袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第二十三話「戦間」

「おーっほっほっほっ! 袁術さんのところの宰相は中々やるようですわね!」

 

 汜水関を落とした翌日の軍議にて袁紹は機嫌良さげに板垣の活躍を褒めた。同じ袁家の人間の将が活躍したことが喜ばしいのだろう。

 

「ですが袁術さんの所はしばらくお休みなさい。後はこの袁本初が虎牢関を落として見せますわ!」

「あら? あなたの弱兵で虎牢関を落とせるのかしら?」

 

 袁紹の言葉に待ったをかけたのは曹操であった。とはいえその気持ちは他の諸侯とて同じであった。何しろここで袁紹が虎牢関を落としてしまった場合、袁家だけが活躍して終わりになってしまうからだ。それでは連合に参加した意味がなく、だれもが手柄を求めていたのだ。

 

「今度の虎牢関は董卓軍も全力で守ろうとするでしょう。そうなればあなたの兵では簡単に返り討ちにあうんじゃないかしら?」

「なんですって!」

 

 ムキー! と声を上げる袁紹だが傍で控えていた軍師の田豊に宥められて落ち着きを取り戻した。

 

「わかりましたわ。そこまでおっしゃるのなら華琳さんがやればいいですわ。勿論、貴方一人で、ですが」

「っ! 私の所は1万程度の兵力よ? 私たちに死ねと言いたいのかしら?」

「大口をたたいたのですからそのくらい出来るかと思いましたが……」

 

 元々仲がそれほど良くはない袁紹と曹操は互いに罵り合いを始めるがそれを見て板垣はため息をつきながら止めに入った。

 

「お二方、喧嘩はそれくらいにしましょう。この調子ではいつまでも軍議が進みませんよ」

「……そうですわね。華琳さんにわざわざ付き合う必要はありませんからね」

「そうね。ここは有意義な軍議をする場。お馬鹿さんに付き合うのは阿呆のする事ね」

 

 互いに睨みつつも板垣が二人を制した事でそれ以上の言い合いには発展せずに済んだ。

 

「では虎牢関を誰が担当するかですがここは袁家の者以外でお願いしましょう。第一陣として曹操殿、劉琦殿、そして劉備殿にお任せしましょう。第二陣として陶謙殿、孔融殿、王匡殿に。第三陣に公孫瓚殿、馬超殿、劉岱殿がついてもらいましょう」

「あたしらは最後なのか?」

 

 板垣が決めた陣決めに疑問を投げかけたのは涼州から来た馬超であった。とはいえそれは不満から来るものではなく第三陣に置かれたのが分からないというなんとも言えないものからだった。そして、その後ろに控えていた馬超の従妹である馬岱が頭を抱えている。

 

「公孫瓚殿もそうですが馬超殿が率いる軍勢は騎兵が主力と聞きました。騎兵は今回のような攻城戦には不得手であると判断したためですよ」

「……あ、そうか。確かにそうだよな」

 

 本気で忘れていたと言わんばかりの馬超の様子に板垣も呆れるが決して表には出さずに話を続ける。

 

「他の方で何か不満や疑問点に思う者はおりますかな? あくまで大雑把に分けただけですので変更なら受け付けますよ?」

「いや、私は特に不満はないぞ」

「某も同じく」

「ここは血気盛んな曹操殿に荊州の刺史となったばかりで功績が欲しいであろう劉琦殿。同じく義勇軍から成り上がり確かな功績が欲しいと思われる劉備殿に任せるのが最適でしょう」

「板垣殿は素晴らしい采配を成されている」

 

 劉岱を始めとする諸侯は一斉にそう言って現状維持で合意した。とはいえこれは明らかに曹操、劉備、劉琦を使い捨てにし、董卓軍が弱ったところを自分たちでかすめ取ろうと考えており、曹操や公孫瓚などもそのことに気づいていたがあえて何もいう事はなかった。

 

「それでは虎牢関攻略に関してはこれでいいでしょう。明日、全軍で進み虎牢関前に陣を敷きます。攻撃は明後日からとなるでしょう。第一陣の皆さま方はその心づもりでいてください」

「そうね。分かったわ」

「……了解したよ」

「え? あの……」

 

 曹操、劉琦は納得したが気づけば第一陣に組み込まれていた劉備は流れについていけずに困惑してしまう。劉備が率いてきた兵はおおよそ3千程。3勢力を合わせても2万と少し程度だろう。それで虎牢関を攻めるなど自殺に等しかった。

 

「何かな? 劉備殿。既に陣決めは終わったのですよ?」

「ですが、私たちの兵数では……」

「ああ、貴殿は黄巾の乱後に平原の相となりましたからね。兵が少ないのは仕方ない事です。……分かりました。第一陣は3つの陣の中で最も数が少ないです。希望するのであればわが軍の兵をお貸ししましょう」

「本当ですか!?」

「勿論です。同じ連合の仲間ではありませんか」

 

 板垣の言葉に劉備は目を輝かせているがその後ろに控えている軍師諸葛孔明ははわわ! と板垣の言葉に目を見開きつつ警戒心をあらわにした。

 板垣は確かに言った。()()()()()と。借りるからにはきちんと借りたときの状態で返すのが礼儀であり、借りる以上そこに何かしらの見返りが発生する。それを理解したからこそ板垣から、南陽袁家から借りることだけは絶対にダメだと理解していた。

 

「(ダメです桃香様! それを受け入れては……!)」

「ありがとうございます! それじゃお願いします!」

「ええ。いいでしょう。軽く1万程お貸ししましょう。きちんとした将と兵を選びますよ」

「(桃香様――――!!!)」

 

 孔明が止める間もなく劉備は板垣の提案を受け入れて兵1万を借り受けてしまう。そのことに孔明は頭を抱え、板垣はほくそ笑み、劉備は純粋な笑顔で笑うのだった。

 ちなみに、曹操は板垣の申し出を受け入ることはなかったが代わりに袁紹の兵5千を借り受けることに成功し、劉琦は誰からも兵を借りる事はなく、ただただ板垣を不審な表情で見るだけだった。

 兎にも角にも第一陣の総数はこれで約4万となり、虎牢関に籠る董卓軍を相手に出来るだけの数となった。そして、軍議を終えた連合軍は次の戦場であろう虎牢関に向けて前進を開始したがその直後、予想外の出来事が連合軍を襲った。

 “呂”と“張”、そして“李”の旗を掲げた董卓軍が第一陣に対して奇襲を仕掛けてきたのである。

 

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