袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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第三十四話「褒章」

 反董卓連合に加盟し、軍を挙げてこの場に集まった諸侯にとって呆然としてしまう程、終戦は即座に訪れた。南陽袁家が攻撃を開始して僅か一日で董卓軍は降伏。賈詡、呂布、張遼、陳宮といった主だった将は捕えられた。董卓自身も別動隊を率いて洛陽に突入した孫策によってその場で処刑された。顔は火傷のせいで判断が難しかったものの、捕縛した場所や着ていた服装から考えて董卓である可能性が高いという判断となった。

 

「結局、最初から最後まで南陽袁家だけで終わらせてしまったわね」

 

 連合最後の軍議にて、曹操はそのように発言した。しかし、その言葉は真実であり、いかに南陽袁家が戦いの主導権を握り続けていたかを物語っていた。

 兎にも角にも虎牢関を抜けた連合は南陽袁家が制圧した洛陽に入ると袁紹を筆頭に皇帝へと謁見を行った。

 

「陛下、この度は陛下のお膝元を騒がせたことに対して謝罪を申し上げますわ」

「……構わぬ。朕に被害はない」

 

 霊帝と呼ばれる少女は袁紹の言葉に簡潔に答えた。漢を思う臣として袁紹は本音を言っていたが霊帝にとってはどうでもいいことであり、ただただ話相手の董卓が死んだことだけを悲しんでいた。

 

「陛下、二度とこのような事が起こらないように後の処理はこの袁紹にお任せください」

「いいわ。袁紹、あなたを相国に任命するわ。後のことはあなたの好きにしなさい」

「はっ! 必ずや漢の平和を取り戻して見せます!」

 

 相国という漢において皇帝に次ぐ権力を得た袁紹は即座に洛陽の保護を行った。とはいえ董卓の治世は世間に流れるような悪政ではなく、善政を敷いていたために治安はよく、南陽袁家の兵も乱取りを行わなかったことで町は保全されていたために特にやることはなかった。

 次に袁紹は論功行賞を行ったがこれは事実上南陽袁家しか功績をあげていなかったが板垣が袁紹と相談の末に以下のように決められた。

 

「では、まずは曹操殿には兗州は済陰群の太守を兼任していただきます。

劉備殿は徐州は青海群に移封していただき、陶謙殿の傘下になっていただきます。

王匡殿、劉岱殿、公孫瓚殿、馬超殿、孔融殿は金及び貨幣による報酬とさせていただきます。

袁紹様に関しては正式に冀州の刺史となり、冀州全土の統治をおこなっていただきます」

 

 発表された褒章はほぼすべてが金銭による礼であり、領土がもらえたのは曹操のみであった。それどころか劉岱に至っては削られている状態なので彼は怒りで顔を真っ赤にしていた。

 

「そして、最後に南陽袁家は揚州の刺史を兼任していただくこととなりました」

 

 最後に発表された南陽袁家の褒章はこの中では最もでかいものであった。だが、それも南陽袁家が挙げた功績を考えれば当然ともいえるものであり、彼らは不満を抱きつつも表面上は納得した雰囲気を見せた。

 そして、董卓が統治していた洛陽が存在する司隷は漢王朝による直接統治が行われることとなった。更に将軍には皇甫嵩が付き、武の頂点となったが彼女は反董卓連合末期には董卓達と同じように南陽袁家に降っている。彼女の場合、皇族に対して危害を加えないという内容も含まれているが未だ漢王朝に使い道を見出している板垣にとっては何の問題もないものであった。

 本来であれば相国となった袁紹が司隷も統治することになるが彼女は冀州全土の掌握でそれどころではなく、漢王朝の人間から選び、その者に一任することとなった。ちなみに、袁紹が選んだ者は()()にも板垣が黄巾の乱時より厚意にしている者であり、いざとなれば板垣に首を垂れられる人物であった。

 つまり、漢王朝の中心地である司隷は南陽袁家の息のかかった者が文武の頂点に君臨したことを意味しており、これ以降司隷は南陽袁家による間接統治が行われていくことになるのであった。

 

 

 

 

 

 そんな大事な論功行賞を終わらせた板垣は足早に洛陽を後にした。彼は周沙や孫策等の護衛とともに長安に向かい、そこで捕縛されている、と対外的には言われている賈詡達董卓軍の面々に会いに行っていた。そして、ここに至り董卓軍の軍師賈詡と南陽袁家の実質的な支配者である板垣は初めて顔を合わせることとなった。

 

「南陽袁家宰相、板垣莞爾だ」

「董卓軍軍師、賈詡よ」

 

 板垣と賈詡は互いに短く挨拶を済ませると視線をまじりあう。賈詡は目の前の板垣という人物を測りかねていた。

 

「(さすがに南陽袁家の宰相だけあって隙がないなぁ。華雄を討ち取ったのもうなずけるわ)」

「(……この人、強い? けど、弱くはない)」

「(確かに南陽袁家を事実上乗っ取るだけの実力があるように見える。だけど、それなのに()()()()()()()()()。これじゃ能力だけ示して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいだ)貴方が言っていた通り僕たち全員は南陽袁家に仕えることに同意したよ」

「それで構いません。士官後の詳細な役職等に関しては後日通達します」

 

 そういってほほ笑む板垣に対するそれぞれの反応は違っていた。

 まず、賈詡は能力の高さしか見えてこない板垣に対して不信感のようなものが浮かび上がり、張遼は改めて近くで見たことで彼の武に納得し、呂布は動物的直感から彼の実力が単純な武勇では測れない所にあると見抜いていた。

 

「では貴方方はこれより孫策とともに長安を出立していただき、南陽に向かってもらいます。私が戻るまであなた方は客将という扱いになります。兵の訓練に参加するも政治を見るも、周辺に出かけるのも自由とします」

「その間に南陽袁家の雰囲気を感じ取って慣れておけって言いたいわけね?」

「そう捉えてもらって構いません。どちらにしろ私はひと月ほどは洛陽にいます。それだけの期間があれば自然と当家の雰囲気にも慣れてくるでしょう。そうなれば即座に当家の臣として十分に働くことができるでしょう」

 

 つまり、板垣は自分が戻った後はお前たちを馬車馬のようにこき使うといっているに等しく、張遼はそれを想像して苦笑いを浮かべていた。

 とはいえこれで顔合わせは完了し、板垣は戦後処理を本格的に終わらせるために洛陽に戻ることになっていた。しかし、その日の晩に板垣は賈詡を一人呼び出した。彼女に、板垣が構想するとある部隊を任せるために。

 

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