行う意味が分からなかった。

 

「確かにこれは俺のわがままだ。やらなくていいことをやり、背負わなくていい危険を背負おうとしている。だが、それに見合った成果は必ず上げるさ」

 

 そして、板垣は退くつもりはなかった。これも自らの野望の一歩であると考えているからだ。

 

「(それに、本当に危険で華雄に負けそうになっても問題はない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

 板垣は心の中でそう呟き、遥か彼方の丘の上を一瞬だけ見ると未だ反対意見を言う二人を宰相命令で黙らせ、自ら軍の先頭へと馬を進めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「天気は快晴。無風であり、()()するには絶好の天気だ」

「! 宰相殿を確認した。予定通り華雄との一騎打ち次第では援護するぞ」

 

 板垣が見た丘の上。そこには迷彩柄のテントを張り、うまい具合に自然に溶け込んだ特殊部隊が存在した。彼らは南陽袁家軍とは別に動きだし、この地に布陣していた。

 

「華雄に関しては殺されそうになった時で良いが問題はもう一人の張遼の方だ。見えるか?」

「ギリギリだな。城壁に登ってくれれば見えるが裏に回られれば見えない」

 

 双眼鏡を使い汜水関の様子をうかがう隊員は険しい表情で答える。狙撃地点としては良好な場所を選んだが残念なことに汜水関の裏手を見れるような位置にはなかったために完全な把握は不可能だった。

 

「とはいえ張遼の姿は確認できた。やはりそれ以外に主だった将軍はいないようだな。残りは洛陽か虎牢関か。漢軍はどうなっていたか?」

「事前の情報だと皇甫嵩将軍は長安の守りについている。朱儁将軍は洛陽で帝のお守りだ」

「名目上とはいえ何進大将軍の死を引きずっているわけか」

 

 とはいえそれも直ぐに収まるだろう。それだけ何進大将軍は無能で影響力も低いやつだったのだから。

 

「それより今は引き続き汜水関の監視を続けるぞ」

「ああ、分かっている」

 

 

 隊員たちは話を一旦切り上げ、汜水関の目前まで到達した南陽袁家軍そして板垣宰相の様子を確認しつつ汜水関の動きに目を光らせるのだった。

 





【挿絵表示】

現状の勢力図(本編に登場した勢力のみ記載)
紫:南陽袁家(事実上板垣の勢力)→豫洲全土及び荊州6郡
黄土色:黄祖(南陽袁家勢力範囲)→荊州江夏
薄紫:孫家(南陽袁家勢力範囲)→荊州長沙
青:曹家→兗州陳留
橙:劉琦→荊州西部
緑:劉備→冀州平原
緑:馬超→涼州全土
茶:董卓→司隷及び雍州全土
黄:袁紹→冀州北部
灰:公孫瓚→幽州西部
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