袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第二十八話「攻防」

 虎牢関へとたどり着いた連合軍はさっそく、第二陣による攻撃が開始された。第二陣には青州北海の太守孔融、徐州刺史の陶謙、兗州泰山の王匡による約5万の軍勢であり、対する虎牢関を守る董卓軍は呂布軍1万5千、張遼軍1万、李傕軍1万5千の計4万である。数は第二陣の方が多いものの、わずかな差であり、防衛側が大きく有利となっていた。

 そこで第二陣は第一陣とは違い、自前の攻城槌や攻城櫓を投入した。これらは堅牢な虎牢関を簡単に攻略できるだろうと。実際、これらの兵器は攻城戦における必須アイテムと言えるものであり、あるのとないのとでは攻撃の幅が大きく違っていた。そして、これらの兵器は関たる虎牢関にも有効であった。

 

「進め! 我ら徐州兵の強さを知らしめるのだ!」

「虎牢関に一番乗りを果たせ!」

「手柄を立てて俺も刺史になるぞ!」

 

 第二陣の面々はそう兵を鼓舞しながら攻撃を開始する。本来、第二陣である彼らは第一陣にある程度敵を叩かせてから攻撃をしようと考えていた。しかし、敵の奇襲で第一陣が使い物にならなくなったために彼らは本来第一陣がやるべきことをこなさなくてはならなくなっていたのだ。手を抜けば得られる功績は減り、最悪の場合敵と内通していると思われかねない。そうである以上彼らが手を抜くことはなく、特に王匡の活躍はすさまじいものがあった。

 何しろ彼の後ろには彼が属する兗州の刺史たる劉岱の軍勢が控えているのだ。曹操軍の時もそうであったが刺史である自分に従わない彼らを劉岱は嫌っている。故に彼は前進するしかない。少しでも手を抜けば後ろから殺されかねないために。

 

「おのれ……! 劉岱め、第一陣のように我らを使いつぶす気か!」

 

 王匡はそう叫びながらも敵への攻撃をやめたりはしない。そうなったときが自分の最後なのだから。

 

「王匡様! 陶謙の攻城櫓が虎牢関に接触しました!」

「何!? 我らも攻城槌で門を破るのだ! 門は我らの担当場所に存在するのだ! この好機を逃すな!」

 

 右翼に展開する陶謙軍が攻城櫓を設置できたことで王匡は焦りを感じ始める。このままでは功績すら奪われてしまうと。ただでさえ、王匡より刺史である陶謙の方が連れてきている兵は多いのだ。

 

「くそっ! 急げ! 門を破壊するのだ!」

 

 そう叫ぶ王匡だったが虎牢関の門は堅牢であり、一度や二度ぶつけた程度ではビクともしていなかった。さらに上空からは矢の雨が降り注ぎ、王匡軍を地に伏せていく。それでも王匡軍は虎牢関にかじりつき、城門の突破を目指していくことになる。

 そして、虎牢関攻略にくぎ付けにされているために第二陣はその違和感に気づくことはなかった。呂布や張遼の旗があるのに本人たちが前に出てくることはないという違和感に。

 

 

 

 

 

 

「そらほんまの話か?」

「ええ、光の言葉を信じるならね」

 

 第二陣による攻撃が始まる少し前、やる気十分の董卓軍の将校たちの前に賈詡が姿を見せていた。そして、彼女が話した内容は、董白が持ち帰った板垣との会話の内容と、これからの動きについてだった。

 

「確かに南陽袁家ならうちらを全員抱え込む余裕はあるんやろうけど……」

「少し心配」

「俺も信用するには美味しすぎる話だ」

 

 板垣の条件も含めて話すと誰もが懐疑的な反応を見せる。確かに条件はあれどだからと言ってそんな危険な橋を渡るのだろうかと。

 

「残念なことに具体的な話に関してはできなかったみたいだから具体的にどうするのかはわからないけどね。だけど近いうちに知らせを送ると言っているみたいよ」

「ふむ。だが南陽袁家なら可能なのか? 確かにあそこは一年で急成長を遂げているが……」

「にしてもうちらを含んでおきながら李傕の旦那をのけ者にするのはいただけへんがな」

「それはある意味では仕方ないことだろう。最近は留守を任される事が多かったからな。特に黄巾賊の討伐の時などずっと涼州に引きこもっていたからな」

「それでハブられた?」

「最悪俺の存在を知らない可能性がある」

 

 とにかく、と李傕は話を続けた。

 

「今の俺らには二つの道が存在する。一つ目は条件を受け入れて降伏する道。これは罠だったという可能性さえ排除すればこれ以上のない手だ。二つ目は信じずにこのまま防衛を続け、やがて最悪の未来を受け入れるという道だ。これは万が一、運が良ければ連合軍が瓦解して引き上げていく可能性がある。しかし、南陽袁家なら単独でも攻撃をしてくる可能性がある。そうなればどちらにしろ訪れるのは破滅だ。

つまり、俺らは南陽袁家と敵対するか、味方になるかどちらかの道を選らばないといけないわけだ」

「李傕の言うとおりだよ。僕たちはすでに、南陽袁家との付き合いで生きるも死ぬも決まってしまう状況にあるわけだよ」

 

 ある意味ではすでに賈詡達に決定権はない。南陽袁家次第で彼女たちはどうにでもなってしまう状況にあるのだ。

 

「ま、どちらにしろ張遼と呂布は前線に出ない方がいい。受ける場合にもすぐに対応できるようにしておく必要がある。董卓様はなんといっているのだ?」

「月はみんなを守りたいと言っているわ。それにこの戦いを望んでいたわけではないしね」

「それもそうか。ならば我らは南陽袁家からの連絡待ちという事だな」

 

 張遼と呂布も不服な点はないようで、頷いて同意する。これで、董卓軍は虎牢関の攻撃の直前に全体での意思疎通を完了させた。その結果として呂布や張遼が前線に出てくることはなくなり、その代わりといわんばかりに李傕が軍を率いて第二陣を相手に奮戦するようになる。

 そして、その状態が三日続いた明朝。敵の攻撃に備えていた虎牢関に一本の矢文が射られた。それは表向きは降伏勧告であるが本当の所は板垣からの指示が書かれているものだった。董卓軍は即座にその矢文に従い準備を行った。

 その日の夜、虎牢関裏手より、曹操・劉備軍による奇襲が行われた。

 

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